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14-26.帝都訪問(後編)

前回のあらすじ:帝国の皆さんに、分析の為に呪いの地の提供をしてくれた事のお礼を言う式典も無事終えることができました。妖精さん達が、妖精界の夜空をプレゼントしてくれたのが素敵でした。(アキ視点)

帝都からの帰路も、予定のコースをゆっくりと周り、行きと同様、僕とお爺ちゃんが観光案内風に話をする事で、皆さん飽きることなく最後までしっかり飛んでくれた。


ロングヒルでの編隊飛行は不要なので、ロングヒルが見えた時点で解散となったけど、雲取様もそこで肩の荷が下りたようだった。


「誰かに合わせて飛ぶのがこれほど疲れる事とは思わなかった。それに仲間同士での会話も、多数相手では思念波は向いていないようだ」


「拡散型の思念波ならどうですか?」


「方向を絞らない分、範囲に応じてそれなりの力を使わねばならん。このマイクとヘッドホン程には気軽には使えないだろう」


「遠くまで声が届くように話す演説みたいな感じでしょうか?」


「それに近いだろう」


なるほど。それじゃ雑談的な用途には不向きだ。


「それに竜の飛び方では、互いの距離もかなり空けとるからのぉ。儂らが使う伝話を学んでみるかのぉ? 色々と制限はあるが、あるとないでは大違いじゃ」


ほぉ。


「ぜひ学ばせてくれ。「死の大地」の浄化作戦時には数十、数百と群れとなって飛ぶ事にもなるだろう。好き勝手に飛べば混乱して収拾がつかなくなりかねん」


「それは良いですね。ところでお爺ちゃん、伝話って通信の暗号化とか難読化とかはしてる?」


「特にしておらんが」


おや。


「群れで競い争うレベルの敵がいなければ、そんなものなのかな。そこもちょっと工夫した方が良さそう」


「伝話を聞くのが仲間とは限らない、ならば、与える情報は少ない方がいい、そんな話か」


流石、話が早い。


「その通りで、話してる内容を理解できれば、その情報を活かして、相手がこちらを脅かす事も容易になって、本末転倒です。こちらは密に連携している、あちらは何かやり取りしてるようだが内容まではわからない、それが理想です」


「そういうもんかのぉ」


おやおや。野鳥の群れや、数の少ない魔獣とか、一方的に追いやれる軍隊を相手にしてて、危機感が薄いか。


「散開しろ、集まれ、攻撃しろ、退け、体勢を立て直すぞ、って程度の単語を聞き取れるだけでも、集まるところを狙い撃ちするとか、攻撃されるタイミングで軌道を変えて避けるとか、手の打ちようはいくらでもあるでしょ。「死の大地」の上空となれば、聞き手は大地を覆い尽くす呪いなのだから、可能な限り情報は隠蔽しないと」


「知られた情報を持ち帰って次に活かす、ならば、持ち帰らせなければいいという、普通の策が、「死の大地」では使えん訳か。難儀じゃのぉ」


「二人とも、少し話が先に進み過ぎだ。先ずは妖精族の用いる伝話を学び、それを竜族に応用すること。そこからだ」


ん、確かに、少し先走りし過ぎたかも。


「雲取様の言うとおりでしたね。ある程度研究したら、伝話を習得したチームと、これまでの思念波だけを用いるチームで対抗戦をやって試してみましょうね」


「それも話が先だぞ。まだ連携する若竜と成竜の模擬戦も試してないのだ」


あー、確かに。


……なんて感じで、あれこれ思いつく話をしながらのロングヒル帰還となり、その日は時間も無かったので、大雑把に成功した旨の報告をして、後は同行した皆さんにお願いする事にした。


ケイティさんが甲斐甲斐しくお世話してくれたおかげで、いつも通りに寝ることができたけど、飛行服フライトスーツを着ての飛行はやはり疲れるもので、しかも、道中はゆっくり飛んでる時間も長かったから、身体中が凝っていた。


なので、いつもより念入りにマッサージして貰い、お風呂にもゆっくり入ってリラックスする事に専念した。


寝間着に着替える頃にはうとうとしていて、ケイティさんの声も心地良い子守唄となってて、横になったらすぐ寝てしまったけど、訪問は満点の出来だったので、心配事もなく、穏やかな気持ちで寝入ることができた。





次の日の朝も良い目覚めで、寝起きの挨拶をしてくれたトラ吉さんと、鼻をちょんと触れ合わせたりして、今日はのんびりできるかと思ったら、今日は一日、鬼族の大使館に関係者を集めて、報告会に参加するとの事だった。


「昨日話した概要と、同行していた皆さんからの話だけでは足りませんでした?」


あー、焼き立ての石窯パンが芳ばしくて美味しい。


アイリーンさんに、こうして朝食を戴くと、家に居るって感じがして落ち着く、と話すと嬉しそうに微笑んでくれた。昨日の余所行きの装いも綺麗だけれど、やっぱりケイティさんやアイリーンさんのメイド服姿は見慣れているから、その方が落ち着く感じだ。


「上空から遊覧したアキ様の視点や認識、それに同行者達の認識のアキ様との共有、それに第二部の妖精族の皆さんの話も伺わなくてはなりません」


「儂もどうじゃったか詳しくは聞いておらんからのぉ。かなり盛り上がったらしく、この後の話が楽しみじゃよ」


おやおや。


「楽しみは後に取っておこうとか?」


「それもあるんじゃが、何より、真夜中になっても、還ってこない者が多くてのぉ。いつ全員戻るかも分からんから、待たずに寝たんじゃよ。結局、朝帰りしとってな。賢者が付いていながら何事かと、宰相に朝から絞られておったわ」


あー、シャーリスさん、随分とはっちゃけたね〜。


「ですので、妖精の皆さんの参加は午後からとなります。午前中にアキ様との共有を済ませておく段取りです」


ふむふむ。


「にゃー」


おや、トラ吉さんも教えろって催促してきた。


「興味を持って貰えるのは嬉しいですけど、そんなに帝国領に皆さん、興味津々なんでしょうか?」


そう話を振ると、ケイティさんは慎重な物言いで答えてくれた。


「上空から国土を眺めると言う話自体が、目新しい事なのです。そして、上から眺めるだけで、どの程度まで知る事ができるのか、知られる事になるのか、それらに小鬼族もそれ以外の種族も強い興味を向けているのです」


なるほど。


「山の上から眺めるのとそう大差もない気もしますけど、移動しながら見ることで様々な角度から眺められる利点はありますね。まぁ理解しました。ちなみに小鬼族の皆さんから何か注文はありました?」


「いえ。観測機器を搭載しないという我々の方針だけで、十分な配慮との事です。こちらも下手にそんな物を搭載して、地の種族の話に天空竜が絡む流れに入る事など望んでいませんから」


確かに。もし搭載してあちこち訪問すれば、竜族が街エルフや連合の情報収集に手を貸していると勘繰られかねない。まぁそれを言うと僕が眺めるのは良いのかって事にもなるけど、招かれて訪問するのに、窓を塞いで護送するなんて興醒めだし、歓迎ムードも台無しだろう。そう言う意味では観測機器搭載は黒、僕やお爺ちゃんが眺めるのは白、その間は灰色って感じなんだろうね。


あと、竜族は地上の事に無頓着だから、雲取様から話を聞いても、あまり有用な情報は得られないとは思う。栽培してる作物の種類とかなら多少は聞けるかも。


「それじゃ、立体地図の投影はお願いします。メモとかもしてないので、地図を眺めて思い出しながら話す感じでいきたいです」


「立体地図の持ち込みと、幻影での大型表示は手配済みですので、ご安心ください。他に入用なものはありますか?」


「それでは、帝都に用意された、臨時の大使館領の見取り図や配置の図面の用意もお願いします。リハーサルをしていたとは聞いてますけど、見聞きしてない人も多いでしょうから」


「では、そちらも用意しておきます」


とまぁ、そんな感じで、朝食兼昼食ブランチも慌てて食べる程ではなかったけど、のんびりする暇はなく、馬車に乗り込んで、あれこれ打ち合わせをしながらの移動となった。

ブックマーク、ありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

ちょっと短いけど、キリがいいので今回はここまで。

帝都での式典を行って、はい終了とはまぁなりません。ロングヒルで雌竜達がその場のノリで行った編隊飛行と違い、今回はかなり統制され計画された編隊飛行を行ったし、帝国領の帝都に近い大都市群のあらかたを空から眺めたし、式典第一部の実施も、アキの視点は「予定通り上手く行った」くらいしか報告してないですからね。

本文で語られている第二部の詳細の報告も誰もが聞きたいところでしょう。

……という訳で、書き進めてみたところ、今回では終わらず、あと2パート必要でした。なので掲載予定が2つズレます。

次回の投稿は、十一月二十一日(日)二十一時五分です。


<雑記>

久しぶりに、執筆ストックが0→2に増えました。本当なら8とか10くらいはストックしておきたいところなんですが、なかなかストックが増えないんですよね。筆の早い方がほんと羨ましいです。


<今後の掲載予定(修正)>

11月21日(日) 14-27.帝都訪問を終えて(前編)

11月24日(水) 14-28.帝都訪問を終えて(後編)

11月28日(日) SS:ユリウス帝と王達の密談

12月01日(水) SS:小鬼達から見た帝都訪問(前編)

12月05日(日) SS:小鬼達から見た帝都訪問(後編)

12月08日(水) 第十四章の登場人物

12月12日(日) 第十四章の施設、道具、魔術

12月15日(水) 第十四章の各勢力について

12月19日(日) 15章開始

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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