第九章の各勢力について
九章で各勢力にかなりの動きがあったので整理してみました。
森エルフの国、ドワーフの国以外の勢力の基本説明は八章の「第八章の各勢力について」をご覧ください。このページでは、九章での状況を中心に記載してます。
【ミアの財閥】
当主代行の家令マサトの尽力により、人材獲得競争では共和国政府に大きくリードしているが、やはり根本的に人材不足は深刻だった。アキが人類連合の大統領ニコラスに提案した「費用は財閥が持つので、予算の関係でロングヒルに人を派遣できない中小国から、他種族との対応の仕事に参加したいと希望する有望な人材を引き抜いて」という話が快諾され、事態は大きく動くことになった。
ロングヒルにいる大使ジョウがネームバリュー的にも能力的にも最適なことから、十章では人類連合の大会議場で、人材募集のプレゼンテーションを行うことになり、街エルフの誇る流通網を駆使して、各国の関係者を集める手筈も整えるなど、流れを加速する策を次々に打ち出している。
老竜の福慈様が起こした魔力爆発で弧状列島全域が混乱に陥ったが、結果としてあらゆる事態の震源地たるロングヒルに人を派遣したい、とする中小国も激増することになった。
採用人数枠にも限りがあるため、中小国から集める人材の精鋭で固めることになり、財閥も現時点の人材不足は解消できることだろう。
財閥としては共和国の方針に従って、三大勢力(人類連合、鬼族連邦、小鬼帝国)の文化交流を支えつつ、新販路を確保することで、商機を獲得しようと目論んでいるが、あくまでも目指すは共存共栄。相手の経済圏を維持しつつ、新たな取引を組み込んでいくことになるため、当面は手探り状態の活動が続くことになるだろう。
【共和国(街エルフの国)】
各勢力との代表やアキとも会談を行うことで、街エルフの長老達もこれまでに起きている事態と、これから起こるだろう事態をある程度把握するに至った。そして、「アキ(コレ)は街エルフだけでは手に負えない」と正直にギブアップ宣言をして、弧状列島に住む種族が手を取り合う流れを創り出すことに成功した。
アキは酷い扱いだ、と文句を言っているが、残念ながら会議に参加していた全種族代表が長老の意見に同意した。恐らく、竜族の代表が参加していたとしても、同意する種族が一枠増えただけだっただろう。
今後は、常にロングヒルに長老が一名は常駐する体制になり、これまで裏方に徹してきた姿勢を改めていくことになった。財閥とは人材獲得競争では後塵を拝しているが、今後は顔の見える街エルフということで、対外活動に専念する者を見かけることも増えていくに違いない。
統一国家樹立に向けて、各勢力と協力していくことが決まったため、今後、海外派遣している各勢力の艦隊同士が戦うことを想定する必要性が薄れてきたのは幸いだろう。対世界で考えた場合、国内問題で足の引っ張り合いをしているような余裕などないのだから。
【ロングヒル】
各勢力の代表達も長かった会談も終わって帰国していってくれたことで、やっと一息つくことができた。王女のエリーも話していた通り、ホスト国という利点を活かして、やってきていた各勢力代表とも会談を行うことができ、人類連合における存在感を更に高めることになった。
ロングヒルからすれば、鬼族連合との最前線を支える中枢国というだけで、国の規模からすれば大国とは言えないレベルでもあることから、どんどん高まっていく存在感も困ったものと考えているようだ。
身の丈に合わない役割を担わされてるという思いは強いようで、ニコラスが財閥の助力を得て、人類連合として大きく関与していく方向に舵を切ってくれたことを歓迎している。
今後は、各勢力の大使館があることから、一定の外交的努力は求められるものの、最前線を支える中枢国としての負担は減っていくことが期待できるので、軍事偏重だった体制を商業に比重を移していくことになっていくことだろう。
【人類連合】
アキの提案を受けて、大統領ニコラスが、中小国からの人材採用の権利を手に入れたことで第三勢力として足場を固めていくことが確定した。これまで連合に所属している二大国(西のラージヒル、東のテイルペースト)の思惑に邪魔されてきたが、ニコラスの政治基盤も大きく強化されることから、当面は、大統領派、ラージヒル派、テイルペースト派に分かれて、水面下で様々な駆け引きが行われていくことだろう。
ニコラスも話していたように、人類連合の強みは所属国や種族が様々であることから生まれる多様性だ。
元々、多様な考えを持つ者達が集まっているだけに、そこに鬼族、小鬼族、妖精族と増えていったところで、それを受け入れるだけの懐の深さはある。それだけに動き出すまでは遅いが、一度動き出せば、ニコラスの目指す「各種族の橋渡し」的役割は十分こなしていけることだろう。
なお、内部抗争などという無駄な足の引っ張り合いをしていたら、鬼族連邦、小鬼帝国との競争に負けてしまうので、三大勢力が競い合う体制が維持される限り、大統領ニコラスの地位は安泰となるに違いない。
【鬼族連邦】
元々、種族的に強く、危機意識もそれほど強くはなかったが、アキが示した今後百年程度のロードマップを見て、何も手を打たなければ、少数派として、危うい立場に追い込まれる可能性が高いことを理解して、その意識も変わったようだ。
鬼族の立場を大きく変えることになる「変化の術」自体、鬼族の研究者トウセイが生み出したもの、ということもあり、その術を活用して、大きく発展していくこと自体には疑問を持っていない。
ただ、人より長い寿命の彼らからすれば、いくら実際に変化できるトウセイという成功例があるといっても、大々的に導入するには、まだまだ研究も準備も民への周知も、何もかも大きく足りない中で、リスクを負ってまで行うべきか、踏ん切りがつかないのも事実。
それに、いくら、武闘派トップのライキや、穏健派トップのシセイ、そして鬼王レイゼン自身が見極めてきたと言っても、はいそうですか、と簡単に受け入れられるかと言えば、微妙なところだろう。
【小鬼帝国】
皇帝ユリウスの大胆な行動から始まった各勢力の集まりは、三大勢力が手を取り合って、いずれ、弧状列島全てを纏めた統一国家を樹立する、という方向で進んでいくことが決まった。
それ自体は大規模な戦争を回避し、軍事費の増大を抑えるものとして歓迎できる流れとも言えるが、統一国家における小鬼族の立ち位置がどうなるのか、経済面では大きく劣るだけに、何を基準とするか、によっては国論を二分するような争いになることも考えられる。
なにせ、アキがユリウスに提案した「幼児期までの死亡率の大幅な改善」は、方法論もある程度確立され、人員、物資、資金の目途さえ立てば、成果を出せることは間違いない。そうなれば、成人の儀で、運命の選択として、一定数が死んでいくことを許容していた文化も変容していくのは確実だ。
しかし、いかにユリウスの権威が高くとも、伝統を大きく変えていくことへの反発を力で抑え込むことはできない。それだけに今後はユリウスの政治的手腕が大きく問われることとなっていくだろう。
【妖精の国】
九章でシャーリスが各勢力に宣言した通り、次元門構築チームに参加しつつ、今後も主に魔術の研究開発の分野に注力していくこととなった。
世界間データ通信を活用しつつ、こちらの三大勢力との交流を元に、人族達の国の在り方、文化などを学んでいき、それを妖精界での他国との関係にも活かしていこうと考えているようだ。
また、確率論を齎したアキを妖精界に招く件については、国民の強い熱意もあるため、何としても実現させていくことだろう。本編ではまだ語られていないが、賢者以外にも、魔術に長けた妖精達が召喚魔術の改良に日夜勤しんでいるので、しばらくすれば成果も見えてくるに違いない。
幸い、竜族を召喚するというネタも出てきたので、竜族と各種族の交流を支援するという姿勢を見せつつ、アキの召喚に必要な各種試験を捻じ込んでいくことになりそうだ。
十章では翁から、妖精の国として、今後、どういう方針で関わっていくのか語られることになる。当面、ケイティを含めて妖精さん対応の方々は気が休まることはないだろう。
【竜族達】
地の種族達からの依頼もあり、彼らの会合に立ち会うことにはなったが、竜族全体としては、具体的に何かやろう、という段階ではない。
とはいうものの、雲取様と七柱の雌竜達が引き起こした写真撮影や菓子類を食すことだけでも、弧状列島の隅々まで話が広がり、アキとの心話を行う件や、ロングヒルに出向いて話をする件が霞むほどの騒動を引き起こしている。なにせ、竜達は有り余る力を振るう場所もなく、暇で飽きていて刺激に飢えている。
竜族とまともに交流できる「竜神の巫女」がアキとリアしかいないため、竜族の欲求に対応が全然追い付いていないという状況だ。
あまり長く放置しておけば、竜が人の街に足を伸ばして、直接話をしようとし出すかもしれない。そうならないように、手を打っていかないといけないだろう。
福慈様が魔力爆発を起こして、列島全域を混乱させた件では、直接、福慈様の元に足を伸ばして諫めるだけの実行力を持つ竜がいないことも露呈した。誰も火中の栗を拾うような真似はしたくなかったのだろうが、止め役がいないというのは何とも危うい。
すぐにどうこうなる訳ではないが、戦力的には全種族相手に片手間で一方的に蹂躙できるほど強いので、放置しておくことはできない。
今後、どのような活動をするにせよ、竜族の動向には注意していく必要があるだろう。
【森エルフの国】
雲取様の庇護下にあって、勢力としては大きくはない。ただ、その弓の腕は一矢一殺と称される通り、十倍の戦力を包囲撃滅するような非常識さを持っているだけに知名度は抜群だ。そんな彼らもレンジャーとして森に溶け込み、敵を殲滅するのには長けていても、他種族と密な交流をするようなことは不得手としており、実際、ロングヒルに大勢の森エルフ達が護衛としてやってきているのだが、他種族との交流成果が出ているとは言い難い。また、彼らが神木と崇める世界樹の精霊とも交流することをアキは求めているが、そもそも世界樹は樹木なので移動できず、どうやって交流を実現すればいいのか頭を悩ませているようだ。
雲取様との心話を森エルフでも行えるよう術式の改良を国を挙げて行っており、この件ではドワーフ達とも協力している。なお、こちらでは共に庇護下にあるだけあって、両種族の中は悪くはない。
【ドワーフの国】
雲取様の庇護下にあって、勢力としてはやはり大きくはないが、金属加工技術の高さでは有名で、街エルフも技術提供を受けているほどだ。
そんな彼らも、アキが利用している魔導馬車の開発メンバーであるドワーフ技術者達の繋がりから、妖精族の超技術に触れることとなり、大々的に技術交流を行おうと、ロングヒルに技術者集団を派遣して複合工業施設を建設する流れとなった。
今後、ロングヒルで活動する妖精族との技術交流によって、ドワーフの技が飛躍していくことだろう。
また、雲取様との心話をドワーフでも行えるよう術式を改良する活動も、森エルフに劣らぬ力の入れようであり、街エルフの魔法陣を参考に、魔導具で補助していく方向で研究しているようだ。
ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
それと誤字、脱字の報告ありがとうございます。五回、十回と読んでいても気付かないものなのでほんと助かります。
次回から、第十章スタートです。四巻相当ということで、始めの三パートくらいは落ち着いた別邸でのんびりしつつ状況整理をするというスロースタートになります。
次回、10-1の投稿は四月二十二日(水)二十一時五分の予定です。
<雑記>
先日、都内は豪雨の日でしたが、献血に行ってきました。外出自粛の流れを受けて、各地で献血カーを展開しての献血活動が相次いで中止になっており、血液が不足している事態という報道もありましたので。
行ってみると、予約した人以外殆どおらず、席も1つずつ空けて座るようになっていたり、献血前に検温をしたり、血液検査のところでは一人終わるたびに台や椅子を消毒液で拭くなど、感染症対策が徹底していました。中でもマスクを持っていたら飲食時以外は付けているよう指示されました。
新型コロナウィルス関連の感染者が近場で出たりしてないか、というヒアリングや、もし感染者が出た場合の連絡先の書かれた書類も渡されるという徹底ぶり。そんな状態でしたので、安心して献血を行うこともできました。もちろん、次回予約もしましたよ。
で、現在は献血とラブライブがコラボしてまして、以下のクリアファイルを貰えました。
現在は400cc献血も不足気味とのことですので、もし元気で献血できる条件を満たしているようであれば、ぜひ、献血ボランティアにご協力ください。飲み物、お菓子も自由で、雑誌やコミックを読んだりもできて中はお洒落な雰囲気で図書館のように静かなのも一押しです。