第七章の登場人物
七章で登場した人物や、描写はあったけど登場シーンがなかった人の紹介ページです。
投稿が遅れてしまってごめんなさい。
七章の人物紹介。
◆主人公
【アキ】
外見は色違い(髪が銀髪、目が赤い)のミアといったところであり、中の人は誠。地球では高校二年生の男子であった。現在はミアと魂が入れ替わっており、こちらではとても長い学生生活を始めている。
成人するまで待っていたら、地球の誠(中の人はミア)が寿命で死んでしまうので、なんとか奮闘して、地球との間に次元門を構築する専門チームを立ち上げて貰う状況まで持って行った。
また、こちらでの姉であるリアとの間で、魔力共鳴現象が起きており、魔力は超強化されたっぽいのだが、制御不能、魔力の感知も不可と欠点ばかりが目立つ。強過ぎる魔力のせいで触れると魔導具が壊れると、行動範囲すら大幅に制限される有様である。アキの魔力属性はリアと同じ無色透明であり、他人からはアキの魔力がまるで感知できない。
魂入れ替えの影響で、一日の半分も起きていられない。日がかなり昇ってから起きて、日が落ちる前には寝ている感じ。そのため、生活の大半をサポートメンバーに頼っている。
七章では、森エルフのイズレンディアを仲間に引き込み、天空竜の雲取様とも仲良くなる事が出来た。また、人類連合所属国のエージェント達も含めたロングヒルに滞在している各種族の選抜メンバー相手に、マコト文書の専門家として、地球の世界について紹介し、皆に世界規模の視点と、団結の重要性を訴える事ができた。……できたのだが、アキが雲取様と親密になることで、「竜神の巫女」という呼称が急激に重みを増し、各国に時代の移り変わる節目である事を強く印象付ける事にもなった。
余りの反響の大きさに、暫く公的な場に出る事を禁止されるほど。まぁ、アキとしてはそもそも、さほど公的な場に出てるつもりもなかったので、そんなものかと軽く受け流しているが、その態度すらも、憶測を呼んでしまう事になる。
七章ラストでは、アキ相手に天空竜が7柱も来訪してきたため、ロングヒルは恐怖の坩堝と化した。この事もまた、アキの立ち位置を複雑にして行くことになるが、それは八章で語られていくことになるだろう。
◆アキのサポートメンバー
【ケイティ】
元は探索者であり、今は家政婦長として、アキがロングヒルでの活動の基点としている別邸で働く人々を統括している。「マコト文書」も抜粋版ではあるが一般には公開されていない範囲も含めて全て読んでいることもあり、アキの会話が、普通に通じるのもそのため。
魔導人形の女中三姉妹と共に、アキの活動全般を支えている。ケイティの献身的な対応がなければ、一日の半分以上寝てるアキがこれほどストレスなく活動することはできていないことだろう。
最近はハヤトとアヤが別邸の主人代行を務めているため、本業に専念できるようになった。
アキのマコト文書専門家としての活動を支える業務がメインであり、調整役メンバーとの会合にも顔を出す事が多い。それくらい肩入れしないと、パワーバランスが保てない為だが、竜達の来訪頻度アップで、さらに頭を抱える事が増えるだろう。
探索者時代の装備に身を固めれば、戦闘力は倍増するが、天空竜相手では誤差に過ぎないことは重々、承知している。それでも僅かでも生存率を高めようとするのは探索者の性だろう。
【ジョージ】
元は探索者であり、かなりの有名どころだったりする凄腕の護衛である。アキが行くところ、常に行く所に同行している訳だが、ミアからは「街エルフの子供が成人するまでの間、危なくないように見ててあげてね」などと勧誘され、街エルフなら引き篭もり、ならまぁ、少しはのんびりできるかなどと考えたのが運の尽き。僅か数カ月で街エルフの国を飛び出して、ロングヒルにやってきて、本物の鬼族が現れたり、森エルフがきたり、そして本物の天空竜まできたのだから、護衛という視点からすれば、アキにはもっと大人しくしていて欲しいところだったりする。アキ自身は、直接、戦うようなこともなく、荒々しい輩に襲われるような場所に行くこともなく、極めて安全寄りに行動している「つもり」だが、鬼や竜とは会うという時点で、それは、安全の対極に位置する行動なのだと自覚して欲しい、と常々思っている。
アキが「天空竜の巫女」としての存在感を高めるほど、干渉してくる輩も増えてくるので、彼の仕事は増えることはあっても減る事は無いだろう。
それと、ここ最近は、雲取様が頻繁に通ってくる事になり、第二演習場を新しい活動範囲として、護衛体制の見直しを掛けるなど忙しく、ベリルと一緒に書き進めている子供向けの小説の執筆も滞りがちだ。
【ウォルコット】
御者であり、魔導馬、馬車の整備も担当しており、ロングヒルに来てからは庭師としても仕事をしつつ、魔導人形達のメンテもしてたりする元商人。若隠居であることがエリーの発言により明らかになった。こちらに来てからは、特等席で歴史の激動を目撃できている、と大変喜んでおり、実はせっせと日々感じたことを日記に記していたりする。
なにせ、妖精キター♪、鬼族キター♪、ドワーフ達もわんさかやってキター♪、天空竜まできて、森エルフも! ってな感じである。
ただ、そんな彼でも、雲取様が頻繁に通い、七柱もの天空竜がロングヒルの空を舞う事態は予想してなかったようで、第二演習場へと馬車を走らせていた時も、天空竜に襲われた場合の回避を常に念頭に置いて、かなりの緊張状態にあったようだ。
【翁】
本物の妖精であり、妖精界からアキの子守妖精となるべく召喚された老人である。他の妖精達と違い、色々と度外視した召喚体で構成されていることもあり、同期率を下げれば、こちらと妖精界で二重行動をしたりもできる。今回の天空竜との一連の騒ぎでも、妖精達と人族を繋ぐ役を果たし、調整役に徹していた。また、トラ吉さんとは仲が良く、アキの傍にいることで、アキを身体面、精神面の両面から強く支えている。
【トラ吉さん】
芝犬くらいの大きさの角のある猫、つまり魔獣であり、アキはとても愛らしいと思っているが、一般的視点からすれば、虎やライオンといった猛獣枠である。リアに頼まれたということもあるが、最近の行動を見ていると、どうみても彼の思考は保護者のそれである。
アキの精神がかなり不安定なことも認識しており、常に近くにいて触れ合うことで、心を癒すのにも一役買っている。
常に傍にいて見守ってくれる彼の思いは、言葉を語らずとも、アキにもしっかり伝わっていて、抱きしめたり、毛繕いをしたりと御礼をしており、彼も満更でもないようだ。
【マサト】
ミアの家令であり、ミアの財閥を管理している責任者でもある。「マコト文書」という知財を活用して、膨大な資産を多くの方面で運用しており、彼と秘書人形のロゼッタが行使する影響力は王侯貴族連中を束にしても敵わないレベルだったりする。そんな彼らではあるが、怒涛のイベントラッシュに、遂に手札が尽きて、活動を停滞せざるを得なくなった。アキに自重するよう釘は刺したが、アキが動かずとも周りが動けば、状況は変わってしまう。いずれは、街エルフの国自体が関与する体制へと変わる事は避けられないだろう。
◆魔導人形枠
【アイリーン】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、彼女の料理は雲取様からも好評価を得て、彼女に加護を与えるに至った程である。竜が加護を与えた、などと言う話は、お伽話か、歴史書を紐解く必要があるほど稀なことであり、その事実を知った人々を大いに驚愕させたのだった。
また、日々、増員が続く大使館では、アイリーンの教えを受けた女中人形達が黙々と腕を磨いており、大使館の料理目当てで来る訪問者まで出てきているらしい。
【ベリル】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、本編ではあまり触れられていないが、主な国、種族の面々を集めた勉強会で使った資料の多くは、ベリルが監修している。特に世界儀については、重厚で執務室に置いても、十分に映える出来となるよう、地図の描き方、色合い、材質に至るまで、職人達と妥協せずに決めていった程である。勿論、情報は出し過ぎず、絞り過ぎず。
その落とし加減も、今ではケイティが一目おく程だったりする。ただ、作業量が増えた事に対応する為、部下が増えたのだが、その教育には四苦八苦している様子だ。これまでは個人としての実力を高めれば良かったが、今後はチーム全体としての成果を求められるのだから。お陰で趣味の天体観測や、ジョージと執筆している子供向けの小説作成も滞り気味。
【シャンタール】
アキに触れることもできる高性能女中三姉妹の一人であり、アキの着る服のコーディネイトは完全に一任されており、日々、新たな魅力を引き出そうと邁進している。アイリーン、ベリルが専門の仕事を抱えている分、全体のフォローに回っており、作業量の増加に合わせて配置された新たな部下の女中人形達も上手く使いこなしていたりする。
そんな管理職の仕事をしつつも、別邸を楽しげに清掃している姿が頻繁に目撃されており、どんな手品を使っているのかとケイティが訝しむほどだ。
【ダニエル】
ウォルコットの助手として、彼の活動を支える立場である。魔導人形で唯一、「マコトくん」を信仰する司祭としての力を持っており、百パーセント善意から、日々、日常の雑談をするように、「マコト文書」のエピソードなどを語り広めていたりしている。本編では語られていないが、勉強会の開催で俄かに高まった「マコト文書ブーム」の大波に確実に乗ろうと、伝手を頼って、マコト文書の語り手達をロングヒルに集め始めている。この事はウォルコットも知る所だが、商売上のイロハを教えたり、単に本を読むだけでは伝わりにくい内容を、語り手が聞かせる事を大切にするように、と助言する程度で、好きにやらせている。ウォルコット曰く、その方が面白いから、らしい。かくして、今日もまた、ダニエルは善意と誠実さを持って、物語を話して聞かせているのだ。
【護衛人形】
アキに触れることができるよう強化された護衛用の魔導人形達で四人一組。室内戦闘用ということで小回りが利くよう、体格は小さめ。その実力は、連樹の巫女の護衛達の動きを軽く止めるほど。……なのだが、来訪してくるのが天空竜達とあっては流石にどうにもならず、凹んでいるらしい。
【農民人形】
主に農作業を担当するということでロングヒルに同行してきた魔導人形達。お揃いの作業服をきて園丁としての仕事も兼務している。骨董品のような別邸や、その庭が常に手入れが行き届いているのも彼らのおかげ。アキがのんびりできるよう木々の配置や手入れも工夫している気の使いようだ。
【ロゼッタ】
ミアの秘書を務めている魔導人形であり、通常の魔導人形二十体分にも相当する超高性能機らしい。ミアの知的財産管理を担当している関係で、ロングヒルには同行していない。ミアの財閥と呼ばれる企業集団を統括、運営する立場におり、別邸やその中で働くスタッフ達が維持できているのも、彼女の手腕があればこそ。
ただ、二ヶ月程度離れただけで、アキがここまで活動範囲を広げるとは予想しておらず、その事が嬉しいやら、寂しいやら。何とか、アキと会う機会を設けようと画策中だったりする。
【タロー】
小鬼人形の一人で、館ではアキの訓練役を担当していたが、仮想敵部隊においては部隊長を任されており、色々と枠に当てはまらないアキに顔と名前を憶えられていることもあって、アキ担当役を押し付けられている苦労人だ。小鬼達による仮想敵部隊の設立当初からのメンバーであり、仲間達からの信頼も厚い。
【仮想敵部隊の小鬼人形達】
予定通り、総合武力演習でボロボロになった彼らは、大使館に人形遣いの工房が開かれたこともあり、順次、修理を受けている。アキとの話し合いの場に出るメンバーを優先して修理しており、まだまだ修理待ちの行列はなくなりそうにない。なぜなら、女中人形達の増員ペースが早過ぎて、そのメンテに四苦八苦している状態だからだ。自分達が後回しにされる事は、世が平和な証拠と達観していたりする。しかし、そんな彼らもまた、アキの小鬼帝国対策検討の為、根刮ぎ、駆り出される事になっていく事だろう。小鬼帝国が介入してくるのは確実なのだから。
【仮想敵部隊の鬼人形さん】
今回は出番はなかったが、鬼族の屋敷に入り浸り、手合わせをする日々であり、本人はとても満足している。いずれは、鬼族の屋敷で鍛錬に励む彼の姿を見ることもあるだろう。
◆家族枠
【ハヤト】
ミアとリアの父であり、こちらでのアキの父でもある。共和国議員であり役職は高め。街エルフの長老達と対峙している。雲取様の来訪が決まった際には、周囲の反対をねじ伏せてロングヒルにきたほどだったが、自分の娘が天空竜と会うなどと聞けば、心配するのが親心というものだろう。実際、そうしてやってきたハヤトやリアに、アキは感謝の気持ちを伝えており、二人の見せた愛情深い姿勢は、アキの心の支えとなったことは間違いない。
天空竜達がやってくるようになり、長老達の姿勢にも変化がでてきたようで、その対応に奔走している。そのこともあり、現在はロングヒルにはいるのだが、アヤ共々、顔を見せるシーンは少なそうだ。
【アヤ】
ミアとリアの母であり、こちらでのアキの母でもある。共和国議員で役職は高め。せっかくロングヒルに来ているのに、長老達や、人類連合の関係者達への対応で忙殺されており、日々、不満が蓄積中。ハヤトと同様、顔を見せる事は稀だろうが、そこは母の知恵。何としても存在感を示す策を繰り出す事だろう。
【リア】
ミアの妹であり、こちらでのアキの姉でもある。アキとの間に魔力共鳴現象が発生しており、アキと同様、魔力は異常に強いが、魔力感知不可、制御不可とポンコツ状態なのも一緒。
雲取様の来訪が決まった際には、ハヤトと同様、周囲の反対をねじ伏せてロングヒルにやってきた。
魔術関連では、雲取様の協力もあり、アキとセットで確認するようなことも増えて、すっかりロングヒルに根を生やしている。アキに対してお姉ちゃん風を吹かせる機会が嬉しくて仕方ないようだ。しかし、リアは良くとも、現状に不満なのが本国の館にいる研究者達。彼らに情報は流しているが、自分達も混ぜろ、と研究者達が押しかけてくる日もそう遠くなさそうだ。
【ミア】
アキ、つまり地球でのマコトを召喚した張本人だが、召喚時に入れ替わりに地球のほうに行ってしまい、音信不通状態。異世界(地球)との間で夢の中ではあるが交流もやっていたりと魔導師としては超一流。きっと地球では、誠の中の人として楽しく生活しているはず。召喚前に今後、アキが遭遇するであろう様々な事態を想定して、山になるほどの手紙を書き残した。また、誠と延々と話した内容を『マコト文書』として書き残している。
七章では、ミアの手紙は登場しなかったが、これは、事態がミアの想像を超えてきている為。天空竜をラスボス相当のように書いていたくらいであり、まさか、そんな天空竜の中でも有名な雲取様を足掛かりに、竜族の有望な個体を探しまくろうと画策するなどという流れは、予想できなかったようだ。
◆妖精枠
【シャーリス(妖精女王)】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人で、妖精の国の女王様である。アキが齎した「妖精でも使える賽子」により、他人と公平に遊べるようになったことを大変喜んでいる。
アキのことも、手間のかかる妹といった感じで見ているようで、保護者視点での発言や行動もよく見受けられる。妖精達がこちらにきているのはあくまでも私的な立場であり、公的な立場ではないと明確に線引きしている。天空竜相手に全員召喚ということも多く、妖精の国では、上層部が率先して国を抜け出すとは何事か(訳:俺達も行かせろ)との声も多くなってきており、今後は一般枠の妖精さん達もやってくることになるだろう。
【賢者】
召喚術式を改良し、大勢の妖精を追加召喚した妖精界の偉大なる大魔導師である。賢者という役職名も自分から言い出したものではないが、他人からずっと言われるうちに、面倒臭くなり、それでいいと受け入れたものだったりする。周囲が心配するほどこちらの世界での魔術専門家との交流にのめり込んでいるが、シャーリスの打ち出した対策により、節度ある召喚生活を送れているようだ。
魔術の改良においては、彼は引く手あまたであり、召喚を利用した妖精界とこちらの通信方式確立にも並々ならぬ熱意を注いでいたりする。やはり記憶して持ち帰るのには限度があり、もっと大量の情報を扱っていきたいようだ。
【宰相】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。妖精の国の統治を行う閣僚の一人だが、人族のそれよりも統治機構はシンプルで、各人の裁量に任される範囲が広いようだ。
彼は妖精と人族の在り様は違えども、統治という視点で国全体を情報という角度から見れば、学べるポイントは多いと考えており、賢者ほどではないにせよ、かなり積極的にこちらを訪問していたりする。
勉強会に参加して、他の種族との接点も増えたことで、人族や街エルフだけに偏りがちだった情報を、広く集めることに重点を移しつつある。やはり街エルフは情報源としては質は高くとも、扱う概念、量が何桁も違っており、そのままでは妖精の国に導入できないと感じているかららしい。
【彫刻家】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。優れた彫像を作る高い技量があるが、実際にはできないことがないんじゃないか、というマルチな才能を持つ妖精である。妖精もドワーフも互いの技、知識に触れて刺激し合うことで、双方の国に影響も及ぼし始めていたりする。
今後は雲取様でも扱える魔導具の製作が控えており、彼の技術を必要とするシーンも増えてくることだろう。
【近衛】
改良された召喚術式により追加召喚された妖精の一人。シャーリスの護衛を担当しており、妖精族の中でも精鋭が割り当てられている。今回もシャーリスが行くところ、一緒に同行し、彼女を護る仕事に徹することが多いが、宰相など、他のメンバーの護衛としても同行することは多い。こちらにくると、妖精の国では接点のない人族などの視点、意見も得られるため、情報交流も以前よりも熱心に行っている。
妖精の中でも高い実力を誇るのだが、そんな彼でも、七柱の天空竜が同時に現れた時は、流石に緊張したようだ。それでも、普段より緊張した、程度で済むのだから、大したものである。
◆鬼族枠
【セイケン】
鬼族連邦から、総合武力演習に参加するため、やってきた鬼族達の代表をしている鬼族の男である。体つきはとても大きく、ジョージと並ぶと、ジョージが子供に見えるほどだが、彼は鬼族としては普通といったところ。
魔術と武術を同時に使用する技をかなり高いレベルで習得しており、護身用の鉄棍だけでも、大概の困難には対処できる強者である。アキも言っていたようにスマートな印象のイケメンであり、故郷には妻と四歳になる娘がいたりする。妖精族との繋がりを得たため、彼を含む五人の鬼族の若者がロングヒルの地に残る事になった。ロングヒルに鬼族連邦大使館も建設が始まっており、彼の単身赴任状態はかなり続きそうだ。
アキからは鬼族連邦の窓口役として頑張るよう発破をかけられており、本人もその気はある。街エルフや人族の対妖精シフトの人員投入規模の大きさに、鬼族がかなり出遅れた、と認識している。
実際、鬼族の常駐組が増員できない中、他の種族は続々と体制強化に努めているので、彼が焦るのも無理はない。
アキやエリーがかなり特異な子供である事は、雲取様の来訪からの一連の流れで理解するに至った。というか、こんな娘達がゴロゴロいてたまるか、と言いたいくらいらしい。我が子にはぜひ普通に育って欲しいと願っていたりする。まぁ、普通と言っても、鬼族の普通ではあるのだが。
【レイハ】
ロングヒルに常駐しているセイケンの補佐役を務める鬼族の男だ。文武に優れているが、特に人族の文化への造詣が深くロングヒルでの活動では、彼の知見が大いに役立っている。セイケンと違い、彼は居合術の達人であり、鬼の膂力で繰り出される斬撃は、人の身では防御ごと断ち切られるのがオチだ。そんな武人気質な男だが、実はアイリーンお手製の甘味が大好きで、何かと理由を付けては取り寄せていたりする。おかげで少し脾肉も付いてしまい、後発組がくるまでに引き締めようと、運動量を増やしたのだった。
【トウセイ】
失敗技術と烙印を押された大鬼化の魔術について故郷に戻って自費で研究を続ける鬼族の男。鬼族の中では変り者として結構有名だったりする。鬼族の後続組に混ざってやってくると思われるが、今はまだ互いにそれほど期待してる訳ではない。しかし、これにいくつかの要素が加わる事で化ける事になる。
【鬼族のロングヒル居残り組メンバー】
セイケンと共にロングヒルに来た若者達で全員、男であり年齢構成は、人間換算なら二十代といったところ。セイケン程ではないが、やはり魔術と武術を同時に行使できる技を身につけており、百人力の猛者達である。彼らは穏健派の中でも、有望と見られている逸材揃いであり、セイケンは彼らの纏め役という位置付けであり、実はそれぞれが代表を務められるような精鋭だった。半分がロングヒルの居残り組となった。
エリーの働きかけもあり、居残り組も調整チームに組み込まれて、本国からの後続組の為の足場固めに奔走している。しかし、事務方としてみれば、セイケン達を含めて合計、僅か五名。多くのことに手が回らず、最低限の活動を維持するのが精一杯という有様だ。
◆ドワーフ族枠
【ヨーゲル】
ドワーフの中でもその人ありと言われた有名な彫刻家。長命なドワーフ族の中でも、老齢の域にあるが、旺盛な創作意欲は衰える事なく、今でも気の向くままに作品を創り続けている。妖精から贈られた彫像の再現を契機に、妖精族の彫刻家とは懇意にしており、ドワーフの技術を見せる為の施設建設にも繋がった。勉強会にも参加し、ドワーフのロングヒル常駐組の代表も務めるなど、多忙な日々を送っている。
【常駐するドワーフ技術者達】
馬車のメンテは程々に、妖精達との技術交流にどっぷり浸かって至福の日々を送っている。彼らもいずれ予算という縛りに四苦八苦する事になるだろう。あれもこれも試したい、でも予算も人も資材も足りない、足りない、足りなーい、と。
【施設建設で派遣されてきた百人のドワーフ技術者達】
妖精の技に触れた技術者達の猛烈な働きかけにより、ドワーフの技を見せるための施設作りにドワーフ技術者百人からなる大集団派遣されており、施設の建設も着々と進んでいる。
また、他の種族との技術交流も盛んで、特に酒造りでは鬼族相手でも、火花を散らすようなやり取りも辞さないといった具合だ。
彼らの食欲は膨大なものがあり、物流網の見直しで何とか対応した。しかし、この後は鬼族後続組も控えており、鬼族連邦側の物流も組み込む形にしないと、早晩、ロングヒルの物流は破綻することだろう。
◆森エルフ族枠
【イズレンディア】
天空竜の雲取様が庇護下に置いている深緑の国から、雲取様の勅使としてきた森エルフの男。ジョージより少し高い身長と、野山の勾配を物ともせず走り回れる卓越した身体能力を発揮できるアスリート体型である。身体能力的には一般的な森エルフと大差ない。彼が勅使として選ばれたのには弁舌が立つため。
そんな彼も今ではエリーに引き摺り回されて、調整組の一人として活躍する日々である。
自然を相手にするのとは勝手が違う戦場で討ち死にしないよう祈るばかりだ。
【ロングヒルに常駐している森エルフ狙撃部隊の皆さん】
狙撃のプロにして、集団化すれば、生体イージスシステムとでも言うべき効果を発揮する頼もしい連中だ。
ただ、狙撃手向きな性格故か、寡黙な彼らが集団でいると独特の凄みが滲み出て、人を遠ざけてしまっている。その為、交流は活発とは言いがたく、本国から発破をかけられている日もそう遠くなさそうだ。
◆天空竜枠
【雲取様】
人族の間でもその名を知られている有名な天空竜である。他の天空竜より一回り体格が良く、その鱗は透明感のある黒であり、その飛ぶ姿は優雅である。飛ぶことが趣味のようで、他の天空竜よりも飛ぶのがとても上手く、行動半径は三倍にも及ぶ。そのため、人類連合の間では最も目撃例の多い天空竜である。
彼の支配する地域には、森エルフやドワーフも居住を許されており、その庇護下にある。庇護下の種族からは竜神として崇められているが、魔力量の差が大きく、接触時間が僅かしか持てない制約がある。
今回の交流で、ストレスなく話が出来て、美味しいケーキや紅茶も飲めるとあって、刺激に飢えていた彼はすっかりロングヒルに入り浸るようになってしまった。それでも節度ある振る舞いは、人々に好感を与えており、中には雲取様の姿を見たいと申請してくる者も出始めているようだ。
言い寄ってくる雌竜達は、好ましく思ってはいるものの、恋に恋する乙女達といった感じなのと、互いに牽制しあってギスギスしてしまうのが残念と思ってたりする。度を超えたリア充というのも大変である。
【雲取様に想いを寄せる雌竜達】
鱗の色は紅、群青、中黄、若竹、白磁、本紫、金とそれぞれ異なるが、これは人の魔力属性が瞳や髪色に現れるのと同じで、天空竜の場合、全身を覆う鱗の色に現れるからであり、種族としては同じ天空竜である。精神年齢的にはティーンエイジャーといったところであり、しかも大切に育てられてきているため、いろんな意味で箱入り娘といった感じだ。若さゆえの代償をどう支払わされることになるのかは、八章でたっぷり語られていくことだろう。
◆人類連合枠
【エリー】
名前はエリザベス、ロングヒルの王女様であり、ソフィアに師事するアキの姉弟子でもある。ソフィアに言われて、アキの教育係になっている。魔術の腕はまぁまぁだが、魔導師の域には遠いようだ。一応、国民からの人気は高い(本人談)とのこと。王位継承権第三位ということで、それなりに重要な立ち位置のようである。総合武力演習で鬼族を応援したことで、自らの立ち位置が明確になり、アキの進める計画への参加も承認されることになった。
次から次へと激震を生むアキ達に、のんびり対応などと言ってられる筈もなく、気が付けば、調整組を取り纏めて、強力なリーダーシップを発揮するに至っており、大変頼もしい。
調整組の面々もエリーの手腕、カリスマ性には一目おく程であり、日々、存在感を増してきている。
しかし、鬼、ドワーフ、森エルフ、それに街エルフという多様な種族、しかも皆、ずっと年上という連中相手に、リーダーの地位に自然と収まっているというのは、彼女の父母である王や妃も頭が痛かったりする。
彼女が輝くほど、二人の兄は影が薄くなり、婚姻もまた難度を増していく事になるのだから。
【ロングヒルの王様】
ロングヒルの現国王であり、国民からは国父と大変慕われている。自らの人気の高さ故に、世代交代がスムーズに行くよう、二人の王子にも実務を着実に積ませていていたりする堅実派。
今では、二人の王子には内政と人類連合内の外交を、エリーには他種族と融和と暴走の抑制を期待するに至った。
竜達の頻繁な来訪に直面し、王妃と共に、五頭体制に改めるよう、現在、国内の体制見直しに手をつけ始めた。
【ロングヒルの御妃様】
ロングヒルの現王妃様であり、エリーの実の母でもある。エリーを見ていればわかるように、実は苛烈な性格は母親譲りであり、彼女が夫を立てているから、夫も国父と慕われているが、かかあ天下であることは国民にはバレバレのようで、彼女も国母と慕われていたりする。実務の何割かは実は彼女が統制しており、その比率は夫より少し多いくらいだったりする。
今はエリーの影響が強くなり過ぎたため、調整組が抱える案件のうち、二人の兄王子でも担えるモノを担当させる介入を始めた。手離れ良く、誰かが担当してくれるなら有難いと調整組も大歓迎。そんなお妃様のおかげで、ロングヒルの五頭体制も現実味を帯び始めたのだった。
【ロングヒルの王子様達】
ロングヒルの第一王位継承権、第二王位継承権を持つ王子達である。現在の王妃とは血の繋がりはないが、関係は良好であり、互いに足を引っ張り合うような無能でもないため、国王夫妻からは身の丈を弁えており合格ラインに達していると見られている。能力的には十分な域に達しており、国民からの人気もそれなりにあるのだが、第三王位継承権を持つエリーの人気の前には霞んでしまっているのが実情だ。
今は、御妃様が調整組から持ってきた仕事を二人で黙々とこなしている。華々しさはないものの、重要な仕事を手堅く纏める姿勢は、人々からも好感を持って迎えられており、彼らが国政の一翼を正式に担う日もそう遠いことではないだろう。
【トレバ―】
人類連合の南西の端にある国ディアーランドからロングヒルに来ているエージェント。荒々しさの中にも深い知性を感じさせる男性だ。貧しい土地故に、独特の死生観を持ち、戦場での働きを貴ぶお国柄だったりする。なんとも物騒だが、それでも、その身に狂気を宿すと言われるロングヒルの男たちとは、一緒にされたくないらしい。
【ナタリー】
人類連合の二つある中枢国のうち東側に位置する国テイルペーストから、ロングヒルに来ているエージェントで、キャリアウーマン風の外見。肥沃な国土のため、食文化もとても栄えており、他国の者には量があり過ぎるモーニングの文化も盛んだったりする。噂のアキがどれほどのものか興味を持っていたが、一連のやり取りをしてみて、一個人の力量でどうにかする相手ではないと悟ったようだ。
そんな彼女の認識は正しい。なにせアキは、活動を支えてくれるケイティと女中三姉妹という強力なスタッフを抱えているのだから。
◆その他
【ジョウ】
街エルフの駐ロングヒル大使。若手だがかなりのやり手であり、ルーチンワークで対応できていた頃は、暇で暇で退屈していたようだ。今ではアキがきてから、日々、ルーチンワークでは対処できない非常事態の連続が続いており、毎日がとても充実しているらしい。そんな彼も、流石に天空竜の雲取様が飛来し、彼が寝落ちしたり、入り浸ったりすることで、アキや街エルフの取り巻く情勢が、複雑怪奇と化してきており、遂にアキに、行動を自重するよう釘を刺すに至った。変化は歓迎だが、早過ぎる変化は制御できない結末に繋がりかねないため、なんとか手綱を握ろうと奮闘中なのだ。
しかし、そんな彼をあざ笑うように、七柱の天空竜が来訪してしまった。事態が鎮静化するまでは、いくら彼が手を尽くそうとも、どうにもならないことだろう。
【ソフィア】
アキの魔術の師匠であり、エルフとのハーフとのことだが、高齢であり、その背はアキより頭一つ分は小さい。魔力属性は透明度ゼロの炎色であり、意志をもって現実を塗り潰すような魔術が得意。斜陽の古典魔術を指導する立場ということもあり、街エルフの齎した現代魔術に対する研究も余念がない。貪欲な探究心があればこそ、アキの師匠として抜擢されたとも言える。ただ、目的の為には手段を選ばぬ所があり、天空竜絡みでも、色々と問題行動見受けられ、全幅の信頼を置くと色々と怖そうだ。
【街エルフの人形遣い達】
街エルフの人形遣いにも二種類いて、アヤの護衛要員達は戦闘が得意な連中だが人形の製造・調整は不得手、その逆の工房組は、膨大な数の稼働している魔導人形達のメンテが得意だったりする。天空竜達の動きが活性化してきたこともあり、彼らの出番は増えこそすれ、減る事は無いだろう。街エルフといえば引き篭もり、それも昔話として語られる時代が来るのかもしれない。
【世界樹の精霊】
イズレンディアの母国である深緑の国には、世界樹と呼ばれる巨大な木があり、精霊が宿る特徴以外にも、世界の名を冠するだけの特徴を持っていたりする。とは言え、立地が悪いのか、土地が手狭な為か、一般的な世界樹に比べて、まだだいぶ小さい。雲取様の庇護が必要なのもその為である。さて、アキが投げた餌に食いつくかどうか……
【マコトくん】
異世界に住む少年で、惜しげもなく様々な学問、技術、文化、歴史といった驚くほど多岐に渡る知識を伝えてくれた。その膨大な語録は書籍として出回っている。マコトくん信仰者達にとっても、ここまでマコト文書への注目が高まる事態は想定してなかった事だろう。今後の動静は要注目だ。
登場人物は増えはすれども減りはせず、なのでどんどん量が増えていきますね。アキが興味を示せば本編でも語られるのですが、結構スルーされているイベントも多かったりします。
次回は、「第七章の施設、道具、魔術」になります。
投稿は九月二十九日(日)二十一時五分の予定です。




