第九章の登場人物
前話のあらすじ:各勢力の代表達が、今後、統一国家に向けて動くことを宣言しました。歴史が動いた!って感じで、いやー凄いところに同席しちゃったなー、とかアキは思ってたりします。また、長老達からはミアに関するエピソードを聞けてアキはホクホクでした。
……っとついいつものように書いてしまいました。
今回は、九章で登場した人物や、活動してても、アキが認識しないせいで登場シーンがなかった人の紹介ページです。
◆主人公
【アキ】
外見は色違い(髪が銀髪、目が赤い)のミアといったところであり、中の人は誠。地球では高校二年生の男子であった。現在はミアと魂が入れ替わっており、こちらではとても長い学生生活を始めている。
成人するまで待っていたら、地球の誠(中の人はミア)が寿命で死んでしまうので、なんとか奮闘して、地球との間に次元門を構築する専門チームを立ち上げて貰う状況まで持って行った。
また、こちらでの姉であるリアとの間で、魔力共鳴現象が起きており、魔力は超強化されたっぽいのだが、制御不能、魔力の感知も不可と欠点ばかりが目立つ。強過ぎる魔力のせいで触れると魔導具が壊れると、行動範囲すら大幅に制限される有様である。アキの魔力属性はリアと同じ無色透明であり、他人からはアキの魔力がまるで感知できない。
魂入れ替えの影響で、一日の半分も起きていられない。日がかなり昇ってから起きて、日が落ちる前には寝ている感じ。そのため、生活の大半をサポートメンバーに頼っている。
竜族の雲取様との交流を深めることで「竜神の巫女」と呼ばれるようになり、雲取様以外の竜達とも次々に交流を増やしていき、今まで互いに不干渉としてきた竜族との交流が一気に実現していくことになった。そんな「竜神の巫女」の実像を把握すべく、各勢力が動くことになった。
九章では、三大勢力の代表(人類連合の大統領ニコラス、鬼族連邦の鬼王レイゼン、小鬼帝国の皇帝ユリウス)、街エルフの長老達と会談を行い、弧状列島に住む種族が手を取り合う道筋を示し、その際の手際から、大きく存在感を増すことになった。
知り合いが随分増えたなー、とは思ってるけど、アキはミアを助けるための次元門構築を行う研究チームメンバーを集めようと、伝手を増やしている程度の認識で、実際、竜族からは白竜が、小鬼族からも研究者参加が確定してホクホクしている。
欲しいモノを強引に手に入れて、あとは専門家(政治家)さんよろしく~、という手口は、長老達の知るミアのそれと酷似しており、長老達から「本当にマコトなのか?半分くらいミアじゃないのか?」と問われた程。
地球の知識ベースでみると、いろいろと提案できることもあるので、アキとしては良かれと思い、鬼族の研究者トウセイが生み出した「変化の術」の活用方法を示したりと、周囲への働きかけも「ちょっとした手間」程度の認識でこまめに行っていて、それが更なる混乱を引き起こしており、その影響力はミアに勝るとも劣らない状況と、長老達は危機意識を高めていたりする。
◆アキのサポートメンバー
【ケイティ】
元は探索者であり、今は家政婦長として、アキがロングヒルでの活動の基点としている別邸で働く人々を統括している。「マコト文書」も抜粋版ではあるが一般には公開されていない範囲も含めて全て読んでいることもあり、アキの会話が、普通に通じるのもそのため。
魔導人形の女中三姉妹と共に、アキの活動全般を支えている。ケイティの献身的な対応がなければ、一日の半分以上寝てるアキがこれほどストレスなく活動することはできていないことだろう。
アキのマコト文書専門家としての活動を支える業務がメインであり、調整役メンバーとの会合にも顔を出す事が多い。アキが会談を行うときには、基本、同席しており、会談内容の把握に努めている。これは調整役のメンバーからの強い要望によるもので、アキの発言内容、相手の反応を分析し、先手を打っていかないと、予想外の影響が出て危険と判断された為だ。聞き役に徹していて、あまり表には出ないが、彼女の役割はとても重要だ。
九章ではアキが様々な組織の代表達との交流も増えたことで、ケイティに課せられた役割も重みを増してきた。アキに交流する相手に関する情報を正しく伝え、何に注意すべきか予め伝えることで、誤った方向に行くのを防がなくてはならないからだ。彼女が今、悩んでいるのは心話による交流の閉鎖特性と情報量の膨大さだ。人が話す十倍近い速度で高密度に交流が行われ、しかもそれをアキに全部話して貰うのは、時間がかかり過ぎて現実的ではない。
とはいえ、複数人による心話の研究はまだ進んでいない。ケイティの苦労はしばらく続くことになるだろう。
【ジョージ】
元は探索者であり、かなりの有名どころだったりする凄腕の護衛である。アキが行くところには常に同行している訳だが、ミアからは「街エルフの子供が成人するまでの間、危なくないように見ててあげてね」などと勧誘され、街エルフなら引き篭もり、ならまぁ、少しはのんびりできるかなどと考えたのが運の尽き。僅か数カ月で街エルフの国を飛び出して、ロングヒルにやってきて、本物の鬼族が現れたり、森エルフがきたり、そして本物の天空竜まできたのだから、護衛という視点からすれば、アキにはもっと大人しくしていて欲しいところだったりする。アキ自身は、直接、戦うようなこともなく、荒々しい輩に襲われるような場所に行くこともなく、極めて安全寄りに行動している「つもり」だが、鬼や竜とは会うという時点で、それは、安全の対極に位置する行動なのだと自覚して欲しい、と常々思っている。
九章では、連日のように各勢力の代表達との交流が行われ、安全性を担保するために、ジョージが各勢力の護衛メンバーと密な対応を行うことになった。
「竜神の巫女」というだけでも断トツの重要人物扱いだったが、今回の代表達との会談を経て、アキは三大勢力(人、鬼、小鬼)、共和国(街エルフ)、竜族に並ぶ第六勢力の代表的な扱いとなり、それまで以上に配慮する必要が出てきた。
アキの活動を支える財閥の代表はミアで、現在は家令のマサトが当主代行をしているので、アキ自身は単なる賓客扱いと、立場が微妙であり、ジョージも護衛する際に苦労している。
【ウォルコット】
御者であり、魔導馬、馬車の整備も担当しており、ロングヒルに来てからは庭師としても仕事をしつつ、魔導人形達のメンテもしてたりする元商人。若隠居であることがエリーの発言により明らかになった。こちらに来てからは、特等席で歴史の激動を目撃できている、と大変喜んでおり、実はせっせと日々感じたことを日記に記していたりする。なにせ、妖精キター♪、鬼族キター♪、ドワーフ達もわんさかやってキター♪、天空竜まできて、森エルフも! ってな感じである。
アキの創造した水がいつ消えるか、というしょーもない賭け事の胴元だったりもして、彼もこの一連の騒ぎを満喫しているようだ。
九章では、遠距離通信用の魔導具を操作したりと、その技量は重宝されているようだ。当初はアキが魔術を学ぶ際に、師匠の邸宅への送り迎えをするだけだったが、今はアキが竜族との交流を行うために週五のペースで第二演習場に行くため、それなりに忙しかったりする。
【翁】
本物の妖精であり、妖精界からアキの子守妖精となるべく召喚された老人である。他の妖精達と違い、色々と度外視した召喚体で構成されていることもあり、同期率を下げれば、こちらと妖精界で二重行動をしたりもできる。今回の天空竜との一連の騒ぎでも、妖精達と人族を繋ぐ役を果たし、調整役に徹していた。また、トラ吉さんとは仲が良く、アキの傍にいることで、アキを身体面、精神面の両面から強く支えている。
九章でも、アキの子守妖精としては勿論、妖精の国でも女王や宰相に様々な意見をして、彼らの動向に影響を与えてきた。本人は単なる好事家と吹聴しているが、まぁ、それだけでないことに皆も薄々気付いている。
妖精サイズのハンググライダーを乗りこなしたり、妖精界での飛行船建造にも尽力しているなど、その意欲は留まるところを知らない。
アキが寝ている時間帯には、他の研究者達や調整組の面々などとも交流をしており、アキのサポートメンバーの中では実は一番顔が広かったりする。
【トラ吉さん】
芝犬くらいの大きさの角のある猫、つまり魔獣であり、アキはとても愛らしいと思っているが、一般的視点からすれば、虎やライオンといった猛獣枠である。
実際、鬼族の研究者トウセイも、トラ吉の姿を見て腰が引けるほどであった。
リアに頼まれたということもあるが、最近の行動を見ていると、どうみても彼の思考は保護者のそれである。
アキの精神がかなり不安定なことも認識しており、常に近くにいて触れ合うことで、心を癒すのにも一役買っている。
相手が鬼だろうと、竜だろうと、常に傍にいて見守ってくれる彼の思いは、言葉を語らずとも、アキにもしっかり伝わっていて、抱きしめたり、毛繕いをしたりと御礼をしており、彼も満更でもないようだ。
福慈様の怒りに触れてアキが恐怖で体温低下に陥った時も、トラ吉さんが寄り添っていたことで、心の安定を取り戻して、容体も穏やかになった。
アキのトラ吉に対する信頼も鰻登りであり、トラ吉もまたアキのことをずっと見守り続けることだろう。
【マサト】
ミアの家令であり、ミアの財閥を管理している責任者でもある。「マコト文書」という知財を活用して、膨大な資産を多くの方面で運用しており、彼と秘書人形のロゼッタが行使する影響力は王侯貴族連中を束にしても敵わないレベルだったりする。そんな彼らではあるが、怒涛のイベントラッシュに、遂に手札が尽きて、活動を停滞せざるを得なくなった。
九章では、ニコラスと手を結び、人類連合の大会議場で、街エルフが予算を出して、人類連合所属の中小国から、ロングヒルでの他種族との交流に関わる仕事への参加を呼び掛けることになり、その準備に奔走することになった。
また、長老達とアキの会合も予想よりも穏やかに終わることになり安心した。竜族に対する認識がアキと長老達では真逆なだけに、話が拗れても不思議ではなかったからだ。
アキの様々な働きかけを利用して、鬼族、小鬼族との交易を始めることを商人冥利に尽きる、と大変楽しみにしている。とはいえ、他の種族の動きが鈍いため、財閥が突出しているように見えるだけで、マサト自身はかなり慎重に事を進めていたりする。
◆魔導人形枠
【アイリーン】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、彼女の料理は雲取様からも好評価を得て、彼女に加護を与えるに至った程である。竜が加護を与えた、などと言う話は、お伽話か、歴史書を紐解く必要があるほど稀なことであり、その事実を知った人々を大いに驚愕させたのだった。
その噂は、小鬼帝国皇帝も知るほどであり、アイリーンは竜族向け、妖精族向けの工夫したレシピも公開していることから、各勢力からも信頼を得ており、その役割は日々、重要性を増してきている。
九章では、アキの住む別邸で、各勢力の代表との会合が行われ、宴会までも開催されることになった。その際にはアイリーンの教えを受けた大使館の女中人形達も大勢が支援に駆けつけて、多くの料理を提供し、好評を博すことになった。
このようにアイリーンの重要性が増しているが、彼女はアキの食事を作ることを優先している。自分の立ち位置はまず、アキの住む別邸の専属料理人と考えているからだろう。
【ベリル】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、今回集まった各勢力の使節への提供資料については、ベリルやベリル配下の女中人形達の監修がなされており、実はかなり忙しい立場だったりする。冬には天体観測日和の澄んだ空気も期待できることから、その準備に余念がない。
九章では、アキの世話をしつつ、会談に同席して会話内容を記したり、ホワイトボードにメモしていったり、会談内容を纏めた報告書を作ったりと活躍することになった。ベリルの記した報告書はとても分かりやすいと好評を博している。
ただ、使節団ラッシュが続いたこともあって、共同執筆者のジョージは手が空かず、子供向けの小説作成はたまに考察メモを書き溜める程度になっているのが残念。
【シャンタール】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、アキの着る服のコーディネイトは完全に一任されており、日々、新たな魅力を引き出そうと邁進している。アイリーン、ベリルが専門の仕事を抱えている分、全体のフォローに回っており、作業量の増加に合わせて配置された新たな部下の女中人形達も上手く使いこなしていたりする。鬼族との会合では、彼女のコーデで彩られたアキを観て、鬼族が「大人っぽくて可愛い」と称するなど、その実力は如何なく発揮された。
また、翁が妖精用ハンググライダーを作った際には、薄く軽く上部な翼を構成する布地を用意し、縫製も担当した。
【ダニエル】
ウォルコットの助手として、彼の活動を支える立場である。魔導人形で唯一、「マコトくん」を信仰する司祭としての力を持っており、百パーセント善意から、日々、日常の雑談をするように、「マコト文書」のエピソードなどを語り広めていたりしている。八、九章では出番なし。暗躍が表面化するのは十章の見込み。
【護衛人形】
アキに触れることができるよう強化された護衛用の魔導人形達で四人一組。室内戦闘用ということで小回りが利くよう、体格は小さめ。その実力は、連樹の巫女の護衛達の動きを軽く止めるほど。
九章では八章に引き続き、各勢力代表との会合が続いたため、彼らもアキの護衛として陰から支えることになった。
【農民人形】
主に農作業を担当するということでロングヒルに同行してきた魔導人形達。お揃いの作業服をきて園丁としての仕事も兼務している。骨董品のような別邸や、その庭が常に手入れが行き届いているのも彼らのおかげ。アキがのんびりできるよう木々の配置や手入れも工夫している気の使いようだ。
九章では、別邸の庭で、各勢力代表達との会合を何回も行うことになり、会場の整備に尽力することになった。
【ロゼッタ】
ミアの秘書を務めている魔導人形であり、通常の魔導人形二十体分にも相当する超高性能機らしい。ミアの知的財産管理を担当している関係で、ロングヒルには同行していない。ミアの財閥と呼ばれる企業集団を統括、運営する立場におり、別邸やその中で働くスタッフ達が維持できているのも、彼女の手腕があればこそ。
九章では鬼族、小鬼族との交易について、商人としての視点から進めていることも明らかにした。
【タロー】
小鬼人形の一人で、館ではアキの訓練役を担当していたが、仮想敵部隊においては部隊長を任されており、色々と枠に当てはまらないアキに顔と名前を憶えられていることもあって、アキ担当役を押し付けられている苦労人だ。小鬼達による仮想敵部隊の設立当初からのメンバーであり、仲間達からの信頼も厚い。
九章では出番なし。小鬼族の研究者達が到着する十一章の頃に彼の活動も明らかになることだろう。
【仮想敵部隊の小鬼人形達】
街エルフ謹製の魔導人形の小鬼達で、総合武力演習時の損傷はまだ修理ができてない個体も多い。彼らは小鬼族がロングヒルに常駐することが決まったため、本来の業務に加えて、小鬼族との情報交換や、対小鬼安全対策の立案にも参加するなど、彼らの役割は重要性を増している。九章では出番なし。小鬼族の研究者達が到着する十一章の頃に彼らの活動も明らかになることだろう。
【仮想敵部隊の鬼人形さん】
今回も特に出番なし。実は裏では、鬼族の武闘派のライキや、穏健派のシセンといった武に優れた者達が彼に興味を示して、がっつり手合わせをしてたりする。
◆家族枠
【ハヤト】
ミアとリアの父であり、こちらでのアキの父でもある。共和国議員であり役職は高め。街エルフの長老達と対峙している。アキの重要性が増したこともあり、ロングヒル常駐を本国に認めさせた。現在は妻のアヤと共に、別邸の主人代行としての役割も担っており、ケイティも本業に専念できている。
長老との会合の前にアキに、各勢力代表との会合をさせて経験を積ませたのも彼の策。そんな彼でも、福慈様の怒りの魔力爆発が列島全域を覆って大混乱を招き、アキが体調を悪化させた際には、かなり心配したらしい。
【アヤ】
ミアとリアの母であり、こちらでのアキの母でもある。共和国議員で役職は高め。せっかくロングヒルに来ているのに、長老達や、人類連合の関係者達への対応で忙殺されており、日々、不満が蓄積中。
アキの負担を減らそうと、同じ魔力属性と魔力量も持つリアに作業を割り振ったりもしているが、アキの特性が尖り過ぎてて、分担できているとは言い難い。
十章では各勢力のお偉方も帰国していったので、家族の交流も増やせることだろう。
【リア】
ミアの妹であり、こちらでのアキの姉でもある。アキとの間に魔力共鳴現象が発生しており、アキと同様、魔力は異常に強いが、魔力感知不可、制御不可とポンコツ状態なのも一緒。
魔術関連では、雲取様の協力もあり、アキとセットで確認するようなことも増えて、すっかりロングヒルに根を生やしている。アキに対してお姉ちゃん風を吹かせる機会が嬉しくて仕方ないようだ。
九章では、アキの代わりに雲取様と心話を行ったりと、苦手といっていたことも地道に克服してきている。「目的意識を持たせればリアはもっとできる」とソフィアも話していた通り、放っておくとどこまでいくかわからないアキのフォローをすることが新たな目的となり、意欲を生むことになったようだ。
【ミア】
アキ、つまり地球でのマコトを召喚した張本人だが、召喚時に入れ替わりに地球のほうに行ってしまい、音信不通状態。異世界(地球)との間で夢の中ではあるが交流もやっていたりと魔導師としては超一流。きっと地球では、誠の中の人として楽しく生活しているはず。召喚前に今後、アキが遭遇するであろう様々な事態を想定して、山になるほどの手紙を書き残した。また、誠と延々と話した内容を『マコト文書』として書き残している。
九章では、自らの目的を達成するのに手段は選ばず、しかも目的を達成してしまえば、後は気にしない、といった奔放な行動をしていたことも判明した。
稀有な魔導師として達成した偉業も多いが、その過程で引き摺り回された周囲からすれば勘弁して欲しいことも多かったことだろう。
彼女とのエピソードに事欠かない長老達から、過去の所業を色々と暴露されたが、長老達が一応配慮したことと、アキ自身の「お姉ちゃん大好き」認識フィルターのおかげで、イメージ悪化は免れたようだ。
◆妖精枠
【シャーリス(妖精女王)】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人で、妖精の国の女王様である。アキが齎した「妖精でも使える賽子」により、他人と公平に遊べるようになったことを大変喜んでいる。
アキのことも、手間のかかる妹といった感じで見ているようで、保護者視点での発言や行動もよく見受けられる。妖精達がこちらにきているのはあくまでも私的な立場であり、公的な立場ではないと明確に線引きしていた。
九章では、今後、弧状列島の各勢力が統一国家樹立に向けて動いたことを受けて、妖精もまた、国として交流していくことを明確にした。
【賢者】
召喚術式を改良し、大勢の妖精を追加召喚した妖精界の偉大なる大魔導師である。賢者という役職名も自分から言い出したものではないが、他人からずっと言われるうちに、面倒臭くなり、それでいいと受け入れたものだったりする。
九章では、彼の改良した緩和障壁が活躍することになった。それがなければ、各種族もスタッフ達も竜の近くで活動することは困難だったことだろう。
今後も、次元門構築、召喚術式の改良、世界間データ通信など、やることは多く、彼の知的好奇心は当面の間、満たされるに違いない。
【宰相】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。妖精の国の統治を行う閣僚の一人だが、人族のそれよりも統治機構はシンプルで、各人の裁量に任される範囲が広いようだ。
彼は妖精と人族の在り様は違えども、統治という視点で国全体を情報という角度から見れば、学べるポイントは多いと考えており、賢者ほどではないにせよ、かなり積極的にこちらを訪問していたりする。
九章では、アキは知らないが、妖精族もまた、各勢力代表との会合を行っており、妖精達が国として関与していくことを明確に打ち出した。
今後は、こちらの世界の人や鬼の文化を学ぶことで、妖精界での他種族との交流に役立てていくことだろう。
【彫刻家】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。優れた彫像を作る高い技量があるが、実際にはできないことがないんじゃないか、というマルチな才能を持つ妖精である。妖精もドワーフも互いの技、知識に触れて刺激し合うことで、双方の国に影響も及ぼし始めていたりする。
九章では、彼が作った妖精サイズのハンググライダーによる飛行も大好評であり、緩和障壁の護符化でも、彼の技を欠かすことができない。今後も魔術の賢者、技術の彫刻家は、妖精達の双璧として活躍していくことだろう。
【近衛】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。シャーリスの護衛を担当しており、妖精族の中でも精鋭が割り当てられている。今回もシャーリスが行くところ、一緒に同行し、彼女を護る仕事に徹することが多いが、宰相など、他のメンバーの護衛としても同行することは多い。こちらにくると、妖精の国では接点のない人族などの視点、意見も得られるため、情報交流も以前よりも熱心に行っている。
九章では、各勢力との会合も増えたため、彼の負担も増えてきている。十章では妖精達の関与が増えることや、竜族への団体空中戦のレクチャーなど、担当業務も増えていくことだろう。
◆鬼族枠
【セイケン】
鬼族連邦から、総合武力演習に参加するため、やってきた鬼族達の代表をしている鬼族の男である。体つきはとても大きく、ジョージと並ぶと、ジョージが子供に見えるほどだが、彼は鬼族としては普通といったところ。
魔術と武術を同時に使用する技をかなり高いレベルで習得しており、護身用の鉄棍だけでも、大概の困難には対処できる強者である。アキも言っていたようにスマートな印象のイケメンであり、故郷には妻と四歳になる娘がいたりする。妖精族との繋がりを得たため、彼を含む五人の鬼族の若者がロングヒルの地に残る事になった。ロングヒルに鬼族連邦大使館も建設が始まっており、彼の単身赴任状態はかなり続きそうだ。
九章では、彼の上司に当たる者達がきていたこともあり、同じ会合には出席していたものの、アキとの絡みはなし。
ただ、鬼族のロングヒルにおける取り纏め役であることから、今後も彼の活躍の場は増えていくことだろう。
【レイハ】
ロングヒルに常駐しているセイケンの補佐役を務める鬼族の男だ。文武に優れているが、特に人族の文化への造詣が深くロングヒルでの活動では、彼の知見が大いに役立っている。九章ではセイケンと同様、会合に参加はしているがアキとの絡みはなし。
【トウセイ】
失敗技術と烙印を押された「変化の術」(大鬼化の魔術)について故郷に戻って自費で研究を続ける鬼族の男。鬼族の中では変り者として結構有名だったりする。
九章では、彼の生み出した「変化の術」について、アキが別の使い方を示したことで、一気にその重要性を増すことになった。既に大鬼化ができていることから、「変化の術」の改良、普及に向けた活動に着手していくことになり、アキの示したロードマップ通りであれば、彼が天寿を全うする頃まで重用されていくことだろう。アキとしては次元門構築の研究者としての彼に期待しているだけに、今後は二足の草鞋を履くことになり、多忙な日々が続きそうだ。
【レイゼン】
鬼族連邦の王であり、鬼王とも呼ばれる英傑である。武闘派、穏健派が対立しつつも、無用な衝突にまでに至らないのは、彼の存在が大きい。武に優れてもいるが、彼の振る舞い、考え方が、鬼族の理想たる王の姿其の物を体現しているからに他ならない。彼は「兄貴にならついていきやす」と、皆から心酔されるタイプであり、九章でも、彼が率先して宴会を始めたりと、場を動かし続けた。
そんな彼も鬼族らしく、時間感覚は長命種寄りのため、小鬼族の忙しない生き方には、なかなか共感できないようだ。
今後は、トウセイ達の一族の扱いを変えて「変化の術」の研究に注力し、竜族と交流できる特性を持つ巫女候補を集めることを画策している。
「変化の術」による鬼人化の影響を大きく受けるだけに、今後も彼の動向からは目を離せないだろう。
【ライキ】
鬼族の武闘派代表の女傑で、肉食系といった雰囲気で素晴らしいナイスバディなのだが、それは鬼族としてバランスが取れているのであり、アキも言うように、自分の頭ほどもある胸を見ても、人族なら圧倒されるのがオチだろう。南瓜を握り潰す握力の持ち主と人族にすら伝わってくる程で、その手で握り潰されたモノは多岐に渡るようだ。
武闘派と言っても、戦闘中毒ではないし、何事も腕力で解決という脳筋でもない。
九章では、アキから家庭的なところもあるけど、見る目が厳しくて婿候補選びに苦労しているのだろうとか、色々と突っ込まれて、かなり調子を崩されることになった。「私を鬼族の女の基準にするな」とわざわざ釘を刺すほど。
アキの魔力属性やその強度はしっかり確認しており、人族の魔力撃が通じないことへの裏付けもとった。それだけに、アキの異質さも理解しており、アキが現在の年齢まで成長できたこと自体を奇跡と称したくらいだ。
彼女の持ち帰った知見は、今後の武闘派の動向に大きく影響を与えることだろう。
【シセン】
鬼族の穏健派の代表を務める男で、物静かな文人といった服装や振る舞いをしているが、セイケンを上回る体躯と鍛え上げ方を見れば、彼が単なる文人ではないとわかるだろう。他の派閥の合意を得ずに、ロングヒルの総合武力演習に、セイケン達を派遣したのも彼である。
九章では、アキの考え方について様々な角度から質問し、その考え方を理解していった。また、穏健派といいつつ、その武術の冴えは化け物級の達人とジョージが称するほど。
彼の持ち帰った知見もまた、今後の穏健派の動向に大きく影響を与えていくことだろう。
【鬼族のロングヒル居残り組メンバー】
セイケンと共にロングヒルに来た若者達で全員、男であり年齢構成は、人間換算なら二十代といったところ。セイケン程ではないが、やはり魔術と武術を同時に行使できる技を身につけており、百人力の猛者達である。彼らは穏健派の中でも、有望と見られている逸材揃いであり、セイケンは彼らの纏め役という位置付けであり、実はそれぞれが代表を務められるような精鋭だった。半分がロングヒルの居残り組となった。
九章では、アキとの接点はないが、様々な会合に参加して、それまでの経験を活かして、他種族との話し合いを下支えしてきた。今後、ロングヒル常駐の人員も増えることとなったため、先行組は指導役としても力を発揮していくことだろう。
◆ドワーフ族枠
【ヨーゲル】
ドワーフの中でもその人ありと言われた有名な彫刻家。長命なドワーフ族の中でも、老齢の域にあるが、旺盛な創作意欲は衰える事なという有様だ。ドワーフのロングヒル常駐組の代表も務めるなど、多忙な日々を送っている。
九章でも、妖精族に彼らサイズの装身具を贈るなど、なかなかにまめなところがある。
【常駐するドワーフ技術者達】
馬車のメンテは程々に、妖精達との技術交流にどっぷり浸かって至福の日々を送っている。やりたい事に対して予算不足に四苦八苦する事が予想されていたが、蓋を開けてみれば、慢性的な人手不足と、深刻な専門家不足に陥っている。
魔導馬車も予想以上に利用されており、当初は想定していなかった問題も色々と発覚し、彼らはウォルコットと共同で日々、改良を続けている。
【施設建設で派遣されてきた百人のドワーフ技術者達】
妖精の技に触れた技術者達の猛烈な働きかけにより、ドワーフの技を見せるための施設作りにドワーフ技術者百人からなる大集団派遣されており、施設の建設も着々と進んでいる。
また、他の種族との技術交流も盛んで、特に酒造りでは鬼族相手でも、火花を散らすようなやり取りも辞さないといった具合だ。
九章では、各勢力の代表が会合をしていたが、彼らの建設作業に影響を与えるものではないため、黙々と建設作業をしていたようだ。
一部の選抜メンバーは鬼族や小鬼族とも交流をしており、ロングヒルに住む他種族としてのノウハウなども伝授していたらしい。
◆森エルフ族枠
【イズレンディア】
天空竜の雲取様が庇護下に置いている深緑の国から、雲取様の勅使としてきた森エルフの男。ジョージより少し高い身長と、野山の勾配を物ともせず走り回れる卓越した身体能力を発揮できるアスリート体型である。身体能力的には一般的な森エルフと大差ない。彼が勅使として選ばれたのには弁舌が立つため。
そんな彼も今ではエリーに引き摺り回されて、調整組の一人として活躍する日々である。
九章では、三大勢力代表の会合にも参加しているが、アキとの直接の絡みはなし。森エルフを庇護している雲取様との心話をアキ&リアに独占されている状況をなんとかしようと奮闘しているため、いずれ彼らの努力も実を結ぶことだろう。
【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】
狙撃のプロにして、集団化すれば、生体イージスシステムとでも言うべき効果を発揮する頼もしい連中だ。
ただ、狙撃手向きな性格故か、寡黙な彼らが集団でいると独特の凄みが滲み出て、人を遠ざけてしまっている。九章でも第二演習場との間の警備に彼らは活躍している。……活躍しているのだが、何せ森に溶け込むように活動しているため、他の種族との接点も少なく、なかなか存在感が出せない。
彼らのことを同じ護衛であるジョージは高く評価しているのだが、森エルフのお偉方も、この状況を何とかしようと動き出すことだろう。
◆天空竜枠
【雲取様】
人族の間でもその名を知られている有名な天空竜である。他の天空竜より一回り体格が良く、その鱗は透明感のある黒であり、その飛ぶ姿は優雅である。飛ぶことが趣味のようで、他の天空竜よりも飛ぶのがとても上手く、行動半径は三倍にも及ぶ。そのため、人類連合の間では最も目撃例の多い天空竜である。
彼の支配する地域には、森エルフやドワーフも居住を許されており、その庇護下にある。庇護下の種族からは竜神として崇められているが、魔力量の差が大きく、接触時間が僅かしか持てない制約がある。
今回の交流で、ストレスなく話が出来て、美味しいケーキや紅茶も飲めるとあって、刺激に飢えていた彼はすっかりロングヒルに入り浸るようになってしまった。それでも節度ある振る舞いは、人々に好感を与えており、中には雲取様の姿を見たいと申請してくる者も出始めているようだ。
九章でも、その存在感を如何なく発揮し、アキから「変化の術」を観る約束も取り付けた。ただ、彼に思いを寄せる七柱の雌竜には難儀している様子。
【雲取様に想いを寄せる雌竜達】
鱗の色は紅、群青、中黄、若竹、白磁、本紫、金とそれぞれ異なるが、これは人の魔力属性が瞳や髪色に現れるのと同じで、天空竜の場合、全身を覆う鱗の色に現れるからであり、種族としては同じ天空竜である。精神年齢的にはティーンエイジャーといったところであり、しかも大切に育てられてきているため、いろんな意味で箱入り娘といった感じだ。
九章では立ち合いという役でもあることから、アキとは思念波を用いて話をしていた。十日程度の短い期間であるにも関わらず、魔力を穏やかに抑える技を磨くなど、その力量は確かである。
雲取様の言によれば、彼女達も含めて、それを竜族の平均的な姿とは思わないように、とのこと。竜族の中でも品行方正な面々なのだ、と注意すべきだろう。
やはりそれぞれ個性があり、注目する点なども違いがあるようだ。
また、雲取様を巡って競い合ってはいるが、かなり仲も良く情報共有もしているようだ。今後は魔術の研究に、白竜が代表として参加することが決まったが、きっとその内容はやはり他の六柱にも共有されていくことだろう。
【福慈様】
最古参にあたる老竜であり、弧状列島でも彼女の事を慕う竜達は多いようだ。若い竜達と話をひたすら聞き役に徹して、耳を傾けてくれるのが、好感を持たれているようである。竜族は年を経るほど体が大きくなるが、体が必要とする魔力量がなかなか回復せず、寝ている事が多い事も判明した。アキが誰よりも熱いと称したように、内に秘めた熱は誰にも負けず、彼女の逆鱗に触れた街エルフ達の多くが塵と化した過去もある。街エルフとの因縁の地が未だに生きるモノの気配すらない死の大地と化しているのも、彼女達の世代が怒り狂って、世界を灰塵と化す勢いで焼き尽くしたからだったりする。なので、穏やかな一面もあるが、激しい一面もある事を忘れてはならない、そんな存在である。
九章では、街エルフの長老達の行動が逆鱗に触れて、彼女の怒りの魔力爆発が弧状列島を覆い、大混乱を招くことになった。
アキの考え方に触れたことで、「見捨てられる側にならないこと」の重要性を下の世代の竜達に語って聞かせるなど、指導者としての立ち位置にもあるようだ。
◆人類連合枠
【ニコラス】
人類連合の大統領。長身痩躯でちょい悪な雰囲気の男である。小洒落たスーツを着こなし、鬼族を前にしても、余裕ある態度を崩さない等、一癖も二癖もありそうだ。
九章では最初の会合ではいいところを見せられなかったものの、その後の各代表と揃った際の彼の振る舞いを観て、アキも彼もまた、小鬼皇帝ユリウスや、鬼王レイゼンとは違ったタイプのリーダーなのだ、と考え直すに至った。
アキの勧めもあり、人類連合に所属する中小国から人材を募集し、財閥が雇う流れとなり、その人選を彼が一手に担うことで、政治力を大幅に強化することが決まった。終わりの儀では、アキも感心する視線を送ったほどであり、僅かな期間で評価が大きく変わった人物と言えるだろう。
今後は、発言力の強い大国との調整を行いつつ、なかなか意識統一できない人類連合の意識を束ねて、統一国家に向けて導いていくことになるだろう。
【トレバ―】
人類連合の南西の端にある国ディアーランドからロングヒルに来ているエージェント。九章では出番なし。ただ、大国に所属していることもあり、今後はニコラスやその部下達との衝突も増えていくことだろう。
【ナタリー】
人類連合の二つある中枢国のうち東側に位置する国テイルペーストから、ロングヒルに来ているエージェントで、キャリアウーマン風の外見。九章では出番なし。ただ、大国に所属していることもあり、今後はニコラスやその部下達との衝突も増えていくことだろう。
【エリー】
名前はエリザベス、ロングヒルの王女様であり、ソフィアに師事するアキの姉弟子でもある。ソフィアに言われて、アキの教育係になっている。魔術の腕はまぁまぁだが、魔導師の域には遠いようだ。一応、国民からの人気は高い(本人談)とのこと。王位継承権第三位ということで、それなりに重要な立ち位置のようである。総合武力演習で鬼族を応援したことで、自らの立ち位置が明確になり、アキの進める計画への参加も承認されることになった。
次から次へと激震を生むアキ達に、のんびり対応などと言ってられる筈もなく、気が付けば、調整組を取り纏めて、強力なリーダーシップを発揮するに至っており、大変頼もしい。
九章でも、開催国の強みを活かして、各勢力代表との会合もこなすなど、意欲的に動き回った。もっともアキには愚痴をこぼすなど若者としての意識もあり、アキにとってはちょうどいいお友達と言えるだろう。
【ロングヒルの王様ヘンリー】
ロングヒルの現国王であり、国民からは国父と大変慕われている。自らの人気の高さ故に、世代交代がスムーズに行くよう、二人の王子にも実務を着実に積ませていていたりする堅実派。動きの鈍い人類連合を動かすべく、伝家の宝刀たる「緊急動議」を発動したりとかなり精力的に動いた。
今は家族総出の五頭体制で国を運営しているが、ニコラスが政治力を増してやる気を見せたことに、一番安堵していることだろう。やはり一地方の国に過ぎないロングヒルにとっては、鬼族連邦や小鬼帝国を相手にするのは荷が重かったようだ。
【ロングヒルの御妃様】
ロングヒルの現王妃様であり、エリーの実の母でもある。エリーを見ていればわかるように、実は苛烈な性格は母親譲りであり、彼女が夫を立てているから、夫も国父と慕われているが、かかあ天下であることは国民にはバレバレのようで、彼女も国母と慕われていたりする。ニコラスがやる気を見せてくれたので、これで少しは休めそうではあるが、娘のエリーの調整組として役目が重くなってきており、二人の王子とのバランスの悪さに頭を悩ませる日々は終わりそうにない。
【ロングヒルの王子様達】
ロングヒルの第一王位継承権、第二王位継承権を持つ王子達である。現在の王妃とは血の繋がりはないが、関係は良好であり、互いに足を引っ張り合うような無能でもないため、国王夫妻からは身の丈を弁えており合格ラインに達していると見られている。能力的には十分な域に達しており、国民からの人気もそれなりにあるのだが、第三王位継承権を持つエリーの人気の前には霞んでしまっているのが実情だ。
九章でも、アキとの接点はないものの、エリーと共に大国相手にも精力的に交流を行うなど、今後の成長が楽しみな若者達である。
◆小鬼帝国枠
【ユリウス】
小鬼帝国の皇帝であり、稀代の英雄とも称されるほどの実力者である。歴代皇帝の中でも異例となる二十歳前後の若さだが、人より寿命が半分の彼らからすれば、そんなユリウスでも、既に全盛期を迎えており、十年もしたら引退する年といったところ。そんな時間感覚の小鬼族故に、朝から晩まで秒単位で効率改善をしており、早朝からそんな小鬼族達と会合を行った者達は、その時間間隔のズレに衝撃を受けることになった。小鬼族基準で言えば、他の種族はのんびりし過ぎ、ぼーっとし過ぎといったところ。
九章でも、体格差も気にせず、ぐいぐいと会議の場を引っ張り、意志を通すなど、その実力を如何なく発揮した。アキも常に「ユリウス様」と呼ぶくらいであり、欠点がないくらいで素敵、とか言われているが、それはまぁ、アキの好みに合うからそう認識されているだけである。
アキの勧めもあり、他勢力から助力を受けて国内改革に乗り出すようだが、過去から続く伝統に抗うのは、いくら稀代の皇帝と称されていても、苦戦することは確実だろう。
【ルキウス】
小鬼帝国の親衛隊のリーダーであり、選抜された腕利きの小鬼達の中でも更に実力が抜きんでている強者達を率いる。
九章では、他の種族との会合でもユリウス帝の背後に常に控えて警護を怠らなかった。ただ、彼も理解していることだが、いくら彼の実力が優れていると言っても、鬼族との実力差は如何ともしがたい。それだけに帰国できてホッとしていることだろう。……ただ、ユリウス帝が伝統を変えようとしていけば、軋轢も生じることになり、親衛隊の役割は更に重要になっていくことだろう。
【速記係の人達】
速記係として紹介されており、実際、速記者としての能力も持ってはいるのだが、彼らは政治・軍事など様々な事柄を理解し、要約し、その場で短文に纏め上げることができるという文官の中でも選りすぐりのエリートだったりする。
九章でも各種の会合に参加し、宴会の場でも他の種族とも熱心に交流していくなど、情報収集に余念がなかった。彼らの知見は、今後、ロングヒルに常駐することになる小鬼達の人選にも役立つことだろう。
◆街エルフ枠
【ジョウ】
街エルフの駐ロングヒル大使。若手だがかなりのやり手であり、ルーチンワークで対応できていた頃は、暇で暇で退屈していたようだ。今ではアキがきてから、日々、ルーチンワークでは対処できない非常事態の連続が続いており、毎日がとても充実しているらしい。そんな彼も、流石に天空竜の雲取様が飛来し、彼が寝落ちしたり、入り浸ったりすることで、アキや街エルフの取り巻く情勢が、複雑怪奇と化してきており、本国から増員して貰っているが、それでも対応に苦慮しているようだ。
九章ではアキとの接点はないが、各勢力代表との会合も行っており、特にニコラスとは今後の方針を含めてかなり熱心に話をしていたようだ。
ちなみに、人類連合の大会議場での人員募集の演説は、彼が行うことになった。やはり街エルフでネームバリューがある者というと、彼が適任ということだろう。
【街エルフの長老達】
話題には出ていても、なかなか重い腰を上げることのなかった長老達だったが、ハヤト&アヤ夫妻だけに担当させるレベルを超えたと判断して、遂に老人達の中ではまだフットワークの軽い面々が動き出した。
九章では、他の勢力代表との会合内容も踏まえた上で、アキとの会談を行うなどかなり慎重な対応を行った。事前の予想と異なり、長老達はかなりアキに対して歩み寄り、心の内も普段の長老達を知る者からすれば驚愕するレベルで、わざと見せるように配慮するほどだった。
それは、アキの行動が、長老達の権力を殆ど必要としていないことが明らかになり、内心が良くわからない人達などと認識されれば、アキの活動から、排除されてしまう恐れがあることに気付いたからだった。
終わりの儀で「不在の時に欠席裁判をされてはかなわん」と話していたのも本心から。長老達のほうから関わっていくようにしないと不味い、と危機意識を持ったのは間違いない。
また、彼らも思わず聞いてしまったほど、アキの手口は、ミアに酷似している。それだけにミアに様々な点で苦労させられ続けてきた長老達は、好き勝手動かれることの危険性に気付いたのだろう。
今後は、長老達が持ち回りで、ロングヒルに一人は常駐することにもなり、共和国と人類連合の関係も大きく変わっていくことだろう。
◆その他
【ソフィア】
アキの魔術の師匠であり、エルフとのハーフとのことだが、高齢であり、その背はアキより頭一つ分は小さい。魔力属性は透明度ゼロの炎色であり、意志をもって現実を塗り潰すような魔術が得意。斜陽の古典魔術を指導する立場ということもあり、街エルフの齎した現代魔術に対する研究も余念がない。貪欲な探究心があればこそ、アキの師匠として抜擢されたとも言える。ただ、目的の為には手段を選ばぬ所があり、天空竜絡みでも、色々と問題行動が見受けられ、全幅の信頼を置くと色々と怖そうだ。
九章では、アキとの直接的な絡みは少なかったものの、新たに研究に参加することになった鬼族のトウセイともさっそく宴会の場では隣り合って議論を花咲かせるなど、その意欲は衰えることを知らない。
今後も「変化の術」などという面白い技を生み出したトウセイとの交流を楽しみ、妖精の賢者とグルになっていろいろと活躍していくことだろう。
【街エルフの人形遣い達】
街エルフの人形遣いにも二種類いて、アヤの護衛要員達は戦闘が得意な連中だが人形の製造・調整は不得手、その逆の工房組は、膨大な数の稼働している魔導人形達のメンテが得意だったりする。
九章では、各勢力の代表がロングヒル入りしたこともあり、人形遣いもその対抗勢力として増員されていた。今後は人類連合からも増員があり、小鬼帝国からも大使館建設など動きがあることから、抑止力としてロングヒルでの活躍を期待されることだろう。
【世界樹の精霊】
イズレンディアの母国である深緑の国には、世界樹と呼ばれる巨大な木があり、精霊が宿る特徴以外にも、世界の名を冠するだけの特徴を持っていたりする。とは言え、立地が悪いのか、土地が手狭な為か、一般的な世界樹に比べて、まだだいぶ小さい。雲取様の庇護が必要なのもその為である。九章では特に出番なし。
【マコトくん】
異世界に住む少年で、惜しげもなく様々な学問、技術、文化、歴史といった驚くほど多岐に渡る知識を伝えてくれた。その膨大な語録は書籍として出回っている。マコトくん信仰者達にとっても、ここまでマコト文書への注目が高まる事態は想定してなかった事だろう。各勢力からも注目され、勉強会、朗読会も頻繁に開催され、鬼族や小鬼族に向けた翻訳も始まるようだ。そのあたりの話は十章でダニエルから語られることになるだろう。
普段の投稿の3~4倍の手間がかかって大変でした。人物減らないですからね。
次回は、「第九章の施設、道具、魔術」になります。
投稿は四月十五日(水)二十一時五分の予定です。