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10-16.リア姉と心話

前話のあらすじ:雲取様と、福慈様に会合が平和裏に終わったことをどう報告するか、相談しました。ついでにちょっとした質疑応答もしましたが、ベリルさんに根掘り葉掘り聞かれて大変でした。(アキ視点)

次の日は、朝からリア姉がお疲れな感じだった。


「リア姉、どうしたの?」


「昨晩、七柱の雌竜達と一通り心話をやってみたんだけど、思った以上に精神的に疲れるものがあってね」


緑茶を飲んで座り込む姿は、そのまま沈み込んでいきそうなくらいだ。


「何か急ぎの話題とかありましたっけ?」


「いや。単に心話に慣れてないから、練習がてら、彼女達に付き合って貰ったんだ」


ほぉ。苦手だと言ってたのに、克服しようと言うんだから凄いなー。


「頑張ってるね。毎日、やってれば何ヶ月かすれば慣れると思うから、のんびりやっていけばいいと思う」


雌竜の皆も慣れるし、良い試みと思うと、応援する気持ちを前面に押し出してみた。


「彼女達は私との心話を、アキ相手よりは気が楽と捉えてくれているのと、娯楽の一種とも思ってくれているのは幸いかな」


む、苦手意識を持たれてる感じはそれ程ないと思ってたんだけど。


「彼女達も別に苦手意識という程じゃない。ただ、アキの思考の変化が早いから、集中している必要があって、気が抜けない、そう言ってたよ」


「まぁ、そこは慣れですね」


アキのそういうところ、ミア姉にそっくりだ、なんて言われた。感性全振りみたいなとこが時折あるって。

ミア姉に似てると言われるの嬉しいけど、どう答えるべきか悩ましい。


「――それで心話だけど、伝えていい思考と、伝えるべきでない思考を分けるのが大変でね。竜達との会話でストレス解消とか言ってるアキが羨ましいよ」


リア姉が返事に困った僕の頭を撫でながら、そんな話をした。


「まぁ、そこは心に棚を設ける感じで。考えてみれば、僕は隠し事をするような事なんて小学生の頃は全然考えないで心話をしていたし、その辺りを気にしないで心話できると気楽に行けるんだけどね」


小さい頃は、考えが伝わると便利くらいにしか思ってなかったし、ストレートな思考も、ミア姉は全部受け止めてくれていたからね。

……結構、ズケズケと話していたし、実はミア姉も結構ストレスだったのかも。そんな雰囲気なんて微塵も感じさせず、楽しく心話を続ける事ができたのは、ミア姉のおかげだろう。


……ミア姉と心話をしたいなぁ。


っと、不味い。その方向の思考は良くないから、今はリア姉との会話に集中しよう。


「大人になってからの心話は、色々、余計な事を考えるせいで、弊害が大きい気がする。とは言え、私の場合、魔力属性のせいで、ミア姉との心話ができるまでは、他の人との心話なんてできなかったから、やりたくてもできなかったと思うよ」


リア姉も少しミア姉のことを考えたようで、少し寂しげな眼差しをしていた。


そこは考えてもどうしようもないから、別の話題にしよう。


「そう言えば、ケイティさん。僕との心話の方ですけど、準備の方は進展ありました?早めにしたいなぁと思うんですけど」


竜族ばかりと心話をしていると感覚がズレるかもしれないこと、言葉で心話の内容を伝えるのは時間が掛かる事もあるけど、マコト文書に詳しいケイティさんとの心話はとても楽しみにしている、と面倒な手間を省くのが主ではなく、ケイティさんと心を触れあわせたいのだと、補足しておいた。


「まるで、恋の告白のようですね」


ケイティさんは、わざわざ、僕の手を握って、嬉しそうに微笑んで、心を触れ合わせる事を求めてくれて嬉しいです、と話してくれた。


話してくれたんだけど!


距離がち、近いです、ケイティさん!


美人のお姉さんに見つめられると、手に触れた体温とか、息遣いとかが感じられて、一気に耳の先まで体温が上がっていくのがわかった。


そんな二人の間に、リア姉が手を差し出して割り込んできた。


「ほら、ケイティも揶揄わない! アキももう少し年上の女に耐性を付けて! あんまりそんな態度でバレバレだと、アキに近付く関係者がお姉さんだらけになっちゃうから」


なんて天国!


「……そんな嬉しそうな顔をしないの! そもそも見た目が綺麗でも、各国から派遣されてくるエージェントなんて、表と裏の顔が乖離してるんだから、裏がドロドロで嫌になるだけだよ」


む、それは困る。というか、綺麗なお姉さんだーって、無邪気に楽しめるから嬉しいのであって、打算アリアリの腹黒お姉さんばかりだと、確かに心が疲れそうだ。


「気を付けるね。……そんなにバレバレな顔をしてた?」


「それはもう。デレデレで目にハートマークを浮かべているような感じだったよ」


こんな感じに、などと言って、リア姉が胸の前で手を組んで、恋する乙女って感じの表情をしてみせた。


う、か、可愛い〜


リア姉に額を突かれた。


「言った傍からこれだ。先が思いやられるよ」


リア姉がオーバーに溜息をつき、ケイティさんも苦笑しながらも頷いた。だけど、僕の頬に手を当てて、フォローもしてくれた。


「それでもアキ様は、心を偽るような真似はまだされなくて良いと思います。他の種族の方々との交流には、見てくれだけ繕うような態度は害になるだけですから」


エリーみたいなのは無理としても、少しは気にしないと駄目かと思ったけど、ケイティさんがそう言うなら、暫くは今のままでいようと、そう思えた。





「それはそうと、心話だけど、子供が言葉を覚えるのに相応しい年代があるのと同じように、習得するのに向いた時期があるのかもしれないね」


「そもそも心話は、行える相手が限られるから、幼少期に行うのが常だよ」


「なら、リア姉の場合、第二外国語を学ぶのと同じように、そのノウハウが役立つかもしれないね。母国語を学ぶ方法と、第二外国語を学ぶ方法って違うでしょう?」


「それは違うだろうけど、心話の場合だとどうだと思うんだい?」


「心話を始めに学ぶのが母国語相当、異種族、今回の場合なら竜族との心話は第二外国語相当って感じ。人を相手にするのと、竜を相手にするのって、やっぱり勝手が少し違うでしょう?」


僕の言葉にリア姉は顔を顰めた。


「社会性や相手との距離感、時間感覚や集団への認識、それこそ、同じ事の方が少ないのに、アキからすると「少し」なのかい?」


「んー、無意味に殺害したりしない、相手にも心があると理解して尊重してくれる、命を大事にするし、子供を大切に思う気持ちもあるから、共通点は多いと思うよ。後はまぁ、種族ごとの違いって事で」


人だって会話が通じない輩もいる事も考えれば、これまでに交流してきた竜族は、話がわかる相手だと思うし。


そう話した僕を、リア姉は興味深そうな顔で見ていた。


「こちらだと、普通、そんな目をするのは成人してから、それなりに場数を踏んだ後なんだけどね。あちらだと、それほど「通じない」連中がいたのかい?」


「それはもう。匿名性なのを良い事に、ストレス解消のサンドバッグのように、罵詈雑言を叩き付けるような輩も沢山いるし、対面では言えないような酷い言葉も遠慮なく言い捨てる輩も多くて。世界中が繋がってるから、一人の相手に数万人が罵倒するなんて状況にもなったりして、心が病んでしまう人も出る程だったよ」


……と話して、なんか、横で話を聞いていたお爺ちゃんにまでドン引きされてしまい、あくまでもそういう事例もあるだけで、世界中が繋がる事で、多くの人々の交流が促進されて、互いの理解や親睦が深まっていく事も多い、と懸命にフォローした。


「世界が繋がると、良い事も悪い事も膨れ上がって溢れてしまうんじゃな。溢れた意思で潰れてしまいかねん。我らは同じ空を飛ばぬよう気を付けるとしよう」


お爺ちゃんの言葉に、リア姉もケイティさんも深く頷いた。僕もそうだね、と頷くしかなかった。

今回はリア姉が心話にいろいろと挑戦していることを知った話でした。ケイティとの心話も少しずつですが準備が進んでいるようです。

地球あちらのことを語ると、印象悪化する事例も多くて、アキも話すたびにフォローする羽目に陥って大変ですねぇ。まぁ綺麗事ばかりじゃないし、相手もそれを理解しているので、誤解されることはないとは思います。

あと、ケイティもアキを揶揄うのが楽しそうですね。高位魔導師として、他人から距離を置かれることが多いこともあって、アキの初々しい反応を見ると、ついいじりたくなってしまうんでしょう。微笑ましいことです。

次回の更新は、2020年06月17日(水)21:05です。


<雑記1>

献血に行ってきました。ぐずついた天気でしたが、換気のため窓を開けていまして、なぜか駅前に陣取った街宣車の流す大音響が延々と聞こえて、なんとも騒々しかったです。新型コロナさえなければ、窓を閉めてもう少し快適だったんでしょうけど仕方ありませんね。常設の献血会場は混雑してますが、予約なしでも献血して貰える枠はあるので、元気で献血に行ける条件を満たしている方はぜひ、献血しましょう。

血はまだ人工的に生成できませんからね。


<雑記2>

2020年06月14日時点の厚生労働省発表の新型コロナウィルスに関する情報です。


挿絵(By みてみん)


入院治療等を必要とする人が801人となりました。退院された方もだいぶ増えましたね。

これだけ入院患者さんが減ってきたのに、未だにYahoo!ニュースのコメント欄を見ると、

医療者向けのマスク等が足りません、という書き込みを時折見つけます。

……実際のところどうなんでしょう? 不足してる、という報道は見かけなくなってますけど。

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