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12-9.代表団到着(後編)

前回のあらすじ:代表の皆さんも到着し、前回と違い、市民の皆さんも沢山出て賑やかに出迎えたそうです。こうして交流の輪が広がるのは嬉しいですね。(アキ視点)

代表の皆さんも集まったという事で、関係者を集めて昼食会が開かれることになった。


庭を利用して、テーブル席を複数設けて、食事が振る舞われた。と言っても、料理は摘んで食べられる軽食メニューって感じで、どれも一口で食べられるよう工夫する徹底ぶりだった。


僕が呼ばれたのはやはり、一番濃い面子が集まる中央テーブルで、人類連合からはニコラスさん、鬼族連邦からはレイゼン様、小鬼帝国からはユリウス様、共和国からはヤスケさん、それに妖精の国からはシャーリスさんと、壮々たる面々だ。

足元にはトラ吉さんが寄り添っててくれて安心できる。僕の隣にはお爺ちゃんもフワフワと浮いてるのもいつも通り。


皆さん、今回は公式行事という訳では無いから、ラフな服装なのもありがたい。


「皆さん、お久しぶりです。こうして再会できてとても嬉しいです」


「久しぶりだな、アキ。洗礼の儀では存在感を十分に示したと聞いたぞ。候補者達が、天空竜との対面と並び称する程だった」


ユリウス様が、少しアピールし過ぎたかもしれん、と苦笑しつつも再会を喜んでくれた。


「次元門の研究では、かなり落ち込んだと聞いたが、だいぶ持ち直したようでなによりだ。今回は女衆も同行してきた。アキと話がしたいと煩くてな。暫く逗留するから、満足するまで付き合ってやってくれ」


レイゼン様も久しぶりだな、と笑顔で話してくれた。相変わらず覇気が凄くて心地よい。


「はい、こちらこそお願いします。普通の女性の方々とお話しできると聞いてとてもワクワクしてます」


そう話すと、連れてきた女衆は、ライキさん程では無いにせよ一般とは言い難いからそのつもりでいろ、と忠告された。話ぶりからして、レイゼン様も少し苦手意識がある方々のようだ。


「あれから三ヶ月経ったが、連日のようにアキ達の報告が届いたせいで、離れた気がしなかった。派遣してくれた者達のおかげでだいぶ楽になった件は感謝するよ」


ニコラスさんはやぁ久しぶり、と軽く手を挙げて、以前より余裕のある元気そうな表情を見せてくれた。目にも力強さが感じられて、少し見違えたくらいだ。


「こちらも、大勢、ロングヒルに来て頂けてとても助かってます。これからも宜しくお願いします。それと印象が少し変わられていて驚きました」


今の方がずっといいと褒めると、それは光栄だ、とフワリと笑顔で受け流してくれた。うー、なんか大人って感じで格好いい!

これがニコラスさんの本来のスタイルなんだろうね。初めの出会いが一番お疲れの頃だったのかも。


そうして、久しぶりの出会いを懐かしんでいると、ヤスケさんが頃合いを見て、話始めた。


「こうして皆で春を迎え、同じ席を囲めた事を嬉しく思う。だが、僅か三ヶ月だが、皆をこれほど遠く感じる事も無かった。こうして共に荷を背負ってくれる事に感謝すると共に、皆がいる間は少し楽をさせて貰うとしよう」


相変わらず、薄暗くて奥底の見えない目だけど、それでも再会を喜んでいるのがはっきりと伝わってきた。ただ、荷を背負うの下りで見せた笑みは、何処かミア姉の見せる意地の悪い雰囲気のようでもあり、内心が透けて見えるようだった。


話を受けた三人も、何とも微妙な表情を浮かべ、それでも仕方ないと頷いて見せた。


「敬老の精神は見せねばな。シャーリス殿もヤスケ殿の荷が重いように見えたら少し手を貸してくれれば幸いだ」


ユリウス様がそう話を向けた。シャーリスさんも、花の様に微笑んで、フワリとヤスケさんの隣に飛んでいった。


「妾の手は小さいが、無いよりはマシじゃろう。妾とヤスケ殿の仲だ。遠慮はいらぬ。必要とあれば手を貸そう」


ヤスケさんは、シャーリスさんの言葉に笑みを浮かべながらも、三人の代表に、こいつはこんな奴なんだ、と少し疲れた眼差しを向けた。


妖精さん達は、フリーダムなところがあるからねぇ。


「さて、積もる話は多いが、時が限られる。今は、明日に備えて、認識を揃えておきたい。アキ、我々が去ってからこれまでにあった話を説明して欲しい。大筋は我々も知っているから、軽く説明をして、質問に答えてくれれば十分だ」


ニコラスさんが、そう仕切ってくれた。

そう、明日。


「連樹の巫女ヴィオさんから神託を聞く件ですね?」


「そうだ。巫女は神の言葉を伝える。だが、それを聞き解釈するのは我らだ。故に正しく言葉を理解しなければならん。アキ、始めてくれ」


レイゼン様が、巫女を経て間接的に言葉を聞く事の危うさ、注意すべき点を話した。


確かに。神が全ての人に直接、言葉を伝えれば誤解は生まれにくいと思うけど、実際にそれをやったら大惨事間違いなしだ。

でも、巫女経由となれば、常にその言葉は正しいのか疑念が残る。それに微妙なニュアンスの違いなどもあって、本来の意図の何割かの情報は抜け落ちるのは避けられない。


僕は、この冬に行われた研究や、その成果などについて説明を始めた。特に「マコトくん」や世界樹、連樹に絡む部分は皆が熱心に経緯の把握、話の順に至るまで念入りに確認するくらい、慎重だった。





話を一通り聞いて、レイゼン様は呆れた声をあげた。


「つまり、竜を召喚し、小型でも召喚できるようになり、妖精を大勢喚ぶこともできるようになったのか。しかも毎日のように喚び続けて、小型召喚の感覚ズレもかなり改善してきた、と。当事者から聞かなければ冗談にしか聞こえん」


報告は受け取ってたようだけど、普通の召喚は、魔力を貯めて、儀式をして、大規模魔術として発動してやっと僅かな時間、上位存在を降臨させるというモノだから、毎日、日課のように妖精の団体さんがやってきて、小型召喚された雌竜の皆さんと茶飲み話をしているのは、確かに話がかけ離れ過ぎてて現実味が薄いかも。


「その辺りは、雌竜の皆さんも、話をしたがっていたので、実際に目にする事もできるでしょう。沢山の妖精さん達は遠目で見るのがお勧めです。何十人もの好奇心旺盛な子供の群れみたいなモノと、竜達も直接話すのを拒んでいるくらいですから」


そう話すと、シャーリスさんは、黙って静かにしている妖精など有り得んのだから仕方ない、などと開き直って見せた。


おかげで、代表の皆さんも、大勢の妖精さん達に囲まれたいなどとは言い出すのを辞めてくれた。せめて、高校生の授業時くらい落ち着いていてくれれば、まだいいんだけど、スターを前に大興奮してる小学生達って感じだから、静かに、と言っても本人達もどうにもならない部分もあると思う。


「そして、「マコトくん」からの啓示か。しかも、具体的な指示まであるとは前代未聞だ」


おや、ユリウス様が言うならそうなんだろうけど、なんか不思議だ。そう思っていたら、ヤスケさんが教えてくれた。


「神と言っても実体のある竜や樹木の精霊(ドライアド)達と、実体のない「マコトくん」のような神では在り方が違う。後者は人の行いを後押しするのが常で、自ら何かを望む事は聞いた事がない。「マコトくん」とミアの特別な関係があればこその事例とは思うが、信仰に支えられた神が自ら動くという事は、人々が求める姿との乖離に繋がりかねん。詳しくは後でケイティから学んでおけ」


信仰に支えられた神は、信仰の総意によって形作られる漠然とした存在って事かな。実体がある神は、信仰が目減りしたって影響は少ないけど、信仰で成立する神は信仰がなくなれば消えてしまう……とか。


そう考えると、「マコトくん」の今回の行動は、確かに異例中の異例か。というか、信仰に支えられる神なのに、在命の特定個人と結びついているという時点で、そもそも異質な気もする。あー、新興宗教なら教祖と神は密接だね。ミア姉は教祖じゃないから、かなり違うけど。


因みに、イズレンディアさんから聞いた、連樹の神様と世界樹の提案の件は、あの場だけの話という事で、秘密扱いになっている。それは人伝に聞いた話であり、巫女から話を直接聞いた訳ではないこと、それに全てを聞いた訳でもないからミスリードになるのを避ける必要もあった。


「各地の樹木の精霊(ドライアド)に妖精の道の発見に助力が可能か相談した件、それに最弱の依代を作るための素材として世界樹の枝を所望する件、か。まるで神話の世界に入り込んだかのような話だ」


ニコラスさんがわざと目を見開いて、驚いた、と戯けて見せた。まぁ、妖精の女王様が同じテーブルを囲んでいる時点で、確かに前例はなさそう。


「我々、街エルフからすれば、妖精の道を通じて、魔導具を放り込んで、転移門の起動確認をするという話自体、酒場の法螺話としか思えなかった。可能か不可能かを論じる前に、正気かどうか議論が巻き起こったほどだ」


えー、それは知らなかった。そう思ったら、見透かされたようで、正気を疑う方が普通だと呆れられた。


「世界間の転移、夢があって素敵じゃないですか。小型召喚の竜に、妖精の道から妖精界に行って貰えたら、空間跳躍テレポート可能か試すのも楽しみですよね」


僕がそう話すと、ヤスケさんは顔を顰めた。空間跳躍テレポートしてきた天空竜に襲われた経験でもあるのかも。――少し表現がマイルドになるように気をつけよう。


「妾達とて、こちらの話は吟遊詩人が語る物語程度の扱いだった。直接、接点のある隣国よりも早く、これほど身近に交流する事になるとは、夢にも思わなかったものよ」


シャーリスさんが言うと説得力が違うね。妖精族は物語の中に出てくるだけ、御伽の国の住人扱いだったんだから。


「これ迄の常識が通用しない時代、そういう事だろう。しかし、国や人々はそう直ぐには変わらん。混乱を起こさず、国を速やかに変える。急げば無理が出るが、時間を掛ければ良いというものでも無い。悩ましい話だ」


レイゼン様がそう話すと、皆もそれに同意した。ヴィオさんの伝える神託、そのインパクトを考えると、何か問題が出そうで、息苦しさを覚えた。

ブックマークありがとうございました。執筆意欲がチャージされました。

これまでの研究組の成果と、こちらが連樹や世界樹に求めた内容について意見交換ができました。アキは、十分勝算ありと考えて、聞いてない要求が入ると少し手間取る程度で考えてますが……

次の投稿は、十二月二十七日(日)二十一時五分です。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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