12-10.連樹と世界樹からの啓示
前回のあらすじ:代表の皆さんが三か月ぶりにやってきました。その間に起きたことについての説明も終わり、これでヴィオさんから啓示を聞く準備はできた筈ですが……。(アキ視点)
次の日、ヴィオさんが啓示を伝える為、別邸の庭先に会場が用意されて関係者が集まることになった。竜族の参加も求められたので、小型召喚でやってくる事とした。
幸い、リア姉が心話で調整して、竜族からは雲取様が参加して貰えることになった。それ以外は三大勢力代表の三名、ヤスケ老、シャーリスさん、それに森エルフからイズレンディアさん、ドワーフからヨーゲルさん、ロングヒルからはエリーが参加、それと僕とリア姉も名指しで指名されていた。
メイン会場には主要メンバーだけが集ったけど、鬼族のレイゼン様や、小型召喚の雲取様もいるから、それなりに広さも必要となった。今回は公式なので、僕とリア姉も長衣も着てたり、他の皆も式典用の装いをしていて、特別な感じになっていた。シャーリスさんも長衣を上から羽織って、それだけで特別な雰囲気になった。
演壇にヴィオさんが立つと、皆に一礼して話し始めた。
「諸勢力の皆様にお集まりいただき感謝する。此度は研究組の求めに対し、我らの連樹の神と、森エルフの守護たる世界樹の精霊からの啓示を伝える事と相成った」
そこで言葉を区切り、ヴィオさんは皆を一通り見て、認識に相違ない事を確認した。
「伝える啓示は二つ。一つは「マコトくん」の依代となる素材、世界樹の枝を提供する事。世界樹の求める対価は、世界樹への流れを妨げる地脈の乱れを正す事とする。地脈の乱れとは、西方に位置する通称「死の大地」、彼の地が呪いに囚われている為に、世界樹への地脈の流れが妨げられてしまっている事を指す」
これは事前に聞いた通りだね。でも、雲取様とヤスケさんの気配が強張るのが分かった。竜族、街エルフのどちらにとっても因縁の地だから、色々、思うところがあるんだろう。
というか、事前に話を知っていたイズレンディアさん以外は多かれ少なかれ驚きの表情を見せていた。緊張感も高まった感じだ。
「二つ目は、弧状列島の何処かで生じる妖精の道、その発見に協力するよう、全ての樹木の精霊に求める事。この事への対価は二つ。一つは全ての樹木の精霊に対して、求めがあれば話を聞き便宜を図る事。二つ目は、連樹の神と世界樹が共鳴して全ての樹木の精霊に協力するよう話を伝える対価として、連樹の成木を「死の大地」の八箇所に植樹する事。――以上だ」
こちらもやはり事前に伺った内容通り。神への対価というだけあって、規模と難度は桁違いだ。
……ただ、話を聞いた皆の表情は、雲取様も含めて重苦しく、予想してたのと雰囲気が違う。後ろ向きと言うか、腰が引けてると言うか、良しやろうって雰囲気は微塵も感じられない。
イズレンディアさんを見ると、こうなる事は予想通りだったのか、皆の態度にも驚いていない。
沈黙を破ったのは、ユリウス様だった。
「啓示は確かに拝聴した。ただ、この件については、検討した上で改めて返答するものとしたい。皆もそれで良いだろうか?」
ユリウス様の問い掛けに、皆もそれしかないと言ったようにゆっくりと頷いた。シャーリスさんも、そんな反応に異を唱えるつもりはないようだった。
各勢力の代表、大統領に鬼王、皇帝に女王陛下、長老と揃ってるのに、どうして?
十分、達成可能でリターンも大きい、さっきの話なら期限だって区切られてない、そんな好条件の話なのに、どうして?
僕の知らない「何か」があって国として、集団として動けない、動きにくいってこと⁉︎
僕のこれまでの働きでは足りなかったってこと⁉︎
どうして⁉︎
『……協力してくれないんですか?』
泣き叫びたいのを堪えて、それでも、皆に問い掛ける言葉が漏れてしまった。
評価、ブックマークありがとうございました。執筆意欲が大幅にチャージされました。
連樹の神と世界樹からの啓示は、事前に聞いていた話と変わりがなかっただけに、アキとしては十分リータんが大きい、期限も区切られてない、好条件の話と認識していたのに、代表達の反応が予想とあまりに違い過ぎて、ショックを受けてしまいました。キリがいいので今回はここまで。11、12パートの2回で答え合わせです。
アキも、平時であればここまで取り乱すこともなかったんですけど、心話の許可が下りない程度にはまだ回復しきってない状態ですからね。
次の投稿は、十二月三十日(水)二十一時五分、年内ラストです。