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10-2.初雪(中編)

前話のあらすじ:各勢力のお偉方も帰国して、ロングヒルは束の間の平穏を迎えることができました。季節は冬、雪がしんしんと降る中、久しぶりの家族団らんを迎えることができました。

あんまりのんびり話をしていたせいか、トラ吉さんに催促されて、皆でリビングに場所を移した。ケイティさんがホワイトボードを用意してくれていた。というか、司会役もしてくれるみたい。


ケイティさんが杖で宙空に文字を描くと、程なく、僕の生活のサポートをしてくれているメンバーが合流してきた。


魔導人形のメイドの三姉妹、アイリーンさん、ベリルさん、シャンタールさん。

護衛のジョージさん、御者のウォルコットさん、それとウォルコットさんの助手で魔導人形でありながら唯一の司祭でもあるダニエルさん。


彼らは少し離れたところに用意された椅子に腰を下ろした。


僕の足元にトラ吉さんが座り、隣にはお爺ちゃんが浮かんで、準備完了。


皆が所定の位置に着いたのを確認して、ケイティさんがホワイトボードを裏返した。


左側のボードは、僕がロングヒルに来て魔術の勉強をしつつ、僕と魂を入れ替えたために地球(あちら)にいるミア姉を助ける為に、次元門構築の研究を進める、そんな当初の計画の想定図が書かれていた。


ここにはいないけど、街エルフ達の国には、サポートメンバーの雇用主でミア姉の家令であるマサトさんと秘書人形のロゼッタさんが、彼らの活動を支えてくれている。

ロングヒルに住む、古典魔術に熟達したお婆ちゃんのソフィアさんが僕の魔術の師匠だね。


妖精族のお爺ちゃんは僕の子守妖精で、トラ吉さんは僕の護衛兼保護者ってとこ。


リア姉は僕と全く同じ無色透明という唯一無二と言われた魔力特性を持っていて、そのせいか、僕と魔力が共鳴増幅されてストップ高。


でも高すぎる魔力のせいで、竜族並みの強い魔力しか感知できず、地球(あちら)の家電製品並みに普及している魔導具も触れると過負荷で壊してしまう為、専用に用意された特別な屋敷以外での行動を禁止されているんだよね。


そんな、生活するのにも苦労する状態の僕だけど、魂交換の副作用で、一日の半分も起きていられない。だから、こちらではまだ星空も見た事がないんだ。


それでも快適に生活できているのは、ここにいるサポートメンバーの皆さんが僕の活動を支えていてくれているから。ほんと、ありがたい。


「こちらがロングヒルに到着した頃のアキ様を取り巻く状況を表した図になります。私とアイリーン達三人の女中人形が、マコト文書の専門家としての活動と、異国で魔術を習う生活を支え、ジョージが安全を確保し、ウォルコットが魔導馬車で送り迎えを行うという小さな規模でした」


ケイティさんの言う通り、ここに来た時は僕は魔術は使えなかったし、次元門研究のメンバーもマコト文書の専門家としての僕、古典魔術の大家である師匠、そして現代魔術である魔法陣に精通しているリア姉の三人だけだった。


ちなみに、小さい規模というけど、ここには来ていないジョージさんの部下の護衛人形さんが四体、ウォルコットさんの部下の農民人形さんが六体もいるので、僕の感覚からすれば多いと思う。離れた場所で、魔導具も制限がある中で、高い文化レベルとセキュリティ、それに行動や情報のやり取りも維持しようとしたら、これくらい必要って事とは聞いている。

僕の活動を、お金を生む事業にしてくれているマサトさん、ロゼッタさんの力がなければ、かなりの資産家でも、あっという間に破産しそうだよね。その道の超一流なサポートメンバー二十人近くと、専用の独立したお屋敷、王侯貴族でも持たない人形馬や魔導馬車を十全に機能させようと言うんだから……


「当時の各種族の在り方、状況を示します。鬼族連邦、小鬼帝国、それと人族を中心としたそれ以外の種族の寄合所帯である人類連合は、弧状列島内で勢力が拮抗しており、大規模な戦は無いものの、小鬼帝国が成人の儀と称して定期戦争を仕掛けてくる事もあり、常に緊張状態を強いられる状況でした」


三国志みたいに綺麗に支配地域が分かれている訳ではなく、人族、鬼族は都市国家を中心とした狭い地域を支配し、それ以外の荒地や傾斜地など厳しい土地の全てを小鬼族が支配している構図だ。だから単純な面積だけなら小鬼帝国が断トツで広い。貧しいんだけどね。


「竜族は各地の魔力豊かな地域を占有し、他の種族の争いには関与せず、ドワーフ族と森エルフ族は、天空竜の雲取様の縄張りで庇護の元、暮らしていました。妖精族は妖精界から翁が一人、召喚されました。そして我々、街エルフの共和国は、人類連合を支えつつ裏方に徹していました」


僕が初めに住んでいた共和国は東京都二十三区程度の広さの島で、三大勢力が争う弧状列島まで帆船で数時間と少し距離があるおかげで、その争いから一歩離れたところにいた。街エルフより十倍は多いという魔導人形達を運用し、大型外洋帆船の艦隊を複数運用して海外貿易を事実上独占しているという、他の勢力からすればチートとしか思えない超国家だ。


弧状列島という狭い地域で様々な種族が生活し、竜族という圧倒的な存在が全域に点在していることもあって、三大勢力の力関係も安定したものだった。それが僕が召喚されて一ヶ月ほど経過した時点での「世界」だった。


「次に右のボードに現在の状況を示していきましょう。各種族が関わった経緯は割愛します。まず、竜族。彼らはアキ様を通じて他の勢力との交流を始めようとしています。生きた天災、魔力差故にまともに会話することすら困難で相互不干渉としてきた彼らが、意思疎通可能な隣人へと変わろうとしているのです」


そう言って、僕のところに「竜神の巫女」というネームプレートを貼り付けた。そして、雲取様の近くに彼に恋心を抱いて牽制し合っている七柱の雌竜達と、先日、怒りに満ちた魔力波動を爆発させて弧状列島全域を機能不全に陥れた福慈様のプレートも追加した。


「妖精族も、翁以外に五人が追加召喚されました。彼らは人数こそ少ないものの、我々とは異なる高度な魔術体系を持ち、我々の魔法陣を主体とした現代魔術にも柔軟に対応し、魔術の改良、開発の主力となっています」


そう言って、お爺ちゃんの隣に妖精女王のシャーリス様や賢者といった面々のプレートを追加した。


「次は鬼族連邦の鬼族。彼らはロングヒルに大使館を新設し、五人と少人数ですが常駐しています。また、「変化の術」を編み出した研究者のトウセイ様も先日から研究チームに参加されました」


鬼族のところには常駐組のセイケン、研究者のトウセイさん、それに鬼王レイゼン様や武闘派のライキ姉、穏健派のシセンさんのプレートを追加した。


「小鬼帝国はまだこれからですが、ロングヒルへの大使館新設と、研究に参加する要員が来る事が確定しています」


小鬼帝国のところには、小鬼皇帝ユリウス様、親衛隊長ルキウスさん、それと未定だけど、大使館要員、研究要員のプレートが追加された。


「随分増えてきましたね」


「残りは人類連合、ドワーフ族、森エルフ族、それと我々の共和国になりますので、もう少し話にお付き合いください」


「勿論です。お願いします」


参加勢力が増えていくけど減らないこともあって、ホワイトボードがかなり手狭になってきた。でもまぁ、残り三つなら平気かな。


「人類連合は大統領ニコラス様が人選して、中小国から人材を大量に引き抜いて、財閥で雇用する予定です。また、各勢力が集うロングヒルでは王女のエリザベス様を筆頭に王族が総出で他勢力との交流を支援されています」


ロングヒルの枠に、王女のエリーやその家族の皆さんが並び、所属している人類連合の方には、大統領のニコラスさんと、今後参加する予定の人員のプレートが追加された。


「ドワーフ族からは代表のヨーゲル様と、複合工業施設の建設に来ている百名近い作業者の方々、それと魔導馬車担当の技術者の皆様がいます。森エルフは代表のイズレンディア様とレンジャーの皆様が来ています」


彼らは雲取様の庇護下にあるので、雲取様の近くにプレートを追加した。


さてラストだ。


「最後は我々、街エルフの共和国です。アキ様の活動を支える財閥は大幅な人員増をしており、長老の方々も一名ずつ入れ替わりとはなりますが、ロングヒルに常駐される事が決まりました」


長老の方々やロングヒル大使のジョウさん、それと大型帆船の艦隊を率いているファウストさんのプレートが追加された。


壮々たる面子だね。


僕がため息混じりにホワイトボードを眺めていると、父さんが僕の頭をポンポンと叩いて笑った。


「これだけの者達が僅か三ヶ月程度で、アキと繋がりを持ち、これからも関係が続くのだから、長老達が変化についていけないとボヤくのもわかるだろう?」


だんだん増えていったからまだ理解できてるけど、一度に教えられたら、把握は厳しいだろうね。


「ゴチャついてますけど、次元門等の新魔術研究組、研究組と実務者を繋ぐ調整組、僕の活動を支えてくれるサポート組、それと各メンバーが所属する勢力の方々って感じに分ければ、少しは把握しやくなると思いますけど」


僕の説明に、リア姉が苦笑した。


「三大勢力や数万柱の竜族を全部纏めて、その他扱いするのはアキらしいけど、六大勢力の代表の一人として、せめて各勢力代表組くらいの認識は持って欲しいね」


「人類連合の大統領ニコラスさん、鬼族連邦の鬼王レイゼンさん、小鬼帝国の皇帝ユリウス様、竜族は暫定で福慈様、街エルフの共和国は長老の皆さん、そして僕の活動を支えてくれる財閥、と。でも僕は財閥の代表じゃないから扱いは微妙じゃない?」


「竜族との交流を担う竜神の巫女であり、研究組にも所属しているマコト文書の専門家で、妖精族召喚の要でもある。アキは肩書きには困らないわね」


母さんが、それだけあれば、各勢力の代表達と十分釣り合うと説明してくれた。成る程。

感想、評価、ブックマークありがとうございます。執筆意欲が大幅にチャージされました。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。やはり自分ではなかなか気付かないので助かります。

状況の整理ということで、アキとその関係者が集まって、振り返りを行うことになりました。個別の案件だけ対応していると、全体の方向を見失いがちですからね。アキ自身は「ミアを助けること」が最優先でブレませんが、しがらみも増えてきましたから。

今パートはこれまでの振り返り、次パートは今後について皆が見解を話して、認識の擦り合わせを行っていきます。

次回の投稿は、四月二十九日(水)二十一時五分です。


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新しい連載を始めました。といってもエッセイで社会問題ネタです。

『新型コロナウィルスの世界的流行パンデミックに関する考察』になります。

よろしければご覧になってみてください。

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