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12-11.異文化交流の難しさ(前編)

前回のあらすじ:連樹の神様と世界樹からの啓示、内容からして十分手が届く内容の筈なのに、皆が押し黙り、大まかな方針すら話さず、一旦持ち帰って検討してから返答するなどと、言い出して訳がわかりません!(アキ視点)

国に頼れないなら、個人的に動くしかない。幸い、死の大地の観測なら小型召喚の竜が一柱、妖精が一人、それに計測用の魔導具があれば、事足りるし、浄化用の魔導具も数本程度なら多分作れると思う。投下訓練を重ねれば、初めの一本は投下できるし、それで浄化の成果がでれば、群衆資金調達(クラウドファンディング)で資金集めもできる。――などと冷静に次を考える冷えた思考と、それ程、リスクもなくハイリターンなのに動かない意味不明さへの困惑、失望で混乱した思考が混ざり合って、周りの動きが、何処か非現実的にすら感じられていた。


隣のリア姉が何か話しかけたけど、それより早く動き出したユリウス様が、短く「任せよ」と告げて手で制して、椅子を持って近づいてきた。


彼は僕の後ろに椅子を置くと、僕の手を取って、魔法のように僅かな動きだけで、僕を座らせた。


座った事で、ユリウス様と視線の高さが合い、彼が困惑しながらも、僕にしっかりと向き合う気持ちが伝わってきた。


「何故かわからぬが、アキと我々の間で大きな誤解があるように思える。心がすれ違っていては、交わす言葉も心に届かん。だから先ずは心を落ち着けて話をしたい。良いか?」


さっきまで、同席している人達との距離が遠のいたような、疎外感のようなものすら感じていたのに、こうしてユリウス様が手を取ってくれているだけで、心に暖かさが戻ってきた。


誤解、そうなのかな?


ユリウス様の落ち着いた眼差しを見ていると、そうなのかも、と思えてくる。


っというか、気持ちが落ち着いてくると、ユリウス様との距離が近い事が急に気になり出した。


「ユリウス様、ちょっと近いです」


そう指摘すると、彼は楽しそうに笑みを浮かべた。


「悲しんでいる子がいるのに、遠くから声を掛けるだけでは思いは伝わらんだろう? こうして目線を合わせて、手を取って、近くにいると、きちんと向き合っていると態度で示すものだ」


くっ、なんだろう、この敗北感!


しっかり皆の態度を観察して、言葉を聞いて、残念な結果になったと判断した筈なのに、なんか自分の判断に自信が持てなくなってきた。


というか、まだ様子を見てる感じで、手を握ったまま離してくれないんだけど、触って大丈夫なのかと、彼の胸元の護符を見ると、チラチラと過剰な魔力が魔法陣の上で跳ねているのが見えた!


「ユ、ユリウス様、手を離してください! 護符がなんか不味そう!」


そう伝えたのに、彼は僕の手に触れたまま離さず、そのまま、真摯な眼差しを向けて話し始めた。


「ふむ、落ち着いて話をすると約束してくれるか?」


「約束しますから、早く手を離して下さい!」


「ならば良い――っと、存外、脆いな」


ユリウス様が手を離したタイミングは、護符が火花を散らして機能を失ったのとほぼ同時だった。


僕は驚いて息を飲んだのに、ユリウス様は護符を外すと、代わりを頼むとスタッフに軽く指示して、皆に提案した。


「少し行き違いはあったが、もう問題ない。このまま、我々の認識の擦り合わせを行おう。互いの意図がズレた状態は解消せねばな」


危ないことはして欲しくないとか、言いたい事が色々あったけど、最優先はこれだ、とユリウス様が態度で示したので、言葉を引っ込めた。


「アキとの、か?」


「それもあるが、神からの啓示そのものについても、スタンスを確認しておきたい。竜族、それに妖精族と、それ以外で先程も反応に違いがあったように思えたからだ」


レイゼン様の問いに、ユリウス様は雲取様、シャーリスさんの姿勢も確認対象に挙げた。

ふむ。言われてみれば、確かに違ったね。


「それでは、まず簡単な方から確認して済ませようか。ヴィオ殿もこのまま同席して欲しい。神の言葉を伝える巫女の視点からの意見も伺いたい。それと、神と人、その視点だけで神の言葉を伝える事の危うさ、思い込みの排除も我々と共有していこう」


ニコラスさんが、これから答え合わせの時間だと言った感じで、ヴィオさんが追加された席に座るのを待ってから、スタンスの違う二種族の代表に向けて話し始めた。


「それでは、雲取様、シャーリス様、お二人にお聞きしたい。連樹の神や世界樹の精霊からの話を聞き、どう認識したか。――力を持つ同格の相手、そんな存在からの提案、規模も大きく期間も長い、故に熟慮した上で返答するのが誠意ある態度、そう考えたのではありませんか?」


スラスラと話す内容は、粗方見えていて、後は本人の確認さえ取れればそれで終わり、そんな感じで、レイゼン様やユリウス様もその見解のようだ。


「妾の方はその認識で相違ない。雲取殿はどうか?」


<さほど変わらないが、我は他の者達と違い、竜族の代表ではない。それだけに話の規模も我らの何割かが関与する話となれば、我の一存だけで返事はできぬ、そう考えたのだ>


あれ? それだけ?


「あの、それだけですか? 重苦しい感じだったし、前向きにやろうって気も見えなかったから、何か理由があって断るつもりだったんじゃないんですか?」


そう質問すると、雲取様とシャーリスさんが互いを見て、首を傾げた。


「断るつもりなら初めからそう告げる。それに妾達はこちらに召喚で来ておるのを忘れておらぬか? 妾達が支払うのは時間と知恵だけじゃ。国を丸ごと覆うような呪い、世界樹の育ちにも影響を与える地脈への介入、神の依代の作成、いずれも二度はないかも知れぬ話じゃ。頼まれずとも関わるべき案件よ。それに、妾とて、他の者達が難しそうな顔をしていれば、空気くらいは読んで気遣った姿勢は示すぞ? アキは妾を誤解しておるようじゃが」


シャーリスさんがそう言い放った。リスク無しに超大型レアイベントに参加できるなら、断るはずも無し、それにそんな面白そうな話を妖精族がスルーする訳がない。


……言われてみればその通りだ。


<我も断るならそう伝える。意味もなく期待を持たせるのは誠意に欠けるからな。それに我も、そして多くの若い竜達も、「死の大地」を覆う呪いをどうにか出来るなら喜んで力を貸すだろう。時間がかかろうと、あれだけ広大な大地に森が蘇れば、若竜達の席待ち問題も解決するのだ。その未来を夢見るだけでも心躍る事だろう。ただ、それだけの規模と期間の話となれば、福慈様にも話を通し、皆の意識を揃えねばならん。故に慎重さが必要と考えた。それとな、即答しなかったのは、それをせずとも良い状況にあった事、それとアキの表情が気になったからだ>


「え? 何か変でした?」


<変ではないが、落ち着いていて、難事を前にした振る舞いではなかった。つまりアキには道筋が見えているのだろうと、な。ならば話を聞いてみるのが先と考えたのだ>


雲取様はそう話しながらも、自分の推測は当たっていると確信しているようだ。そして。その認識は確かに当たってる。


「少し大変な所もありますけど、手持ちの札だけで十分勝てる、それもかなり実入りのいい話かな、とは思ってます。――えっと、皆さん、どうされました?」


何故かイズレンディアさん以外、雲取様やシャーリスさんだけでなく、リア姉まで驚いた顔をしてる。


「何でリア姉までそんな顔してるの?」


「他の人達と認識を合わせる為に、話は止めておいて貰ったからだよ。そして、話の規模、難度の高さから厳しいと感じていたところに、実入りがいい話ときたら、驚くのが普通だよ」


「んー、でも、規模が大きいと言っても、地球(あちら)の中国という大国が毎年植林している程度の面積だよ? 十分、手が届くと思うけど」


そこまで話したところで、レイゼン様の大きな笑い声が響き渡った。


「そこまで立ち位置が違うか。――アキ、違和感を感じたら、その場で疑問を解消しろと言ったのを覚えているな? 今がまさにその時だ。早合点して我々に失望したのは大きな減点だが、それでも、我々がいる場で、なぜ、と問い掛ける事が出来たことは加点していい。挽回の機会だ。検討した上で返答する、重苦しい態度だったとしても、それが何故、断る話になるのか先ずは話せ」


レイゼン様の中では完全に僕のミスで確定してるっぽい。でも、確かに雲取様の態度は少し読み違えたけど、今回の読みは結構確信があったと思うんだよね。確かに僕はまだ学生で、会社勤めとかした事ないけど、サラリーマンの話し方とか、本で読んだし。


感想、評価、ブックマークありがとうございました。執筆意欲が大幅にチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。

ユリウス様が誰よりも早く動いてくれたこともあり、アキも含めて認識合わせの流れに乗ることができました。パートの題名にもあるように「異文化交流の難しさ」、それの答え合わせになります。

三大勢力、街エルフ、森エルフにドワーフ、それに連樹の巫女は、こちらの世界の住人であり、同じ弧状列島である程度の交流もあるので、認識がズレるとしても稀。

竜族はそもそも交流がないのでズレる時は大きくズレるし、妖精族も妖精界の住人なのでやはりズレる時は大きくズレる。そしてアキはやはり地球あちらから来ているので、ズレる時は盛大にズレる。

ただ、雲取様やシャーリスの発言がズレにくいのは、彼らの発言が基本、後出しだから。

まず自分から動かないといけないアキは、どうしても始めに動くので他の人々とのズレが出やすいんですよね。事前準備していくパターンなら、ケイティや女中さん姉妹がズレを気付かせてくれるんですが、今回のような場合はそうはいかないので悩ましいところです。


次の投稿は、年明け、一月三日(日)二十一時五分です。


<雑記>

今年も本作品を読んでいただきありがとうございました。2020年がこれほど激動の年となるとは夢にも思っていませんでした。活動報告のほうに、今年を振り返った話を書いてみました。2021年が良い年となりますように。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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