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第七章の各勢力について

七章で各勢力にも動きがあったので整理してみました。

【ミアの財閥】

マコト文書の知識を権利化して、数多くの企業を傘下に収める団体である。財閥は知識と資金力を武器に傘下の企業群を支配しており、その力は並の国家程度なら軽く上回るとさえ言われている。アキの活動もなんだかんだと理由を付けて補助金を獲得し、権利を確保し、情報を売り物にする強かさがある。

しかし、そんな彼らでも力には限界があり、予想を超え続けたアキの活動に対して、ついに手札が尽きる事態となった。

尽きたのは資金ではなく、人材。これまでにない事態の連続に、引き抜こうにも、企業側もそれ以上は無理という状況に陥ったのだ。並か少し優秀程度の人材ならばまだまだいるのだが、そんな輩で何とかなる甘い事態ではない。それでもある程度の体制を組めれば、何とでもなるのだが、今はそれを用意するだけの時間すら足りない。

結局、各企業の活動を維持しつつ、行える活動には限界がある事が露呈したと言えよう。


【共和国(街エルフの国)】

弧状列島の北側に位置する東京都二十三区くらいの大きさの島全てを国土とする街エルフの国である。人類連合や鬼族連邦と違い、この島は完全に街エルフが支配しており、小鬼達は殲滅し尽くしている。

海外へと向かう大型帆船の母港だけは、街エルフ以外の探索者達も滞在しているが、それ以外の地域は特別な許可を得た場合を除いて、街エルフ以外は立ち入りを禁止されている。

もっとも、街エルフは人形遣いの二つ名の通り、本人の何十倍もの魔導人形達を運用しており、引き篭もりと言われるように、自分の館から出てこないインドア派が多いので、他の街に行っても、道を歩くのは魔導人形ばかりという光景を見るだけだろう。

大型外洋帆船を多数運用し、世界各地を調査し、交易を行っているが、人類連合はまだ外洋帆船を建造できておらず、鬼族連邦も数隻を運用するのみ、小鬼連邦は建造に着手したところと大きく隔たりがあり、街エルフの海外探索でも、弧状列島外の外洋帆船には遭遇していないことから、街エルフが他の全てを大きく引き離している事に疑問の余地はないだろう。

海外から持ち帰ってきた舶来品や、競争力のある商品に限定して輸出する事で、人類連合の国々と程よい関係を築いている。また、貨幣を安価かつ高品質、高耐久力で製造できるのは街エルフ達だけであり、流通している貨幣、手形の類は全て街エルフ製である。

彼らはインドア派で暇なのか、膨大な数の手紙をやり取りする事で知られており、全国の運搬網が運ぶ荷物のかなりの量は街エルフが送り、送られる手紙が占めているのだ。

それと有り余る資金力を活かして、全国に孤児院を運用して人材の青田刈りにも勤しんでいる。孤児院出の探索者も多い。

……と言うように、資金も人材も情報も物流も問題なしのチート国家だが、それもマコト文書の情報を活かせる地力があればこそ。

そんな彼らも長命種故の欠点として、物事を考えるスパンが長く、計画して動く分にはいいのだが、次々と状況が変化し、先が見通せないような激動の時には、対応が後手に回りがちになってしまうという事がある。

アキが来てからの一連の対応の鈍さはまさにそれで、程々のところで安定するだろう程度にのんびり構えていたところに、安全保障の根幹を揺るがす不倶戴天の敵たる天空竜達と仲良くしよう、などという話がどんどん進んでいっており、長老達もどう動くべきか、対応を決めかねていたようだ。

何せ機嫌を損ねれば、直接戦闘ではどうにもならないのが天空竜という連中である事は、年長者達は骨身に染みてよく知っている。

というか、あの天空竜が仲良く話すなどという事自体、想像の範疇を超えてしまっており、状況を分析するだけでも苦労しているようだ。

ただ、ミア財閥が人材供給破綻を起こして、政治、経済への影響が見えてきたため、国として彼らも動く事に決めたようだ。


【ロングヒル】

人類連合の東に位置し、防衛の要となる都市国家である。政治形態は王政だが、貴族や市民からなる議会も機能しており、市民の国政への参加率も高いほうである。

人類連合の中で唯一、共和国の大使館が置かれており、人類連合の中でもその重要性は抜きん出ている。他の国と違い、稀とはいえ、魔導人形を見かける機会があるのはその為である。交通の要衝でもあるため、あまり多くはないが、森エルフやドワーフ達の姿を見かける事もあるだろう。賢王と呼ばれる現王の元、治世は安定しており、王妃と二人の王子も国政に参加しており、次の治世も安定したものとなる事だろう。王女は国民からの人気は高いが、知名度とは裏腹に、政治的な活動は活発ではない。王の意向が絡んでいるとの噂もあるが真相は不明である。


……と以前ならば言われていたが、ここ数ヶ月でだいぶ様変わりしてしまった。


それはこうだ。


人類連合の東に位置し、鬼族連邦との交流の窓口としても極めて重要となる都市国家である。政治形態は王政だが、貴族や市民からなる議会も機能しており、市民の国政への参加率も高いほうである。

人類連合の中で唯一、共和国の大使館が置かれており、人類連合の中でもその重要性は抜きん出ている。

魔導人形達の姿を見かける事も多く、街エルフの大使館領は元より、一部のワイン醸造場(ワイナリー)などでも、彼らが熱心に働く姿を見る事だろう。

数十人という大人数の森エルフ達の神技とも言える弓術を訓練する姿を見かけることもあるだろうし、百人を超えるドワーフ達が工業施設を建設する様子も、見応えがあるだろう。そして何より、あの鬼族が新たに大使館を設置する事になり、広大な敷地に巨大な屋敷を建設しており、多くの市民の関心を集めている。

街エルフの大使館領に行く機会があれば、伝説の存在と言われた妖精達が飛び回り、人々と話し合う姿を見かける事もかもしれない。

まるで御伽噺の国が現れたかのような状況だが、今まで語った話が全て霞んでしまう存在がいる。天空竜だ。

あの天空竜が、それも人類連合でも知る者の多い雲取様が、週に何度も来訪してくるのだ。街エルフの娘、竜神の巫女に会うために。その為、第二演習場の周辺は立ち入りが制限されている。警戒活動は森エルフ、ドワーフ、それに街エルフの魔導人形達が行なっている厳重っぷりだ。

彼等は意図せず迷い込むような者が出てこないよう防ぐ意図も持っている。第二演習場付近に行けば、天空竜からの圧力で一般人なら数秒で気絶してもおかしくないのだから。

内政面はこれまで通り、王と王妃、それに二人の王子が担っており安定しているが、他種族への対応は王女が統括しており、その手腕は、あの鬼族ですら一目置くほどだ。まさか王女がこれ程の力量を持つとは誰も予想しておらず、識者達を悩ませている。

政治面では安定しているが、急激に増えた他種族の生活を支えるため、鬼族連邦も含めた物流網の再編が急ピッチで行われており、毎日のように目新しい事が起こる有様だ。

弧状列島に国は多くあるが、これ程までに重要性が高く、急激に変化を続けており、先の読めない国は他にないだろう。


【人類連合】

弧状列島の西側半分に存在する人族、森エルフ族、ドワーフ族の国家で構成される軍事同盟である。街エルフ達の共和国はオブザーバーという位置であり、厳密に言えば参加していない。成立当初は主敵を鬼族と定めていたが、「銃弾の雨」による鬼族連邦の攻勢減少により、今は小鬼族が毎年恒例で起こしてくる成人の儀に対抗する事が主目的に変わっている。

互いの都市国家は空間鞄持ちの輸送人を前提とした細い道で繋がるだけで、それぞれの国は城塞都市を中心とした狭い地域を支配するに留まるのが現状である。

その為、アキが見せた弧状列島の勢力図でも、貧しい土地、険しい土地は小鬼族達が支配している状態であり、連合は常に脇腹を小鬼帝国に突かれる危険性を孕んでいるのだ。これは鬼族連邦も同様である。

街エルフが発行する通貨が流通しており、配達人の輸送網も、街エルフの支援があればこそ維持できていると言える。その様な歪な状態をなんとかしたいという気運はあるが、大きな流れにまではなっていないのが実情だ。

街エルフ達の干渉が最低限で、かなりの部分を、それぞれの国の一任している事も大きいのだろう。

あくまでも共同で戦うための同盟であり、人類連合自体に属する軍は存在していない。

困難には共同してあたる事になっているが、どの国が指揮権を持つか揉めるのもいつもの事だ。


【鬼族連邦】

弧状列島の東側半分に存在する鬼達の国々の軍事同盟である。人類連合と異なり、ある程度の権限を持つ盟主が選出されている。盟主の元で一丸となって戦う為、人類連合よりは全体としての統制は取れた戦い方をする特徴がある。小鬼達の成人の儀は面倒だが、毎回、軽く捻り潰しているため、危機意識は薄い。ただ、僅かずつではあるが戦力は減少しており、上層部はそれに危機意識を持っている。

ロングヒルで開催された総合武力演習では、鬼族がその力をアピールしたが、妖精族や街エルフとの会合で見聞きした情報は、国を二分する程の争いを生む火種となった。

和平派の方が勢力としては多いが、さりとて武闘派もまたかなりの勢力となっており、連邦の進む方向が定まらない状況だ。

和平派はどちらにも傾かないのであれば、情報収集のルートは持つべきと、大使館設立に動いているが、なし崩し的に和平派の望む方向へと進む事に武闘派は苛立ちを強めている。

そんな中、やって来たのがアキと雲取様の親密さを伝える続報だった。人類連合と鬼族連邦の争いなど、その気になれば両方叩き潰せる竜族達が存在感を増したとなれば、竜神の巫女を擁する人類連合に天秤が大きく傾くのではないか、との憶測まで生じている。続々とやってくる新たな事態を告げる報告を受けて、和平派、武闘派のどちらも早急に手を打つべし、という点で認識を一致させた事だけは間違いない。


【小鬼帝国】

弧状列島全域の貧しい土地、険しい土地といった住みにくい地域の全てを支配下に置く小鬼族の帝国である。人類連合、鬼族連邦のどちらとも異なり、あくまでも一つの国として統一されており、軍組織も帝国軍として独立しているところに特徴がある。その為、軍組織として見た場合、人類連合、鬼族連邦、小鬼帝国の中で、もっとも統制のとれているのは帝国軍であり、軍組織毎の役割分担も徹底している。また、近年では皇帝直属の親衛隊もその勢力を急激に増しており、皇帝の権力基盤は絶大なものとなっている。

独特の死生観があり、輪廻転生の考えが強い。沢山産み、沢山育て、成人の儀で選別する文化であり、人族の半分程度の寿命も相まって、祖先を敬い、何よりも種族全体を重んじる傾向があり、必要とあれば、死を厭わないのも特徴だ。

細々とした交易が行われる程度の為、その内情は不明な点が多く、魔術も技術も数段落ちるモノということもあり、甘くみる者も多い。ただ、身の丈に合った技術を使いこなしており、新技術にもすぐに真似をして追いついてくる事から、彼らを侮るのは危険である。

実際、ロングヒル周辺でも小鬼達の動きは活発であり、捕虜の確保も成功していないことから、かなりの手練れが投入されて来ており、小鬼達がこの地域で起きている激しい変化に強く興味を示しているのは間違いない事だろう。

次回から八章スタートです。七柱の雌竜達との心話バトルになります。

投稿は、十月六日(日)二十一時五分の予定です。

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