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10-24.実用レベルの竜召喚

前話のあらすじ:雌竜の皆さんが行った伝言ゲームはアキの思惑通り、文字の大切さを認識させる、よい切っ掛けになりました。また、写真と文を組み合わせた紹介記事もかなりの衝撃を与えました。竜族に文字文化の風が吹きそうですね。


伝言ゲームの結果は残りの雌竜達にもすぐに伝わり、連日のようにメンバーを入れ替えて、雌竜さん達がやってきて、あれこれ相談を重ねていった。


結局、取り組みは、召喚系は紅竜&白竜ペア、読み書きは金竜さん、遠隔操作の術は青竜&黄竜ペア、使い魔との感覚共有は緑竜&紫竜ペアが担当する事になった。


どの子も取り組みに興味を持ってくれてるし、上手くいったら雲取様と一緒に成果を試すと言って熱意もなかなか高い。


雌竜の皆さん以外も、白岩様と同様、新顔の成竜さん達も順次、来訪して話をする機会を得る事ができた。皆さん、わざわざ足を運ぶだけあって、地の種族に興味はあるし、それなりに飛び方も洗練されていて、魔力も抑えてくれているから好感が持てる。


まだ数は少ないけど、心話を行う新しい竜の皆さんも出てきた。こちらは遠隔地だったり、少しお年を召された成竜さんが多い感じ。


やはりどの竜も会話というか刺激に飢えている感じで、高圧的に出るような方も今のところいないのは良かった。自分達と対等に会話ができる他の種族という時点で、これまでに経験のない話だからね。珍しさも多分にあると思う。


おかげでベリルさん達のチームが纏めている竜族の分析資料も結構なペースで増加していて、それぞれの竜の巣の位置や飛行範囲、交友関係、好みなどなど、少ない情報から推測する技を磨き上げてきただけあって、竜族への理解は急速に進んでいると言えそうだ。


裏庭に心話用魔法陣を用意する話も、ドワーフさん達に並行して対応して貰っている。その為、本来の複合工業施設の建設が後回しになってるけど、竜神と崇める方々に直接絡む魔法陣建造の方を優先するのは当然と話していた。


有難い話だね。


裏庭の魔法陣を覆う建物は、なんと、森エルフの皆さんが建設してくれる事になった。やはり、竜神と崇めている為、その為の建物を作る栄誉は他の種族には渡せない、との事。

まぁ、やる気を見せてくれるのは嬉しい事なので、メンテナンスしやすい事だけお願いしてお任せした。





それから暫くして、宝珠を用いる位階調整型の召喚魔法陣が出来上がった。少し神経質かなと思うほど、丁寧に作業をしていたけど、魔法陣の質が、紅竜さんの召喚体の質に影響を与えるとあっては、普段以上に気を使うのも当然かもしれない。

ケイティさんも、神への奉納となれば、最高の技で最高の品を納めるのが当然と話していた。何せ、地球(あちら)と違い、本当に、崇める神自身から、神託で言葉を賜るかもしれないとなれば、更に気合も入るというものだろう。


今回は特大宝珠に二割まで魔力を貯めた状態での召喚だ。


前回と同様、紅竜さんは常闇の魔術で覆い隠して、白竜さんが分析をする為に待機。研究組とセイケンも離れた位置で観察している。


<お待たせしました。それでは、新しい召喚を試してみましょう>


<うむ>


紅竜さんはやはり丁寧に召喚術式の内容を確認してから、召喚に応えた。


魔法陣の一角が揺らぎ、一気に紅竜さんの姿が実体化する。その見た目は見比べなければ本物と思えるほど生々しく、そして力強い。


「どうです? こちらからみるとかなりいい感じに見えますけど」


僕の問いに、紅竜さんは手足を動かし、尻尾や羽も動かして満足そうに頷いた。


「若干鈍いが気になるほどではない。この後、空を飛んでみよう。竜眼は――これなら充分使えるレベルだ。魔術は――これも合格と言っていい」


白竜さんを竜眼で見たり、仮初の障壁を作って、それを爪で切り裂いたりもしたけど、問題ないようだ。


「本体と完全に同じとはいかぬよ。儂の目から見ても、充分、立派な竜に見える。ところでアキ、魔力の方はどうじゃ?」


お爺ちゃんが同じ召喚の経験者としてのコメントを伝えると、紅竜さんも完全に同じにはならない事を納得してくれた。


さて、魔力か。


「んー、二割減くらいかな。だいぶマシになったと思う。後は実際に飛び回ってもらって、減り具合を確認する感じかな」


疲労感はあるけど、休みたいほどではない。それに宝珠経由の魔力供給が一旦始まれば、魔法陣から出ても、ボク達から宝珠への魔力供給は継続してくれるのは助かった。もし、ずっと魔法陣の中にいる必要があるなら、かなり自由が制限されるからそれは勘弁して欲しい。あと、いざとなれば、宝珠への魔力供給は簡単に切断できそう。もしもの時も安心だ。


「私も同じ。白竜様、中止して欲しい時は声を掛けるので、その時は紅竜様に戻るよう伝えて欲しい」


リア姉の依頼に白竜さんも頷いた。


<この顕現率なら妖精達との比較も捗ると思う。紅竜、少し飛んで、本体との違いを確認して>


<ん、では飛んでみよう>


言葉こそ落ち着いた感じを装っていたけど、飛びたくて仕方なかったみたいで、フワリと飛び上がると徐々に高度を上げていき、様々な飛行パターンを試し始めた。


風を捉えて効率よく飛んでる時は魔力消費は安定しているけど、強引に軌道を変えたり、急な加減速をすると減りが激しくなるのがわかった。


「通常時で二割、荒く飛んで四割って感じかな」


「そうだね。これで魔術を併用すると――六割ってとこか」


リア姉と感覚を伝え合いながら、紅竜さんの飛ぶ様子を眺めていたんだけど、なかなか戻ってこない。視界外まで飛んだり、雲の上まで飛んだりと範囲を広げても魔力の減りには影響はないとわかったけど!


「リア姉、もう良くない?」


「そうだね。だいたいのパターンは確認しただろうし、白竜様、戻るよう伝えてください」


なんか、ドッグランで目一杯はっちゃけてるワンコみたいで、飛び回るのが楽しくて楽しくて仕方ないって感じだ。


背面飛行してみたり、錐揉み降下してみたりと、だんだん飛び方が曲芸じみてきた。


<わかった。紅竜も調子に乗り過ぎ>


白竜さんは身を起こすと、狙いを定めるように紅竜さんを見据えて鋭く思念波を放った。


いつもの思念波と違って、かなり絞り込んだ強い思念波だったようで、紅竜さんに届いた瞬間、反射的に軌道が跳ねて、障壁まで展開されたのが見えた。


それから、二柱の間で何回か思念波が交わされ、漏れ伝わる思念波から白竜さんの苛つきが感じ取れたあたりで、紅竜さんが渋々戻ってきた。


<好き勝手飛び過ぎ。それでどうだった?>


白竜さんの問いに、紅竜さんはバツが悪そうに少し目を逸らしたけど、努めて冷静に感想を話した。


<身体感覚は殆ど本体の時と変わらない。飛んだ感じも変わらないが、あれだけ飛んでも魔力がずっと満ちていて、いくらでも飛べそうだった。素晴らしい経験だった。竜眼や魔術の併用もストレスなく行う事ができた>


紅竜さんは冷静に話しているつもりだけど、思念波から、心の浮かれ具合がバレバレだ。


<紅竜も浮かれるのね。――あれだけ激しく飛んでも魔力の減りを気にしないで飛べるのは楽しそう。ただ、本体との特性は合わせておかないと変な癖が付くかも>


白竜さんから伝わってきた感覚からすると、まるで休みながら走っているかのようで、疲れが全く溜まらない、そんなとこのようだ。


あんまり快適だと、本体に戻った時、召喚体より鈍い、疲れるなどと感じられるようになったりしそう。それは良くないだろうね。


<……飛ぶ事の楽しさを再認識した気分だ。白竜も試してみればわかる。ただ、確かに魔力の減り方は本体に寄せた方が良さそうだ。快適過ぎて危うい>


紅竜さんもちょっと恥ずかしそうに目を逸らしているけど、それでも、そうなるくらい楽しいのだ、と力説したかったみたい。


んー、でも、ちょっと違いが気になるね。


「ねぇ、お爺ちゃん。妖精さん達は召喚体で魔力を使ってもすぐ回復しても、紅竜さん程浮かれたりしてないけど、どうして?」


「儂らの住む妖精界であれば、ストレスなく好きなだけ飛べるからのぉ。それに魔術を使いまくるような話は、若い連中がかかる熱病のようなもんじゃよ。ある程度使えば、思うままに魔術を使えるのは当たり前、そこから先に技を磨いていくとなれば、数をこなす必要もなくなるものじゃ」


お爺ちゃんの説明に賢者さんもその通りと頷く。


そんな妖精達を二柱はすこしだけ羨ましそうに見つめた。


「竜の召喚は、今の状態から先ず、召喚体の簡略化をしてみよう。どうせなら二柱同時に召喚した方が比較、検討も進むというものだ」


賢者さんの提案に白竜さんも同意した。


<翁より、簡略化された賢者の召喚体の方が比べやすいと思う。ただ――>


「ただ、何かね?」


<私も今の召喚を試したい。紅竜だけでは意見も偏って良くない>


白竜さんの前のめりな発言に、賢者さんはその通りと包み込むような笑みで同意してあげた。


紅竜さんが何か言い掛けて、白竜さんに先に睨まれて、ニヤっと笑うだけに留めてたけど、白竜さんも話した分だけボロが出るとばかりに手を振って、交代しろ、と迫った。


その後、今度は白竜さんに魔力の位階を合わせる調整をした後、召喚を行い、白竜さんもまた、下からの催促が届くまで楽しそうに飛びまくってた。


竜の召喚はまずまずの成功を納めた。二柱の召喚で、本体の大きさと魔力消費には関係がありそうともわかった。成竜や老竜だと今の手法で呼ぶのは厳しそうだ。

今後は賢者さんの提案の通り、まずは召喚体を簡略化して、負担を軽減するところから始めよう。

ブックマークありがとうございました。執筆意欲がチャージされました。

いつもの竜達以外にも実は着々とアキの心話ネットワークは広がりを見せており、秘密のベールに包まれていた竜達の営みも、毎日のように新しい情報が得られて、解析担当チームは大忙しです。この情報も他国にはきっと高値で売れることでしょう。

そして、位階を調整し、宝珠からの魔力供給にした新型の召喚魔方陣によって、ほぼ実用レベルと言える竜の召喚が成功しました。元々、召喚は宝珠からの魔力供給が基本なので、基本魔方陣に位階調整機能を付けただけ、といった感じですが、それだけに改修も素早く行えました。紅竜、白竜のどちらも戻ってくるように強く言われて、しぶしぶ降り立つくらいに、魔力制限なしでの飛行は楽しかったようです。この経験談だけでも、自分もやってみたいと言い出す竜達が殺到するに違いありません。

次回の更新は、2020年07月15日(水)21:05です。


<雑記>

本日、成分献血に行ってきました。久しぶりに備え付けの雑誌、コミック類が復活したおかげで、献血ルームの快適さが戻ってきました。良いことです。今は「りゅうおうのおしごと!」とのコラボ企画ということで、同作品のクリアファイルを貰えるキャンペーン中です。興味のある方はぜひ足を運んでみましょう。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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