表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
300/769

12-8.代表団到着(前編)

前回のあらすじ:洗礼の儀も無事終わりました。立会をしていた妖精さん達も、仕事が終わるや否や、アイリーン謹製の焼き菓子に殺到してましたし、妖精族に落ち着けというのは無理な話なのでしょう。

巫女候補の人達との懇親会は、思ってた以上に心身への影響が大きかった為、医師達の対応が優先されて後回しに。


結果として、三大勢力の代表団を迎える日が先になった。前回同様、護衛は少数精鋭だけど、それぞれが文官達を連れていたり、新たにロングヒルに滞在する人達を同行していたり、食材なども持参していた事もあって、かなりの人数になった。

道も限られ、滞在地区の混雑を抑えるために、各勢力のロングヒル入りは時間をズラして行われ、その様子をお祭り騒ぎのように手弁当であちこちに見物に繰り出す人達も出て、かなりの賑わいに。


前回と違い、小鬼族、鬼族も親睦を深める方向にシフトしているので、行列も警戒色を薄めたものとなり、市民達からも熱い歓迎を受けていた。


一部では、鬼族の料理を食べる事を粋と感じて、果敢に挑む市民達まで出る始末で、半年前に比べれば、随分と馴染んできたと言えそうだ。


「それでな、エリーに話をつけて貰い、女王陛下や近衛達と見晴らしのいい一角に陣取って、やって来る代表達の行列やそれを歓迎する人々の様子を眺めておったんじゃ」


魔導具で様子を記録もしてくれておるから、後で見てみよう、とお爺ちゃんも興奮気味だ。


「おー、妖精さん達も遂に市井の人達に目を向け始めたんだね。ちゃんと透明化して?」


「勿論、妖精らしくそっと伺ったとも。行列の方が主役じゃからな。撮影はエリーの手配した技術者達がしっかりやっておった」


なるほど。撮影している人達がいるとは思っても、そこに妖精さんまで同行してるとはなかなか思い至らないだろうね。いい作戦だ。


「シャーリスさんは何か言ってた?」


「女王陛下は、背丈の違う種族が集う様は中々興味深かったと話しておった。見物人達も鬼族は後ろの方に、小鬼族は前の方にと、警備の者達が区分けする事で、いらぬ争いを避けていたが、なかなか手際が良かったと褒めておったぞ。いずれ人族との交流をする際に参考になりそうじゃ」


「妖精さん達が歓待するとなると、旅人に飲み物や寝床を提供するだけでも大変だもんね」


人間換算なら、十五メートル近い巨人族を出迎えるということになる訳だから大変だ。ドラム缶サイズのコップに飲み物を注いで、なんてノリで飲食されれば、街が傾きかねない。スケールが六倍違うという事は雑な計算だけど、立体換算だと二百十六倍だからね。何十人か来たら、妖精さん達の食料を食い尽くす勢いになりそうだ。


「人族との交流をするにしても、森の恵みや泉の水を飲ませる程度で済ませるしかないじゃろう。人族も儂らから腹一杯食べさせて貰えるとは考えまい」


「こちらの竜族と同じで、嗜好品のケーキとかで気分的に満足して貰う感じだろうね。それで、何か目新しい事とかはあった?」


そう話を振ると、お爺ちゃんは、よくぞ聞いてくれたと、杖を振り、手を広げて見せた。


「鬼族がな、彼ら用の荷車に山のように食材を積んでやってきおった。運んでいるのも恰幅のいい女衆でな。そこだけ市場の賑わいを持ってきたように騒々しかったんじゃよ。どの種族でも女衆は逞しいのぉ」


「空間鞄で運ぶんじゃないの?」


不思議に思ったら、ジョージさんが教えてくれた。


「保安の関係上、持ち込む際に空間鞄の中身は全部取り出すのがマナーなんだ。今回集まっている使節団も、それを前提に中身を荷造りしてきている。それと、俗な話だが、所謂、示威行為(デモンストレーション)って奴だ。我々はこれだけの物資を用意できる、とな」


なるほど。確かに空間鞄に入れたままだと、見た目のインパクトがないもんね。


「ニコラスさんの方はどうでした?」


「彼ら自身は人数も控えめで、服装や年齢、性別が多様だった程度じゃった。じゃが、大盛り上がりじゃったぞ。何せ、先行でロングヒル入りしている文官達が総出で歓迎しておったからのぉ」


先行組と合わせれば地元なだけあって人数は最大だもんね。なかなか上手い作戦だ。


「小鬼族は?」


「他と比べると手堅い感じじゃった。文官風の者達が多かったが、若い者から年寄りまで、幅広い年齢層の者達がおってな。杖を突きながら歩いているような年配の者達もおれば、成人したばかりのような若い者達もおったぞ」


ふむ。元々、人の胸くらいまでの背丈しかない小鬼族だから、鬼族みたいに大きさで度肝を抜くような真似はしないと思ってたけど、多様な幅広い層の人達を連れてくるとは、なかなか手が早い。


「ユリウス様、打つ手が早いですね。これは小鬼族のイメージ改善にもかなり効果がありそうだし、小鬼帝国内の意識改革にも踏み込む話だから、他の種族も意識を切り替えていかないと、取り残されそう」


僕が褒めると、ケイティさんが疑問を口にした。


「使節団としては地味に思えますが、それ程の策でしょうか?」


僕が小鬼族、というかユリウス様に好意的だから、多分にリップサービスが含まれていると考えた感じかな?


「小鬼族は人数は多く、国土は広大なものの、貧しい土地が多く、技術も見劣りします。そこで路線変更をしたんでしょう。他の種族が立派な者達や豊かさを示す、ちょっと外向きの装いで手探りの交流を進める入り口の戦略なのに対して、小鬼族は、敢えて身の丈を示して、俊敏で素早く浸透してくる暗殺者集団というイメージも、蓋を開けてみれば、他の種族と同様、普通の市民がいて、老も若きもいて、争いばかり求める者達ではない、そんな市民同士の本格的な交流に一気に繋げようという戦略と思います。その点で行けば、女衆が出てきているだけ鬼族も身の丈を示そうとしてますね。人族はまぁ、地元の利点を活かしてロングヒルに普通の市民はいるので、市民の交流という意味では、鬼族が若干遅れている程度かと」


取り繕った外面だけ示すような使節の交流はせいぜい初手であって、どんな種族だって誰もが賢い、強い、美しいなんて訳が無いんですから、と補足するとケイティさんが少し考え込んだ。


「どうしました?」


「その話で行くと、街エルフは不利では無いかと考えました。そもそも出歩く者も少なく、魔導人形達に生活を支援されているので、ロングヒルにいる市民層のような人達が殆どいません。街エルフの側が普通に接してるつもりでも、他の種族は外行きの態度と捉えるかもしれないと、そう思ったのです」


むむ。それは厄介かも。常にお手伝いさんがいて、助手がいて、秘書がいて、調理をするとしてもそれは半分以上は趣味の域で、庭の手入れにしても、畑仕事にしても同様となると、うーん、確かに。


「まぁ、その辺りはヤスケさんや他の長老の皆さんに任せましょう。街エルフにだって子供はいる訳で、なんでもできる成人ばかり前面に出すのを止めれば、印象も変えられますよ、きっと」


そう話したけど、皆の雰囲気は微妙だった。


あれ?


「今、ダントツで有名な街エルフの子供というと、アキじゃからなぁ。それにロングヒルに来ている街エルフは腕の優れた人形遣い達ばかり。アキの家族も一般とは言い難い。ヤスケ殿も苦労するじゃろうて」


お爺ちゃんの言葉に皆が頷いてみせた。市民同士の草の根交流とかになると、街エルフは何周か遅れて不利そうだった。

ブックマークありがとうございました。執筆意欲がチャージされました。

三大勢力の代表達も到着し、前回と違い、今回は市民達も繰り出して歓迎するなどお祭り騒ぎになりました。こういう変化は楽しいものですね。それと街エルフの市民交流、やはり難しそうですね。大勢の魔導人形達によって支えられている暮らしと言うのは、他の種族からすれば王侯貴族相当ですから。まぁ、そういうものと割り切るしかないでしょう。

次の投稿は、十二月二十三日(水)二十一時五分です。


<雑記>

本日、成分献血してきました。駅前には献血バスも出ていて、とにかく献血して貰おうと奮闘中です。献血は不要不急ではなく、必要で、しかも長期保存できないので急でもあります。現在、血液が不足している状況です。余裕のある方はぜひ献血にご協力ください。輸血が必要なタイミングで、血液が足りません、などと言われたら助かる命も助かりません。元気な人はぜひ、その元気を分けてください。手軽にできる社会貢献活動です。あと何十年かすれば人工血液が供給されるようになって、献血も過去のものとなるでしょうけれど、我々は現代に生きていて、我々を助けられるのは同じ時代に生きている我々だけなのですから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
評価・ブックマーク・レビュー・感想・いいねなどいただけたら、執筆意欲Upにもなり幸いです。

他の人も読んで欲しいと思えたらクリック投票(MAX 1日1回)お願いします。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ