表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
367/769

第十三章の登場人物

今回は、十三章で登場した人物や、活動してても、アキが認識しないせいで登場シーンがなかった人の紹介ページです。十三章に絞った記述にしているので、各人物の一般的な情報(立場や外見、これまでの活動)については、九章の登場人物紹介をご覧ください。


<報告>

人類連合の南西端に位置する国ディアーランドのエージェント、トレバーについて、連合の二大国ラージヒルとの混同した記述がちらほらあり、本編も含めて一通り修正しました。二大国のくせに目立たず本編でも出てこないラージヒルのエージェントについても項目を追加し、人物紹介欄に各人の簡単な立場も記載したので、以前よりは分かりやすくなったかと思います。

◆主人公


【アキ(マコト)】

樹木の精霊(ドライアド)探索チームの結成式に出たり、竜神子達との懇親会に出たり、各地から集めたリーダー級の人々の為に洗礼の儀を取り仕切ったりと、公務も増えてきた。かと思えば、エリーの二人の兄と話して、リアル王子様と会った、などと楽しんだりもしてて、だいぶ、精神的な余裕も取り戻してきたようだ。

ケイティとは念願の心話も行い、リアとはスキンシップが増え、父母(ハヤト&アヤ)との接点も増えるなど、手探り状態だったアキのメンタルケアもだいぶマシになってきた。

リーダー級の人々には、親身な気持ちで応援する姿勢を前面に押し出したが、元々の「残念な人達に邪魔しないよう釘を差しておこう」に比べればプラスの効果があったものの、少しサービスし過ぎで、魔力感知できず、竜の傍らに立ち、自分達に好意を向けてくれる稀な髪色の美少女を神霊の類かもと考えて「アキ様」と呼び出す連中が増えてしまった。

人気があると言う意味では、エリーもかなりの物があるが、ロングヒルで幼少の頃から知られてきたエリーは、アキのように出自不明っぽい怪しさがなく、普通に魔力感知もできるし、髪色もよく見かける金色と、神霊扱いに繋がる属性は無かった。

また、アキはマコト文書の専門家として、何回も講演を開いており、三大勢力のトップを交えた会談を行ったり、竜神子支援機構の代表を皆に望まれて就任してたり、魔力の高い限られた者しか触れられない、日中の僅かな時間しか会えない、療養してて昨年の夏以前の情報なし、しかし、この冬に全種族初となる竜と妖精との共同飛行を行う等と見聞きした条件を揃えると、お前のような少女がいるかー、と思考が堂々巡りに陥るのも無理は無い。

そして、そこらの王族より目にする機会が少なく、その割に限られた人達には知られているというアンバランスさも、憶測に拍車を掛けた。

リアが声を掛けた雑誌の特集で、共和国の港町ショートウッドに、雲取様、翁と共に降り立った件を取り上げたりもしたせいで、よく分からないけど、なんか凄そう、みたいな意識が爆発的に広がっている状況だ。

幸い、アキは限られたエリアにしか出歩かず、一般層との交流も無いので、騒ぎに気付くのは当分先になるだろう。



◆アキのサポートメンバー



【ケイティ(家政婦長ハウスキーパー)】

アキの生活を支えつつ、森エルフ、ドワーフ達と共同研究を進めていた心話用の補助魔法陣も遂に実を結び、この春、アキとの心話を行うことに成功した。まだ、ケイティへの負担は大きいが、緊急停止機構も想定通り動作したので、今後は定期的に心話を行える様になるだろう。これは単に、力の差が大きい者同士が心話を行える話ではなく、より魔術に精通した魔導師が、アキと心話を行う事で、これまで以上に効率良く、正確かつ迅速にアキから、情報を引き出せるようになる事を意味する。アキと竜達の心話について、アキから口頭でヒアリングするしかない状況に比べれば大きな前進と言えるだろう。

また、心を直接触れ合わせる事で、より適切なメンタルケアを行えるようにもなると期待されている。

あと、ケイティ自身も述べてる通り、レアキャラ状態のアキとの交流を満喫できる、という楽しみも、ケイティの背を押す力となるに違いない。仕事であり、個人的にも楽しめるとあれば、何を遠慮する必要があろうかって話だ。

森エルフの里ではハーフのケイティより若手なんているはずも無く、海外に派遣される探索者に選抜されるような者達に若造がいる筈もなし。

なので、ケイティの人生上、アキのようなタイプの子を長い期間のんびり愛でる機会は残念ながら無かった。ケイティ自身も、始めはまぁ良い子だな、程度の認識だったが、揶揄って初心な反応を楽しむようにまでなるとは想像してなかったに違いない。

十四章以降は心話で交流密度も加速するので、ケイティの昔話や探索者時代の出来事なども知る事になり、仲の良さも深まりそうだ。

なお、リアからは心話までやってズルいと不満が噴出し、運動面の活動全般はケイティとてかなりのレベルで行えるのだが、リアに譲る取引が成立している。ジョージに対しても、体が触れ合うような訓練や運動はリアが担当する事を認めさせた。何でもできる街エルフと言っても、護衛のプロであるジョージに比べれば劣るので、その差を埋める為の特別研修を受けてジョージを納得させたりもしてる。アキがそんなリアの見えない努力に気付くのはもう少し先になるだろう。


【ジョージ(護衛頭)】

アキの活動範囲に第三演習場が追加されたり、大勢が参加する竜神子達との懇親会や、研究組が総出で行った風洞実験、リーダー級を集めた洗礼の儀と、ジョージの携わる仕事は増える一方だ。彼の四人の部下の護衛人形達も、実際の警備を行う時以外は、ジョージと共に他機関との調整や、警備計画の検討を行う日々である。

また、リアから、アキの教育関連で一部を回せ、と捩じ込まれ、必要な技量を示せば認めると妥協案を示したところ、予想以上の速さでリアは条件をクリアして見せて、大いに驚いた。

イベント続きで、個人的な時間があまり取れなかったが、研究組にザッカリーが参加して、一旦、仕切り直しとなった事で、一息つけそうと喜んでいるところだ。


【ウォルコット(相談役&御者&整備係)】

あちこちに馬車を走らせつつ、交流窓口としても活動を手広く行い、公私共に充実した日々を送っている。自分が当事者になっていたら、サポートメンバー達の活動はきっとパンクしてたであろう事、そして当事者になっていたら、一歩退いた位置だからこそ全体を俯瞰できる利点を失っていただろう事から、今の立場に満足している。常に手を空けてくれているシャンタールと調整する事も多く、ケイティが心話に時間を割く分も、上手くフォローする事だろう。

ちなみに、部下のダニエルが「マコトくん」の依代への降臨に向けてあれこれ動いているが、状況を把握する程度で好きにやらせている。それは当然、その方が面白いからであり、降臨とそれに伴う騒動を今から楽しみにしているところだ。

アキの間近という特等席にいる観客、そんな地位を彼は今後も満喫していく事だろう。


【翁(子守妖精)】

樹木の精霊(ドライアド)探索チームの活躍を見聞きしたり、雲取様との高速飛行試験を行ったり、風洞実験に参加したり、竜神子との懇親会で妖精さんをアピールしたりと、こちらの世界研究家たる翁は、充実した日々を満喫している。また、常にアキの傍らにいることで、アキの視点から物事を見る、という点では誰よりもアキ視点を把握しているとも言えるだろう。妖精界では、飛行船の建造も恐ろしい勢いで進めており、そちらでもあれこれ首を突っ込んでいるようである。また、翁が乗って飛んで見せるハンググライダーは、ほんの少し上空、見上げる人々の目から良く見える近距離で、飛行する様子を見せられることもあって、多くの観客を集めて何度もその姿を披露している。「儂の人生、最良の時じゃ」など話して、人々を沸かせたりもしている。常にこちらの世界にいて、妖精らしさを見せる翁は、最高の宣伝マンとも言えそうだ。


【トラ吉さん(見守り)】

これまでと同様、アキが出向くところ、常に足元にはトラ吉さんの姿ありということで、アキは肩のあたりに妖精、足元に角猫と共にある、というイメージで語られることが常となってきた。また、わざわざリアが見える位置で、アキと仲良く遊ぶ姿を見せつけることで、ケイティが心話をしてズルい~などと不貞腐れてたリアに、スキンシップを増やせばよい、と気付かせる、という配慮も見せた。まだまだ彼に頼るシーンは多そうだ。


【マサト(財閥の家令、財閥双璧の一人)】

竜神子支援機構の初期スタッフの手配に奔走しながらも、彼が重視するポイントは、研究組の活動であり、次元門構築にあることはブレていない。裏で進めている「魔術的計算回路」の開発も、マコト文書が語るあちらの世界の研究にコンピュータが必要不可欠、大躍進の原動力となっていることを理解しているからだ。幸い、リア研究所が推進している、リアやアキの魔力研究の成果「二人の魔力を通した魔法陣は極めて強固であり周囲からの影響を受けない」ということが明らかになってきたので、それを応用することで、魔力干渉による物理現象の不安定さを排除して、こちらの世界初の計算機を創ることもできるだろう。妖精族の事をチート種族だのなんだの言ってるが、街エルフも大概である。

ザッカリーからの要請を受けて、事務作業に長けた魔導人形達を大量に確保、投入したが、堅実にミスなくこなせる単一技能人材を求めるよう、基準を改めたからだ。これまでは、最前線地域ということもあって、ある程度、自衛する能力も併せ持つ人材としてきたが、ロングヒルの危険性が低下したことを受けた方針転換だった。



◆魔導人形枠



【アイリーン(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で料理長)】

竜神子達の合宿では、様々な種族が集う状況でもあり、その食事には多くのノウハウが必要となった。鬼族の女衆とも協力しつつ、多彩な料理を大量に作るため、料理人達と研究を重ねる日々である。そんな中でも、アキの食事は全て自分で調理し、アキが出席する会合には、できるだけ参加するといったポリシーは健在だ。

竜向け料理を学ぶこともあって、ロングヒルを訪れる料理人も日々増えてきている。そのため、大使館の調理場も手狭になっており、増築することが決まった。ロングヒルが食の都と呼ばれる日も遠くないだろう。


【ベリル(女中三姉妹の一人、ケイティの部下でマコト文書主任)】

アキの参加する会合には、ベリルが書記として参加することが定番だ。裏方に徹するだけではなく、議事進行も少し手掛けるなど、仕事の幅も広がってきた。また、アキの語る微妙なニュアンスも的確に記し、足りない情報を引き出すなど、アキのサポート役として欠かせない地位を確立したと言えよう。研究組にザッカリー主導で、マネジメント技法を導入することもあって、暫し、小休止状態になる見通しとなり、ジョージと共に久しぶりに執筆活動ができそうと喜んでいる。


【シャンタール(女中三姉妹の一人、ケイティの部下で次席)】

ケイティが心話の為に手を取られてる中、シャンタールは他の女中人形達を管理を補助していながらも、常に手を空けた状態をキープしており、ウォルコットとあれこれ相談したり、画策したり、アキの服飾をあれこれ考えたりと、ケイティの次席としての地位を不動のモノとしている。今、彼女を悩ませているのは、雌竜達が渡してきた鱗だ。多彩な色合いの鱗をそれぞれに相応しい装身具に仕立てて、アキが竜神の巫女として振る舞う際に、その身を飾ることとなる為だ。アキ、竜の鱗の色合い、服装を考慮した造りとするため、細工師達と頭を悩ませる日々である。


【ダニエル(ウォルコットの助手)】

竜神子や、各地から集まったリーダー級の人々も、アキの思考の根幹にマコト文書があると知っているため、自然と、マコト文書について語る機会が増えることになり、マコト文書の神官達が大勢集まり、手分けをして講演会や勉強会をこなしている。財閥の支援も受けて、マコト文書抜粋版も本人用、保存用、布教用と各自に三冊ずつ渡す抜け目のなさだ。「マコトくん」の依代に対する祝福は、一人の神官の手に負えるモノではないと判断され、集団術式で実現する方針となった。魔導人形の神官が集団術式の一角を担うことは、魔導人形達にも伝えられ、衝撃を生むこととなった。


【護衛人形達(アキの護衛、ジョージの部下)】

アキの行くところ、ジョージが同行し、その傍らには、彼ら護衛人形達の姿がある。外に出ていない場合も、ジョージが持つ空間鞄内で何かあった時に備えてスタンバイしており、外に出た瞬間から、護衛行動に入るための特別な訓練も積んでいる。

ただ、そんな如何にも護衛といった仕事は彼らの活動の極一部に過ぎない。ジョージの項でも記したが、彼ら護衛人形がジョージの部下として、護衛計画の立案、関係者との調整など、多彩な作業を担っているのだ。鬼だ、竜だと護衛人形達でも如何ともし難い相手が多く、ボヤくこともあるが、それでも、様々な会合にアキが安心して参加できるのは、彼ら護衛チームの活躍があればこそなのだ。

ロングヒルの再開発計画では、ある程度人数を抑えつつ、文化、学問の両面から弧状列島全域を牽引していくよう、彼らも計画メンバーとして参加するほどで、今後もその重要性は変わることはないだろう。


【農民人形達(別邸所属、ウォルコットの部下)】

トラ吉さんがいつもの散歩コースを案内した際、多少、翁の補助はあったものの、問題なく歩くことができたのも、彼ら農民人形達が庭を手入れしていたからだ。彼らは街エルフの美意識に従って、一見すると自然に見えつつも、手入れされていて不快とならない、そんな配慮をしている。また、アキが通る部分以外に魔導具を配置するなど、護衛チームからの要請にも応えている。今はリアが担当する様々な運動、訓練に合わせて、庭にちょっとした変更を加えているところだ。


【ロゼッタ(ミアの秘書、財閥双璧の一人)】

アキに乞われて、ミアの事を語る機会を得て、これ幸いとそれはもう情感たっぷりに語ったが、多くを語りつつも、ミアの内面については推測できる程度に留めるなど、その内容はかなりの配慮を行っている。研究組の仕切り直しもあるので、その時間を利用して、アキがショートウッドの街を雲取様や翁と共に訪れる機会も設けられるだろう。ロゼッタはその機会を最大限利用しようと、関係者達に探りを入れるなど、準備に余念がない。ロングヒルとの間はレーザー通信網を使うしかない為、ロゼッタが通話回数を抑えつつも、広く深く無駄なく話を聞き、必要があればフォローもしている様子が垣間見えて、改めて感謝した者も多かった。重いと感じてるのも確かだが。


【タロー(小鬼人形の隊長の一人)】

小鬼族の文化、風習を学び、彼らとの交流の窓口となる、そんな役処にいつの間にかシフトしてきた。ロングヒルに滞在している小鬼族達も何かあれば、彼にまず相談してみよう、というくらいには、頼りにされるようになってきたようだ。ただ、研究組に参加している小鬼族の研究者達は、選り抜きの専門家というだけあって、その知性の高さと、小鬼族の一般から少しズレた感性を持つことにも気付いた。また、研究組の紅一点であるユスタとの話も、同性の小鬼人形の必要性を感じる今日この頃である。本国に女の小鬼人形の必要性を打診したところ、驚かれたものの、新時代を体現する存在となるとして、国家プロジェクトとして創られる事が決まった。


仮想敵部隊アグレッサーの小鬼人形達】

文官達との交流を通じて、彼らの小鬼族への理解も更に深化してきた。表層的な理解、真似事だけでなく、その考え方や文化にまで踏み込む姿勢には、小鬼族達も大いに刺激を受けたようだ。前線に出てくる、よく見かける小鬼達と違う文官達の視点は、これまでに得られなかったモノで、技術的に劣る小鬼族がなぜ、後追いの利点はあるとしても、他勢力の技術を速やかに吸収して自らのモノとしていくのか、その理由が見えてきたようだ。……ちなみに、誠実で人間味があり高い理解を示す小鬼人形達の姿は、日々、帝国領にも伝えられることになり、帝国の意識改革にも寄与していくことになる。


【仮想敵部隊の鬼人形さん】

小鬼人形達の人数に対して、鬼人形が一人だけ、というのはあまりにもバランスが悪く、増員を打診していたが、鬼族の女衆達が大々的に活動をしている様子が伝わり、女の鬼人形を創ることが決まった。ただ、当然だが、通常の魔導人形のパーツは殆ど使えないため、専用パーツで創ることになる。その為、創るのはいいが、何体創るのか、議論が紛糾している。


【大使館や別館の女中人形達】

人数を増やす量的拡大がそろそろ限界に達してきたため、一部業務は本国側で分担するといった工夫も始まった。また、竜神子支援機構の全国展開に伴い、その活動を支援する立場の魔導人形達も募集が始まり、新たな葛藤が始まった。このまま大使館や別邸でステップを踏んでいくか、殆ど常駐と化している第二演習場勤務にするか、連合領内の主要都市に飛んで、そこのメインスタッフとして働くか、といったように選択肢は多く、競争率もそれなりだ。


【館(本国)のマコト文書の司書達】

マコト文書についての問い合わせは増える一方で、その処理が追い付いていないのが実情だ。しかし、そうそう簡単にマコト文書を理解する司書が用意できる訳もない。そこで、財閥が推し進めている魔法式計算機の導入を見越して、蔵書のデータ化を見越した準備が始まった。こちらの世界で言うところの電子化であり、ここ半年で大幅に増えた竜関連の情報もセットで、高速検索の実現を図ろうとしている。それらが実現されれば、パンクしている状況も少しは改善していくことだろう。


【研究組専属の魔導人形達】

ザッカリーの要請によって、新たに配属されることになった事務作業に優れた魔導人形達。事務職枠であり、シャツにズボンといったラフな御揃いの制服を着ている。研究組の一人に対して二~三名が配属されている為、それなりの人数がやってくることになった。鬼族、小鬼族担当は、各種族がプロジェクト管理の技術を習得するまでの繋ぎとなる見込み。



◆家族枠



【ハヤト(アキの父、共和国議員)】

十二章の反動で、だいぶ登場シーンも増えた。心話を行うアキのフォローをしたり、近々の状況を纏めてアキと認識合わせをしたりもしてた。ただ、それでもザッカリーの評価としては、すれ違い多し。信頼関係はあるので、悪い間柄ではないけれど、親密かと言えば、悩ましいところ。

今回集まってきたリーダー級の人々の一部とは、共和国議員の一人として会合の場を設けたりと仕事はしており、大使のジョウほどではないにせよ、知る人も増えてきた。


【アヤ(アキの母、共和国議員)】

十二章の反動で、だいぶ登場シーンも増えた。心話を行うアキのフォローをしたり、近々の状況を纏めてアキと認識合わせをしたりもしてた。ただ、それでもザッカリーの評価としては、すれ違い多し。信頼関係はあるので、悪い間柄ではないけれど、親密かと言えば、悩ましいところ。

今回集まってきたリーダー級の人々の一部とは、共和国議員の一人として会合の場を設けたりと仕事はしており、大使のジョウほどではないにせよ、知る人も増えてきた。


【リア(アキの姉、研究組所属、リア研究所代表)】

心話のフォローをしたり、近況纏めに参加したり、アキと一緒に行う運動を増やしてスキンシップを図ったりと、両親に比べれば、アキとの接点は多くなってきている。ただ、スキンシップを図る作戦は、トラ吉さんが気付くように、目の前でアキと遊ぶシーンを見せてあげたりした結果なので、ちょっと好意が空回りしているところはある。一応、姉のロールモデルとしてはミアがいるが、当時のリアと今のアキでは精神状態がかなり違うので、参考にしにくいのだ。あと一人はロゼッタとなるが、感謝はしているものの、ロゼッタの振舞いもまた、重いと感じてきただけに悩ましい。

ちなみに、十三章ラストの研究方針選定時に参加していなかったのは、理由があってのこと。シャーリスと同じで、研究組のパトロンである財閥、その当主ミアの妹、アキの姉であり、リア研究所の代表でもあって、いくらリア本人が、一研究者の意見だ、と言ったとしても、影響力があり過ぎるからだ。

勿論、各自の研究、検討内容は適宜把握していて、今回の件もこれと決めるほどの差はなし、と判断したから。それよりも、浄化杭の試作品製造とか、小型召喚竜向けのフレームや機材の開発とか、アキ&リアの魔力特性に関する研究とか、リアでないとできないことも多いので、そちらを優先したのだ。

そんな忙しい最中でも、アキとの接点を増やす為、護衛資格の更新を行ったりと、努力も惜しまない。ジョージもそんなリアの頑張りを認めたので、十四章以降、アキと一緒に運動や訓練をするリアの姿を見かけることは増えるだろう。


【ミア(アキ、リアの姉、財閥当主、マコト文書研究第一人者)】

アキが接点のある人達に対して、ヒアリングを行ったことで、アキは少しだけ、それまでよりもミアのことを様々な角度から理解することができた。ただ、まぁ、マサトほどではないにせよ、長年の教育の成果か、アキの思考パターン自体、ミアにかなり似たところがあるので、必要なところ以外はほどほどにやればいい、それをやってたミア姉は凄い、素敵だ、なんて思ってたりして、ミアの株が落ちることはやはり無さそうだ。アキも気付いているように、ミアの胸の内の多くは隠されていて見えていない。あれこれ考えても正解には辿り着けない、誰も正解と判断はできない事、それとそこに向き合う事は、アキ自身が自分の心に向き合う事にも繋がるので、現時点で避けるのは仕方ないところだろう。



◆妖精枠



【シャーリス(妖精女王)】

召喚枠の半分は、竜族の小型召喚に使われており、召喚に参加できる人数が思ったより伸びていないことを悩ましく思っている。ただ、世界間通信が少しずつだが軌道に乗りつつあり、そのおかげで書籍を妖精界に持ち込めるようになった事で、状況は改善しつつある。財閥が作成している「妖精入門」を参考に「物質界入門」を作ったのも大きい。財閥所属の挿絵画家にも手を貸して貰い、翁の監修で妖精が好む構図や注目するポイントなども教えて貰ったことで、画家達も得るモノは大きかったようだ。

また、飛行船の建造を国家プロジェクトとして推進しており、これまでにない巨大な船体は、見学者も多くくるほど注目を浴びており、これもまた、大きな期待を寄せている。

周辺国の調査について、当初は姿を消して侵入することを考えていたが、現在は、飛行船を用いて高高度からの観測をする方向に切り替えてきている。国境付近まで出向いて高高度から定点観測するだけでも、街エルフから学んだ分析手法を用いれば、多くの事を知ることができる為だ。


【賢者】

翁の入れ知恵もあり、召喚術式の改良について、彼の弟子以外にもちらほら参加する者が増えてきた。召喚体について、連樹の社に行って話をするといった活動もしているが、竜族の竜眼のような便利な技を持つ訳ではないので、連樹の超知性を活かせてないのを歯痒く感じている。

風洞実験については、妖精界でも試せない竜との共同実験ということもあり、色々と知見を得ることができた。日々、召喚術式の改良を行っているが、地道な検証が続いている。

飛行船の開発については、あまり絡んでいない。これは彫刻家の領分であることと、製造関連技術にはあまり詳しくないというところも大きい。それでも時折、参加するようにしているのは、異なる領域に参加することは新たな閃きを得ることもあるから、と翁に誘われたからというのが大きい。

小型召喚竜と飛ぶ妖精を覆う障壁の術式は、彫刻家と共に新型の制御用魔導具を開発した。十四章ではそれを用いた再飛行試験を披露できるだろう。


【宰相】

物質界入門を大量に印刷して、財閥に倣ってキャンペーン作戦も行うなどした結果、物質界熱も制御できるレベルにまで落ち着かせることに成功した。プレリハーサルや研究組の方針決めにも参加する余裕も出てきた。同じ宰相職にあったザッカリーからは、マネジメント技法を学ぼうと考えているところだ。情報量は増えてきたが、それを理解するペースが追い付いてない問題はなかなか改善とは行かないが、幸い、物質界入門を取っ掛かりに、頭角を現してきた人材もちらほら見つかってきたので、そちらは気長に行くしかないと考えている。


【彫刻家】

リアやこちらの技術者達と共に、浄化術式の改良をしたり、浄化杭の試作に絡んだりと忙しいが、そんな中でも、風洞実験に参加したり、妖精界では飛行船建造に向けた各種試作機の作成など、手広く作業を行っている。彼の工房には腕の良い者も多いので、手分けをして製造は行えているようだ。

改良型浄化術式の方は、試せる場所や品がないか関係者に問い合わせているところ。ただ、帝国以外からは既に返答があり、都合の良い「呪われた場所、品」は見つからなかった。


【近衛】

部下達と共に、様々なイベントに参加して、妖精さんの姿を見せる活動を行っている。もしもに備えて軍人達が選抜されたが、アキが正体に気付いた、と翁経由で聞いてショックを受けた。個々の振舞いではなく、全体としての統制から見抜かれた、というのだから、そうそう簡単には直せない。しかし、可愛らしい妖精さんというイメージは守りたいとも考えており、試行錯誤の日々は続きそうだ。

実はシャーリスは、そもそも大人数の市民層の妖精さんが出向く、などという機会はそうそうあるものではないと気付いているが、近衛達の取り組みはそれはそれで面白いので、敢えて指摘はしていない。

一割召喚組の引率は未だに苦労が絶えないが、抑えるべきポイントは見えてきた。いずれは、彼自身でなく、部下に引率を任せるシーンも出てくるだろう。


【賢者の弟子達】

集団術式や、大勢で個々に術式を用いる、戦術として複数の低位術式を組み合わせる、といったことは経験したものの、戦術級術式を複数組み合わせて行った風洞実験は、妖精族であっても初めての経験だった。そして、自分達の実力には自信があった彼らも、大き過ぎる力は手に余ることがあると理解することになった。この経験は彼らの血肉となり、成長を促すことになるだろう。


【一割召喚された一般妖精達】

ロングヒルでの交流機会も増えてきて、単なる顔見世だけでなく、互いを良く知ろうという交流事業としての役割も徐々に増えてきた。妖精熱が高まっているだけあり、翁の著書や、翁監修の物質界入門を読んでいる熱心な者も多く、交流の質も徐々に高まってきている。しかし、まだまだこちらに来るのは初めて、という者の割合が高いため、歓迎するイベントを省略する訳にもいかないのが悩ましいところ。近衛の引率もノウハウが蓄積されてきたので、複数チームに分けて行動させるといった工夫も増えていくことだろう。



◆鬼族枠



【セイケン(調整組所属、鬼族大使館代表)】

語るタイミングがなかったので、彼の妻子との話は十四章冒頭で触れる予定。アキが絡む公式イベントがあるとなかなか帰れないことも判明した。ただ、アキが絡むイベントは先々まで予定が見えているので、帰国タイミングは計りやすい。今回の研究組の仕切り直しで、少し余裕が生まれたので、半年ぶりで短期だが帰国する流れとなる。なお、彼が帰国する主な理由は、連邦に最新情報を持ち帰り、国元にいる者達との質疑応答を行う為だ。それでも、自宅で家族との時間を設けられるのは嬉しいと感じているところだ。


【レイハ(セイケンの付き人)】

洗礼の儀では、鉄杖を用いた演武を行うなど、武人としての鬼族の姿を久しぶりに披露した。小さな妖精や小鬼達にも丁寧に対応する穏やかな姿を見かける事が多かった者達も、鋭い目線で、凄まじいキレの杖術を舞うような軽やかさで魅せた姿に、鬼族とは魔術と武術を併用する達人達と再認識したことだろう。実はレイハは杖術よりも、剣術の方が得意なのだが、剣では手加減できないので、使う機会をロングヒルで見ることはなさそうだ。


【トウセイ(研究組所属、変化の術開発者)】

竜族や妖精族、それに街エルフといった異文化の卓越した魔導師達との交流を通じて、彼も日々、刺激を受けて、あれこれ、変化の術の改良ができないか、と考えを巡らせている。他の術式も使えるが、やはり自分の本業は、変化の術と考えているからだ。今は賢者と共に、召喚術式に手を入れて異種族として召喚できるようにしようと動いている。風洞実験の際には体を張って、地に落ちた雲取様の球状障壁を受け止めようとする等、いざという時に動ける心の強さに好感を持った者も多かった。彼もまた、研究組の中で、自分の立ち位置を確立してきたと言えるだろう。


【レイゼン(鬼王)】

多くの事柄をロングヒルで片付けて帰国したのも束の間、セイケンから送られてくる報告書を読んで、次々に起こる変化に、内心、頭を痛めている。頼りになる鬼王のイメージを崩さないよう振る舞っているが、彼の妻達や、ライキやシセンと言った一部の者達には、洒落にならん、と焦る内情も吐露している。彼がこれほど危機意識を持つのも、起きる変化が鬼族の優位性を活かせない分野ばかりだからだ。風洞実験では存在感を示すことができたが、竜神子も樹木の精霊(ドライアド)関連対応も、どちらも手探り状態にある。小型召喚竜と妖精による探査計画には鬼族が絡む余地もない。しかし、王が右往左往する姿を見せても意味はない。武官に比べて立場の弱かった文官達でこれと思う者達をロングヒルに投入するなど、意識改革も含めて推し進めていく姿勢は今後も強めていくことだろう。

それと、連合と同様、連邦に対しても、ユリウス帝から、今年の成人の儀は、予め、襲う城塞都市を宣言し、そこに対して正面攻勢をかける、との通達が届いた。ユリウス帝の意図は理解したが、連邦は銃弾の雨で多くの手練れを失い、若い世代を重用するしかない状況であり、連合や帝国ほどこの問題に頭を悩ませることはなさそうだ。


【ライキ(武闘派の代表)】

アキから定期的に届く手紙と、それに合わせるように届く女衆(王妃達)からの手紙にあれこれ悩みつつも、律儀に返事を出しており、返す手紙も紙の質や香りにも気を遣うあたり、育ちの良さが伺える。アキもそうだが、何故かライキだけでは完結せず、他の者達と話をしないと返事を書けないような問いかけも多く、それらを書くために動く彼女の姿を見て、家庭的な面を再認識した男衆も増えたりしている。武闘派の面々も、連合で出回っている雑誌の表紙を飾る、竜や妖精と共に空を飛ぶアキの姿を見て、度肝を抜かれた。百の報告を聞くより、一枚の写真が雄弁に語るといったところか。

おかげで、以前ほど強硬的な意見も減ってきたのだが、今度は自分達が強いという自信が揺らぐ空気が出てきて、別の意味で梃入れが必要になりそうだ。


【シセン(穏健派の代表)】

武闘派の強硬姿勢が減ってきたこともあり、文官を送り出し、鬼族からも竜神子を出し、新たな時代の流れにも食らいついていこうと、仲間達に発破をかけることになった。ただ、文官に傾いた流れも、また変わるとも限らず、鬼族の武は他に対して優位である事に変わりはないので、自身の力にまだ全幅の信頼を持てない若手に対して、教導活動を行おうと考えているところだ。


【鬼族の女衆(王妃達)】

威勢がいい元気なオバちゃん三人衆として、竜神子達とも親密な仲となることができた。風洞実験の場にも出向くなど、せっかくロングヒルにいるのだから、ということで、参加できるイベントは総なめしていく腹積もりのようである。彼女達の報告は、セイケンのそれとは別の意味で非常に価値がある為、いつ帰国させるか、あるいは滞在を延長するかなどと議論を呼ぶ事となった。


【セイケンの妻、娘】

ロングヒルでセイケンと短い再会を楽しんだものの、帰国の際には娘が大泣きするなど、セイケン不在の間、どう過ごすか悩ましい状況となった。ただ、上層部もその点は問題と認識しており、報告を兼ねて週一回程度のペースでセイケンは帰国できる見込み。上層部が問題と考えるのは、アキを含む他種族への印象悪化を避けたいと考える為だ。いくら長命種と言っても子供が幼い頃には親は常に付き添うものである。成人までは子供は集団で育てる文化を持つ小鬼族だけは理解を示してくれるだろうが、親子を引き離さないと国のまつりごとに支障がでる、などと誤解されても困る。また、アキとセイケンの関係も、お互い大人であれば、ある種、割り切った間柄ともなるが、アキとは年の離れた友人とも言える親しい関係を築いており、それもまた好ましいと判断している事もある。そんな経緯もあるので、あまり深刻な問題にはならない……筈。


【鬼族のロングヒル大使館メンバー】

ユリウス帝やその部下達も帰国したことで、やっと一息つくことができた。文官が増員されようと、帝国の最精鋭が手を緩めずに交流に専念してくれば、やはりかなり大変だったようだ。風洞実験では集団魔術を行ったり、竜神子達を大使館で合宿させたりと、少人数ではあるものの、かなりの成果を出せたと言えるだろう。実際はストレス源にもなるが、女衆の助力によるところが大きい。

そして、彼らは女中に化けて精を出す女衆(王妃達)の姿を間近で見て、そんなのと夫婦となっている鬼王レイゼンに対して、尊敬の念が増えたそうだ。


【鬼族の職人達】

女衆からの手直しも順次こなして、竜神子達の合宿を通して改善箇所を見つけて対応していったことで、鬼族大使館は、他種族を迎えて様々な催しを行える複合施設へと進化を遂げた。彼らの技はドワーフとて認めるレベルであり、ロングヒルにいる多くの職人達が足繁く夕方以降の宴会に通っている。

今後は、ロングヒル全体の都市計画に、鬼族の視点を取り入れる活動に重点を移していくことになり、彼らのロングヒル暮らしも当面続きそうだ。



◆ドワーフ族枠



【ヨーゲル(調整組所属、ロングヒルのドワーフ技術団代表】

今回は、小型召喚竜に取り付けるフレームや機器、風洞実験の際の各種計測、洗礼の儀に向けた簡易避難所シェルター設置など、ドワーフ達の活躍するシーンは多かった。それに、表には出ていないが、浄化杭の試作、発信器ビーコンや受信器の規格選定など、多くのプロジェクトが今も推進中だ。

研究組が今後の方針決めで揉めていた件は、彼も把握していたが、さほど差がない話だからどれでもいいだろ、と考えて、抱えている作業の指揮の方を優先した。

ロングヒルからは、今後、ロングヒルに常駐する他種族の人数はある程度で抑える方針が示されており、抱えている仕事をどこまでロングヒルにいるメンバーで行い、残りを本国側で対応するか、といった調整もしなければならず、彼の多忙は終わりそうにない。


【常駐するドワーフ技術者達(アキの使う馬車の開発者達)】

試験車両も併用して行われた振動軽減装置ダンパーの改良効果は大きく、急遽、整備された第三演習場への道路は、ベイハーバー・ロングヒル間の街エルフが整備した道路ほど、高規格で敷設されたものではなかったが、ウォルコットも、乗っていたケイティ、ジョージ、それにアキも特に乗り心地に文句を言うことはなかった。運用結果を聞き、彼らは祝杯を挙げたそうだ。

今後、ロングヒル領内は、鬼族が出歩くことも前提に、道路網の見直しが行われる。そのため、アキの使う馬車もそれを前提に改良が今後も加えられていくことだろう。


【施設建設で派遣されてきた百人のドワーフ技術者達】

洗礼の儀で、リーダー級の人々が逃げ込んだ避難所シェルターだが、これはドワーフ技師達が用意した設置式の簡易なもの。簡易なので、物理的な防御力は殆ど期待できないが、空間展開の障壁よりも、竜の圧を防ぐ効果を発揮していた。ただ、防御効果は街エルフが提供した大型宝珠に蓄えられている魔力を消費することで実現する為、アキがのんびりお話しようか、と言い出した時、技術者達も別の意味で悲鳴を上げていた。宝珠に蓄えられた魔力が減っていくのは、紙幣の束を燃やしてるようなモノだったのだから無理もない。

そんな突発的な作業にも対応しながらも、彼らの施設改良もまだ続くことになる。それは妖精族にドワーフの技術を見せるだけでなく、小鬼族が「死の大地」に大量に蒔く予定の草木と初期の育成に必要な養分を含んだ土をセットにしたケースを大量生産するといった技術協力にも使われることになったからだ。その為、彼らのロングヒル暮らしはまだまだ続く事になるだろう。(十三章で触れるタイミングがなかったので、十四章で語ります)


【ドワーフの職人さん達】

小鬼族の大使館建設もハイペースで進み、組み立て工法が導入されている小鬼族の技法にもまた、彼らは色々と得るモノがあったようだ。森エルフ達も期間限定の逗留だった見通しが変わり、他種族と同様、長期生活を前提とした住まいの建設を始め、ドワーフ達もまた、今ほどの規模ではないが、ある程度の人数が住める住居の建設を決めた。ただ、彼ら好みの岩山はない中で、どう理想に近づけるか議論も白熱してるようだ。



◆森エルフ族枠



【イズレンディア(調整組所属、ロングヒルの森エルフ護衛団代表)】

多くのシーンで、農林業専門家として、樹木の精霊(ドライアド)達と交流する精霊使いとして、一矢一殺の射手としも、森エルフの人気は高まる一方だが、彼らの低いコミュニケーション能力には、イズレンディアも頭を悩ませている。長命種たる森エルフ同士であれば、阿吽の呼吸で通じる話も、他種族となれば、きちんと言葉にしなければ伝わらない。そのため、様々な事例を紹介したり、他種族の協力も仰いだりして、仲間達にコミュニケーションの取り方に関する勉強会を何度も開いたりしている。

幸い、専門分野であれば、通じる話も多く、相手も専門家ということもあって、コミュニケーションに難儀するということは起きてないのは幸いだった。

それに森エルフの料理人達もそうだが、互いの郷土料理を持ち寄り、共に食べて楽しめば、少しは口も軽くなるというモノ。無愛想な森エルフ、というイメージも少しずつ変わっていく……のかもしれない。


【森エルフの職人さん達】

農業関係者、料理人達を迎える滞在施設の仮設置はできたが、それとは別に、ロングヒルの今後の都市計画を睨んで、常設滞在施設を作る方向で検討を始めた。彼らの眼鏡に適う森はなく、森も含めて用意とはいかないので、限られた敷地内でどう理想的な住居を作るか、あれこれ考えているところだ。


【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】

ロングヒルに天空竜が来るのが当たり前となり、樹木の精霊(ドライアド)探索チームに精霊使いも引き抜かれ、常に第二演習場で護衛を行うのも負担が大きくなってきた。その為、ジョージとも相談し、過剰とも言える体制を見直す方針とした。具体的には精霊使いとしての力量に優れているが、射手としての腕はそこそこといった人員との交代だ。何かを射落とすシーンは少ないが、天空竜のうっかりで空に吹き飛ばされる事例は今後ともありうる、と判断した為である。呼ばれた新メンバー達も、空に飛ばされること前提かぁ、と少し気が滅入ったとか。


【森エルフ&ドワーフの心話研究者達】

ケイティとアキによる心話実験も、用意していた安全機構も動作し、いずれは雲取様との心話もできそうと胸を躍らせている。ただ、彼らも気付いているが、互いの距離感の調整をアキの側で行ったから成功した訳で、心話を行うどちらも、距離感の調整をするほど、心話に長けてない場合、それを心話魔法陣側で何とかするしかない問題が残っている。ケイティはアキとの心話ができればいいので、自分が満足するレベルでの機能改良ができれば熱意は失せていく筈。それでも心話をしたい、という熱意を維持できるか、そこが問われてくるところだろう。



◆天空竜枠



【雲取様(森エルフ、ドワーフを庇護する縄張り持ちの若竜)】

小型召喚で翁と共に飛んだり、風洞実験に参加したりと参加を求められるシーンも増えてきた。そんな中でも、小型召喚を利用して、ロングヒルにやってきている森エルフ達や、ドワーフ達と話をする機会を設けるといった配慮も行った。住むことを認めたものの、彼らの文化、生き方などもあまり詳しくは知らなかったので、聞き役に徹したものの、彼らの話を興味深く聞くことができた。この秋には、森エルフ、ドワーフそれぞれからも祝いの料理を供される、と聞いてそれもまた嬉しい申し出だった。

風洞実験の結果を受けて、翁や観測機器を覆う障壁の自動調整用魔導具の試作品もできたので、十四章ではそちらも試せそうだ。


【雲取様に想いを寄せる雌竜達】

樹木の精霊(ドライアド)探索チームへの加護は、話し合いに参加していた雲取様が、他種族が色々と便宜を図る中、竜族も何かしたいと思いついた話だったこともあり、当然、快諾した。また、その際に、探索者達とも話をする機会があり、第二演習場で話をしていた研究組や調整組の面々とは違っていることにも気付くことができた。連樹の社に通ったり、風洞実験に参加したり、研究組の活動に参加してたり、文字を学んだりと、それぞれが盛り沢山の活動をしてきた。彼女達のそうした地道な活動は、娯楽に飢えた竜族達の間で噂となって駆け巡っており、ロングヒルまで出向けない竜の中にも、彼女達の活動に興味を持つ者達もちらほらと出てきた。文字を学ぶ活動は、理解する竜が増えないと効果が薄いので、良い流れが生まれてきたと言えよう。


【福慈様(他より頭一つ抜けた実力を持つ老竜)】

アキとの心話もお休みだったこともあり、秋に向けた、全国の若竜達への声掛けと参加する竜への事前教育について考えているところ。まぁ教育と言っても、人との交流をしたことがある成竜が、その経験や注意点を語る、といった程度なので、あまり前に話しても記憶が薄れるので、夏に話せばいいか、と考えているようだ。


【白岩様(雲取様の近所に縄張りを持つ成竜)】

洗礼の儀では、上空から見た時点の一割程度だが、降りた時点で残っていた者達の勇気に彼は大いに喜んだ。彼がロングヒルによく通っていることは竜達の間でも話題となっており、竜神子達の教育も済んで帰国が始まることからも、その辺りについて、十四章で話が舞い込んでくるに違いない。

それと、他の竜には内緒で、現状より一層、圧を抑えて他種族への負担を減らす方法についてもあれこれ試行錯誤している。やはりそうそうすぐには成果は出ないが、そこは長命種。暇な時間はたっぷりあるので、地道な研究も良い趣味と楽しそうだ。


【黒姫様(雲取様の姉)】

アキの心話が解禁され、一通り話をした竜達の反応からしても問題なさそうと判断したので、十四章では、彼女がロングヒルの地に降り立つことになるだろう。雌竜達より前に連れてきた街エルフの娘アキに、彼女が何を思うのか。さほど揉めることにはならないだろうが、それはあくまでも竜の感覚なので要注意だ。


【アキと心話をしている竜達】

大きなイベントの合間に、少しずつだが遠隔地にいる竜達との心話も始まった。始まってしまえば、元々、娯楽に飢えている成竜だけあって、話も盛り上がることになり、雲取様と共に空を飛んだ記憶や、空から見た世界樹の様子、風洞実験に、連樹&世界樹による語り掛けなど話題にも事欠かず、好印象も与えられたようである。竜神子についても聞かれ、どんな取り組みを誰といつから始めるといった具合に全体イメージを話したりと、アキの語る未来像に興味を示す成竜も増えてきて、アキは手応えを感じたと喜んでいる。その辺りの様子は十四章冒頭で語られることだろう。



◆人類連合枠



【ニコラス(人類連合の大統領)】

三大勢力代表による春の会合も無事終わったものの、秋までには竜神子達が各地で、若竜と交流を開始する必要があり、その活動を支える者達の選別や教育の推進が急務となってきた。また、各地から集めたリーダー級の人々への洗礼の儀は終わったものの、ロングヒルに来るのが難しい人々を対象として、各地で同様の儀式を行う準備もしなければならない。風洞実験の成果を元に改良を行った結果、小型召喚竜による観測飛行も試せる目処がたったと連絡も届いた。「死の大地」の呪いに動きがあったという情報もある。連合内での彼の発言力は日に日に強化されては行っているが、それでもやるべきこと、気に掛けることは多い。まだまだ気を抜くことはできそうにない。

それと、ユリウス帝から、今年の成人の儀は、予め、襲う城塞都市を宣言し、そこに対して正面攻勢をかける、との通達を受けて、その扱いに頭を悩ましている。例年通り、各地で襲ってくる可能性も排除できず、さりとて、正面攻勢をかけると宣言された都市の護りを厚くしない訳にもいかず。しかも、ユリウス帝の目指す意図も理解しており、連合内でも、死地を求める者達、平穏な世では生きられない者達を、反発されない形で減らしていく必要もあるからだ。

まつりごとの業の深さを認識させられる日々が続くことだろう。


【トレバー(南西端の国ディアーランドのエージェント)】

本国の指示で、洗礼の儀に参加させられた苦労人。ただ、そうして顔を売っていくスタイルのおかげで、国力は小さいものの、ロングヒル内での影響力は日々、増してきている。大統領と彼が人事権を持つ中小国家群、それと二大国による政治力学の綱引きの行方は、ディアーランドのような小国が翻弄されるのは避けられない。だからこそ、先手を打つことで自らに有利となる流れを生み出そうとしている。幸い、二大国の一つ、ラージヒルの動きが鈍く後手に回っているので、まだ暫くはイニシアチブを握ることができそうだ。


【二大国の一つラージヒルのエージェント)】

連合内の二大国の一つなのだが、エージェント派遣が大国に比べて大きく遅れた。地理的にロングヒルへの距離がテイルペーストより遠いということもあるが、前線から離れた地ということもあり、危機意識が薄く、上層部が状況分析に時間をかけ過ぎた、というのが実態である。そして、遅まきながら派遣されてきたエージェントも、自分で動くタイプではなく、国内の派閥力学の関係で選ばれた、そんな人物だった。一応、テイルペーストと同様、自前の帆船を建造していくことを決定するに至る情報を本国に送るなど、本国が満足する程度の仕事はしているのだが、その行動パターンからして、アキとの接点は当面、生まれそうにない。


【ナタリー(二大国の一つテイルペーストのエージェント)】

彼女は優秀ではあるものの、洗礼の儀に参加するのは耐性的に難しいと判断され、不参加となった。樹木の精霊(ドライアド)探索チームが戻ってきたり、新しい交渉チームの結成の流れを追ったり、竜神子達の教育や、洗礼の儀の後の参加者達との交流といった部分で活発に行動することとなった。ただ、アキとの接点はなし。


【エリー(ロングヒルの王女)】

財閥関係者との話をする機会も増えて、やっと、彼らが「ミア至上主義」であることを理解したようだ。アキと思いの方向性は同じだが、それぞれが別に考えて動く、という面倒臭さだ。それでも、洗礼の儀のプレリハーサルで皆に見せたように、エリーは小国の姫という視点だけでなく、連合や、弧状列島全域、更に海外の国々まで含めて考えられる人材であることを示し、関係者達にも存在感を強く印象付けた。また、師匠と共にアキの姉弟子として、今後を見据えてアキのフォローをするなど、その役割は今後も重みを増していくことだろう。


【ヘンリー(ロングヒルの王様)】

二人の王子がアキから聞いた、ロングヒルの今後の都市計画、立ち位置の話は王に衝撃を与えた。これまで最前線の武人の国として連合の護りとなってきた自負はある。しかし、そこから文化と交流の地として転身していく等と言うことが可能なのだろうか……。多種族、特に竜族の圧に対して、ロングヒルの民に耐性があるというのは朗報だが、無骨と言われ、狂気を身に宿すと呼ばれる気質もある。だが、無理と言えるほどの根拠もなく、指示された未来像はあまりに魅力的だった。その為、都市計画の検討に他種族を巻き込みながら、方向性を探っていく事になるだろう。


【ロングヒルの御妃様】

二人の王子とアキの交流も無事終わり、胸を撫で下ろした。直接話をしたヘンリー王やエリーの話も聞き、アキのどこに注意を向けるべきか、長老などからも助言を得た。ただ、それを伝えたとしても、最後は二人の王子をどこまで信じられるか、そこに掛かっていた。結果としては成功したが、影響を受け過ぎてアキ寄りに大きく偏る懸念もあった。まだ子供であり、ミアのことを何より第一とするアキと、ロングヒルの民を第一とする王族では、道を違える可能性は常に付き纏うからだ。

ただ、アキが示した次世代の三人の役割分担、そのバランスについては、面白い見方と感じていた。そこで、自身でも見極めを行うことにした。十四章ではそんな彼女との交流も見られるだろう。


【エドワード、アンディ(ロングヒルの王子様達)】

アキとの交流も無事終わったが、やはり二人にとって、アキの語る言葉、未来像はインパクトが大きかった。ロングヒルを中心に周辺国を理解していた状況から、弧状列島全域に視点を移して、連合、連邦、帝国という勢力が手を取り合う中でロングヒルの立ち位置を模索する状況に視点を変えてみたら、というのだから。それに第一王子エドワードが王位を継ぐのが一番治まりがいい、とアキが明言したことも大きかった。王国内ではアンディやエリーを推す貴族や市民も多く、エドワードを支援する声は半分に届かない状況だったのだから。勿論、それで行こうと即決できる訳ではなく、周囲の者達の理解も得る必要があるが、アンディは自らの役割の為には王位がないほうが得策、という視点は面白いと感じていた。エドワードもエリーの最近の立ち位置を見ると、国政と二足の草鞋とはいかないだろうとは感じている。そして、二人とも余計なものを取っ払った素のアキに目を向けることもできた。これは大きな収穫だったと言えるだろう。


【ザッカリー(研究組所属、元ロングヒル国宰相)】

後任に席を譲り、研究組へと移籍を行った彼だが、それは半ば、確信とも思える義務感に後押しされた面が大きかった。ソフィアは稀有な実力を持つ魔導師であるのは万人が認めるところだが、趣味を先行し、博打的な計画も、巧みな話術と情報提示でもぎ取ってきた。功罪で言えば、功の方が多かったと言えるが、それは結果論とも感じている。そんなソフィアがロングヒルという枠組みを超えて、財閥や三大勢力も巻き込んだ研究を始めるなど、とてもじゃないが放置などできない。……そんな苦労性が染みついてしまった老紳士だが、彼もまたロングヒルの民であり、圧がないとはいえ、竜や妖精達を前にしても一歩も退かない強さを示した。十四章以降、研究組の活動には、彼の苦言を呈する姿があり続けるだろう。



◆小鬼帝国枠



【ユリウス(小鬼帝国皇帝)】

帰国した彼は、さっそく、モデル都市候補地の選定を始めた。既存の都市を改良するか、ゼロから都市を作るか、といったレベルで全国的に検討をしている。大規模な工事は鬼族頼み、技術支援は街エルフとドワーフ達頼み、樹木については森エルフ頼み、と何よりも実現時期の前倒しを重視しており、そこに住む人々の募集にも着手した。各地の王達を集めて、衛生・医療環境の改善により、成人までに亡くなる民を激減させる見込みと、その為の財源確保も行える旨を伝え、意識の切替を求めた。

モデル都市で十年間、生まれてから成人するまで、見直した衛生・医療環境でどこまで小鬼族が健やかに成長できるか見極めた暁には、全国規模で同様の見直しを水平展開していき、小鬼族の生き方そのものにも、大きな方針転換を図るという壮大な計画である。


これまでなら、夢物語、予算がない等と言われるのがオチで、いくら絶大な権力を持つに至った皇帝であっても、こんな方針転換など打ち出せる筈もなかった。だが、街エルフや連合、連邦からすれば、大した支出でなくとも、帝国からすれば、望外の支援金、物資、人員、技術を得られる見通しが立った。財閥に至っては、前渡しとして、モデル都市の整備に必要となる様々な物資、技術、知識等の情報を提供してきた。こうした現物の説得力はやはり大きかった。


また、昨年は停戦協定の関係で成人の儀を控えざるを得なかったため、戦地の選定と人員の選別も指示した。連合、連邦では樹木の精霊(ドライアド)の探索と交流も開始されることから、今年は、事前に標的となる城塞都市を宣言し、そこに対する正面攻勢を行うという異例尽くしの方針だ。死ね、というに等しいこの方針には各地で反発も生まれることだろう。


だが、ユリウス帝が行おうとしているのは、日本で言えば、戦国時代、群雄割拠していて十分な国力を持つ国々を、外征で戦力・財政的に疲弊させて継戦能力を削ぎ落してから、戦争を禁じて太平の世へとシフトするのではなく、死に場所を求めるような人々を死地に送ってガス抜きしつつ、各国の努力だけで荒々しい気風を抑えて、平和の世へと軟着陸しよう、という難事だ。

難しい舵取りは今後も続いていくことだろう。


【ルキウス(護衛隊長)】

皇帝が、モデル都市の建設、衛生・医療環境見直しの長期計画策定、成人の儀に対する強引な方針策定を表明したことで、帝国国内は俄かに不穏な空気が蔓延してきた。財閥の技術支援を受けた宣伝戦略プロパガンダにより、新たな未来への希望と、不平・不満を皇帝へと向ける方向性は、意図した効果を発揮しつつある。今後は毎年のようにモデル都市から衛生・医療体制の見直しにより新生児の死亡率が減少していく報が伝えられ、多くを生んで、多くが死んで、生き残った者が次世代を担う、という小鬼族の文化・伝統にも楔を打ち込んでいくことだろう。そして、その流れについていけず、暴発する輩も多く出てくるのは間違いない。皇帝軍や、親衛隊は皇帝の目指す方向と、新国家における帝国の民の位置付け、世界観のシフトについて徹底した教育が行われ、理解できない、共感できない、興味を持てない者達を敢えて、似た傾向を持つ王達の近場に配置転換し始めるなどと言う施策も始めた。

ルキウスやその部下達の暗躍は今後も重みを増していくだろう。


【速記係の人達=ユリウス帝の幕僚達】

帰国後、多くの施策を実行に移しつつ、足りない財力、資材、情報、知識を貪欲に他勢力から得ていく彼らの手腕は卓越していた。得られる物も自分達で使えるよう、維持できるよう手を加え、或いはそうできるようはじめから調整していることで、支援が無くなった瞬間、破綻するような話にも繋がらない。そんな彼らも、各地の王達を集めて、衛生・医療環境の見直し、成人の儀の方針変更と、ユリウス帝が彼らを前にして「連合や連邦と手を取り合うことを良しと思わない者もいるだろう。成人の儀で天命を得てこそ価値があると思いたい者もいるだろう。余の方針に従えぬ者は国に戻り戦の支度をするがいい。支度の邪魔はせぬ」と宣言した際には、息が止まる思いだった。

幸い、その場で離反を口にした王はおらず、諸王は全てユリウス帝の方針に従う意思を示した。

火種の無いところに火を着ける真似まではしないが、いつどこで火を噴くやもしれない状況での難しい政策運用が求められることだろう。


【ガイウス(研究組所属、小鬼チーム代表)】

帝国との通信網も整備が急ピッチで進み、ロングヒルでの出来事もそれまでよりも迅速に本国に報告できるようになった。また、研究組の活動も一旦、仕切り直しとなるなど、忙しかった彼も一息付けそうと安堵していた。ただ、本国では、ユリウス帝が諸王を集めて、衛生・医療体制の見直しや、成人の儀の見直しと、反乱も止めぬ、と宣言するなど、政治的には激動の時を迎えている。今後も気の抜けない日々は続いていくことだろう。


【ユスタ(小鬼研究チームの紅一点)】

本業は研究、副業として竜神子という目立つ立場となった彼女は、アキの身近にいる利点を活かし、帝国領に戻っていく小鬼の竜神子達の窓口としての役割も担っていくことになるだろう。また、アキが頻繁に話をしている関係で、話しやすい小鬼族というイメージも増し、他種族と話をする機会も増えてきた。ガイウスも、そんな彼女の立場を理解し、彼女を支える助手を手配したりもしてる。竜のいる場にも気軽に連れていける小鬼研究者という便利な彼女は、今後も活躍していくことだろう。


【小鬼の研究者達(小鬼研究チーム所属)】

様々な研究が打ち出され、彼らも主に理論魔法学の面から支えるシーンが増えてきた。ただし、ユリウス帝が「全ては次元門研究へと繋がると心得よ」と厳命したこともあり、彼らは常にそれを念頭に置いている。そんな彼らの発言、姿勢にアキは好印象を持ち、それが地味に小鬼族への風当たりを弱める流れも生み出した。ただ、今年は成人の儀が行われることも連絡があり、片手で相手を殴りつつ、片手で手を握る、そんな危うい立場に置かれる事もあって、今後は振舞いにも気を付ける日々となるだろう。



◆街エルフ枠



【ジョウ(ロングヒル常駐大使)】

最前線の防衛都市から、弧状列島全域の人々が集う文化の発信拠点へ。言うのは簡単だが、多種族が集えば問題もまた多し。以前から大使館領を構えている彼の元には、新たに大使館を構えた連合、連邦からもあれこれ相談が持ち込まれ、対応に追われる日々だ。また、ユリウス帝から、今年の成人の儀では、襲う城塞都市を予め宣言するとの話があった、とも情報を得ており、ロングヒルは襲撃対象から外されるであろうことに、複雑な思いを抱いてもいる。


【街エルフの長老達】

アキが竜、妖精と共に共和国の港町ショートウッドに降り立ったことで、激動の時代を迎えた事を皆が理解し、故に国全体が俄かに活気付き、上手く統制しようとあれこれ手を焼いている。連合各地に出向いていた探索者からの報告も入り、今後、連合領内での樹木の精霊(ドライアド)との交流、対応を睨んで、新たな商売チャンスと見て動き始めた者達も多い。加熱し過ぎず、疲弊し過ぎず、熱気を持続していくことこそが彼らの目下の目標だ。

ユリウス帝が打ち出した、今年の成人の儀の方針については、長命種にはない悩みを抱える彼の苦悩も理解できる為、他国の事、異国の事、他人事などと捉えることなく、自国ならどうするか、そんな視点で彼らも考え始めた。弧状列島が統一されれば、帝国の問題は、国内問題となるのだ。そして、帝国内で何世代かかけて変化をしても、長命種たる街エルフからすれば、子供が大人になるまでの時間よりずっと短い、そんな短期の変化となる。他文化を分析、理解していく為の機関設立にも繋がっていく流れとなるだろう。


【ファウスト(船団の提督、探索者支援機構の代表)】

本国に残り、海外に出て行ってる仲間を羨ましく思うあまり、熱心にロングヒルで起こる変化を発信し続けていた彼だったが、思った以上に派遣されている船団に騒動を生むことになって、ちょっとだけ反省した。実際、船団の提督をしつつ、探索者支援機構の代表も兼ねる、というのは忙しいので、誰か手を挙げる者が出るようにと、探索者支援機構の活動や面白さを伝える戦略に切り替えたのだ。やはり彼も海の男、やりがいがあっても、やはり海を越えて未知へと向かう事に魅力を感じるようだ。

とはいえ、そんな彼の思いとは裏腹に、船団が許される通信枠一杯まで、あれこれ情報を寄越せ、と連絡が届く状況であり、その対応に暫く追われることになるだろう。自業自得である。


【船団の皆さん】

次の出航に備えていた彼らだったが、新たに「死の大地」の監視艦隊の整備が行われることになり、手練れの水兵人形達をある程度、開放せざるを得なくなった。その為、新たに配属された新兵達を訓練する必要に迫られることになった。また、探索者達も国内の樹木の精霊(ドライアド)探索向けにある程度、回すことになって、やはり補充されてきた新人達の教育に追われている。その為、出航計画の見直しも行われることになり、このまま海外に行くか、国内の監視艦隊に行くか、これを機に教育方面に転職するか、といったように、予想以上に騒然としている状況だ。

海外に出ている船団間での綱引きも激しい。どの船団も早めに帰ってくるとローテーションが崩れてしまう。だからといって、権限の範囲内で戻ると言われれば、そうそう否とも言えないからだ。船団の提督達も部下達の統制に手を焼く日々が続くことだろう。



◆その他



【ソフィア(アキの師匠、研究組所属)】

弟子も金星続きなら、自分とてやったろうではないか、と研究組全部を巻き込もうとした矢先、天敵であるロングヒルの元宰相ザッカリーが研究組に参加することが決まり、出鼻を挫かれた。幸い、アキも、心話も順調で、リアやトラ吉との触れ合いも増えたおかげでだいぶマシになった。

手詰まり感だけは何としても避けなければならない。その中で、どれだけ自身の望む道を突き進めるか。それが彼女の今後の課題だ。また、面倒臭いマネジメント系資料の用意も、事務作業に強い魔導人形達がきたおかげで、以前よりは苦労せずに済みそうだ。


【街エルフの人形遣い達(大使館領勤務)】

冬の間に解消されたメンテ待ちの人形達の行列も、事務担当の魔導人形達が追加動員された事で暗雲が垂れ込めてきた。戦闘による損傷とは違い、長時間稼働することによる部品の損耗がメインなので、すぐにどうこうするものではないが、やはり不満が蓄積されていくのは間違いない。

大使館領内の人形遣い達の工房もこれ以上は増やせず、ロングヒルの都市計画でも、人口は抑えていくことが打ち出されていることから、簡単なメンテは大使館の工房で、それ以上は共和国本国の工房群で対応する、といったように変わっていくだろう。共和国に住む多くの者達が現地の生の声を聴きたがっている状況でもあるのでちょうどいい、と上層部は考えているようだ。


【連樹の神様】

連樹の社も拡張し、通常サイズの召喚竜も招けるようになった。頻繁にくる小型召喚竜達との交流も増えて、なかなか忙しい。蓄積していた魔力も、この前の呼びかけで大きく減ずることにもなった。いくら連結することで発揮される超知性と言っても、自然と共に生きる樹木と、動物のソレは異なり、更に同じ事の繰り返しですらない人々との交流は、連樹の神とて負担は大きいものがあるだろう。今は初期段階故にあれこれ配慮せざるを得ないが、いずれは植物の生き方に合わせたペースダウンも求められることだろう。


【ヴィオ(連樹の巫女)】

連樹の民の中では、外の激動に理解ある彼女は、頻繁にやってくる竜や妖精や鬼、小鬼達との対応にも頻繁に駆り出されて大忙しだ。一応、神官達にも対応させてはいるが、急な変化を良しとせず、連樹と共に歩む暮らしを良しとしている彼らの振舞いには、頭が痛くなる事も多い。アキが示した鳥居前町が整備されてくれば、流れは少しはマシになりそうだが、忙しい日々に連樹の神が少し不満を持たれているようでもあり、どう調整していくか悩ましいところだ。


【連樹の神官達】

連樹の神はその存在感を増し、社に訪れる他種族達も、敬意を持って振る舞っている事から、表向きは問題とはなっていない。連樹の神と共に生きる民の暮らしもそう変わるものではない。ただ、外に出した若者達からの報告には、不安を募らせる日々が続いている。弧状列島全域を牽引していく文化発信地となるであろうロングヒルに対して、連樹の神と共にあり昨日と変わらぬ今日、今日と変わらぬ明日と生きていくと思っていた連樹の民の暮らしは、余りに違い過ぎるからだ。

鳥居前町がある程度の規模となれば、そこと共にあることで、連樹の民の暮らしも大きく上向くことにはなるだろう。ただ、それでも、若者達が連樹の森に留まることを選んでくれるか、と問われれば、不安なく選ぶ、と言えそうにない。苦悩は当面尽きそうにない。


【連樹の民の若者達】

ダニエル主催のマコト文書の集いにも毎回顔を出し、連樹の事を知った人々からも、熱心に話し掛けられて、彼らはそれを誇りに思うと共に、自分達の未来にも思いを馳せる事が多くなった。今後は連樹の民と言うだけで、外の人々は、連樹の神に詳しい者と考えて話しかけてくる事も増えるだろう。しかし、神と直接話せるのは巫女だけ、連樹の神、樹々に詳しいのは神官達であって、民は部分的にしか知らないし、他と比較できるほどの学もない。ただ、彼らは外が魅力的だから外に行こう、とは考えず、外も良いが、連樹の森とて、その民とて、そう卑下することはない、問題は外の人が求めるであろう民の姿、能力と、実際のそれの差であり、そこを埋めれば良いと考えていた。これは貧しいながらも、自信ある姿勢と振舞いを見せる小鬼達の姿に影響を受けたところが大きかった。外の良さは認めながらも、自らの歩みに必要があれば取り込みつつも、その方向性にブレはない、そんな彼らの姿勢には、敬意の念すら覚えたからだった。


【世界樹の精霊】

森の民と神木として共にあり、雲取様の庇護下にあって育ってきた事もあり、他に類を見ない巨木となった今も、地の種族の生き方にはそれなりに意識を向けてきた。昆虫や鳥と違い、困ったことを直接、的確に対応してくれる森の民は、共存相手として十分満足できる者達であり、庇護してくれている雲取様も、遠くからゆっくりと飛びながら眺める程度に抑えてくれているので、その姿にも恐れよりも安心する思いを持つようにもなった。そろそろ暖かくなってきたので、イズレンディア経由で話の来ていたアキとの心話も、やってみようかという気にもなってきた。そんな彼女との会合もまた、アキの歩みに変化を齎すことだろう。


樹木の精霊(ドライアド)達】

探索者達が接触した樹木の精霊(ドライアド)達は、事前に想定していたように、やはり協力を得るには手強い相手だった。連樹や世界樹と違い、地の種族との共存状態にない為に、協力と言っても何を頼めばいいか、何をしてくれるのか、そんなレベルから認識合わせをする必要があったからだ。竜の加護の威力は絶大で、それを認識しても喧嘩腰で対応してくるような気性の個体はいなかった。ただ、威力があり過ぎて、怖がって出てこない個体も結構いて、今後の対応はやはり手古摺ることだろう。そして、置かれている立場も、樹木の種類も違う彼らとの交渉は個別に行うしかなく、交渉内容も全部異なる面倒臭さがある。彼らとの交流が本格化するほどに、トラブルも増えていくことだろう。


【マコトくん(マコト文書信仰により生まれた神)】

今は、依代ができるのを待つしかないが、そんな中でも、神官達が集まり、ダニエルの熱意に感化されて、勉強会を開催したり、問い合わせにも丁寧に答え、信者達にも寄り添って知恵を貸すなど、その活動によって、日々、信仰心が増えていく状況である。信仰に支えられた神であればそれは本来、喜ばしいことなのだが、今の彼は、それを相反する思いで見守っている。増えれば増えるほど、依代に降りる際の力も強くなり、それはミアとの心話へのハードルの高さに直結してしまうからだ。しかし、信仰するなとも言えない。そんな苦悩についてもいずれ、彼の口から直接語られることだろう。


【樹木の精霊ドライアド探索チームの探索者達】

普通、探索者達が世界各地で探索を行っても、樹木の精霊(ドライアド)のような人外の存在との交流は稀だ。それだけに毎日のように異なる樹木の精霊(ドライアド)と接触し、交渉する日々は刺激に満ち溢れたものとなった。同じ目的を持つ他チームとの連携もまた珍しいものだった。船団から内地にチームを出すとしてもせいぜい二チーム、後方支援に一チームといったところなのに、今回は七チームだ。それだけにロングヒルに帰還してからの情報交換も大いに盛り上がった。

再出発するまでの僅かな時間にも、探索者一人ずつにヒアリングを行う支援者が付き、話を詳しく聞き出し、報告書の作成も事務手続きに優れた者達の補助付き、と至れり尽くせりだった。

その作業に妖精達も同席し、次の共同探索を前提に動く彼らの姿勢に、心が湧き踊るのを感じた。

そして、酒場などで皆に奢られて口も軽くなった彼らが、あれこれ語ることで、更に他の探索者達やロングヒル市民達を盛り上げることにも繋がった。

探索チームが二回目の工程を終えて戻る頃には、探索者日記の試作版くらいは書きあがっていることだろう。執筆担当者達も熱気に推されて筆が大いに進むに違いない。


【邪神、祟り神(「死の大地」の呪いに対する呼称)】

「死の大地」を覆う呪いの総体。全域を覆っているため、全体として一つの意識を構成している状態と考えられている。浄化術式換算十兆回相当の攻撃に相当する行動が全体に対して行われたことを受けて、連樹や世界樹がいる北東方面を厚くする変化が生じた。しかし、南北百キロ、東西二百キロの広大な地域の事でもあり、分布が変化した以上の事はまだ何もわかっていない。十四章では、竜と妖精の障壁の擦り合わせも改善されたことで、「死の大地」の高空からの探索が行われることになり、更に詳細が見えてくるに違いない。

評価、ブックマークありがとうございました。執筆意欲がチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。自分では気付けないことが多く助かります。


書いても書いても終わらないと思ったら合計27k文字になりました。通常の1パートが4k前後なので5~7パート前後の分量。そりゃ、執筆に手間取る筈です。


次回は、「第十三章の施設、道具、魔術」になります。

投稿は八月十五日(日)二十一時五分の予定です。


<補足>

慌てて書いたので、見直しが不十分ですみません。次回投稿までに、見直します……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ