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10-11.魔術でカマクラ作り

前話のあらすじ:雲取様に、竜眼で、トウセイさんの大鬼化する「変化の術」を観察して貰いました。

雪捨て場には、僕の姉弟子にして、このロングヒルの王女様でもあるエリザベス、エリーが腰に手を当てて待ち構えていた。周りを警戒しているのはロングヒルの護衛の皆さんだ。


「師匠に言われてからすぐ来たんだけど、待たせたみたいだね」


「魔術訓練だというから来てみれば、吹きっさらしの中、待たされる事になって散々だったわ。――で、例の術絡みでなんかあったのかしら?」


「リア姉が、大型帆船用の特大宝珠に魔力を詰めて持ってきたんだけど、そのままじゃトウセイさんが利用できないから、位階と量を調整する術式を皆でいじくり回していたら、そっちに熱中してて、こっちの話を思い出すのが遅れたみたい」


詳しく聞かれたので、一通り、わかる範囲で説明したんだけど、聞けば聞くほどエリーの機嫌は悪くなっていった。


「――何でそんな横道に話が逸れるのよ」


どうも、護衛の人にはあまり明確に「変化の術」について話したくないようだったので、魔力が足りなくて、術の披露が十秒程度で終わり、それならと魔力供給の話に繋がった、程度に説明した。


やはり、エリーの表情は冴えない。


「それで、今、あっちには誰がいるのかしら?」


はて?


「雲取様、賢者さん、彫刻家さん、師匠、リア姉、トウセイさん、それとウォルコットさんかな」


ケイティさんとジョージさん、それと追加で召喚された妖精の近衛さんがこちらに同行する事になり、ウォルコットさんは特に同行する必要はないという事で、術式の改良を見学している事になったんだよね。


「ケイティ、人選ミスよ。調整組が誰もいない状況は不味いわ」


「考え過ぎじゃない?術式を見て意見交換する程度で、実際に手を入れたり、試したりできるわけじゃないんだから」


トウセイさんの変化に関する術式にいきなり手を入れるのはリスクが高いし、他の人ですぐ試せる術式でもないのだから、と小声で補足した。


「……例の術についてはそうね。でも頭数は多くても、ブレーキ役が一人も混ざってないのは問題だわ。セイケン殿に連絡取れないかしら?」


研究組への信頼は塵紙より薄い感じだ。


まぁ、竜族の雲取様、妖精族の賢者、彫刻家の二人は危機意識は薄いかも。師匠はリターンの為にはリスクを取るタイプ。トウセイさんは慎重派と思うけど推しが弱そう。リア姉は街エルフらしく、何とかなりそうなら気にしない、と。

ウォルコットさんは皆の活動する様を眺めていられるのが幸せ、という観察者、観客タイプ。


……確かにブレーキ役皆無かも。


ケイティさんも同じ結論に達したようで、杖を振って、メッセージをサラサラと宙に描き、それから少しして、返事を受け取ったみたい。


「鬼族の皆様は除雪で第二演習場の休憩室にいたので、立ち会いをお願いしました」


「それは良かったです。んー、調整組のメンバー、もう少し増やした方がいいのかもしれませんね」


僕の言葉に、エリーが目を細めた。


「そもそも研究組が暴走しなければいいって結論にして欲しいわ。本当に」


ケイティさんまで深く頷いている。


「観察して意見交換してるだけだよ?」


そんな援護もあまり効果はなし。


「さっき、特大宝珠に貯めた魔力を取り出す術式をいじくり回していたと聞いたけど」


「何か問題なの?」


問題にしてるのがよくわからず、お爺ちゃんにも聞いてみるけど、やはり謎っぽい。


「うむ、儂も何が問題か予想がつかん」


「竜ですら直接取り込むのは避けるような膨大な魔力、動く城にも例えられる大型帆船をも動かす特大宝珠、そんな宝珠をそんじょそこらの護符用の宝珠程度に扱っていると知れば、普通はソイツの頭を疑うモノなの!」


えー、なんかすごい物言いだ。


「ケイティさん、そんなモノなんです?」


「……そもそも、宝珠自体が貴重なモノですから」


何とも言葉を選んでいる感じだ。


「では、ケイティさんは師匠が特大宝珠を取り出したのを見ても慌てませんでしたけど何故です?」


「それは、特大宝珠に込められた魔力量が一割にも満たないレベルだったからです。限度を超えた魔力を込めた宝珠は自己崩壊して、魔導災害を引き起こしますが、そのような危険性はないと判断しました。それにソフィア様はちゃんと取り扱う際も薄い障壁で包んでいらしたので、問題ないと判断しました」


「あ、そういう工夫をしてたんですね。取り込んだら死んでしまうとか言ってた割に手で持ってたから不思議だったんですけど、そういう理由でしたか」


「何よ、アキはそんな宝珠を見て危なそうとか思わなかったの?」


「んー、抑えている雲取様の魔力より弱い感じだったから、特に危険とは思わなかったかな。お爺ちゃんは?」


「うむ。確かに込められた魔力は多かったが、安定しておるように見えたからのぉ」


ほら、とエリーに同意を求めたけど、向けられた視線は、あー、コイツら同類だったわー、みたいなジト目だった。





「まぁ、なるようにしかならないし、セイケン殿も合流したのだから、これ以上悩んでも仕方ないわね。それで、ケイティ。師匠から訓練の指示書を渡されていて、訓練内容は指示に従え、って話なんだけど」


さっぱり気持ちを切り替えるあたり、気持ちがいいね。


「こちらが指示書になります。……ソフィア様はカマクラと話されてましたが、この手順だと、簡易住居(イグルー)になりますね」


ケイティさんが指示書に書かれた手順を説明してくれた。雪捨て場の雪を長方形に圧縮整形したブロックを積み上げて半球状のドームを作れ、と。


あれ?


「ケイティさん、確か簡易住居(イグルー)って、スノーソーで固まった雪を切り出して積んでいく手順だったと思うんですけど」


「それですが、ここに廃棄されている雪は昨晩から積もったばかりの雪で、押し固まっていない状態なのです。幸い、押し固めれば、ブロック状にできる雪質です。因みに、アキ様はブロックの圧縮整形を、エリザベス様は術式によるブロックの品質チェックを、翁はブロックを指定位置に積んでいくよう指示されています」


ふむふむ。


「圧縮整形ってどうやるんですか?」


「基本は小石を飛ばすのと変わりません。違いがあるとすれば、六方向から同時に押さないと綺麗なブロックにはならないところですね。翁、お手本を見せてあげてくれますか?」


「儂が、か。それでどの程度の大きさならよいのかのぉ」


ケイティさんは具体的に、圧縮前と後の大きさをお爺ちゃんに指示した。密度二倍って所かな。


「それ!」


お爺ちゃんが杖を一振りすると、雪山の一部が切り取られてプカプカ浮いてきた。


「大きさはこんなものかのぉ、こいつをギュッと!」


雪の塊は全方位から包まれるように縮まった。


ちゃんとブロック状だし、大きさもだいたい指示通り。上手だねー。


「お爺ちゃん、上手だね。でも、ケイティさん、雪を浮かせて整形ってハードル高過ぎません?」


「何もそこまで真似る必要はありません。雪山の一部をその位置で押し固めてブロックを作れば良いのです。そのブロックは手本として置いておきましょう。エリザベス様は、アキ様の作ったブロックと手本を見比べて改善点を指摘してください」


そう言って、ケイティさんは僕に長杖を渡すと、仮設住居(イグルー)の建設予定場所にお爺ちゃんを連れて行ってしまった。


そんな訳で、僕の隣には妖精さんだけど、近衛さんが子守妖精役として浮いてくれている。


「近衛さん、お忙しい中、ありがとうございます」


「気にしない事だ。私も人族が雪で建物を作ると聞いて興味があったのだ。気にせず作るといい」


「それじゃ、悩むより慣れろって事で整形してみるね」


僕は長杖を雪山の前で構えて、圧縮してブロック化する工程をイメージしてみた。


「!」


単なる空想ではなく、世界を己が意識で書き換え、それこそが真実とする。


小石飛ばしで慣れたから、イメージを発動させるのはすぐにできた。


できたんだけど。


「かなり小さいわね。……というか、圧縮し過ぎよ。というか、これじゃ氷よ、氷。っと、私も魔術を使うんだったわ」


『我が目は全てを見通す魔眼』


エリーが杖を持ち、そう唱えると、少し遠くを見据えたような眼差しで、僕のブロック第一号と手本を見比べた。


「形は悪くないけど、大きさが悪い。元の雪のサイズも小さいし、圧縮し過ぎ。これは隙間を詰めるのに使えばいいわ。さぁ、次!」


エリーの眼差しは見比べた後も、そのままだ。術式を発動後もずっと継続維持しているのか。大変だね。

僕が考えていることがわかったのか、頷くとさっさとやれ、と手で催促された。


待たせるのも悪いので、さっそく次のブロックを作ってみた。今度は……圧縮失敗だ。


「縦横はいいけど、元の高さが薄かったわね。なのにできたブロックの高さは予定通りだから高さの方向の密度が不十分ね」


むぅ。


そうして、次々に失敗ブロックを作っていき、それでも五十個目を越える頃には、だいぶ質も安定してきた。


「まぁ、合格。翁、そろそろこれらを一段目に配置して」


「うむ、任せておけ」


お爺ちゃんは杖を振って圧雪ブロックを浮かせると、自身と共に移動して、ケイティさんと先に描いておいた円に沿うように丁寧に並べていって、すぐに一段目が完成した。


「私と翁はこちらで一段目の上面を内側に傾くよう傾斜を付けていますので、先程より少し小さなブロックを作ってください」


二段目用の少し小さめな見本をお爺ちゃんはポンと作ってくれた。


それから、ケイティさんは指示書に書かれた角度を伝えて、お爺ちゃんが圧雪ブロックの上面を削り始めた。いつも射出している投槍を創造して、指定角度になるように動かすと槍カンナをかける要領で、サクサクと削っていく。


「アキ、見てないでこっちも二段目のブロックを作るわよ」


「はーい」


コツを掴めば、慣れたもので。一段目の二割程度の時間で、二段目用の圧雪ブロックを作る事ができた。


「品質良し、翁、二段目の設置をよろしく。しかし、こうして自分の目で見ててもアキの魔術行使は信じられないわね」


「そう? でもお爺ちゃんみたいに格好良くはできてないよ」


「妖精族は別格よ。あんなのと比べられたら、魔導士達が可哀想ってモノだわ」


そんな話をしている間にも、指定された傾斜に従って少し内側に傾いた二段目の圧雪ブロックも、サクサクと設置が終わった。


「二段目の上も削るんじゃろうか?」


「予定角度とずれていたらここで削る角度を調整ですが、角度に問題はないようですね。予定の角度で削りましょう」


「初めから平らではなく傾けて作れば良い気もするのぉ」


「それは難度が跳ね上がります。初心者向けとは言えない加工になるので、今回は載せてから削ります」


「それもそうか」


そんな事を言いながらお爺ちゃんは二段目の上面も言われた角度で削っていく。だいぶドームっぽくなってきたね。


それからまた少し小さく三段目の圧雪ブロックを作り、四段目もまた作り、と七段目までを積み終えて、次は天井作りだ。


「最後は天井ね。テーブル状に作るのよ」


「よっと」


最後は十センチ程度の厚みになるように少し圧縮率を高めて、平らなテーブル状の圧雪ブロックを作った。


「これを最後の段に乗せれば良いんじゃな? しかし、ただ載せてるだけなのに安定するとは不思議じゃのぉ」


そう言いながらも、慣れた手付きで最後のブロックを天井部分に設置した。


「それでは、ブロックの間を失敗ブロックで埋めていきましょう。隙間に合うように形を整えてください。翁は出入り口の穴を開けて下さい。アーチ状の出入り口を作れば完成です」


ケイティさんの指示で隙間を埋めた後、お爺ちゃんがサンプルのアーチ用台形圧雪ブロックを作ってくれた。


台形の圧縮整形だから難度が少し上がるかな。

それでも、これまでに沢山作ったから、初めにいくつか失敗したけど、後は予定通りの台形に作る事ができた。


「後は、完成図面のように積んで、む、アーチのブロックは全てを支えながら、同時に載せる感じとな。これは確かに儂らでないと難しい作業かもしれんっ!」


などと言いながらもアーチを構成する台形ブロックを全て同時に浮かせながら、予定位置に纏めて設置していき、すぐに出入口も完成した。


「お爺ちゃん、器用だね」


「うむ。妖精族なら可能とソフィア殿も判断したんじゃろうが、魔術操作が得意な者でないと苦戦したじゃろう」


お爺ちゃんも杖を振ってポーズを決めたりと、かなり満足げだ。


「因みに、通常は複数人でブロックを支えながらアーチを作るので、先ほどのような高度な魔術操作は不要です」


ケイティさんが補足してくれた。


「なんと。じゃが、それでは積み上げるのもなかなか大変に思えるのぉ」


「翁、普通は大変なの! 私だって昔、訓練で作ったけど大勢いても半日はかかったわ。それが、これだけの大きさなのに作るのになんで一時間とかかってないのよ! 凄く理不尽だわ」


エリーがなんか不満げだ。


「結構、綺麗にできたと思うけど?」


「文句のつけようがないくらい綺麗ね、それはその通り。でもこれを初めてのメンバー三人で一時間かけずに作ったと言っても誰も信じないわ。間違いなく!」


「作り方が違うからね。それに運んで重ねる大変な部分を全部お爺ちゃんにお願いしたし」


「やはり大変なんじゃな。アキが訓練で背負っていた袋と比べてもずっと重かったからのぉ。それを高い位置まで積んでいくとなると手間が掛かると思ったんじゃよ」


「一通り見せて貰ったが、魔術抜きならば大変な作業と感じた。しかもこれを寒い季節に行うのだろう? 少なくとも我ら妖精族はそのような寒い地域に行きたくはないな」


近衛さんもそんな意見か。


「魔術が得意な妖精族でも、暖房の魔術をずっと使うのは大変ですか?」


「それだけならさほどでも無いが、そのような地に行くなら周囲への警戒や魔力を抑えるような事態が考えられる。そうなると辛い。そもそも、翁はそうして厚手の防寒着を着ておるが、私は普段の姿のままで寒い!」


うわー、無理をさせてたのに気付かなかった。


僕は近衛さんを捕まえて、服の中に入れてあげた。


「すみません、無理をさせてしまっていたようで。暫く冬ですから、皆さん用の防寒着を用意して貰いますね」


「なっ! 当たり前のように私を捕まえるな! 魔力が感知できないのがこれ程読みにくいとは……不覚だ」


なんか悔しそうな物言いだけど、服の中から出る気はないみたい。


「暖かいです?」


「――それはな。翁、これ程快適な服を着ていながら、私に一言も話さないとは酷いではないか」


余程寒かったようで、強がりも言わない。


「すまんのぉ。カマクラ作りについ熱中してしまった。後で埋め合わせをするとしよう」


「――とにかく、女王陛下もいずれは此方に来よう。その時までに全員分の防寒着を用意してくれ」


「用意しておきます」


ケイティさんも請け負ってくれた。


「作業は終わり、もう子守妖精は不要だろう。さらばだ」


そう告げると、服の外にヒョイと出て、送還されていった。


「それでは、三人は簡易住居(イグルー)の前に並んでください。完成した証拠として写真を撮ります」


「うむ、三人の力作じゃからな。儂らは横に立ってしっかり写して貰おう」


お爺ちゃんに促されて、お爺ちゃんの両脇に並んで、撮影して貰った。今使っている携帯カメラもフィルム式なので、写真が出来上がるのは別館に戻ってからとの事。デジカメみたいにその場で確認とはいかないけど、出来上がりを待つのも悪くない、そう思った。





第二演習場に戻ると、早速、トウセイさんが大鬼化して、雲取様に竜眼で様々な角度からじっくり観察されているのが見えた。


「ただいま戻りました。トウセイさんの方もいい感じみたいですね」


「こうしていても魔力が溜まっていくのを感じるよ。いい気分だ」


大きな身体なだけあって、大声という訳ではないんだけど、音が上から降ってくる感じだ。


「師匠、トウセイさんですけど、護衛の魔導人形さん達でも、触れたりしても問題ない感じですか?」


「――止めた方がいいね。ケイティのとこの三姉妹のように、高魔力耐性を施してないと問題が出そうだ」


ケイティさんに聞いてみたけど、テープメジャーはあるとの事。


「雲取様、ちょっとトウセイさんの身体の計測をしたいんですけど、竜眼で見終わるまで待っていた方がいいですか?」


<いや、支障はない。大鬼の体に合った服を作る話か>


「はい。変身していられる間に計測をしておけば体に合った服も作れますからね。リア姉、お爺ちゃん、手伝ってくれる?」


僕は、高い位置や、テープを巻き付けたりする作業をお爺ちゃんに助けて貰いながらやれば、体が大きくてもさほど時間を掛けずに計測できるだろう、と話した。


「確かに冬服は必要そうだ。どうせなら一通り、服を作ろうか。トウセイ殿もあった方がいいだろう?」


「ご厚意に感謝します」


そんな話をしている間に、第二演習場のスタッフさんから、テープメジャーも借りる事ができた。


「えっと、どこを測ればいいんだっけ?」


「そうだね、セイケン殿、少しこちらに来てくれるかい?」


リア姉に呼ばれて、セイケンがやってきた。やって来たセイケンと、大鬼のトウセイさんを見比べて、やっぱりと呟いた。


「どうしたの?」


「個人差がどれくらいあるかと見てみたんだけど、やっぱりかなり差があるね。トウセイ殿は研究がメインで今後もあまり、体を鍛える時間は取れないだろうから、今の体格に合わせた服にしよう」


ふむ。リア姉に言われて、改めて眺めてみると、確かにセイケン達の引き締まった体付きに比べると、明らかに運動不足っぽくて、もう少し何とかしたいところに見える。


「……魔力不足で運動時間が取れなかったんだよ」


トウセイさんも自覚があるようで、恥ずかしそうだ。


「それじゃ、まずは手の計測から始めようか。ケイティは記録を宜しく。ほら、トウセイ殿、取り敢えず座って」


周りを巻き込まないように注意しながらゆっくり座ったトウセイさんが手を差し出してくれたけど、小さなテーブルくらいの大きさがあって、自分が小人になったみたい。

何せ、東大寺の金剛力士像にも匹敵する大きさだからね。


リア姉は慣れた手付きで、僕やお爺ちゃんに指示しながら、指を一本ずつ長さを測り、太さを計測して、と言った具合に丁寧に計測を始めた。


「そんなに細かく測るのかい?」


「手袋を作るにしても、指の長さは人それぞれ違うから、一通り測るんだよ。それに指輪とか、装身具を作る必要も出てくるかもしれないからね」


そんなやり取りを聞いて、雲取様が楽しげに笑った。


<トウセイ、諦める事だ。我も、鞄の取り付け位置の検証で、あちこち測られたからな>


雲取様は手首に付けている鞄を見せながら話した。


うん、どの位置に付ければ飛行に支障がないか、他の人や魔導人形達では厳しいからと、僕とリア姉とお爺ちゃんであの時も測ったんだよね。


「――理解しました。それでは宜しく頼むよ」


トウセイさんも、自分だけではないと理解してくれたようだ。良かった。


「念の為、手の厚みも比較撮影しておこう。アキ、側に並んで。ケイティは撮影して」


「はーい」


……こうして、身に付けるモノの為の計測は全て行う勢いで、身体の隅々まで計りまくり、撮影もしっかり行った。


流石に足の付け根あたりはトウセイさんが自分で測ったけどね。


終わった後、トウセイさんが疲れたように「街エルフは凝り性だと聞いてはいたけど、ここまでとは思わなかった」と話していたのが印象的だった。


 

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。

今回は久々の魔術訓練という事で、アキ、エリー、翁の三人共同でイグルーを作りました。アキも話していた様に、一番面倒で大変な運搬と積み上げを、翁に丸投げしていたので、驚異的な品質と速度でしたが、半分は妖精さんがいたおかげでした。エリーの護衛に来ていた皆さんは、非常識な作成光景に口あんぐりだったことでしょう。

次回の更新は、2020年05月31日(日)21:05です。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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