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13-1.樹木の精霊《ドライアド》探索チーム結成(前編)

前話のあらすじ:十二章では、久しぶりに三大勢力の代表が集まり、共和国、妖精の国なども含めて、次元門構築に関連する活動に協力するよう、連樹の神様と世界樹の精霊に依頼したら、その対価で、長年、呪いに覆われて閉ざされた「死の大地」の浄化&開放とか、連樹の植樹とか、対価として実施することになりました。まぁ、でも妖精界とこちらを繋ぐ「妖精の道」、どこに開くか、いつ開くかもわからないそれを探す仕事を、何十万いるともしれない全土の樹木の精霊(ドライアド)達に協力して貰うのに、最初に一発、連樹&世界樹に話をして貰えないと、手間がかかり過ぎるから、仕方ないところでしょう。連樹の神様も、これで互いの行為は釣り合いが取れた、と話してたから。(アキ視点)


という訳で、第十三章スタートです。今後も週二回ペースの更新していきますので、のんびりお付き合いください。四巻相当の10-1スタートは、一年前でしたから、一巻一年ペースってとこでしょうか。早筆のスキルとか欲しいですね。

連樹の神様の前に、代表の皆さんが集って、様々な約束をしてから数日。流石に国元を空けすぎたと言って、三大勢力の代表の皆さんは帰国していった。新組織立ち上げと言う事もあって、帰国までの短い時間だけど、思いついたことをあれこれ相談してみたら、便宜を図って貰える事になって良かった。


ミア姉にこちらの世界に魂交換で喚ばれて、こうしてミア姉の体で過ごすようになって半年、思えば色々なことがあったけど、日本あちらにいるミア姉を助ける為の次元門構築に向けた研究も本格スタートできて、春の草木が目覚めて緑が増えて、少し心がウキウキしてきた。


あれこれやる事が多かったせいで、こうして家族全員で一緒に食事をするのも久しぶりだ。


女中人形のアイリーンさんが用意してくれたのは、桜の香りと薄くピンク色に染まった梅ごはんと、薄切りの赤身が映えるカツオのカルパッチョ、春野菜のスープだ。父さんとリア姉は追加で、アスパラの豚肉巻きなんて食べてる。


「アイリーンさん、美味しいです。春って気分になれるし、彩りが華やかで素敵です」


「ありがとうございマス。連邦から良い型のカツオが入ったので、お出ししてみまシタ」


ほー。鬼族連邦との交易も始まったんだね。


「僕にはわからないけど、もしかして魔力豊富な感じ?」


僕とリア姉は、魔力共鳴現象によって魔力量がストップ高なせいで、竜クラスの魔力でないと感知できないから、母さんに聞いてみた。


「魔導師なら平気でしょうけど、一般市民は量を控えた方が良いわね」


「それなら街エルフは問題ないと」


「アキにわかるように例えるなら、豪勢な晴れの日の料理といったところか。その日か、週で食べる量を調整して辻褄を合わせた方がいい」


健啖家の父さんもそう話すという事は、食材に魔力を沢山含んでればいいってモノでもないんだね。美味しいのに。


そんな話をしながらも、朝食兼昼食ブランチも終わり、お茶を飲んでのんびりしていると、家政婦長ハウスキーパーのケイティさんがフリップを持ってやってきた。





家族全員が集まったのは、ロングヒルに来ていたお偉方も帰国して手が空いたのと、彼らと相談して今後、いくつか仕事が決まったので、その事を、皆で認識合わせをする為だった。妖精のお爺ちゃんがふわりと僕の隣に、角猫のトラ吉さんも足元にきてくれて準備万端。


「それでは、アキ様。新組織の立ち上げに伴い、本日は、樹木の精霊(ドライアド)探索チームの結成式にご参加下さい」


「えっと、探索者支援組織の監視者オブザーバーとして参加でしたっけ?」


監視者オブザーバーは会議に参加できるけど、議決には参加しない人。探索者支援組織は船団の下部組織として新設されたものだ。これまでは探索者は船団に所属し、帆船に乗って海外へと向かってたから、管理は派遣される艦隊内で閉じてて問題はなかった。だけど、今後は弧状列島内での探索が増えるので、その枠から外れる。なので、下部組織を立ち上げる流れとなったんだよね。


ケイティさんが組織図をフリップで見せてくれたので、僕の立ち位置も理解しやすかった。


「そうです。あくまでも探索者達は船団の所属であり、代表はファウスト卿です。ただ、三大勢力や竜族、妖精族から得た便宜はアキ様が働き掛けて得たモノですので、その扱いも含めて、アキ様がお話された方が良いのです」


まぁ、そうだよね。色々と気を付けて欲しいところ、優先して欲しいこともあるし。


「昨日は、雌竜の皆さんが来てドタバタしてたけど、もう、皆さん、落ち着かれました?」


実は探索者達の安全性確保について、天空竜の雲取様に相談したら、彼に思いを寄せる七柱の雌竜の皆さんから、各チームの代表にそれぞれ加護を与えて貰える事になったんだよね。雲取様が、アイリーンさんの料理の腕に入れ込んで、加護を与えた件が尾を引いて、他の竜達も、地の種族でこれと思う者に加護を与えようとする機運が高まってたそうだ。


「一柱ずつ第二演習場に来訪されるタイトなスケジュールでしたので、加護を与えるチームリーダーとの対面時間も僅かでしたから、今は問題ありません」


天空竜は、戦闘ヘリ並みの巨体ということもあって、害意がなくても、圧が凄くて対面できるだけでも、竜が賞賛してくれるくらい、地の種族にはキツい相手だ。僕も初めて会った時はかなり怖く感じたからね。緩和障壁の護符を装備していても、対面時間は短ければ短いほどいい、一般論としては、そんな相手だ。


ちなみに竜の加護は、猫のマーキングみたいなもので、自分のだから手を出すな、と他の竜に示すためのモノらしい。一応、竜の気配が付くことで、弱い魔物などは追い払う効能も期待できると聞いている。


「一応、雌竜の皆さんの魔力を込めた宝珠を使って、チームの代表さんとの相性はある程度、事前確認したと言っても、ぶっつけ本番でしたからね。ラストの方なんて、かなり緊張してたし」


僕とリア姉だけは魔力属性が完全無色透明なこともあって、どの竜であっても心話もできるくらいで、問題はないんだけど、一般論としては、魔力属性の相性はかなりのウェイトを占めていて、相性が合わない相手とは、心話もできないし、共同魔術も失敗するそうだ。


そう話すと、ケイティさんが苦笑した。


「一柱の竜が一人ずつ加護を与える訳で、最後の組では、代わりのパターンも用意できず、上手く行って欲しいと願った事でしょう」


争いにならないように、皆が一人ずつ加護を与える事にしたけど、先にやるペアは上手く行かないなら他の組み合わせと変更してもいい。でも後になると、もう加護を与え、受け取ったペアが増えて、チェンジしようにも他の組み合わせがない。


結果としてうまく行ったけど、ほんと、揉めなくて良かった。


「アキ、今日の結成式は、探索者達はやるべき仕事はもう把握しているから、本当に重要な事に絞って話をするようにね」


リア姉がそう教えてくれた。この前の竜神子の皆さんみたいな集められたばかりの市民レベルの方々じゃなく、やるべき事を理解しているプロフェッショナルだと。なら、確かに当たり前の事をいちいち口にするのは逆効果だ。


「時は金なりとも言うし、そこは気を付けるよ。ありがとう」


幸い、他には特になかったようで、後は街エルフとして、公式な場での振る舞いについて、いくつか確認して、送り出してくれた。街エルフの、しかも女性になってまだ半年、付け刃なところは否めないから、こういう心遣いは嬉しかった。





今日は、少しフォーマル寄りという事で、フリル付きの首筋からのIアイラインは白、長袖やロングスカートは落ち着いた光沢のある紺という重ね着レイヤード風ワンピースだ。同じ紺のリボンタイと、中央には大粒のブルーサファイアの装身具ブローチで、胸元をシンプルに飾り、Iアイラインの白で華奢な感じを、重ね着レイヤード風の紺の裾広がりなワンピースのシルエットがシックな印象を与えてくれる素敵な装いだ。秋に鬼族の皆さんと会った時に着た服なんだけど、黒のペチコートはレースで飾られた見せタイプで、ワンピースの裾から少し見せる黒のレース地で、ちょっと大人な雰囲気もあって、僕も結構気に入ってたんだよね。


雲取様の黒い鱗を使った装身具ブローチを付けて準備完了。


合計七チームと、探索者チームは結構大所帯なので、船団を運営している街エルフの大使館領内で、広場を飾り付けて、そこで結成式を行うことになった。


「それでは出発しますぞ」


御者のウォルコットさんと護衛のジョージさんが御者台に乗り、僕とケイティさん、それにお爺ちゃんとトラ吉さんが客室に乗って、魔導人形の二頭の馬に曳かれて馬車が出発した。


「ケイティさん、今日は声に意思を載せてもいいんでしたよね?」


「はい。探索者達は相手が誰だろうと、自身で納得しないと相手を認めません。それに、アキ様もそろそろ心話が解禁されるくらいには落ち着いて来たので問題はないでしょう」


地球あちらとの次元門構築が理論構築レベルで見通しが立たず、僅かな希望が残るのみ、とわかって、かなりショックで、冬の間、心話をすることは師匠から禁じられたんだよね。相手を思いやる余裕がない精神状態では、心を直接触れ合う心話は百害あって一利なしだと。


「今回は、次元門構築の研究に繋がる「妖精の道」捜索、それを樹木の精霊(ドライアド)達と共に行う交流事業ですからね。僕もとっても期待しているし、探索者の皆さんの安全第一とも思うし、相手の重荷にならない程度に、僕の思いを言葉に載せることにします」


手をギュッと握りしめて、やる気を見せると、お爺ちゃんがふわりと飛んできて、僕の頭をポンポンと叩いた。


「アキ、相手の様子を見て、きちんと加減するんじゃぞ?」


なんとも心配性だ。


樹木の精霊(ドライアド)達は沢山いるんだから、塩対応してくる個体は場所だけ記録して、後回しにしてでも、全域の探査をすればいい話だから。何が何でも合意してきてねってお願いする訳じゃないから大丈夫だよ」


弧状列島のどこかに生じる()()()()()()「妖精の道」を、感知できる範囲で発見したら教えて欲しいと、樹木の精霊(ドライアド)達にお願いして回る話だからね。いちいち、塩対応の個体に時間をかけるより、全土の調査を終えるほうが重要だ。


「にゃー」


トラ吉さんが、ケイティさんに、本当に平気かって感じに声をかけた。


「前回の反省を踏まえて、ジョージにも確認しましたが、前回は竜神子と言っても一般市民混じりでしたが、今回は探索者達なので問題ないと同意を得てます」


なので、()()()問題ないです、とケイティさんも自信ありげだ。ちなみに前回は、騒然としている竜神子の皆さんに対して、戦術級術式を二発も叩き込んで、皆から探索者って怖いとか、アレが魔導師ケイティか、なんて散々言われて不評だった。


まぁ、今回は探索者チームへの期待も大きいこともあって、あれこれ、便宜を図って貰えたし、不安はかなり払拭できると思う。


そんなことを話しているうちに、馬車も会場に到着した。同じ大使館領内だから早かった。





会場は、チーム毎に席が分けられてて、各チームは六~九名程度で構成されているようだ。荒事ということで男性比率が高いのかと思いきや、男女比は六対四くらいで意外だった。仲間内でのんびり雑談をしながら時間を潰してる感じで、のんびりした雰囲気が感じられた。


「正規軍人と違って服装もそれぞれ違いがあって面白いのぉ」


お爺ちゃんが興味深そうにそんな彼らを眺めて楽しそうだ。軍人さんの場合、同じ服装できっちり統一されていて、外見からは区別できないんだよね。式典だとそこは区別できるよう飾りや階級章を付けたりするけど、前線では、指揮官から狙われるから、服装は揃えるのが鉄則だと聞いた。


「探索者の皆さんは専門家集団だからね」


例えば、射撃戦要員と、魔導師だと装備は全然違う。それに今回は各チームに森エルフの精霊使いと、街エルフの人形遣いも同行しているから、そういう意味でも服装や装備の違いは大きい。


僕の少し後方にケイティさんとジョージさんが付き添い、四方に簡易式典用の服装をした護衛人形さん達が同行、僕の足元にはトラ吉さんが、肩のあたりにはお爺ちゃんが飛んでいる、という近頃の定番構成を組んで、会場入りした。


なかなか大所帯だけど、護衛人形さん達は僕くらいの小柄な体格だし、地球あちらで、大統領の周りに大柄な体格の黒服のSPさん達が歩いているのに比べれば、威圧感もだいぶ薄めだろう。


「これで全員揃ったな。それじゃ、今から結成式を始めるぞ」


いつもの船長服より、ちょっとだけ式典用に飾った装いのファウストさんが笑顔で迎えてくれて、良く通る低い声で、開会を宣言する。軽い口調なんだけど、その一言だけで、探索者さん達のリラックスした雰囲気が一瞬で切り替わった。

ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。

今回は、アキも話しているように、次元門構築の研究に直結する話なので、いつも以上にやる気が出ているようです。まぁ、とはいっても、段取りを整えたら、あとは宜しく、というのはいつも通りですけれど。

心話解禁もアキとしては嬉しいところで、その相手もケイティだったり、世界樹だったりと、この春はやること盛り沢山です。研究組の活動も色々と本格稼働していきますからね。

次回の投稿は、四月七日(水)二十一時五分です。


<雑記>

東京都板橋区の中央図書館がリニューアルオープンしまして、ちょっと覗いてきてみました。かなりの大きさで、新しいこともあって、とっても御洒落な感じになっており、多分、前の建物に比べて規模を大きくしたからと思いますが、蔵書も棚の五割を埋める程度でゆったりとしたディスプレイになってました。一階にはカフェも併設されていたり、公園も隣接してることもあって、多くの人達が利用してました。2020年販売の画集とかも結構置かれていて大満足。今後もちょくちょく利用することになりそうです。

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