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13-4.超音速巡航《スーパークルーズ》(中編)

前話のあらすじ:今回は雲取様とお爺ちゃんのペアで、飛行観測や高速飛行に関する試験をいろいろと行うことになりました。お人形サイズのお爺ちゃんが飛行服フライトスーツを着ると、更にお人形さんっぽくなって可愛らしかったです。(アキ視点)

先に来ていた女中人形のベリルさんが、いつものように記録係として同席し、ケイティさんが給仕してくれて、リア姉、僕、師匠の三人でお茶会でもしてる雰囲気だ。


少し離れたところでは、光学観測機器を上空に向けながら、点にしか見えない雲取様を追尾してたり、魔力感知の状態とか、高度や飛行速度なども含めて、ドワーフの皆さんが、あれこれ議論しながら、ホワイトボードに書き込んだり、手元のノートに書いたりしてる。


「何かあれば経路パスを使って連絡と言うけど、何もないと暇ですよね。雲取様と繋がったのはリア姉?」


「そう。アキは翁を召喚し続けてて、その関係でずっと繋ぎっぱなしだから、今日は分かれて良かった。アキも二人同時に話されたら大変だっただろう?」


「それはね」


僕との心話と同様、召喚すると、召喚した者とされた者の間に経路パスが成立する。するんだけど、僕とリア姉は完全同質なせいで、経路パスがどちらに繋がるのかも確率的にしか決まらない。これまでは経路パスを通じてやり取りする事は殆どなかったから気にならなかったけど、今回のような場合は、どう繋がるのかは結構重要だ。


「二人共、経路パスを使って自分が話す時は青の旗、相手の話を聞いている時は赤の旗を立てるんだよ」


師匠に再確認され、手元の二つの旗を確認した。僕の発言なのか、経路パスの向こう側、お爺ちゃんの発言を伝えてるのか区別しないと、聞く方も混乱するからね。大切だ。


今回、経路パスを通じてあるけど、やり取りする事が許可されたのは、やっと師匠から、目がマシになったからと、心話の許可が降りたからなんだよね。


久しぶりでとっても嬉しい。


そして、それならばとケイティさんが心話の試みを提案してくれたんだけど、まずは、何かあってもどうとでもなる雲取様とお爺ちゃんに確認して貰う事になった。


今回、問題がなければ、次は雌竜の皆さんと心話をしてみて、ケイティさんはその次との事。それでも、地の種族では、ケイティさんが初だからそちらも楽しみ。


空を見上げても雲取様は点のようにしか見えなくて、首も痛くなってくるから、早々に観測は諦めた。


――ところで、さっきから、ドワーフさん達が話している言葉に単位のように「リア」という言葉が混ざるけど、何なのかな。


「ねぇ、リア姉。さっきから、ドワーフさん達が単位のようにリアって話してるけど、あれ、何?」


そう聞くと、リア姉は、あぁ、それか、と遠い目線で溜息をついた。それを見て、師匠がイヒヒなんて、意地の悪そうな顔をしながら理由を話してくれた。


「リアの魔力は知っての通り、完全無色透明だ。それ単体では感知できない、されない程度の話だが、計測機器や実験器具という観点から見ると話は大きく変わる。計測機器の長年の課題は、測定する値への魔力干渉なんだよ。魔力は常に流動的で、魔導師が感知出来ずとも魔力はゼロじゃない。魔力は微弱であっても常に存在して揺らいでる。昔は測定誤差がどうしても収束せず、魔導具の製造や、術式の高精度化が頭打ちになっていた。そこに、リアが現れて話が一変した。リアが魔力を込めた機器は、完全無色透明で染められていて、他の魔力の影響もそうそう受けない。だから、魔力の影響がない、そんな基準になったのさ。無色透明の状態をゼロ基点として、そこからの乖離を値とする事で、魔力計測の精度は飛躍的に高まった。で、その功績を皆が認めて、魔力の単位をリアと決めた、そんな話だね」


おー、それは確かに。リア姉がいない頃は、いろんな魔力を混ぜて均一になるよう付与するとかしてたのかな。でも、それじゃ、かなりバラツキがありそう。


師匠が暇だからと、近くの技師に、予備の計測機器や実験器具をもってこさせた。


「ほら、こいつを見てご覧。装飾過多な筆記体だが、リア製作所と書かれているだろ。最高精度を誇る計測機器ブランドで、技師達からすれば垂涎の品って奴だ。同じ理由で実験器具も他の魔力影響を排除したい用途では、他の追随を許さない逸品だよ」


確かに機能美もあるけど、かなり洒落たデザインで、そのまま飾ってもいいくらいだ。


「綺麗ですね」


触らないように注意しないと。って、僕が触れて無色透明が上書きされるなら問題ないとか?


「リアも気を付けてる通り、二人がこれに触れるのは厳禁だよ。属性は変わらなくても、込めた魔力量や位階が跳ね上がっちまうからね」


それは大変そうだ。


「あれ? そうすると、このブランドの品って、リア姉が手作りした分しか供給されないって事?」


「そこは作業部屋に魔法陣を設置して、少しずつ魔力を吸い上げて、計測機器に付与する仕組みを用意したよ。同じ品物をずっと作り続けるなんて、やりたくなかったから」


リア姉がその部屋にいれば、毎日、何個か作れるそうだ。


「でも、それじゃ、大した数は作れないね」


「そこは、最高精度で作った計測機器を第一世代として、それらで計測して魔力属性を均一にした品を第二世代として販売してるんだよ。属性付与はできる。あとはそれぞれの属性をどの程度の割合とすればいいか、そこが高精度で出せれば、第二世代も、第一世代より劣ると言っても十分過ぎる精度だからねぇ」


友人の誼と言っても、値引きしてくれないんだから、ケチ臭いったらありゃしない、なんて師匠がボヤいた。


師匠がもういいと手振りで伝えたら、技師さんは、お預けをくらってた犬のように、丁寧だけど素早くケースに戻して去っていった。あの様子だと、大切に扱われているのはいいけど、普段使いするにはかなり高価そう。


「第二世代だって、そうそう数は出ないから、いくらソフィアにだって、割引はできないよ。そんな事をしたら、皆が自分も、と言い出し兼ねないからね。街エルフは長寿な分、縁のない人の方が少ない。だから、親密さとか、派閥とかで扱いを変えるのは悪手とされてるんだ」


なるほど。関係があり過ぎて、差を出すと面倒臭いと。


そんな話をしながら時間を潰していると、リア姉が赤の旗を立てた。師匠も表情を引き締めて、次の言葉を待つ。


おっと、僕の方も連絡が来た。お爺ちゃんだ。赤の旗を揚げて、と。


<アキ、取り敢えず、計測機器に従った飛行は終わったぞ。数値を儂が言葉で伝えるのでは駄目じゃな。映像投影眼鏡スマートグラスじゃったか。あれで直接、確認しながらでないと、目印もない空で、決まった高度や方位、速度を維持するのは無理そうじゃ>


ふむふむ。伝わってきた感覚からすると、忙しくて周りを見てる余裕はない、みたいな感じだ。


<雲取様、不機嫌そう?>


話を聞いてるリア姉の表情からすると、フォローしてる感じだからね。自分の発言時だけ青の旗を揚げて、すぐに赤の旗にチェンジ!


<間接的にしか目標を示されず、どの程度か調整に苦慮しておった。随分、頑張ってはくれたんじゃがな。次からは思いきり飛べるから、ストレスも解消されるじゃろうて>


ふむふむ。


リア姉も話を終えて旗を下ろしたので、僕とリア姉は何を受け答えしたか、師匠とベリルさんに内容を伝えた。感じ取った感情もセットで話すと、師匠も苦笑しながら、耳を傾けてくれた。


雲取様からの言葉は、大筋ではお爺ちゃんの話した通り。あとは飛びながらの微調整と言う事で、目標高度や方位がわからない中、少しずつ変更していくと、かなりゆっくりにせざるを得ず、手間が大きいとの事。それに高高度だと、地形も厳密な目印にはならず、求められる精度で飛行は無理と断言してた。


神経を集中するような細かい針仕事を延々とやらされたような疲れ具合らしい。それじゃ、何時間も飛ぶのは無理だね。


「次は魔力消費量だけ注意してれば好きに飛んでいい。と言っても急な加速、減速、上昇、下降、旋回は厳禁だよ。二人は魔力が減り始めたら、相手に伝える事。いいね」


「はい」「はいはい」


最初の試験と違って、第ニ試験はこちらがアラートを上げないといけないから、のんびりお茶会モードはここまでだ。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。

経路(パス)を通じての意思疎通は、第三者には何も伝わらないので、なかなか大変です。赤旗と青旗を上げ下げして、とやってますが、人数が更に増えたら収拾がつかなくなるでしょう。

そして、竜と妖精のペアで動いてみただけで、問題点がゴロゴロ出てきました。

後部座席にしか計器類が表示されてない状態で、前席の人に操縦しろ、と言うようなもんですからねぇ。まぁ、無茶ってもんです。次パートでは、回復範囲内での最高巡行速度に向けた飛行試験からスタートですが、さてさてどうなることやら……。

次回の投稿は、四月十八日(日)二十一時五分です。

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