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13-28.竜神子達との懇親会(中編)

前回のあらすじ:竜神子さん達との懇親会ということで、僕の期待していること、先々への展望とか、関係している妖精族の話とか、語ってみたんですけど、話が飛びすぎ、ついていけない、と駄目出しを食らってしまいました。(アキ視点)

場が少し混乱したようなので、ちょっと仕切り直し。

竜の社会と人のそれを比較した際の資料を表示して貰って、説明を再開した。


「大まかなところから、考えていってみましょう。竜族が我々と手を取り合って生活を営む、ということは、竜達の社会になかった制度や文化、娯楽が浸透していくことを意味します。それらがないなら、相互不可侵の約定を結んでいる現状と何も変わりませんから。交わるということは影響を受ける、そういうことです。それで、竜達の社会なんですが、基本的に育ちさえすれば敵はいない、それに育つと体がとても大きい、ということもあって、竜は育ったら離れて暮らす、これが基本です。それぞれが縄張りを持ち、その中で大型獣を狩る生活ですね。手は狩りをするのには便利でも道具を作る器用さはなく、そのため、竜にも文字はありますが、紋章や目印のような使い方しかしてません。離れて暮らす、共同作業はしない、道具も作らない、文章も使わないんです」


こうして、列挙していくと、竜族の暮らしは人のソレとは大きく違うことが見えてくる。


「では、我々の生活に注目してみましょう。我々は弱いので、集団生活が基本、群れで暮らし、道具を作り、知識を書物に纏めて伝え、残しています。我々は単独で道具もない状態ではとても弱く、魔獣に抗うことはできません。でも、視点を獣の側に移してみると話は大きく変わります。獣の爪や牙はその体の大きさからすればとても小さいものです。人換算では短剣よりも小さく、そして金属製の武器に比べれば強度も劣ります。また、大きな獣は食べる量の問題もあり、群れることができません。群れるのは小さな獣です。群れる獣の中では我々はとても大きく、数も多く、暑さにも強く、持久力なら他の追随を許しません。人は身長よりも長く、鋭く、頑丈な牙、つまり槍を使い、魔術を用いずに、身を貫く攻撃、矢を放ってきます。何時間でも、何日でも相手を追い詰める持久力があります。しかも、群れて襲ってきます。その特性だけで厄介極まりないところですが、道具を使って、気配がなくとも殺傷力や拘束力のある罠を巧みに使って、その脅威を何倍、何十倍にも高めてきます。スコップ等を使って地形すら変える力を持ってますが、獣が作るのは一部の例外を除けば、せいぜいねぐらを掘る程度です」


熊を比較例に出して、人の全速力より速く野山を走り回り、木の上にすら登る俊敏さもあり、その力は木をへし折るほど強く、その皮膚は半端な攻撃を通さないほど、という熊の強みをまず示した。これはこれでとても強いけれど、人を並べて示してみると、人の体はそれなりに大きく、何メートルもの長さの槍で遠距離から攻撃可能、弓矢で遠距離攻撃も可能、罠も真面目に使えば獣を取り過ぎて絶滅させるほど、集団行動が得意で、食べ物や水も携行してくるから、持久力は化け物レベル、火も使うので夜の闇すら、効果が薄いというように、群れて道具を使えば、人は極めて厄介な存在であることを説明した。


ついでに農業によって、狩猟生活では維持できない膨大な人口を抱えるに至り、文字を活用することで、直接、覚えて管理できる二百人程度の規模を超えて、何万、何十万という規模の力を束ねることに至ったのも、特筆すべきところだ、とも話した。数だけなら、地球(あちら)のリョコウバトのように何十億匹と空を埋め尽くすほどに繁栄した種もあったけど、数が多いだけで、その力を束ねる術を持たなかったが故に短期間で絶滅した例も話した。


あー、なんか、場がちょい静かになってきたから、比較はこの辺りで。


「えっと、つまりですね。皆さんが今、当たり前と思ってやってること、囲まれている社会や仕組み、道具や言葉、概念なども、我々にとって必要で価値があるからこそ、維持、発展させてきた訳です。これらの成果は圧倒的で、竜族のように突き抜けた存在以外は、もう我々の敵とはなりえません。竜族は個体の強さの到達点、我々は群れの強さの到達点、そう考えるとイメージしやすいかと思います」


具体例として、熊と人が直接対峙したなら、人が道具を持たないならまず勝ち目はなく、でも、人が武器を持っていいなら、その勝率は大きく改善し、更に頭数を増やしていいなら、その勝利はまず揺るがないことを示した。熊のほうはそもそも集団戦の文化も経験もないので、頭数をもし増やしても連携戦闘すらできない、と話すと皆さん、それなりに想像できたようだ。





「さて、そんな訳で、我々は群れで何かをすることに長けていて、個の力は小さいけれど、束ねることで川の流れを変え、山を削り、沼地を水田に変えるというように、自然の在り方すら変えていきます。自分達に都合のいいように、世界を変えていく力、そう考えると、この力を持つ種族は殆どいないことがわかります。それで竜族の社会と、我々の社会の比較ですけど、竜族の社会にあって我々の社会にないモノと言ったら、空を飛ぶ、という能力でしょうか。こればかりはまだ手が届きません。いずれは手が届きますが、地球(あちら)では空飛ぶ乗り物を創り出して、我が物顔で空を飛んでても、鳥のように自由に、とまではまだ行ってません。ですが、それ以外はといえば、程度の差はかなり大きいけれど、我々も持っているモノ、概念ばかりです。ですから、我々が竜族を理解するほうが楽なのだ、と理解しましょう。逆に竜族の方は、個としてはとても聡いので、説明すればどんどん理解してくれますが、ソレを必要とする営みがないので、人が竜を理解するよりはずっと困難と言えるでしょう」


ん、そこで、以前、発言してくれた鬼族の職人さんが手を挙げた。


「アキ様、竜眼はモノの在り方や術式、召喚体の構造解析も行える、見通す力であり、竜族はとても賢く、その力もまさに神の域にある、と学びました。それでも、我々より理解に手間取るのでしょうか?」


確かに、目の前で初めて見た術式でも、簡単にそれを理解して、真似することもできる力量、賢さ、魔力の大きさと制御能力の高さなどを知ってると、それで苦労する、という様が思い浮かばないかもしれないね。


ん、良い質問だ。彼の発言に同意する人達も多い。


「そうですねぇ、その力なんですけど、何でもできる、それが悪い方向に働くんですよ。例えば、人が金属の精錬技術を手に入れたとします。人なら、獣の牙より強く頑丈で、他の金属と混ぜると更に性質も変わる、なんて凄いんだ、と感動して、もっと他の金属はないか、混ぜ方はないか、鍛え方は? とあれこれ試行錯誤していくでしょう。今でもその極限には達することなく、多くの研究者が更なる高みを、未知を解明しようと努力してます。でも、竜ならどうか。彼らからすれば、何でも切れる爪というくらいなので、木でも鉄でも石でも、どれも変わらず切れるモノでしかありません。多少は違うかなぁ、程度でしょう。意欲が湧いてこないんですね。何も困ることがないから、新たに何かを創りだそう、未知を探求しよう、という意欲が極端に薄い。力不足を嘆く我々からすれば羨ましい話ですが、隣の芝は青く見える、という諺の通り、竜族からすれば知識と娯楽に満ちた我々の事に興味津々です」


突き抜けた力があるからこそ、困ることがないからこそ意欲が生まれない、その観点には一応、納得してくれたようだ。


「で、そんな彼らですけど、実は我々と同じ悩みも抱えてます。共通点があるんですね。それは、生活の場が狭い、という問題です。地の恵みには限りがあり、そこで養える人口は必ずどこかで頭打ちになります。それは竜とて同じことで、彼らの縄張りは弧状列島全域に広がり、それでも若竜達に分け与える場がないので、誰かの縄張りに住まわせて貰う、という肩身の狭い思いをしてます。幸い、成長していくほど、あまり食べなくても良くなるそうなので、若竜が食べ物に困る、という事態には陥ってません。もし竜族が育った体に見合った食料を必要とし続けたなら、世界はとうの昔に竜に食べ尽くされて、そして竜もまた飢えて滅んだことでしょう。つまり、個で暮らすと言っても、弧状列島に住む竜族は、何百柱単位ですけど、村のような共同体を作り、利害を調整する、群れとしての活動をしています。群れで暮らすからこそ、決まりがあり、調整する仕組みがあり、他者に配慮する意識もあります。地の恵みに限りがあることを理解し、足るを知る、そんな慎ましやかな生活をする穏やかな生き方もしてます。我々と彼らの社会は大きく違う、けれど、群れとして生きる、という点で理解できる共通基盤はある訳です」


「力で解決、という魔獣の論理を竜が振りかざしたら、と思うと、ゾッとします」


ん、それは僕も怖い。怪獣大戦争が常の世界だったなら、人が生きる余地はなかっただろうから。


「そうでなくて幸いでした。さて、話は長くなりましたけど、誰かと力を合わせて何かしよう、リバーシや囲碁、将棋、チェスなどのようなテーブルゲームを遊んでみよう、そんな事ですら、竜族にとっては、目新しい活動、娯楽です。竜達は賢いので、自分達がそれをしたらどうなるか、未来を考えてくれます。なので、竜神子は、良い文化、概念を竜に伝える手助けをする、それくらいの気構えで十分です」


例として、食文化の紹介をして、竜からすれば一口サイズの少量で満足できる上質な菓子、我々からすれば大きな祝い事のケーキのようなモノを年一回、何かの記念日に食する、というのなら良い文化であり、竜の手では果物を集めることも加工することもできない、そんな美味しい食べものを我々が作れる、という特別さをアピールすることにも繋がるので良いと話した。単純に食欲を刺激して満腹になるまで食べよう、などとなったら、弧状列島は食べ尽くされてしまうので、竜族の大きさに配慮した文化の伝え方が重要だ、とも補足した。


「テーブルゲームの類であれば、竜が使いやすい大きさにはする必要はあるとしても、ワンセット用意すれば、多くの竜が長く遊べて、資源的にも優しい、そんなところでしょうか」


おー、いいね。


「はい。竜の爪が何でも切り裂くと言っても、その気がなければ、普通に摘まんだりもできるので良いと思います。何かを集めるような趣味は、収納スペースも用意しないといけないのと、限りがないので、避けたほうがいいでしょう。カードゲームの類は、カードを持つのが難しそうですね。んー、あとは、我々と違い、暑さや寒さにも強いので、被服関連もニーズがないでしょう。ただ、心話に必要となる「所縁ゆかりのある品」の運搬に鞄を使ったりはするので、そっちは多少は必要かもしれません」


そんな風に、彼らならどうするか、何はあったら便利だけど、何は必要ないか、そんな風に皆さん、あれこれ想像してくれたようだ。ん、良い傾向だね。





さてさて、ここまで来たら、妖精さん達のことも話しておかないとね。


「竜神子として、竜族を主眼に置くのは大切ですが、これまでにはない、新たな要素として、妖精族についても、理解をしておいたほうが良いでしょう。こちらと違い、魔力が豊かにある妖精界、そこに大勢住む、御伽噺で語られてきた彼らが、こうして、身近な存在となった、これは大きな変化です。妖精女王のシャーリス様も、竜族を尊重するが並び立つ存在と考える、と明言してますし、竜族の雲取様もまた、そんな彼女の発言を認めました。そうだよね?」


話を振ると、お爺ちゃんも、杖を振り、妖精さんの愛らしいポーズをして語った。


「儂らは森の片隅でひっそりと、姿を隠して住む、この通り、小さな種族じゃ。じゃが、そんな小さな身でも、意地も矜持もある。互いを尊重しようというのなら大歓迎じゃが、従うことを強いてくるのなら、そんな奴と仲良くする気はないぞ」


なーんて、言ってるけど、事前学習が効いてるようで、お爺ちゃんのお題目を額面通りに受け取る初心な人はもう残っていないようだ。


「はいはい。妖精さん達は召喚されてこちらに来ているので、一度に見かけるのは数十人といったところですけど、実体は女王陛下を頂点とする中央集権国家を確立していて、ロングヒルと共和国をすっぽり包み込むような広大な領土を実効支配している、そんな種族であり、個としての実力も、自在に空を飛び、姿を消し、魔力切れを気にしないでいい、高位魔導師級の実力者だってことはご存じでしょう。では、そんな彼らを重視した方がよい理由、なんだかわかります? 単に強いから、とかじゃないですよ?」


この二週間で、集中合宿してきたということだし、大丈夫かなー、と思ったら、ユスタさんが遠慮がちに手を挙げた。


「アキ様。強化合宿では、国の全体を把握する統治者視点、竜という異なる種族の生き物としての観点、これまでの竜と地の種族、主に街エルフの歴史、竜族が最近、ロングヒルで行っている活動に関する説明と、それを理解するための前提知識の学習を行ってきました。……ですので、妖精族についても、軽く説明を受けただけで、竜族ほどの理解はできていません」


む、そうなのか。ユスタさん自身は理解してても、他の方々に合わせた配慮ができるなんて、聡い子だなぁ。きっと、こちらに来てる小鬼族達の中でも競争率が高いことだろう。


「それは失礼しました。そうなると、帰国が遅れる間の追加教育は、妖精族について学ぶ方がいいかもしれませんね。彼らは竜族と比較すれば、我々との共通点が多く、交流も、竜族のソレとは比較にならない濃密さなので、我々と竜の視点だけでは伝わりにくい事項でも、妖精族から見れば、一目瞭然なんて話もどんどん出てくると思います。お爺ちゃん、どうかな?」


「そうじゃのぉ。儂らはこの通り、空を飛べる。じゃから、地形を無視して、全方位に素早く展開することが可能じゃ。そういった移動に関する感性は、竜族に近いじゃろう。魔導具も作るし、家も作るから、それらを活かしてる点は皆に近いじゃろう。逆に、この通り、身体が小さいから、工具を用いて材料を加工するような真似はせず、加工は魔術一辺倒じゃ。魔力が豊富で望んだ魔導具はだいたい作れるから、物の(ことわり)に関する研究は大して進んでおらん。体が小さいから、畜産業にも縁がなくてのぉ。牛乳でも、羊乳でもいいんじゃが、それらを使ったチーズもヨーグルトも儂らの国には無くて、あの美味しさは驚いたもんじゃった。つまりのぉ、儂らが良く知るところがあり、知らぬところがあり、地の種族や竜族と互いに補える関係になれる、ということじゃ。儂らの世界にも竜族はおるが、話をして仲良くしよう、などとは夢にも思わんかった。これも驚きの一つじゃな」


具体的な事例として、チーズやヨーグルトの話をしたからか、小さい体だと、何が得意で、何が不得意か、なんて感じにそれなりに想像が膨らんでくれたようだ。


「竜族と地の種族の二極ではなく、妖精族を加えた三極関係となれば、理解もより進んでいく事でしょう。ロングヒルにいる間であれば、召喚された妖精さん達との交流の場も設けられるかと思います。えっと、ケイティさん、どうでしょう?」


「シャーリス様との調整が必要となりますが、民間交流ですので、賛同していただけるかと思います」


「うむ。いつも専門家同士が話すだけでは、市民が手持ち無沙汰になるからのぉ。良い刺激となるじゃろ。儂からも女王陛下にはお願いしておくから、皆も、簡単な紹介本を読めばわかるような話ではなく、妖精と直接会って話をする、その機会を活かすつもりで、話のネタを考えておいて欲しい。こっちにくる者達は、儂の紹介本を読み漁って、ある程度、こちらの事は知っておるからのぉ。それなりに突っ込んだ話をしてくると思ってよいぞ」


おっと。


「お爺ちゃん、それはハードルを上げ過ぎ。皆さん、交流の場では、手に負えない話が出た場合に備えて、専門家の人達も控えて貰うので、安心してください。お爺ちゃんの方も、ここにいる皆さんの事をちゃんと伝えて、面倒臭い質問だらけにならないように手を回しておいてね? 素朴だけど言われてみれば深く考えたことがなかったなぁ、って感じの質問とかだと話題が広がると思うよ?」


そう言ったら、お爺ちゃんがオーバーな身振りを加えて、呆れた顔をした。


「アキ、それこそ難題じゃぞ。市民だろうと専門家だろうと、そうそう気の利いた話がぽんぽん浮かぶもんではない。まぁ、何事も経験じゃ。何か問題が出たら次に見直せばよいのじゃ。竜との関係と同じで、先の長い付き合いになるんじゃからのぉ」


見栄を張った態度はせんよう言い含めておこう、とも話してくれた。限られた時間があるのに、儀礼的なところに余計な手間を欠けていては勿体ない、と。なので、必要以上に「御伽噺の妖精さん」イメージを求めんでくれよ、と話すと、場が笑いに包まれた。





んー、他に僕が直接語ることに意味がある話は何かなー。ん、心話、かな。


「えっと、これまで半年間、竜族との交流で役立ってきた心話ですが、皆さんが竜との交流で何か問題が起きて仲裁して欲しい、といった事があれば、心話を使ってある程度、フォローはできると思います」


そこで、ケイティさんが補足してくれた。


「魔術に馴染みのない方には、聞き覚えのない言葉なので補足すると、心話とは、対象の心と自身の心を触れ合わせることで直接、意思疎通を行う技法です。互いの距離が離れている場合、相手と所縁ゆかりのある品を補助として用いることもあります。言葉を用いずに心を触れ合わせて、互いの感情や記憶を共有するといったこともできます。ただ、相性の問題があり、誰とでもできるものではなく、相手との間に深い経路(パス)がないと普通は上手くいきません。アキ様の場合、対象となる竜の「所縁ゆかりの品」である鱗や爪の欠片などを用いることで、遠く離れた個体との意思疎通も可能としています。これまでのところ、相性問題は起きておらず、試みたどの竜とも交流できています。ですので、皆様が国に戻られた後も、「所縁ゆかりの品」をロングヒルに送って頂ければ、アキ様、あるいはリア様が相手の竜に対して、心話を行い、意思疎通を行えます。心を触れ合わせることは、相手を深く理解することに繋がり、問題解決にも幾ばくかの助けとなることでしょう」


鬼族の人達や、街エルフ、森エルフ、ドワーフといった長命種の皆さんは知ってる感じだけど、小鬼族や人族はそうでない人が大半で、そういうものか、と頷くのが精一杯って感じだ。


「ただ、竜族も心話より直接、対面することを好まれる白岩様のような方もいるので、必ず心話を行えるとは限らない点は留意しておいてください。まぁ多少揉める程度なら、良い経験と思うので、介入はしないと考えて欲しいとこです。もし、皆さんの中で、心話に興味のある方がいらしたら、遠慮なく申し出てください」


心話ができると、相手の感情とかも良く読み取れるので、表情が出にくい竜同士の関係も理解が進んだ、という例として、雲取様と七柱の雌竜の関係を示して、相手の反応や感情の変化から、雌竜達が雲取様に好意を寄せているとか、けん制し合いながらも、友人としての交流もあり、互いを認め合っているとか、そんな、生々しい話の一端を話してみた。


プライバシーに配慮して、あまり踏み込んだ話はできませんけど、と前置きして、雲取様のお姉さんの黒姫様とか、お祖母ちゃんのような福慈様とか、紅竜さんの父母や叔父などの関係者達の振舞いとかも伝えると、聞いてる皆さんも、まるでどこか近所の話みたいだ、と和んでくれた。


それからは、時間一杯まで、ある程度の数の竜達と直接、交流を持っている経験者としての僕とお爺ちゃん、という視点から、あれこれ聞かれることにもなり、僕は気にならなかった目新しい視点の質問とかもちらほら出て、なかなか楽しむことができたと思う。


始めは準備不足でどうなるか心配だったけど、この分なら、竜神子さん達が帰国しても大丈夫そうだ。

ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

竜と地の種族の関係は、国単位で見るのが妥当、人同士の争いのような「小さな」話に竜を巻き込むな、興味を持たせるな、と言った内容、実は、このあたりの話も合宿中に学んでいる、というか聞いてたりします。


ですが、教科書を読んで理解した気になるのと、他人にしっかり自分の考えも踏まえて、話すことができることが同じかといえば、そこには大きな差があります。


アキは相手に合わせて例を示すことで、ある程度、手応えありと感じてますが、「都市国家レベルのまつりごとのような小さな話は無視して」と言われて、その意味を真に理解した人がどれだけいたか、というと……微妙なところでしょう。

竜と交流する、それが個体の竜だけを指すのではなく、竜族全体にも繋がる、そんな視点を持ってね、影響が大きいから妖精族全体も意識に入れておこうね、と言われて、はい、わかりました、と頷ける人がどれだけいるか。


アキが理由なく、代表の座を任された訳ではないっぽい、単なるお飾りじゃない、というところまで竜神子達が認識できただけでも良しとすべきところでしょうか。竜神子の支援者に抜擢された人達が重圧で凹んでそうですね。


次パートは、懇親会も終わり、帰宅するまでの馬車内でのちょっとしたお話です。

次回の投稿は、七月十一日(日)二十一時五分です。

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