第十章の登場人物
今回は、十章で登場した人物や、活動してても、アキが認識しないせいで登場シーンがなかった人の紹介ページです。十章に絞った記述にしているので、各人物の一般的な情報(立場や外見、これまでの活動)については、九章の登場人物紹介をご覧ください。
◆主人公
【アキ】
三大勢力代表も帰って、冬の間は運動不足解消の為、スノーシューを履いて雪道を歩いたり、簡易住居を作ったりと、野外活動の頻度が上がった。後はあちこちの竜族と心話をしたり、研究組に混ざって、竜族の召喚や小型召喚、妖精族の魔力を一割に落とした大量召喚などに尽力している。まぁ、家族揃っての食事や団欒もあり、この冬は穏やかに過ごせたと言えるだろう。
次元門構築計画も小鬼族の研究者団が加わることで、遂に現時点で期待できる全種族の精鋭研究者達を集めることができた。アキの期待も嫌がおうにも高まるところだが……。
本編でも語られているが、アキが集めている竜族達の好みや他の竜との関係、趣味、嗜好といった情報も、生ける天災たる天空竜の普通なら入手不可能な情報となれば、その価値は計り知れない。そのため、家令のマサトや秘書のロゼッタが分析情報も付与することで付加価値を高めて提供することで、アキの活動資金を捻出するだけでなく、財閥の新たな活動の柱にまで成長した。
◆アキのサポートメンバー
【ケイティ】
アキの生活全般を支えつつ、マコト文書の専門チームとしても活動しており、その業務は多岐に渡る。幸い、家政婦長としての仕事の半分程度はシャンタールに権限移譲しているため、オーバーワークは避けられている。今は少ない時間を捻出してコツコツと、アキとの心話を行うための研究を進めている。現在は森エルフのイズレンディア、ドワーフのヨーゲルとの共同研究となっており、その取り組みにはリアも参加している。幸い、春先には試行できそうな見込みである。ケイティがアキの事をお姉さんとして揶揄うのは、反応が初々しいから、というのもあるが、もう一つは、次元門構築計画が本格始動する為、アキのストレスを少しでも軽減しておこうという配慮でもある。街エルフだけでは手詰まりだった話が、多くの多様なメンバーを集めたとは言え、解決にすぐ向かうとは思えないからだ。
【ジョージ】
春先には、三大勢力の代表がまたロングヒルに集まる事が決まり、その対応に奔走している。前回は急に決まったのであちこち問題もあったが、その時の経験を踏まえて、次は改善できそうで安堵している。第二演習場と大使館領の間を飛行する小型召喚の竜達や、一割召喚される妖精達の対応も頭が痛い。素早く空を自由に飛び回る者達を考慮したセキュリティ対策など、これまで無かったからだ。対策を実施してみて、問題点を洗い出す作業が続いていて苦労が多い。趣味の小説執筆も滞りがちだ。ウォルコットや翁との晩酌が日課となっており、ストレス解消と見聞を広げる事に役立っているらしい。
【ウォルコット】
別邸の管理は家政婦長のケイティがトップだが、次席は誰かと問われれば、ウォルコットと答える者が多い。彼は別邸にいる全員と何がしら接点を持っており、活動がスムーズに行くよう、様々な働き掛けを行なっており、それに助けられた者も多いからだ。ウォルコット自身も助けようという気持ちはあるが、半分は観察者としての好奇心を満たす為だったりする。彼はこうして見聞きした様々な話を手記に書き記している。後年、彼の手記は高く評価されることになった。三大勢力が歩み寄り、建国に至る時期は、膨大な資料は残されているものの、信じ難い情報が多く、頭を悩ませる研究者達が多かった。そんな彼らの救いとなったのが、一般人目線で書かれた手記だった。結果だけ見れば難解な出来事も、間近で流れを見続けた一般人の視点があることで、理解可能な、実際にあった事と判断する事ができたからだ。マコト文書の非公開部分、ミアが感性全振りで記述しているところなどを読めば、ウォルコットの手記の素晴らしさを理解できる事だろう。
【翁】
アキの子守妖精として、こちらに常駐して妖精族の窓口として、かなり自由に動き回っている引退老人、それが翁だ。引退したと言いつつも、現政権を担う女王、宰相、護衛の近衛、ギルドの長たる賢者や彫刻家にも強い影響力を持つ、妖精界でもダントツに変わり者としても有名な老妖精である。翁一人が召喚されていた頃は、風変わりな体験談を語るなぁ、と呆れ半分に見られていたものだが、誰でも召喚されれば、物質界を体験できる今では、物質界研究の第一人者として、彼を讃え、敬い、そして妬む者が激増している。
異世界を心底楽しむ彼の姿は、異世界への興味を掻き立てるのに大いに役立っているのだが、加熱し過ぎとなってきており、鎮静化に手を貸すよう言われて、程々に楽しく話すという難題に取り組む日々である。
一割召喚で大勢の妖精達が、こちらへの召喚を楽しむようになってからは、こちらで妖精達の活動を支える者達との意見交換や愚痴を聞き、妖精界では召喚経験者に体験談を語る際の注意すべき点を伝えたりと、忙しい日々を送っている。それでも翁からすれば、やっと自分の打ち込んできた物質界への理解を皆が持ってくれたことに感無量といったところだ。
賢者がド嵌りするのを防ごうとした前例もあるので、オーバーワークにならないよう、妖精女王から派遣された付き人達が見守っているので、今のところ問題はないようである。
【トラ吉さん】
寒い冬の時期になった事もあり、部屋の中で丸まって寝てる事が多くなってきた。それでもアキが出かける時には、ちゃんと防寒着を付けて同行しており面倒見がいい。トラ吉の振る舞いを見ていると、アキを目が離せない幼子のように思っている節がある。会議の場でも、アキの足元を定位置として、大人しく周囲に目を配る様は、保護者のそれであり、彼のそんな態度は、アキに不用意に近づこうとする心を折るのに十分過ぎる効果を発揮している。
【マサト】
ミアの家令として、人類連合の中小国から、逸材を雇い入れて、ロングヒルで行われている各種活動がなんとか回しており、活動成果を適切に商品として、必要なところに渡す事で、全体としては収益を大幅な黒字に引き上げている。財閥の運営を一手に引き受ける彼だが、アキの事をミアに並ぶとも劣らない存在と位置付けている。これは二人とも財閥全体を振り回すほど、行動が自由奔放で予想外、常識なんて軽く踏み潰していく様が瓜二つな為。まぁ、それ程だからこそ、マサトも家令としての今の立場にある事に満足していたりする。
◆魔導人形枠
【アイリーン】
大使館や別邸で働く者が増えていく一方な為に、アイリーンの料理人特化な業務も不動の地位となってきた。勿論、マコト文書の専門家としての仕事もあるが、緊急時以外は料理に専念している状態だ。
幸い、料理人志望の女中人形達も多い為、上手く分担する事で、膨大な食を支えつつも、新しいレシピの研究時間も捻出できている。鬼族の女衆を迎える為に黙々と出来た料理を保管庫に放り込むのが最近の日課である。勿論、そうして作業は増えているが、アキの食事を作ることはアキの家族以外と分担することはしていない。やはり自分はまず別邸の専属料理人だ、と考えているからだろう。
【ベリル】
部下を付けられて、不得意ながらもそれなりにはチームとして活動できていたのだが、趣味の天体観測やジョージと始めている執筆が滞りがちでストレスが溜まってきていた。また、不慣れな管理に時間を取られては、彼女の持ち味を殺してしまうとのケイティの判断もあり、マネジメント系を支援する秘書人形が付けられることになった。その策は功を奏し、マコト文書やアキの行動に伴う情報の記録、分析、説明用の資料作成の為の検討といったところに集中できるようになった。また、余暇時間も確保できるようになり、さっそく、天体観測や執筆もできるようになった。
【シャンタール】
アキの服のコーディネートをしたり、屋敷の掃除をしたり、食器を磨いたりと、料理に特化したアイリーン、情報処理系に特化したベリルと違い、その他全般を引き受けており、ケイティもかなりの裁量を与えている。彼女は部下に仕事を任せるのが得意なようで、何故か常に余力を残していて、緊急となれば、アイリーンやベリルの手伝いもしてたりする。
ケイティの家政婦長としての仕事の半分くらいはシャンタールが担っていると言っても過言ではないが、彼女は家政婦長に昇格する気はないようだ。
【ダニエル】
マコトくんを信仰する司祭であり、各地から呼び寄せた司祭達にも仕事を分担して貰う事で、マコト文書の読み聞かせや配布、信者獲得も順調に推移している。大株主の権利として大量のワインが届いたこともあり、ダニエルは惜しみなく、それを皆に試飲させて、愛飲者を増やそうとしているが、その甲斐あって、アイリーンが料理にワインを使う頻度が増えており、大使館も含めて大口顧客獲得となったそうだ。ウォルコットの助手として、彼の活動にも付き従っており、その過程で得られた知識を、マコト文書の普及、信者獲得に活用していたりする。といってもあくまでも興味があればどうぞ、といったスタンスであり、だからこそ、ウォルコットもダニエルの活動を容認しているのである。
【護衛人形達】
雪道でのアキの初心者ぶりに困惑しながらも、野外訓練時には周囲に展開して同行しており、よく起こるハプニングにもうまく対応してくれている。アキは街エルフらしく視野が広くよく見えるので、気になる事があると意識が逸れやすく、彼らからすると幼子のようで目が離せないらしい。それでも冬の期間はそれなりに野外訓練の場も確保できたので、アキの行動パターンをある程度把握できたようだ。お疲れ様である。
【農民人形達】
別邸に配属されている農民人形達は、園庭としての仕事で、庭先での会談のセッティングが多い為、除雪や手入れに大忙しだ。会場のセッティングにしても、軽自動車並みの小型召喚竜達や鬼族がいるので、人族のみの会場とは勝手が違い、試行錯誤が続いている。落ち葉を集めたり、積雪に備えて枝を吊ったり、寒さに備えて幹に藁を巻いたりとやる事は多い。アキの野外活動を支える彼らの活躍は重要なのだ。本編でも少し描写を入れてあげたいところ。
【ロゼッタ】
出番はなかったが、アキの集める竜族の情報を三大勢力に高値で売り付ける事で、かなりの収益を上げているのも、彼女の手腕があればこそ。単なる情報の羅列ではなく、分析した内容を付けて付加価値を高めるという工夫も、高いと言われながらも、皆が喜んで購入する所以だろう。
【タロー】
小鬼人形の一人にして、仮想敵部隊の部隊長でもある彼は、小鬼達の技術者団やその関係者達がやってきてロングヒルに常駐することになったため、直接交流することでさらに理解を深めるよう新たな任務が課せられることになった。小鬼帝国との小競り合いが今後は減少していくことが予想されるため、部下達を含めて、仮想敵部隊としての仕事が減った後のことを考えての策である。彼の苦労は当面続きそうだ。
【仮想敵部隊アグレッサーの小鬼人形達】
街エルフ謹製の魔導人形の小鬼達で、総合武力演習時の損傷はまだ修理ができてない個体も多い。それだけに、ロングヒルにやってくる、これまで接点のなかった小鬼達との交流によって理解を深めて、小鬼専門家としての新たな仕事に対応せよ、と言われて困惑している者達も多いようだ。もっとも元から仮想敵部隊に選抜されるほどの精鋭であり、いずれは退役することを考えれば、そんな仕事も悪くない、と考えてはいるようだ。
【仮想敵部隊の鬼人形さん】
鬼族の一般的な成人男性であるトウセイが来たことで、彼もまた鬼族に対する理解を深めていた。統一国家樹立となれば、彼のような仮想敵部隊の仕事も減ってくる。そこで、彼もまた鬼族専門家となるべく、鬼族の文化、風習、一般的な視点などを得ようと、トウセイとの交流を増やしている。
【大使館や別館の女中人形達】
アキが来るまでは、街エルフの大使館では小さな会食がある程度で静かなものだったものだった。しかし、今では不夜城の如く、大使館も別邸もフル稼働状態で、増築まで行われるほどであり、そんな館の活動を支える彼女達も大幅に増員されるに至った。それぞれのスキルや希望に応じて、配置転換や昇格も行われており、活躍の場を与えられた女中人形達の意欲は高い。激務を支える為にメンテ専門の人形遣い達も派遣されているのも、モチベーション維持に役立っているのだろう。
◆家族枠
【ハヤト】
ロングヒルでの事態の変化が余りにも早い為、有力な議員であるハヤト&アヤの常駐が認められて、更に追加で長老まで誰か一人は滞在するという前代未聞の体制を敷くに至った訳だが、これはマコト文書の理解が浅い他の議員では、アキの行動に混乱して振り回されるだけとハヤトやアヤが説得し、そして長老三人による面接を経て、他の議員達を納得させた手腕によるところが大きい。
だが、そんなハヤトが今、頭を悩ませているのは、アキとの家族としての絆をどう育むか、だったりする。家族の支えが必要な時期が来ている、そう考えているからだ。
【アヤ】
本編では語られていない(いずれ短編で補足)が、アヤはロングヒルに来てからは、少しでもアキとの接点を増やそうと色々と画策している。ただ、アキが起きている時間が短いこともあって、どうしても纏まった時間は確保しにくいのが実情だ。一応、竜族と交わした心話の内容をアキから聞く際に同席するなど工夫はしているのだが、共同作業者といった感じで、家族団欒ではないのが悩ましい。
三大勢力の代表に家族写真を送ろう、とアキが当然のように話をした事に夫妻は何よりも喜んだものだった。
【リア】
苦手な心話にも取り組んで、アキの代わりにできる部分を積極的に受け持つ事で、接点を増やし、頑張る姉の姿を見せて、アキとの心の距離を縮めようと日夜、奮闘中。その甲斐あって、ケイティには手を握られて頬を赤らめたりしてるのに、リアが同じことをやっても、何やってるの、と言われるくらいにはアキに身内として認識されている。ただ、リアからすれば、もうちょっと初々しい反応を揶揄って自分も楽しみたい、なんて気持ちもあったりする。自分もできる部分を分担することでアキの負担を減らそう、という新たな目的意識が生まれたことで、生活態度もだいぶ改まってきたようだ。
【ミア】
ミアが稀有な魔導師であることは多くの者達が知るところだが、それを前提として、アキが竜族と心話もできてますから、と話したことは、聞いていた連樹の神官達からすれば、常識破壊そのものだったことだろう。ミアの真似をして魔獣や天空竜、そして神といった上位存在達と交流を試みる者達は多くいたが殆どが失敗に終わったのだから。それだけにそんなミアと同じように、天空竜と世間話をしているアキは、理解不能な存在扱いされているのも仕方ないことだろう。ただ、アキも説明しているように、実は上位存在との交流に必要なのは「鈍感力」だったりするんじゃないか、という新たな視点も生まれたことで、ミアの数多い偉業への認識も変わっていくことになる……かもしれない。
◆妖精枠
【シャーリス(妖精女王)】
国の重鎮ばかり召喚されているが、使ってない事が多いのだから一般にも開放してほしい、などと陳情する者が後を立たず、対応に苦慮していたところに、魔力を一割に落とす代わりに召喚人数を十倍に増やす案が出た為、そちらで増員を対応する方向で指示した。これはやはり、空き時間を活用して時間帯をずらして二十四時間、三交代制で召喚するというのは、生活サイクルも崩れ、妖精の国の側の負担も大きいと難色を示していた為だ。幸い、一割召喚自体は成功したので、当面はこの方向で運用していくつもりである。擬似的に魔力を再現して纏わせる方法も開発を指示した。こちらでの評価で、妖精が周囲の把握に魔力感知を用いる比重が高い事がわかり、一般への普及には欠かせない術式と判断したからだ。
竜族の小型召喚も成功し、後は異種族化と、妖精の国からアキを認識できれば、アキを妖精の国に招待できると、今から楽しみにしている。やはり自分達が物質界を見て感動したように、アキにも妖精界を見て楽しんで欲しい、そう考えている。
【賢者】
竜族の召喚、簡易召喚、魔力の位階変更、宝珠式魔法陣、小型召喚、それに妖精達の魔力を一割に落とした大量召喚と、多くの術式の改善で主力として十分に研究を堪能して御満悦だ。妖精族の高魔力域における魔術知識、竜族の竜眼による詳細な分析、街エルフの緻密な魔法陣技術、それにアキとリアが提供する膨大な魔力が揃ったからこそ成立した大躍進と言える。それだけに彼も次元門構築やアキの妖精界への召喚はぜひ成功させようと意気込んでいる。
【宰相】
部下の文官達を一割召喚で喚べるようになり、彼の興味は、国の体制の違いや、アキが語る地球の成功、失敗談の分析や、それらの妖精の国への応用に向けられている。先ずは読み書きからという事で、勉強会も始めたところだ。彼と文官達の静かな戦いは当面は続く事だろう。
【彫刻家】
召喚体の構成を三次元投影できる図式にする作業や、小鬼族達の組み立て式家屋建築は、彼の創造意欲を大いに掻き立てたようだ。魔術に対する理解も更に深まり、妖精の技もまた新たな発展を遂げる事だろう。
【近衛】
いくら鍛えていても、こちらの冬の寒さは防寒着なしでは無理と骨身に染みたようで、一割召喚の際には防寒着を着せた状態での召喚とするよう賢者に依頼するなど、細かい配慮を見せている。一割召喚では管制官として全体を統括し、魔力属性が完全無色透明である事の厄介さを理解した。妖精の国での召喚熱がある程度落ち着くまでは、彼が管制官として睨みを効かせるしかないだろう。
【一割召喚された一般妖精達】
厳選な賽子による抽選を勝ち取った異世界熱溢れる若者達であり、初召喚時には大騒ぎしていたものの、なんとか統制できる範囲に収まり関係者をホッとさせた。その内訳はバラエティに富んでおり、役職付きのエリートから、普通の市民まで、ごちゃ混ぜ状態である。賽子によるランダム抽出だから当然だが、ごちゃ混ぜ状態が混乱を招いた一因である事も間違いない。今後も定期的に抽選を行い、人員を入れ替えて召喚の影響を確認していくので、当面、大量召喚された妖精達の混乱する様子が続く事だろう。
◆鬼族枠
【セイケン】
立場としては調整組に属しているが、魔術の知識もあり、鬼族の体格を活かして、研究組の暴走を止めるために、研究に常に同席する日々だ。彼が見聞きした情報は他のメンバーにも共有されており、必要に応じて、調整組や他の面々が集うという柔軟な運用が可能になっている。その為、ロングヒルにおいて、セイケンの知的で落ち着いた振る舞いもあり、鬼族は急速に受け入れられ、頼れる仲間として認識されてきている。
【レイハ】
セイケンの補佐を務めており、セイケンが行くところ、常に同行し、セイケンが報告書を纏める際にも助力している。二人で分担しているからこそなんとかなっているが、全てをセイケンだけでこなそうとすれば破綻間違いなしだった事だろう。
【トウセイ】
鬼族の魔術専門家として、研究組の中、癖のあるメンバー達の中でも埋もれないあたり、やはり只者ではない。彼の振る舞いが小市民的に見えるからと言っても、代表に抜擢されるだけの力量は備えているという事だ。ソフィアと馬が合うようで、仕事以外の場でも交流を深めていたりする。
【レイゼン】
三大勢力の代表として、いずれは統一国家を樹立するという道を選んだ彼だったが、それがすんなり連邦に所属する各国の王達が受け入れる訳がなく、揉めるだろうと、内心覚悟を決めて帰国した。確かに初めこそ、鬼族連邦としての独立性を捨てる事に後ろ向きの意見も出たものの、ロングヒルで起きた出来事を全て書き終えた後には、皆がそれを前提として話し合う気運が生まれていた。……というのも、気が乗らないなら、乗り気な方だけでいいですよ、というアキの姿勢に恐怖を覚えたからだ。孤立の道を選べば、時代に取り残されて滅びるのみ、それがハッキリとわかったからだ。今なら鬼族は存在価値がある、変化の術もあり、その価値は高い。しかし、鎖国したなら、その価値は下がるだけ。しかも、人類連邦、小鬼帝国、妖精の国、竜族が組むだけでも、その勢いは止まるところを知らない事だろう。そんな彼らを前にして、レイゼンは腹を割って、ここが運命の分かれ道だ、と皆に覚悟を求めた。そして満面の笑みを浮かべて、それに何より自身が新しい世を見てみたい、と告げた。そんな彼をみて、皆も破顔してレイゼンと共に歩む事を誓ったのだった。
【ライキ】
セイケンがせっせと書いた報告書が届き、ライキの武を認める者達は、アキの事を理解できず、彼女にどんな人物と見たか説明を求めた。ライキは「武は人族の雑兵未満、魔力量も強さも竜寄りだが魔術の腕は見習い程度、半日も起きてられない、常識にも疎い。ただ、それらはアキの本質からすれば些末な事だ」と答えた。ならば本質とは何かと問われると「百億の民が五千年育んだ歴史、知識を持つ賢者、いや、隠者か。誰でも、どんな種族でも公平に、他人事として扱う姿勢と、天空竜達を相手に一人で対峙し、互角にやり合う胆力。そんな技能を持ち、精一杯背伸びして、泣きたいのを我慢してる子供だよ」と。
そんな説明に男衆は混乱し、女衆はライキを女扱いして弄り倒していたアキの姿勢に好感を持ち、大いに盛り上がることになった。ちなみに女衆はライキの家庭的な面もちゃんと知ってるので、そこに注目したアキを是非観に行ってみようじゃないか、と話してたりする。十一章でやってくる女衆はそんな連中なのだ。
【シセン】
先行でロングヒルに送り込んだメンバーが好感を得ている事もあって、後続のメンバーは更に文官寄りの者達を選抜する事にした。彼としてはそれで暫く様子見とする気でいたが、ライキと仲の良い女衆が自分達も行きたいと話をねじ込んできたため、慌てて、派遣メンバーを増員する事になった。更に鬼族の郷土料理に注目が集まっているのだから、料理人や常駐している者達が食に不自由しないよう、たっぷり食材も送るべきだと言われて、それらも盛り込む羽目に陥った。
【鬼族のロングヒル居残り組メンバー】
武器の代わりにペンを持ち、各勢力の文官達との交流に勤しんでいる彼らは縁の下の力持ちといったところ。表の活動をセイケン&レイハに任せて、周囲を固めるのが彼らの主な役割となっている。
【鬼族の職人達】
鬼族の大使館を黙々と建設しており、本格的な冬を迎える前に何とか外装は完成させることができた。ただ、内装は拘りもあるせいか、対外的に使われるところを優先して作業しており、まだ暫定状態の部屋も多い。今は女衆がやってくるとの連絡もあり、最優先で台所を完成させようと奮闘中だ。アイリーンを招いて、鬼族の料理を出そうと言うのだ。そうなれば台所は晴れ舞台と言っても過言ではない。それだけに彼らも必死である。職人気質な彼らではあるが、やはり徒党を組んだ女衆に睨まれるのは避けたいようである。
◆ドワーフ族枠
【ヨーゲル】
雪が降る季節となったが、ロングヒルに来ているドワーフ族の仕事は減るどころか増える一方であり、本国から呼び寄せる職人達も増えてきている。別邸にも新たに心話魔方陣や、小型召喚用の魔方陣を建設することにもなり、第二演習場にある魔方陣の改良も並行して行われている。また、大勢のドワーフたちの旺盛な食欲を満たすため、料理人達もやってきており、アイリーンとの交流も進んできている。今後も、魔方陣や魔道具の製造、研究となればドワーフ族の出番は増えていくことだろう。
【常駐するドワーフ技術者達】
アキが移動に利用している馬車は彼らの作品だが、これほどの頻度で普段使いされる馬車と言うのは、彼らにとっても想定外だった。
何せ一般的には馬車は式典や重要人物の遠出の際に稀に使われるモノだからだ。
必要な機能を満たす為に色々と無理をした作りなので、定期的なメンテナンスと改修は欠かせない。十章ではアキが御者台に乗る事を許可されたが、これも改良されたからで、初期導入時にはできなかった話だ。彼らのロングヒル暮らしは当面続く事だろう。
【施設建設で派遣されてきた百人のドワーフ技術者達】
複合工業施設も、冬を越すための躯体作りを優先したこともあって、多くの雪が降る時期になっても、建物の中での製造作業も滞りなく進んでいる。土台作りも終わっているため、ドワーフの国から様々な魔導具や、機械の運搬も始まっている。いくつかの設備は稼働も始めており、鬼族や妖精族に自分達の技を披露し、彼らとの技術交流も少しずつだが行われている。勿論、施設が全機能を稼働させるのはまだまだ当分先の話。彼らのロングヒル暮らしも何年かは必要となるだろう。
【ドワーフの職人さん達】
別邸の裏手に心話用魔法陣、宝珠利用型の小型/一割召喚陣を作るために新たに増員された方々。これまでのノウハウを活かして省スペース型にしようと奮闘している。当初は召喚陣の方は竜族なら小型召喚で、妖精族なら一割召喚できるようにしようとしていたが、切替よりは別に作った方がいいという結論になり、街エルフが新たに小型船舶用の宝珠を持ち込む流れとなった。小型召喚は所縁の品を使った方式限定の為、第二演習場と異なり、魔法陣は乗用車程度の大きさとしている。これは製造期間短縮の為。老竜のようにサイズ的に厳しい場合はこれまでと同様、第二演習場を使う事になる。
◆森エルフ族枠
【イズレンディア】
各勢力のお偉方も帰国して、慣れない外交活動もやっと終わってホッとしている。そして調整組として、竜や妖精達を巻き込んだ研究が始まり、精霊術と異なる魔術体系に苦労しながらも、その内容と意味を理解しようと日夜奮闘している。また当初と違い、職人や心話研究者達も増えてきたため、森エルフ達を束ねる代表としての仕事も増えてきている。今、大真面目に検討しているのは、森エルフの料理人を呼び寄せようか、ということ。ドワーフ族、小鬼族が人数が多いこともあって料理人を連れてきており、料理人同士ということでアイリーンとの交流が増えていることを知ったからだ。鬼族も女衆を連れてくると聞き、ならば自分達も、と考えたのだ。
また、以前から研究を進めている雲取様との心話の研究も、少しずつ進んでおり、春先には試せる見込みも立ってきて、楽しみにしている。
【森エルフの職人さん達】
別邸裏手に心話用魔法陣を収めた建物を新たに建築する為に増員された方々。木工建築なら任せておけ、といった感じで、長命種なだけあり、皆さん、宮大工のように伝統の技に精通している。魔法陣を作るのがドワーフ達という事もあり、職人同士の交流も進んでいるようである。
【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】
三大勢力の代表たちも帰国し、彼らの周辺警戒網も通常レベルの活動に戻った。また、雪が降るようになってからは、スキーを使っての巡回をするなど、警戒の仕方も工夫をしている。ただ、生体イージスシステムと言える彼らであっても、魔力属性が完全無色透明となっている召喚された竜や妖精達には手を焼いている。特に妖精達は簡単に姿を消せるので始末に負えない。また、連樹の社、ワイン醸造場、第二演習場と活動予定地も広がってきたため、ロングヒルの軍とも協力して、新たな警戒網を作ろうと模索しているところだ。
【森エルフ&ドワーフの心話研究者達】
共同研究を行うという事で、それぞれ、魔術に長けた研究者達がロングヒルにやってきている。特別な許可を得て、マコト文書の非公開部分も閲覧しているのだが、感性全振りなミアの手記は理解が困難で、彼等の目的である「雲取様と心話を行う」事はなかなか研究が進んでいないのが実情だ。
それでもアキが毎日積み重ねている交流記録からも少しずつ、解決の糸口を得て、研究は牛歩ではあるが進んできている。最近ではケイティもアキとの心話をしようと、彼らの研究に加わっており、世界樹の精霊や、ドワーフの信仰する火と鉄の神との交信記録も活用する事で、そろそろ試作魔法陣が作れそうだ。
◆天空竜枠
【雲取様】
竜族に導入しようという新たな試みについて熱心に聞き、理解を深めて、自ら率先して関係者への働き掛けを行なっている。そこで福慈様にも説明しに行ったのだが、そこは人生経験の差が大きく出てしまい、検討不足が露呈してしまった。竜族からすれば、これまで扱った事のない複雑さであり、記憶だけを頼りに検討する事の限界も感じていた。その為、十一章では、研究組や調整組の助力を得て、再説明の準備を行う事になる。
【雲取様に想いを寄せる雌竜達】
アキの勧めもあり、雲取様に教えを乞うことで、その飛ぶ技量や魔力の抑え方も、ロングヒルに来訪するたびに上達を実感できるほど。好きこそ物の上手なれ、と言ったところだろう。竜が取り組む新たな試みについて、雲取様から分担して検討して貰えないか頼まれ、それぞれ、打算付きだが快諾した。
おかげで、雲取様とも会いやすくなり、雌竜同士のガールズトークも盛り上がってるらしい。
ただ、どの子も記憶頼りの検討には限界を感じてきており、小型召喚で、専門の記録官を付けて貰えた事は僥倖だった。
【福慈様】
魔力爆発後、雪に埋もれる事でやっとクールダウンも終わったらしい。それでもハッキリと目的意識を持ったからか、以前より深く思考している時間が増えた。また、アキが提案し、雲取様が率先して働きかけている様々な試みについて、それの意味するところは何か自問自答を繰り返す日々だ。雲取様に色々と質問するのも、深く考える事を促し、皆を導く力量を備えて欲しいからだ。ただ、福慈様も記憶頼りなので、全体を深く考える事の大変さは漠然としか理解できてない。十一章ではアキがそこを「見える化」する事で、その意味を理解していく事だろう。
【白岩様】
ロングヒルまでやってきた成竜達であり、心話よりも、直接話す方を好んでいる。小さな地の生き物が、自分を見ても逃げず、対等に話し、また会いたいと言うのだから、彼の長い人生の中でも、アキとの交流は飛び抜けて面白い出来事だったに違いない。寒い時期という事で、飲食は出来なかったが、飲食可能な春先には再訪問の予約を入れたりしてる。彼と同様、成竜達の間でもアキとの会談はちょっとしたブームになっており、仲間内で経験を話し合う為に成竜が飛び回る頻度が上がってきているが、その影響が出てくるのはもう暫く先だろう。
【アキと心話をしている竜達】
一部を除くと、雲取様が飛び回れる範囲を縄張りとする竜と、ロングヒルを活動範囲とする竜達が主に心話の対象となっている。物怖じせず楽しげに話すアキとの交流は新鮮なようで、概ね好評である。そもそも興味がない、会話相手と見做していない、そんな竜はそんな面倒な事はしないのだから、心話をしようと言い出した時点で、好感を得られる可能性は高い話ではある。まだまだリストの消化は捗っておらず、アキも今後半年、一年と各地の竜達と心話で交流することを求められるのは確実だ。
◆人類連合枠
【ニコラス】
財閥が求める人材募集の人事権を持った事で、人類連合内で、二大国に匹敵する権力基盤を備えつつある。それを十全に活かす部下の層が薄い為、街エルフから秘書人形や女中人形達を派遣して貰い、数人だが人形遣いの派遣も得た事で、体制も安定化していくと思われる。二大国にしても、人類連合に匹敵する鬼族連邦、小鬼帝国と協力しつつ競い合う最中に、内輪で足の引っ張り合いをする程、愚かではないようだ。ただ、彼の権力強化を苦々しく思っているのは間違いない。今後も慎重な舵取りが求められる事だろう。
【トレバ―】
ニコラスの権力基盤が増えた事で、ディアーランドのエージェントである彼は、人事権はニコラス持ち、雇い主は財閥という中小国からの派遣者達とどう接していけばいいか、頭を悩ませている。いたずらに場を乱さず、先行している強みを活かして、派遣者達に接して仲間を増やせ、などと本国からは通知が来ている為だ。悩ましい立場である。
【ナタリー】
二大国の一つ、テイルペーストのエージェントである彼女は、本国からの指示で、調整組との接点を増やそうと奮闘中だ。今は新たにきた小鬼族の文化を学び、彼らとの交流を進めようとしている。というのも、アキがユリウス帝を好意的に見ている事は知れ渡っている為、小鬼族の重要性が増すと予想したからだ。吉と出るか凶と出るか……
【エリー】
この冬は、アキと共に魔術の訓練を行い、連樹の社に赴いて、彼らの全面協力を取り付けるなど、姉弟子としての活動が目についたが、研究組に参加しているセイケンが持ち帰った情報を、調整組の中で分析、検討して、各人に作業を割り振るといった地道な事も行なっている。派手な立ち回りだけでなく、裏方的な作業もこなす事で着実に信頼を勝ち取り、個性的過ぎる研究組に聞く前に、まずエリーに話をしてみるという流れが生まれてきている。エリーもこれぞという人物は積極的に仲間に招き入れており、活動範囲は日々、広がっている。ロングヒルが単に場所を提供しているだけの国ではないと行動で示し続けるエリーは、自然と人を惹きつけるカリスマ性に益々磨きがかかってきているようである。
【ロングヒルの王様ヘンリー】
この冬にはアキとも個人的に話をする機会を設けて(いずれ、外伝で補足するかも)、エリーから間接的に聞くだけではわかりにくかった部分も含めて、アキがどんな性格かかなり把握できた。
アキの示す大きな可能性には確かに心惹かれるものもあるが、急激な変化に翻弄される民をどう導いていくか、心を悩ませている。アキは皆の求めもあり、気にすべきポイントを多く話したが、それを現実的な政策に落とすのは為政者の役目だ。やるべき事は多い。幸い、各勢力が滞在する事で、ロングヒルには様々な名目で大量の資金が流れ込んでいる。その為、財源は問題ない。ただ、簡単に解決できないのが慢性的な人材不足であり、教育に力を入れても成果が出るのは五年後、十年後だ。財政難に苦しむ多くの国からすれば羨ましい限りだが、大量の資金が得られても、頻繁に天空竜が飛来すると言われたら辞退する国が殆どだろう。
【ロングヒルの御妃様】
彼女もアキとの会談に同席し、アキと王子達を交流させるか見極めた。結論は時期尚早。アキ自身に悪気はなく、話す内容も良い内容に思える。ただ、その意味を深く考え、影響を想像し、具体的な話に落とせなければ、その知は街エルフの語るように、猛毒だと気付いたからだ。王子達には経験が足りず、気兼ねなく親身に話すアキから影響を受け過ぎる、そう判断したのだ。
【ロングヒルの王子様達】
初めの頃は毎日、一柱の天空竜が第二演習場に飛来していたが、時には三柱、そして五柱とやってくるようになり、王子達は飛行経路に含まれる隣国行脚をする羽目に陥った。天空竜の恐ろしさは十分に経験していると認識していたが、そこはロングヒル男子、他の国の民よりもやはり鍛え方と覚悟が違ったようで、隣国との温度差に困惑している。王子達にとっても良い経験となるだろう。
◆小鬼帝国枠
【ユリウス】
即断即決を旨とするだけあり、帰国するとすぐに打てる手は全て打ち、公衆衛生改善のモデル都市選定まで速やかに終えた。また、海外派遣を予定していた大型帆船についても、弧状列島近海での訓練重視に変更し、いずれ、船乗り同士の交流もあると伝えた。
先代や妻とも仕事を分担する様は手慣れたものだ。家族撮影では、実は様々な構図で何枚も撮影し、もっとも良い一枚を選ぶほどの熱の入れようだった。
【ルキウス】
帰国した彼に待っていたのは、伝統である「成人の儀」を縮小していった場合に起こる混乱、反対勢力の調査と対応計画の検討だった。ユリウス帝は即座に廃止はしない意向だが、いずれ統一国家を樹立しようというのに、定期的に戦争をする訳にもいかない。大量に産んで生き残りが次代を担う、そんな小鬼族の在り方にメスを入れようというのだから、混乱は避けられない。皇帝の身を守る彼の役割は重みを増していくだろう。
【速記係の人達】
彼らは帰宅するまでにはあらかたの施策の素案までは決めていた。単なる記録係ではなく、皇帝の意向を踏まえて、提案し、検討も行うのが彼らの仕事だからだ。という訳で実は彼らはユリウス帝の幕僚たちだった。最初から彼らは総力で対応に来ていたのである。……そんな小鬼族の精鋭達を目の当たりにした各国に誤解が広がったのは当然だろう。
【ガイウス】
小鬼の研究者達の団長を務める彼は、研究能力の高さよりも、物事を理解し、集団を取り纏める能力の高さから団長に抜擢された。また、あくまでも小鬼族の代表として堂々としている事や、他種族と話す際の注意点などもユリウス帝から聞かされている。その甲斐あって、今のところ、研究者達の統率に問題はない。ただ、慣れてきた時が要注意だろう。
【小鬼の研究者達】
初めに竜の洗礼、竜と人の間に立つ竜神の巫女を目の当たりにした事で、自分達が共に研究する仲間がどんな存在か理解できたようだ。若い研究者の中には、かなり跳ねっ返りな者もいるが、天空竜の前で虚勢を張るような心は根元からへし折れたらしい。今後は妖精達も詠唱なしで魔術を瞬間発動させるなど力量を見せれば、無駄な衝突も減る事だろう。一人、女性の研究者だけだが、緩和障壁なしでも、魔力を抑えた竜達の前に立てた事は僥倖だった。十一章からはチームとしての彼らの活躍も見ることができるだろう。
◆街エルフ枠
【ジョウ】
財閥が資金を提供し、人類連合所属の中小国から広く人材を募集する件について、大会議場で彼が説明を行ったが、会場は割れんばかりの歓声に包まれることになった。大統領ニコラスが主旨を説明し、人類連合の代表として、鬼族連邦や小鬼帝国、妖精の国や竜族達との交流を支えて欲しい、時代の変革をその目で見て欲しい、といつになく熱く語り、会場を大いに盛り上げた。そんな彼の躍進を苦々しく見ていたのは二大国の代表くらいなものだっだろう。だが、ジョウの悩みは尽きない。次は一割召喚の妖精達や小型召喚の竜達、それに連樹の神様との交流が控えているのだから。
【街エルフの長老達】
代表達が帰国した後も、アキ達、研究組の活動を間近で監視する者が必要と判断されて、この冬はヤスケがロングヒルに滞在する事になった。どうせいるならと本国からは、あれやこれやと仕事を渡されて、忙しい日々を送っている。そんな中でもアキは親睦を深めようと時折、歓談の場を設けており、文句は言いつつもヤスケも拒まず応じていたりする。アキはまだ子供なので、ミアと違い、手遅れになる前に、常識を弁えるよう教育できるのではないか、という淡い期待もあるからだ。
◆その他
【ソフィア】
潤沢な資金、優秀な共同研究者達、そんじょそこらの魔導具では太刀打ちできない竜眼、それにアキとリアが提供する無尽蔵にも思える膨大な魔力と、これで結果がでなけりゃ嘘とばかりに恵まれた研究環境を得て、これまでは自重していた(本人談)リミッターを解放して、日々、研究に邁進している。おかげで先行研究している様々な試みは次々に画期的な成果を出しているが、それだけに事あるごとに、アキに次元門構築は大変な難事だと話している。今までにやっていた事は、次元門構築に比べれば些事、肩慣らしに過ぎない、と理解しているからだ。アキが過度な期待を持ち過ぎないよう師匠としてそっと見守る日々である。
【街エルフの人形遣い達】
三大勢力のお偉方も帰国し、やっと落ち着けるかと思いきや、今度は財閥に雇われた人類連合の逸材達が続々とロングヒルにやってきた。そんな彼らの生活を支えつつ、交流を深めて親街エルフ派を増やすためにも、女中人形達を最高の状態に維持しなくてはならない。その為、人形工房のフル稼働状態は変わらず、さらに工房を増やす話まで出てきている。また、ロングヒルに駐留している魔導人形の兵士達からも、適性のある者が引き抜かれて、女中人形としての研修に回されたりもしている。
戦闘系を得意とする人形遣い達は、港湾都市ベイハーバーとロングヒルの間で急増している物資輸送の護衛や、第二演習場までの道のりの事前クリーニングなど、あちこちで活躍している。人形遣いは人形を展開していなければ少人数なので、実質的には部隊規模で動いていても、無用な軋轢を避けられる為だ。第二演習場の除雪作業でも活躍していたが、長閑な任務に魔導人形達も和気藹々と楽しんでいたらしい。
【連樹の神様】
久しぶりにアキやリアが現状報告に行き、短時間だが心話を行った結果、実は樹木の精霊の集合体である事が判明した。植物でありながら、人への理解も深く、変化の術や召喚時の異種族化にも大いに力になってくれそうだ。しかし、ただより怖いものは無い。異種族化に関するノウハウを渡す事は約束して貰えたが、それなら、それに報いる対価は何か?
その重さを知る事になるのはもう暫く先である。
【ヴィオ(ヴァイオレット)】
神降ろしを行い、連樹の神様とアキ達の会談を成功させて、現在は魔力が回復しない為、静養している。それでも手紙くらいは読めるし書けると聞いて、アキはベリル達の助けを借りながら、せっせと連樹の神様に伝えたい話を手紙で送りつけている。勿論、仕事の話だけでなく、連樹の民の日々の暮らしや伝統など、興味のある事も聞いたりしてて、アキとの手紙のやり取りも楽しみにしているようだ。ただ、魔導具や魔術に関する専門的な話となると、苦戦しており、週一ペースで、専門家を派遣してもらい、講義を受けたりもしてる。学んだ内容は社で、周囲の木々に話しかけるように伝え、連樹の神様は、神託という形で意思を伝える、そんな日々だ。
【連樹の神官達】
彼らはロングヒルで起きている事を理解しようと、城塞都市内に部屋を借りて、研究や勉強会に同席して熱心に学んでいる。そこで彼らが見た光景は、小技のように戦術級術式を使い、天空竜が足繁く通い、人と鬼と竜と妖精が共同研究をする姿だった。しかも、竜神の巫女は竜族に寄り添い、親しげに話し、時には彼らに注文をつけるなど、我が目で見ても信じ難い光景も見た。アキが、連樹の神様も天空竜達と同列、それなら心話もできると言ったのも、それらを見た今ならば納得できた。ただ、自分達が見た光景はロングヒルで起きている事のほんの一端に過ぎないことも理解できた。連樹の森に戻った彼らは見聞きした事を皆に話し、結局、俗世との関わりに詳しい三人の若者を派遣する事を決めたのだった。
【世界樹の精霊】
イズレンディアを通じて、ロングヒルで立て続けに起きている変化を伝えられており、世界樹の精霊とも交流する事を求められている件も伝わっている。雲取様に庇護されている身なので、アキと雲取様の親しい関係を考えれば、雲取様経由で依頼するという手もある。けれどあくまでも互いに求めるなら、というスタンスをアキは崩しておらず、その態度は好感が持てるのと同時に、さほど重要視されていない事の証左でもあると理解している。連樹の神様ほど人の営みを理解してはいないので、話をするなら暖かくなってからかな、などと考えているようだ。
【マコトくん】
ダニエルの熱心な布教活動もあって、これまでに無い勢いで信者が増加している。その事自体は喜ばしい事なのだが、アキは彼に色々と不満があったりする。その辺りの話は十一章か十二章で語られる事になるだろう。
それぞれの近況を書いただけなのに普段の四、五倍は書く手間が掛かりました。今回はアキが見聞きしてない、或いは興味がない部分など、本編で語られていない内容も書くようにしてみましたがどうでしょう?
次回は、「第十章の施設、道具、魔術」になります。
投稿は八月三十日(日)二十一時五分の予定です。