8-10.久しぶりの家族団らんと情報交換
前話のあらすじ:久しぶりに家族揃って話をする機会があり、魔術の初行使という事で、久々に条件をクリアし、ミアからの手紙も久々にGETすることができました。
翌朝の朝食は久しぶりに家族全員揃っての食事だった。ケイティさん、お爺ちゃんも同席しているけど、調整役としての役目との事。確かに街エルフだけで話すと暴走しやすいとか言われたりもしているから妥当な話だろう。アイリーンさんもいるけど、給仕役だね。並んでいる料理が中華系という事は、父さん達が料理してくれたのだろう。
メイン料理は、蓮根と豚肉の牡蠣油炒めで、蓮根の歯ごたえのある食感が食べてて楽しかった。
もう一品は、摩り下ろした蓮根と桜海老を練りこんだ餅で、普通のお餅よりあっさりした感じが良かったね。後は麦飯と中華スープ。
全部合わせるとなかなかのボリュームだった。満腹だ。
「とても美味しかったです。蓮根も出回る季節なんですね」
「寒さが本格化する前が一番出回るのよね。保管庫は便利だけど、やっぱり旬の食材が並ぶと、その季節が来たって実感が湧くものなの」
「街エルフは引き篭もりが多いから、週一回はカレーの日を設けるとか、季節感を感じられる食材やメニューを選ぶようにしないと、時間感覚が麻痺してくるんだよ。そうすると、生活にメリハリがなくなって、問題も出てくる。だから、今は余程の変わり者以外は、旬の食材を楽しむモノなんだ」
リア姉が補足してくれた。屋敷に引き篭もってルーチンワークばかりやってたら、それは時間感覚も鈍くなってくるってモノだよね。
「一仕事した後は、やはりこれくらいないと、食べた気がしない。ん、アイリーン、この石窯パンは香ばしさともっちりさの加減がいいな。昼の弁当にも詰めてくれ」
「ハイ。リア様は如何されマス?」
「それじゃ、私も」
「承りまシタ」
僕も少しだけ食べたけど、確かに美味しい。ただ、起きたばかりの僕には二人ほどの食欲はないし、母さんもそんな二人の健啖家ぶりには若干呆れ気味だ。
「アキは自分の量を守るようになさい。二人ほど体を動かさないのに、同じ量を食べたら、丸々と太ってしまうわ」
「注意します。そう言えば、魔術を使って減った魔力を食べ物で補う事ってあるんですか?」
お腹が空いたら何か食べる、喉が乾けば何か飲む。それなら魔力が減ったら?
「魔力を豊富に含んだ食材で作った料理を食べれば、それなりに回復するが、我々は体を動かしながら魔術を使ったりしない。魔力は補われるだろうが、食べ過ぎの弊害の方が大きいだろう。鬼族は武術と魔術を併用しているから、彼らなら丁度良いのだろうが」
「あれ? もしかして、鬼族の国で採れる食材って魔力豊富とかだったりします?」
「勿論そうだ。だから、アキが先日提案した鬼族連邦の料理を振る舞う件は、食べる人を選ぶ料理になるかもしれないな。魔導師ならともかく、一般人に魔力を大量に含んだ料理は問題がでるかもしれん」
「鼻血が出ちゃうとか?」
僕の例えに、父さんは破顔した。
「まぁ、そんなところだ。魔力増幅時の魔導師に似た感じになるかもしれない。その辺りも、この後、説明しよう」
アイリーンさんが淹れてくれたジャスミン茶を飲んで、落ち着いた気分にもなったので、次は、情報交換と行こう。
◇
「では、情報交換と行こう。先ずはアキの魔術行使の件だ。ソフィア殿の挙げた三名、賢者、翁、雲取様だが、立会いの合意を得ることができた。ソフィア殿やリアを交えて、何をすべきか、何を用意すべきか、検討し、準備する事となったが、大筋の流れとしては、まずリアが試す。魔力増幅後はリアも発動を試していないからだ。そこで得られた知見を元に、次にアキが試す。ここまではいいかい?」
「リア姉も、発動から試そうとはしなかったの?」
「私は街エルフの一般的な魔術行使手順しかやった事がないからね。集束し、圧縮し、発動する、という三工程だ。だから、前二つができない時点で、試そうなんて思わなかったよ」
「安全側に倒した判断だね。いいと思う」
「アキとリアの魔力量、位階は同等と考えられているから、魔術経験の深いリアが試みれば、何か掴むことができるだろう。場合によっては、アキの実施は延期されるかも知れないから、そのつもりでいる事。いいね」
「リア姉でもまともに発動できないとか、制御できないとかだったら、仕方ないですね」
「発動できない場合は、アキなら発動させるかも知れないから試す事になるだろう。だが、制御できず、危険が許容範囲を超えている場合は延期だ。焦って実施する意味もない」
「そう思います」
「魔術行使については以上だ。ドワーフ達も巻き込んで、魔法陣を使って結果に干渉する事も検討されているとは聞いているが、予算との兼ね合いになるな。アキは師匠のソフィア殿から指示があるまでは特にやることはない」
「リア姉の試技に僕も立ち会えるんでしょうか?」
「それは認められないね。他人の失敗があまりに印象的だと、それが心に焼き付いてしまい、魔術行使を阻害する事があるから。上手くいったなら、成功事例を心にイメージできるよう、立ち会うよう言われる筈さ。まぁ、果報は寝て待て、だよ」
リア姉がそう言うなら、僕としてはリア姉が成功するのを祈るだけだ。
「リア姉、無茶はしないでね」
「しないよ。可愛い妹を悲しませたくないからね」
街エルフは気が長くて、余程のことがなければ、安全策をとっていくと思うからこう言う時は安心だ。
◇
「次は私達が対応していた件を話すわね」
「うん」
「先ず、ロングヒル。王家は雲取様の来訪から始まる一連の出来事が、竜族主体で起きた事であり、我々はそれに穏便に対応し、争いを生むことなく軟着陸させたと理解してくれたわ。これは、街エルフ側に何らかの意図があり、初めから竜族との接触と交流拡大を目指していたなら、対応が後手に回り過ぎていること、現時点でも街エルフとしては国としては動いていないことが後押ししたのよね」
「竜族の恐ろしさ、手の長さ、速さを誰よりも知る街エルフが、本気で何かしようと言うなら、平時の体制で事を始めるなんてあり得ないですよね。納得して頂けて良かったです。それで国ではなく、王家としたのは何故です?」
「市民達の反応は、街エルフの陰謀説が根強いのが難点ね。当初の大混乱はだいぶ落ち着いてきたわ」
「何か大ごとがあれば、実は街エルフ達の陰謀だったんだよ、っていう都市伝説の類いでしたっけ?」
「そう、それね。我々から仕込んだことなんてそれ程多くないのに、上手く対応したことや、関係ないところまで、面白おかしく語られるのはどうかと思うわ。それでも何とか一連の出来事に心の中で折り合いをつけようと、人々が足掻いている結果でしょう。竜神の巫女への関心は良くも悪くも天井知らず。アキは当面は外出を控えないといけないわね」
市民層はかなり混乱中、と。まともに対応する手段がない竜族が頻繁にやってくるのを、なるようにしかならないと達観できる人はそう多くないって事だろうね。
「まぁ、元々、僕は大使館領から出る予定もなかった訳ですから、そこはあまり気にしませんけど。王家、市民とくれば、貴族層はどうですか?」
「この機会を活かして、人類連合、鬼族連邦どちらへの影響力も増していこうという拡大派、状況が安定するまで動くのは控えるべきという現状維持派、そして現状を激変させる諸悪の元凶であるアキを、街エルフの国に帰したい帰還推進派といったところね」
「最後のは、竜族と交流するなら、自分の国でやれってとこですか?」
「そういう事だね。そして困った事に各派閥の勢力は拮抗している。日和見で立場を明確にしていない貴族も多い。お陰で、ロングヒルは今、国の方向性が決まっていないんだ」
「それは、来訪してくる竜達の紳士、淑女な振る舞いが続けば、拡大派が勢力を伸ばしそうですね。わかりました。ロングヒルはって事は、後は人類連合、鬼族連邦、小鬼帝国それぞれにも何か動きがありました?」
「アキ。竜族は、魔力を抑えた雲取様が飛来しても騒ぎになったことを忘れてはいけないぞ。皆が雲取様のように魔力を抑え、華麗に飛んだとしても、人々が動揺する事は避けられないだろう」
「慣れません?」
「……慣れ。慣れか。アレに慣れるモノか?」
「私は厳しいと思うわ」
「同感。魔導師ですら、畏れられるのに、その数十倍となれば、慣れるより前に精神を病むと思う」
残念、三人とも否定的だ。
「でも、城塞都市と第二演習場くらい距離が離れていれば、それで耐えられないって事はないでしょう? なら、先ずは其処から。気長な話になりそうですけどね。案外、世代交代の早い小鬼達が、一番乗りしちゃうかも」
僕の話に、三人は露骨に嫌そうな顔をした。
「その展開で行ったら、長命で世代交代が群を抜いて遅い私達、街エルフが一番不利という事かい? それは困るな」
「そうねぇ。皆が魔導師級と言っても、逆に言えば、伸び代がないとも言えるのだから」
「ソフィーと賢者が開発している緩和障壁の護符化を急がせるかな。アキに続く竜神の巫女が、小鬼だらけなんて事態は避けたいからね」
確かに。竜族との繋ぎの数が、発言力に直結するなら、それは人類連合と鬼族連邦の地位の相対的な低下を意味する訳で。
「まぁ、小鬼族は魔力の乏しい地域に順応して進化してきているのだから、そうそう高魔力域に対応した個体が増えるとも思えないけどね。それに生物の世代交代の速度より、技術での対応の方が数千倍、数万倍早いのだから、そんなに危機意識を持たなくてもいいとは思うよ」
高魔力域に順応するという事は、常に膨大な魔力を必要とするって事にもなるだろうし。
魔力枯渇で亡くなるのが先だと思う、と話すと、少しだけ安堵の溜息が溢れた。
「アキの話す仮定は心臓に悪いな。どの程度の実現性か読みにくく、どうしても悪い方へと考えてしまう」
「時間軸を明確に定義しないで、可能性を示唆する手口も酷いと思うわ」
おや、なんか雲行きが怪しくなってきた。
「アキもわかってて話を振ってるとこがあるよね。それだけ私達を信頼してくれているって事だろうけど。さっきの話、調整組の面々相手なら、違う言い回しにしたんじゃないかい?」
「それは、まぁね。さっきの例なら、小鬼達が五世代、十世代と代を重ねたら、高魔力域に強い個体も生まれてくるかも、って話したと思う。そう話せば、何百年か先の話と分かるから」
それにその程度の年月だと、街エルフからしたらそう先の未来でもないから、さっきの話し方で十分と思ったんだけど、と補足した。
「それはそうだが。最近、こちらで過ごすようになって、分単位でスケジュールを睨むような生活が続いているせいか、時間感覚がだいぶ人寄りになってきてるんだよ」
「だから、もう少し、お手柔らかにね」
二人にお願いされては、配慮せざるを得ないね。
「リア姉もそう?」
「タイムスケールが数年後なのか、数百年後なのか、数万年後なのかは予め話してくれると助かるかな。昨日、アキがセイケンに話したという、惑星全体の掌握の話だって、あれは、最短で、という注釈付きだったんだろう?」
わかってるんだぞ、とリア姉が軽く睨んできた。別に争うつもりもないので、手を挙げて降参のポーズを示した。
「リア姉のいう通り、どうせなら少しインパクトがあった方がいいかなーって。でも、いくつか前提条件さえクリアすれば、そうそう夢物語って訳でもなくて――」
「はいはい。聞いていると果てがなくなりそうだから、残りの話に移ろうか」
「人類連合、鬼族連邦、小鬼帝国だね」
「それと、我々の共和国。老人達の何人かが、こちらに来る気でいる。それも可能なら今すぐにでも、と言わんばかりだ。彼らの立場上、公式ルートでは、それ程急な来訪は不可能なんだが、それなら非公式ルートでいいとまで話している。かなり異例な事で、それだけで大使のジョウも大慌てだ」
なんと。話に聞いていたご老人達と対峙するかもしれないって事か。ちょっとドキドキするね。
「何とか調整して、老人達との会合は、他の勢力の重鎮達の後に回すつもりよ。何故かわかるかしら?」
む、母さんから抜き打ちテストだ。
さて、何故だろう? 立場的には、母国の上司を先にすべきと思う。なら、そんな定番を曲げる理由。まぁ、僕の為だろうね。
となると。
「僕に場数を踏ませる為ですね?」
「当たり。アキに必要なのは経験だと思ったんだ。友好的でない相手との話し合いなんて、そうそう経験した事はないんじゃないかい?」
「んー、それは少ないけど、御老人の方々に何か嫌われるような話ってありましたっけ?」
僕の問いに、リア姉は頭を抱える仕草をした。あー、それだけショックだと。
でも、ほんと、なんで?
街エルフの国の不利益になりそうな話なんて、起きてないと思うんだけど。
「アキは竜族と仲良くしたいんだよね」
「それはね。彼らとの友好は、計画の為に必要不可欠だし、この弧状列島の未来にも必要と思うし、彼らの在り方も好感が持てるからね。今の理性的な竜族なら個人的にも親しくしていきたいよ」
まぁ、そういうよなぁ、と頷いてくれたけど、父さんと母さんはだからこそ、問題の根は深いと話した。
えっと……
「老人達は竜族と血で血を洗う闘争を長年続けてきた。竜族を根絶やしにできるものなら、すぐにでもしたい、そんなドロドロした昏い感情が、常に心の奥底にある。だから、彼らからすれば、アキの振る舞いは、竜の恐ろしさ、感性の違い、時間感覚の違いについて無知故の行為と映る、と考える事もできる」
「そんな人生、経験が積み重なった末の認識であれば、その重みは理解すべきと思います。ただ、多分、街エルフの老人達だけじゃなく、人類連合の人達全員の竜族との交流の知識を集めても、僕が雲取様や七柱の雌竜達と交わした会話量にも足りないんですよね?」
「そうよ。特に心話による意思疎通の加速効果は驚くべきものがあるわね」
「アキがその内容をベリルに話伝えるのに三日もかかったくらいだから」
うん、なら認識通りだ。
「それなら、御老人達は竜達の行動から理解を深めた、僕は竜達と心を触れあわせて理解を深めた、という事で、互いに補完しあえる関係、どちらか一方だけで理解した気になってはいけないと考えるべきでしょう」
どちらかが真実ではなく、どちらも真実。単に見る方向が違っているだけ。シンプルな話だ。
「アキが、自分の感じた竜族への認識こそ正しい、と譲らない気でいる訳でないなら、そこまで話は抉れないとは思うが、何せ、親兄弟、孫に友人、知人、そして住む街や土地を焼き消されている凄惨な経験の持ち主達だ。彼らの見た竜族の姿もまた真実、そこだけは尊重しなくてはいけない。いいね?」
「それは肝に銘じておきます。御老人達と心話は無理なんでしょうか?」
「想定される影響がどちらも酷過ぎるから、それは駄目だ。生々し過ぎる彼らの見た地獄の記憶を渡されればアキはかなりの衝撃を受ける事だろうし、魔力量の差があり過ぎて、老人達もアキと心を触れ合っただけで、心に大きなダメージを受けかねない」
「生の感情とかを渡せるのも良し悪しですね。理解しました。その話でいけば、残りの勢力の方々も心話は無理でしょうから、彼らとの会合を通じて、色々と学んでいこうと思います」
「アキは前向きだねぇ。怖気付いたりしないのかい?」
「それは勿論するよ。でも、これは間違いなく好機だからね。本来ならただの街エルフの子供が彼らとの話をしたいと言っても、距離が遠くて無理、立場が違い過ぎて無理、もし許可を得られても大した時間も確保できない、ってなるのがオチ。なのに、今回は皆さんがわざわざ逢いに来てくれて、しっかり話す時間も確保してくれる。ここでの立ち回りが、直接的にせよ、間接的にせよ、ミア姉の救出に繋がるんだから、やるなら全力で。頑張るよ」
状況を列挙してみると、なんて棚ぼたなシチュエーションなのか、と驚く程だね。しかも、彼らとの会合では武力も魔力も必要なし。せいぜい、手元資料を用意しておくかどうか、程度だ。
「心労が溜まった、辛い、心に余裕がないと感じたら、すぐ言うんだよ。万全なアキとの会話を彼らも望んでいるから、多少、待たされても文句は言わないさ」
「そうするね。できればお偉方との会合との合間に、竜族との心話を挟むスケジュールにしてくれると嬉しいかな。頭を全力で動かして慣らしておきたいし、彼らとの心話は刺激的で楽しいからストレス解消にも繋がると思うんだよね」
「……そんな風に言うのはアキだけだよ」
リア姉は、そもそも心話で高密度、高速対話をして、ストレス解消ってのが意味不明だよ、とボヤいた。
ちなみに人類連合は声の大きな国がいくつかあるけど、抜け駆けする気はないようで、話をするのはかなり後になりそう、との事。竜達が来訪する国ロングヒルが同じ勢力だからか、なんとも悠長だね。
鬼族連邦はセイケンから聞いた話と変わらない。まだ、正式に誰が来ると言った連絡は届いていないそうだ。
そして、最後の小鬼帝国。彼らが一番のサプライズじゃないかな。是非、竜神の巫女と話がしたい、と皇帝陛下からの直々の親書が、大使のジョウさんに届けられたそうだ。
ちゃんと小鬼達の一行が、正式な手続きを経て、逢いに来たというから、更にびっくり。
僕がベリルさん相手に心話の話を伝えている裏でそんな事が起きていたなんて!
なんで教えてくれなかったのか聞いたら、竜族の情報を得るのが何よりも優先された事、それと僕がそれを聞いたら、逢いに行きたい、見に行きたいと言い出して、ベリルさんに話し終えるのが遅れるだろうと考えたからだそうだ。
まぁ、延々と話しててダレてたし、確かにそうなったかも。
仕方ないから、後でジョウさんにどんな感じだったか教えて貰うことにした。まともな国交のない敵国へと向かうとなれば、決死の覚悟だった事だろう。しかも、使い捨ての駒なんかじゃ、大役は果たせない。
きっと、忠義心に厚い、小鬼族でもかなり優秀な人達が来たと思うんだよね。
……っていうか、いきなり皇帝陛下って、なんか必要なステップを何段かすっ飛ばした感じだよね。当代きっての英雄と慕われるだけの事はある訳だ。
参ったなぁ。次元門構築計画がある程度進んで、小鬼の技術者が必要かどうか、ある程度判断が出来てから接触なら、方針も決まりやすいのに。
ある意味、一番高値でカードを切れるタイミングで来た訳で、何とも手強い。
今ならまだ、皆は手を明かしてないから、そんな先の見えない中、国交もない他国に技術者を出すとなれば、こちらも、ありがとう、歓迎する、としか言えないし、技術者の力量が足りずとも、ならば代わりの者を出すとか、体制を強化する、とか言えばいいだけ。
嬉しいと言えば嬉しいけど、何とも悩ましいなぁ。しかも、僕と話がしたい、と他の勢力より先に大きく踏み込んで来てるし。
この分だと、性格も良さそうだし、ほんと、困った。
◇
色々と話していたので、ちょっと蒸した薩摩芋を摘んだり、お茶を飲んで一息入れてから、魔力増幅時の術者への影響について教えて貰った。
必要以上に魔力が増えているせいか、気が荒くなったり、集中力を欠いたりする問題が出てくるそうだ。
僕の場合は、そんな影響は出てないから多分問題ないと思う。
でも、鬼族の郷土料理を食べて、そんな作用が出ちゃうと、純粋に料理を楽しめないかもしれないね。魔導師級の人達にまずは食べて貰って、どんな反応がでるかで、先の展開も変わってくる事だろう。
一通りの情報交換も終わったので、その後、久しぶりにリア姉と捕まえっこの訓練をやってみた。
やっぱり、リア姉には死角が存在しないようで、いいように誘われて、上手くあしらわれてしまった。それでも、館にいた頃以来だから、何だかんだと結構楽しかった。
時系列の関係で、今回は家族間での情報交換となりました。特筆すべきは、遂に小鬼帝国が動いた事でしょうか。それもいきなり皇帝陛下の介入なので、アキが驚くのも無理のない事でしょう。
あと、街エルフの老人達も遂に重い腰を上げました。しかも、どうやらアキとは根本的にソリが合わない雰囲気。波乱は避けられそうにありませんね。
次回の投稿は、十一月十日(日)二十一時五分です。