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10-4.雲取様と「変化の術」(前編)

前話のあらすじ:アキのサポートメンバーや家族が集まり、各人が今後の見通しについて語りました。アキの「研究メンバーも揃ってしばらく研究三昧、冬だし落ち着くと思う」という意見には誰も同意しませんでした。


「ケイティさん、雲取様が「変化の術」の話を聞きに来てくれると言ってましたけど、心話用の魔法陣って、雪に埋れていても普通に機能するのでしょうか?」


雨の日も使ってたから、家電製品の漏電みたいな話は無さそうだけど。


「除雪しなくても稼働しますが、問題が起きた際、魔法陣が見えていれば、問題にすぐ気付いて対応できますが、見えなければ初動が遅れかねません。ですから、雲取様とのお話は雪が止み、除雪を終えてからです」


それもそうか。


「日差しや風を制御できる魔導具でも積雪対応は無理なんですか?」


「魔法陣をドーム状の障壁で覆って、積もる雪を周囲に落としたとしても、周囲に積もった雪を運搬しなければ埋れてしまうでしょう。ですから、魔導人形達に除雪して貰う段取りです」


サッカーグラウンドより広い演習場に積もる雪を全て取り除くとなると、演習場の周囲に雪の廃棄場も必要そうだ。


「ウォルコットさん、馬車は雪道も走れます?」


馬車といえば御者のウォルコットさんに聞くのが鉄板だ。


「走れなくはありませんが、今回は第二演習場までの道は全て除雪すると聞いてます」


「やっぱり魔導人形達で?」


「運動を兼ねて、鬼族の方々がされるとか。シャベルは使わないそうなので、どう行うのか、ぜひ見学したいですな」


ほぉ。


「それは僕も観たいですね。ケイティさん、調整をお願いしてもいいですか?」


そもそも起きていられる時間が短いから、僕の都合に合わせて除雪して貰うとなると、色々と調整が必要と思うんだよね。


「都合が合えば見学できるよう手配しておきます。ですが、除雪作業など観ても面白いものでしょうか?」


んー、確かにスノーシャベルとママさんダンプで雪掻きを延々とする様なら観るのは、微妙かな。観てるくらいなら、一緒に作業した方が嬉しいと思う。


「ケイティさんは鬼族の除雪方法を知ってるんですか?」


「いえ」


ふむ。たまにしか雪を見ない僕からすれば、雪が積もる様は非日常だけど、雪国の人からすれば、往来を阻害し、家屋を重みで潰す厄介物、手の掛からない間に取り除くのが日常って事なんだろう。


「雪は綺麗じゃが厄介じゃからなぁ」


お爺ちゃんがしみじみと話した。


「妖精の国でも雪は降るの?」


「何十年に一回といった程度、それもほんの少し降る程度で積もる事はほぼないんじゃが、積もった前例がない訳でもない。その時は、家を支える枝が雪の重みで折れそうになり、国民が総出で、雪落としをしたんじゃよ」


編むように作る妖精さんの家だと、確かに積雪には弱そう。


「それは大変だったね」


そんな僕の言葉に、お爺ちゃんは首を傾げて、クルクルと回りながら、大変、大変じゃったか?、などと呟きながら考え込んでいた。


「大変じゃなかったの?」


「いや、夜通し、雪を落としてたのは確かじゃが、だんだん面倒になってきて、最後は皆で大規模魔法陣を展開して、空の空気を温めて、雨に変えたんじゃよ。雪は留まるが、雨ならば流れるからのぉ。おかげで暫く雨は続いたが、雪に困ったのは一晩だけじゃった」


ケイティさんを見ると、僕と同じ感想を持ったようだ。うん、妖精さん達って、台風が来たなら、核爆弾で吹き飛ばしちゃえ、と言わんばかりの米帝主義を地でいく種族なんだ。


小さな力で相手に悟られず対応するのがスマート、という美学は持ってても、飽きっぽくて、強大な魔術も使えるから、ある程度したら、根本から吹き飛ばすような真似もできちゃうと。


「それって、妖精の国の中だけ雨にしたの?」


「アキ、魔術で空を分けるような真似はできんよ。じゃから見える範囲の空は全て、暖まり、雨に変わった筈じゃ。緩衝地帯の全てを確認してはおらんが、一日で飛べる範囲は全て雨じゃったよ」


あー、うん。気象制御と言っても、規模と期間が違い過ぎるね。


「ケイティさん、鬼族の集団魔術も気象制御できましたよね?」


鬼族も「雨来い祭り」で、集団魔術で雨を降らせるような真似をするとは聞いたけど。


「後で確認してみますが、もっと小規模で短期間の筈です」


「まぁ、儂らとて、そんな真似はそうそうせんよ。地に満ちた魔力を使い過ぎると、回復に時間がかかるからのぉ」


ほぉ。


「こちらでも、大規模魔術を使って、土地の魔力が足りなくなるような話ってあります?」


「……こちらでは大規模魔術と言えば、魔力を長い時間を掛けて宝珠に貯めておき、必要な時に発動させるというものです。妖精界のように世界に満ちた魔力量が豊富であれば、そこにある魔力だけでも事足りるのでしょうが、こちらではそのような魔力の使い方は不可能でしょう」


成る程。そもそも、こちらでは人族は魔力を杖の先に収束して圧縮して、やっと魔術を発動できる。そこまでしないと魔力の密度が足りないから。人族の保有魔力量はこちらの世界を表し、収束、圧縮をせずとも瞬間発動できる竜族や妖精族のそれは妖精界の魔力量を表すってとこか。


「それなら、お爺ちゃんがこちらでの雪の処理に興味を持つのも当然だね」


「うむ。雪のある暮らしを見れるとは嬉しいのぉ」


「それなら、廃棄場所の雪山を使わせて貰って、かまくらを作ってみてもいいかも」


「……かまくら、ですか。アキ様は作った事はありますか?」


ケイティさんは、なんて物好きな、と言った表情を浮かべた。


「いえ、日本あちらではそもそも靴が埋まる程度の積雪すら稀でしたから、経験はないです」


「雪中行軍の訓練は想定していましたが、あくまでも作るのは一人が避難できる雪洞を考えていました。ですが、アキ様のイメージされた「かまくら」は一人で作るのは時間的に厳しいでしょう。ジョージと相談してみます」


無理と言われなかっただけでも良しだ。


「宜しくお願いします。それで、今日は何の訓練ですか?」


久しぶりに体を動かせるのはいいね。


「大使館領の道を使ってクロスカントリースキーを行います」


「スキーというと、足に板を付けて滑る遊びじゃったな」


「雪に沈まないように板を付けるけど、雪に覆われた平地や斜面を移動する為の道具で、遊びの要素は少なめかも」


「ふむふむ。儂らなら雪に沈む事もないじゃろうが、人は大変じゃな」


妖精さんは小さくて軽いからね。それにしても斜面を滑り降りるスキーはちょっとだけやった事はあるけど、クロスカントリースキーは初めてだから楽しみだ。

雪が積もる、それって観てるだけなら幻想的な感じにも見えますが、生活するとなれば、色々と対策もしないといけない邪魔物以外の何物でもありません。

まぁ、そんな厄介な雪も妖精さんにかかれば、ぱーっと解決。

……妖精界の竜達ですら、妖精族の国には近寄らないのも当然でしょう。

次回の投稿は、五月六日(水)二十一時五分です。


<雑記>

昨日、献血に行ってきましたが、休日は予約で埋まっているという盛況?ぶり。でも、各地に献血車両を展開しての献血が止まってしまっているため、献血が足りない状況とのことです。あと予約で埋まっていると言っても、400cc献血ならさほど待たずに献血できる感じでした。


それと、雑誌やコミックが接触感染を防ぐ目的から全て撤去されており、その分、献血が終わると、皆さん、軽く飲み食い(無料のお菓子やドリンク)をしたら帰宅する感じでしたね。まぁスマホがあるので待ち時間とかも誰も暇してる感じはなかったです。

献血をする台に備え付けられているテレビも、リモコンからの接触感染を防ぐため、リモコン撤去、チャンネルはNHK固定となってました。


入口では消毒液が置かれていて、入る際に手の消毒をしますし、献血前に非接触型の体温測定(額に近づけて計測する機器がある)をしたり、受付もコンビニなどと同様、ビニールシールドを吊り下げたりと、対応はしっかりしてます。

席も半分に減らされたり、座らない位置に大きな献血ちゃんぬいぐるみ(ビニールに包まれている)が置かれたりと、普段とは違う感じです。


皆が巣籠りしてても、怪我や病気になる人、献血が必要な人はそうそう減りません。献血は必要で貯めておくこともできないので急なことでもあります。献血可能な方はぜひ、献血にご協力ください。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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