表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
341/769

13-12.風洞実験(前編)

前回のあらすじ:最後に福慈様と心話を行って、ひとまず、竜達との心話も終わりました。ちょっと代表の皆さんに、呪われた地がないか確認してみる必要は出てきたけど、まぁ、増えた話はそれくらいでしょう。心話をたっぷりできて満足の一日でした。(アキ視点)

昨日は、心話を沢山やってたこともあって、福慈様との心話を終えた後、寝るまでの間は時間に追われる忙しさだった。そのため、翌朝は食事を終えた後、今日の予定とか、昨日の振り返りを行う時間を設けていた。


今日は、先日の飛行試験で発覚した、雲取様と妖精それぞれを覆う耐風障壁にズレが生じる問題について、地上で風洞実験を行うことになったそうだ。その関係で、ケイティさん、ベリルさんは朝からお出掛けとのこと。


「風洞実験って、昨日の今日で小型召喚の竜を覆うような大きな風洞施設を建設できたんですか?」


そんなのは地球(あちら)だって無理だと思うんだけど。必要になることを念頭に「こんなこともあろうかと」建設してたとか……いやいや、こちらは試験飛行すら街エルフが僅かに実施している程度で、そこまで研究が進んでいるとも思えないし、群衆資金調達クラウドファンディングだって、そこまでの予算を集めるのは無理じゃないかな。


そんな思いが見通せたのか、リア姉が苦笑しながらもタネを明かしてくれた。


「勿論、そんな施設は存在しないさ。竜、妖精、鬼、それに研究組やドワーフ、森エルフも含めて大勢が集うことでそれを可能とする、つまり、ある種の複合魔術によって実現するんだ」


で、リア姉が語ってくれた内容によると、まず、小型召喚の竜が椅子ハーネスを付けて妖精や機材を載せて浮遊し、風を防ぐ障壁も展開する。次にその小型竜を覆うように前後を空けた形で四面を妖精達が障壁を展開して覆う。天井部分の障壁はわざと一番強度を弱く作っておくことで、万一の事態に備える工夫付き。で、前方から小型召喚の別の竜が術式で突風を吹かせる。同時に気流が見えるように、ケイティさんが狼煙の術式を使うことで、煙付きの突風にして風の流れを見えるようにする。側面から別の小型召喚の竜が竜眼で観察、同様にドワーフや研究組の皆さんが側面や前方、後方から魔導具を併用して観測を行う、という段取りらしい。


「鬼族、小鬼族、それに森エルフは何をするんです?」


「まず鬼族は埃が舞わないよう、集団魔術で雨を降らせて地面をしっかり濡らす。それと突風を上方に逃がすために、障壁で構築した風洞の後方で、上方に向けた障壁を展開して貰う。これは魔導具も併用すると聞いている。森エルフは演習場に向けて風が吹き込んでくるだろうから、周囲の木々が被害を受けないよう風の流れを制する。小鬼族は大所帯になるから、関係者達の連絡、活動がスムーズにいくよう裏方に回ってくれているね」


そりゃ凄い。というか一体、何人参加してるんだか。


「演習場って、第二演習場でやるんですか?」


「いや。あそこは召喚用魔方陣などが多く、そんな作業をするのには向いてない。だから、今回だけ、第三演習場を使わせて貰うことにしたよ」


出来たばかりの第三演習場を奪う形になって、ロングヒルの軍人達も諦め顔だった、と父さんが教えてくれた。


「賢者やその弟子達は朝から現地入りしておる。奴も、空気の流れを観察する、という今回の取り組みにはかなり興味を持っておってのぉ。ほれ、例の飛行船の話があったじゃろ? 儂らがそれを作るなら、風の流れについては知見を深めねばならんと大張り切りなんじゃ」


お爺ちゃんも、とっても楽しそう。というか、飛行船か。妖精さん達を載せた飛行船かぁ。夢が広がるね。


「それで、現地に雨は降ったんですか?」


「しっかりと会場周辺だけ、十分に地面を濡らすだけの雨が降ったそうよ。大規模術式の行使は、ロングヒル市街でもその様子を感知できたと連絡があったわ」


天空竜の来訪に比べればたいぶ穏やかだけど、それでも過去の事例を考慮して、術式発動の時間帯は人々の活動を停めていたそうだ。おかげで被害ゼロ。良いことだ。


「それで、僕は特に役目はなさそうですけど、それって見学してもいいんですか?」


「そういうと思って、午後から観に行く段取りとしたわ。一応、竜達の小型召喚、妖精達の複数召喚の上に更に術式の発動を重ねるから、アキとリアの魔力が減らない範囲で試験を行う、その判断をその場でできるよう立ち会う、という名目よ」


母さんも、楽しんでらっしゃい、と笑ってくれた。リア姉が、ほら、予想通りだ、なんて言ってるけど、ロケットの打ち上げとかもそうだけど、やっぱり男の子はこういうのは好きだからね。


それからは、出発までまだ結構時間もあるので、昨日の心話について話をしていたんだけど、竜達との心話でとても癒された、皆さんと心を触れ合わせてとても楽しかった、なんて話をしていたら、それまでテーブルの隅で丸くなってたトラ吉さんがむっくりと起き上がって、僕の膝の上に降りてきて、首のあたりに頭を擦り付けてきた。


「にゃー」


なんか、不満そうな表情を浮かべて、ほら、構えって催促してる感じだ。

珍しい彼の態度に、はて、なんだろうとリア姉の方を見ると、リア姉はははーん、と目を細めて、でも、どう言うか少し考えてから、選んだ言葉を口にした。


「そういえば、トラ吉には沢山助けて貰ったのに、お礼が足りてなかったね。アキ、とりあえず、昼まで外で一緒に散歩でもしてくるといいんじゃないかな。トラ吉が毎朝行ってる散歩コースも知らないだろう?」


トラ吉さんの散歩コースか。ちょっと見てみたいかな。


そんな僕の気持ちを察したのか、トラ吉さんは、仕方ないなぁ、といった態度をしつつ、すたすたと玄関のほうに歩いていき、ほら行くぞーって感じに声をかけてきた。尻尾がぴんと立っててご機嫌のようだ。


あー、そっか。


僕が竜達ばっかり褒めるから、ちょっとだけ拗ねてた、と。


「えっと、それじゃ、僕は散歩に行ってきますね」


「楽しんでおいで。翁は子守を宜しく」


「任しておけ。さて、残りの時間からして、どこを見て回るかのぉ――」


ふわりとトラ吉さんの隣にお爺ちゃんが飛んでいき、あそこの花が綺麗じゃったのぉ、などと楽しく話していた。それじゃ、散歩に行ってこよう。


さて、急遽、割り込んできた風洞実験。そもそも地の種族は空を飛ぶなんてこととはこれまで無縁だったので、帆船の開発を行うための船型試験水槽くらいは持っていても、風洞実験施設なんて、計画すら立てたことはなかったことでしょう。いくらドワーフ達でもそんな未知の施設をいきなりポンと作れる訳もなく、また、今後、その施設がどの程度活かされるかもわからない、となれば、建設するかは今回の試験結果次第でしょう。

で、本文でも紹介しているように、天候操作をしたり、突風を吹かせたり、障壁をばんばん展開したり、小型竜も三柱、妖精族も賢者やその弟子達を含めてぞろぞろと召喚したりと、本来なら国の財政を傾かせるような魔術の大規模運用だったりします。そのため、試験場を提供する連合やロングヒルの人族達も含めて、大勢が参加する巨大イベントとなりました。

調整組も来ている、というか研究組も含めて参加しているのに、放置するなんてとんでもない、と大慌てでやってきているので、次パートはエリーが、一般視点で今回の実験について語ってくれるでしょう。

今回は、トラ吉さんがちょっと嫉妬しまして、そのフォロー優先となりました。トラ吉さんには家族全員が沢山助けられてますからね。彼も普段は我儘とか言いませんし、これくらいの対応はして当然と考えている訳です。まぁ、それで調整をされて後回しにされている人々からすれば、猫馬鹿な一家だとか言われたりはしてるでしょうけどね。(笑)

次回の投稿は、五月十六日(日)二十一時五分です。


<雑記>

今週、特に不調はありませんが、まぁ、一度は受けてみようかと大腸内視鏡検査をすることにしまして、三日前から、医師の指示に従って食事制限を始めています。検査前に沢山(二リットル)の下剤を飲んで、中身をぜんぶ流しておくのが大変、とは聞いてましたが、その前に、三日前から残りやすい食べ物を食べないようにする必要もあると聞いてビックリしました。ちなみに食べてはいけないのが「白米以外の穀類、豆類の殆ど(納豆も駄目)、海藻類全て、キノコ類全て、野菜類全て、バナナ以外の果物全て、果物入り菓子類、蒟蒻ゼリー等」(植物性繊維質の物全般)と、一体、それなら何が食べられるのか、と思うラインナップ!


食べていいのは以下の通り。

・白米、白がゆ、餅、うどん、素麺、拉麺、パン類はOK。

・味噌汁、すまし汁、コンソメスープは良し、具は豆腐、うすあげ、お麩のみ。

・肉類、魚類、貝類。

・練り物。

・卵類。

・豆腐、お揚げ、湯葉、豆乳、お麩。

・ジャガイモ。

・乳製品。(牛乳、バター、チーズ、生クリーム、ヨーグルト)。

・お菓子(飴、キャラメル、チョコレート、カステラ、ドーナッツ、プリン、シュークリーム、チーズケーキ、アイスクリーム、シャーベット)。

・飲み物全般。


検査前日の20時以降は食事不可、検査が終わるのは当日夕方といやー、予想以上の大変さです。食事制限の二日目で、もう精神的に凹んでます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ