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10-23.伝言ゲームの成果

前話のあらすじ:新規で喚ぶ妖精さん達には、効率よく沢山呼べる話は秘密、ということで皆でいろいろ話し合いました。妖精女王様も大変です。そのあとは、ポンコツ召喚バージョンの紅竜さんに魔力を供給していろいろ試してみましたが、やはり土台が脆いと効率が悪いようです。ですが、これで目指すべきところも見えてきました。

ドワーフさん達の魔法陣改修作業が完了する迄は、紅竜さんの召喚も一旦お休みとなったんだけど、遊びと言う事で試して貰った伝言ゲームがラストの白竜さんまで伝わった日に、金竜さんと白竜さんが揃ってやってきた。


二柱で来たのは、伝言ゲームの初めが金竜さんで、最後が白竜さんだったから、との事。


それで、白竜さんが聞いた伝言を話してくれたんだけど、その内容は思った通りで、金竜さんが驚いて目を見開くほどだった。


<若竜が飛び回ると地の種族達はお祭りになる。地の種族にお話してあげるといい。アイリーンは料理の反響が嬉しい……意味が分からない>


白竜さんはそれでも、伝言を真面目に聞いてくれたようだ。


「まぁ、思ったよりは情報が残ってましたね。馴染みのない話だから逆に、違う情報が混ざりにくかったのかも」


僕の話した評価に金竜さんは不満そうだ。


「んー、金竜さんは伝えたお話覚えてます? ちょっと話してみてくれます?」


<いいとも。まず――>


自信満々に話してくれたけど、ん、残念、やっぱり色々変わってるし、情報が落ちてる。


「それじゃ、白竜さんも気になるでしょうから、答え合わせをしますね」


スタッフさんに手伝って貰い、大きく印刷した伝言の箇条書きをテーブルの上に広げた。


「これは、金竜さんと相談して決めた伝言の内容です。発音で書いてあるので、今から読み方を説明するので、良い機会なので読み方を習得してください。先ずは――」


それから、小一時間かけて、読み方と書いてある内容について説明を行い、伝言ゲームが娯楽になる理由や、記憶の忘却、聞いた情報に対する認識の違いなどを理解して貰った。


<……なかなか興味深い結果になった。記憶力には自信があったのだが>


金竜さんが少し凹んでいる。


「いえいえ、覚えていた方と思いますよ。興味のある内容と言っても、経験していない先の話、仮定の話、それに殆ど知らない人族の営みに絡んだ話ですから、自分の経験に紐付かない分、記憶は薄れるものです。人族の場合ですけど、話した内容のうち、相手に伝わるのは二割なんて話もあるくらいです。短期的に覚えられる内容には限りがある。それに同じ話を聞いても、興味のある部分、詳しい部分はそれぞれ違うでしょう? そこで情報の圧縮や取りこぼしが起きます。――という訳で、記憶の曖昧さ、伝言の不正確さ、それに読み書きの大切さは理解していただけたかと思います。実際、読み方を理解した今、手元にこのメモがあって、読み返せば、話した内容も思い出せたでしょう?」


二柱とも、実際にメモを見て、目を閉じて少し考えて、またメモを見て、と少し試すと、納得してくれた。


<読み書きは大事。それは理解した。小型召喚の話も、だんだん話が混み合ってきて把握しておくべき内容も増えてきた。それに、絵で残すのも大事。召喚体を見比べた結果を言葉で伝えるのは難しい>


白竜さんは研究組との交流で、積み重ねた検討内容や術式の話から、実感として、読み書きや図や絵で残す事の重要性を理解してくれたようだ。


<――しかし、こうして私たちに合わせた大きな紙を用意するのも大変であろう。それに竜族の手はペンを握るのには不向きだ>


金竜さんはがっかりしながらも、期待した目を向けてきた。


うん、わかってきてくれて嬉しい。僕がこうして話を振る時は、大概、次のステップを用意しているからね。


「そこで、紅竜さんと白竜さんは小型召喚で忙しいと思うので、金竜さんは竜族に向いた読み書き方法の検討や「遠隔操作の術」の研究をしてみませんか?」


雲取様とも相談して、表向きの策として進めていくことにした「遠隔操作の術」。その仕組みについて説明した。


<そのような事を雲取様と取り組んでいたのか。――私が参加しても良いものなのか?>


そう言いながらも、かなり乗り気だ。


「勿論です。雲取様は他の竜の皆さんに話を伝えたり、相談したりと、窓口的な役割をするので手一杯です。雌竜の皆さんなら信頼できますし、皆さん、情熱があるので参加していただけたら助かります」


文字や写真、それに図や絵を用いて、瓦版のような竜族向けの情報発信をしていけば、文字の普及は進むのではないか、とも説明した。


そして、スタッフさんに作って貰ったサンプルの瓦版をテーブルに広げると、二柱の視線が釘付けになった。


<……これは!>


瓦版には、第二演習場に降り立って、僕達と交流を深める雲取様の様子を紹介する記事といった感じで書いて貰った。写真も雲取様が楽しそうに話す様子が伝わってくる見事な構図だ。


竜神の巫女である僕も身振りを加えて楽しげに話している感じがとても良く撮影されている。


「このように、記念写真と違って、もっと手軽に眺めることができて、文章で話も伝えられる、そんな取り組みです。これを何百枚か印刷して、各地の竜族の群れの中心的な方に配り、皆さんで見て貰うようにすれば、単に会話したり、写真を渡すだけより、話を伝えやすいと思うんです」


他にも、小型召喚が実用化できたら、五対五の集団戦をやって、その結果、目覚ましい活躍をした竜や、全体をよく見て指示ができた竜を紹介したりすれば、各地で集団戦への興味も深まったり、参戦熱も高まるんじゃないか、とも話した。


二柱とも、とても熱心に聞いてくれていたけど、白竜さんが残念そうに溜息をついた。


<私も読み書きは学びたいけど、この話は片手間では無理。金竜も自分だけでやろうとせず、手を借りるのがいいと思う>


<そうしよう。文字も多くの者が読めなくては意味がない。各地の群れで読める者をどう増やしていくか、それに書く方も何とかしたい。暫くは人族に頼んで書いて貰うしかないだろうが、やはり自分で書ければその方がいい。絵も描きたいな。それに「遠隔操作の術」だったか。召喚と似た仕組みだが、動かす人形を予め用意しておけば、魔力はかなり抑えられそうだ。だが、竜と人では体の作りがかなり違う。先例があれば、それを真似れば良いとは思うが……>


金竜さんがとても饒舌に話してくれた。やる気に満ちていてとてもいい。それで、先例だったね。異なる種族としての振る舞いを習得している方々とか、事例か。


んー、あ、そう言えば、いたね、そんな方が。


「えっと、連樹の神様をご存知ですか?」


<話には聞いたことがある。なんでも森全体の樹々が繋がっていて、一つの生き物のように振る舞うとか>


「はい、それです。その連樹なんですけど、神様として信仰されていて、僕が挨拶に行った時、降臨してくれたんですけど、その時は人の姿をしていました。樹木と人では大きく違うので、そこを乗り越えた経験、知識は参考になると思うんですけど、どうでしょう?」


話していて、いいアイデアと思えてきた。


<確かにそれは良い話だ。しかし、私達が行って話をしても良いものだろうか?>


連樹の社を思い出してみたけど、若いといっても大人の竜が舞い降りるにはちと狭かったと思う。


「降臨してくれたのは連樹の社でしたが、皆さんが降りるには手狭でした。それにいきなり来訪したら、あちらも慌てるでしょう。幸い、雪が溶けたら、話をしに行く予定なので、その時、相談してみる事にします。小型召喚ができるようになったら、小さい形態で話を聞きに行けば良いかと」


<それが良さそうだ。話をするだけならそれで事足りよう。先程の説明では、人族が使い魔の視線を共有するともあったが、そちらの手配も頼む。まずは竜眼で観てみなくてはな>


その後も、紅竜、白竜が小型召喚担当なら、金竜を含めて残りの誰が何を担当すべきか、なんて話題で盛り上がった。


幸い、心話ではないので、会話内容はスタッフさん達が記録していてくれた。いちいち報告なんてやってられないから助かる。


何にせよ、これで竜族の方も、話が本格的に進みそうだ。後は果報は寝てまで、だね。 

一通り伝言も回りきったので、伝言ゲームの成果確認の回でした。こちらの竜族は普通の記憶力だったようで、アキの目論見通り、文字の読み書き熱も高まることになりました。

それと、やはり雲取様にスポットを当てた参考記事もまた、大当たりとなりました。写真と文で想像力を掻き立てられるのは初めての経験ということもあって、竜のお嬢様達には衝撃的だったようです。これで、竜族への文字普及も弾みがつくことでしょう。

次回の更新は、2020年07月12日(日)21:05です。

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