7-22.七柱の雌竜、襲来
前話のあらすじ:雲取様が寝落ちした結果、更に状況が加速してしまいました。ロングヒルから離れた地に住んでいる人々(人類連合所属国は勿論、鬼族連邦、小鬼帝国の方々も)からすれば、一体何が起きているのか、と驚愕していることでしょう。
全てを見通すのは無理で、雲取様が巣に帰るだけの気力まで無くなるほど、地球の話に熱中するのは予想外だった事、過去の事例に照らしてみても、天空竜が人族の側で眠りについた逸話は見当たらなかった事から、調整組の下した判決は、実刑確定ではなく、執行猶予付きのものとなった。
勿論、本当に司法の権限を持つ訳じゃない。ただ、皆に連れられて、何だかんだと聞かれて、対策とか、考えられる問題の検討とかを延々とやらされて、頭に浮かんだのはそんな感じ。
防止も可能であったのに、配慮を怠った罪、とまぁ、そんなところ。
ミア姉との心話だと、夢の中で会っていた事もあり、疲れたらそのままお休み、という流れだったから、途中で切り上げようって思わなかったんだよね。流石に疲れが明確に感じ取れた時点で終わりにしたけど。
ちなみに、心話は、こちらから、妖精界にいるお爺ちゃんにも繋がるくらいだから、目の前に来て貰う必要はなかったりする。
とは言え、雲取様の場合、竜眼の見通す力は貴重だし、心話では僕としか話せないけど、師匠とか他の人とも話をしたいという事もあり、今後も通う事になった。毎回、出してるケーキと紅茶も大きな効果を発揮したのは言うまでもない事だ。
◇
心話補助用の魔法陣は、妖精さん達の多重召喚でも活用している「縁者を組み入れて召喚補助を担う術式」を応用する事になった。
そもそも本人が目の前に来ていれば、本人自身を魔法陣に組み入れてしまえば、所縁の品を経由する必要もなくなる訳だ。
なぜ、改良をする事になったかと言うと、今後、想定される雲取様以外の竜にも柔軟に対応する為。
竜族は道具を作らないので、所縁の品というと、鱗とか、抜けた歯とか、折れた爪あたりしか該当するものがない。飛来した天空竜が、それらをすぐ提供するのは無理がある。
それに雲取様みたいに人族を庇護下に置いていて、荷物運びとか連絡の手段がある天空竜の方が稀だからね。
なので、天空竜が身一つで来ても、心話が出来るよう、心話補助魔法陣を新設する事になった。今までの所縁の品を使うことで、距離に関係なく心話を行えるこれまでの魔法陣とは別に、天空竜自身も魔法陣の中に入れる事で、魔力属性が無色透明な僕やリア姉相手でも心話を行えるようにする改良型魔法陣という二本立ての構成だ。
天空竜を収める魔法陣という事でかなり大きくなり、第二演習場は当面、僕達が占有する事が確定した。
◇
雲取様との会合も、無事、三回目が終わり、二回目と同様、雲取様は第二演習場で仮眠を取って休んでいる。
前回は僕が色々と伝えたので、今回は雲取様が、お気に入りの景色に関する記憶とかを伝えてくれて、大満足。
晴れた日、雨の日、昼間、夜間と多様な光景はどれだけ見ていても飽きない気がするし、世界の広さを感じられて、とても良かった。それに自ら空を飛ぶ感覚、風をきって重力の束縛から解き放たれた感じは、あまりにリアルで、心話が終わった後も、自分に羽根や尻尾が付いてるんじゃないかと思うほどだった。素晴らしい経験だったね。
それと、念の為、雲取様の知る他の天空竜についても、主な方は教えて貰った。伝える際に過剰とも思えるほどの気遣いをして見せたのが、雲取様に熱烈にアタックしてきている若い七柱の雌竜の事だった。
自分が彼女達をどう思っているのかも含めて、全て秘密にするよう念を押された。彼女達を憎からず思っているのは間違いないんだけど、女三人寄れば姦しいなどと言うように、七柱も集まれば、それはもう大変なものなようだ。
雲取様の心が、ガリガリと削られた記憶に触れた時は、ほんと、可哀想な思いで胸が一杯になった。雲取様はハーレム系の主人公をやれるほど、豪胆な心はお持ちではないようだね。
そう言えば、お爺ちゃん達との心話試験は一旦中止になったんだよね。
「師匠、お爺ちゃん達を交えた心話が中止になったのは聞きましたけど、何か問題があったんですか?」
「あったんだよ。アキ、考えてごらん。翁はたしかにそこにいるが、妖精界には、本体がいて寝転んでる訳だ。なら、翁の心はどこにある?」
「それはやはり、妖精界の側じゃないでしょうか?」
「そうなるね。ここにいる翁は謂わば、影だ。影は掴めないし、触れることもできない。実際、賢者と翁で、心話を試みて貰ったんだよ。二人とも相手をよく知るからこそ、目の前の召喚体を経由して、相手の心に触れようとしてみて、それが酷く迂遠な事だと気付いたのさ。だいたい、本来の魔力属性とも違っているんだ。ミスリードする要素だらけって奴だね」
「成る程。それなら、リア姉と僕のペアなら、問題なさそうですけど、どうでしょう?」
「まぁ、そうなんだが、雲取様が仮眠を取らずに帰れるようになるまでは、心話に関する新たな試みは延期だよ。まったく同じ魔力属性の二人と心を触れさせて、雲取様が混乱して、心話に問題が出たら困るからね。三人での心話はそれ程優先度は高くない。後回しだよ」
「それもそうですね。まず、雲取様が慣れる事、確かにそっちが先と思います」
「そう言えば、今日はどんな話をしたんだい?」
「今日は雲取様お勧めの絶景スポットについて、色々と伝えてくれたんですよ。まずはーー」
僕は、互いにやり取りした内容について、ざっと概略だけ伝えていった。同時に感じられた様々な感情や記憶の断片について、いちいち説明してたら、どれだけ時間があっても足りないから。
それにプライベートな事はやっぱり、あまり話さない方がいいと思うし。
雲取様は、空を飛ぶのがとても好き、雲が姿を刻々と変える様子がお気に入りで、台風襲来時の発達した積乱雲に突撃したりもしてて、なんともヤンチャで意外だった。もっと、雲取様の性格なら、ゆったりと飛びながらのんびり眺める感じかと思ってたから。
でも、渡された記憶に触れて、認識は大きく改まった。吹き荒れる暴風も、叩きつけるような豪雨も、雲取様からすれば、少し荒れてるなぁ、といった程度。あちこちで眩しく光る雷ですら、直撃しても少し痺れたか、くらいというから、凄いね。
ただ、そんな雲取様でも、魔法嵐だけは近寄らないようにしているそうだ。単なる嵐ではなく、様々な魔力が混ざり、混沌と化して、荒れ狂い、何かをきっかけに予想できない魔術が自然発動したりと、飛行の多くを魔術効果に依存する天空竜にとっては、墜落事故を起こしかねないそうだ。
あと、今回のケーキは新鮮な林檎をたっぷり使ったアップルパイで、パイ生地のサクサク感や、前回の葡萄のタルトと違って、食べた時に口の中で広がる林檎の味や香りのギャップもまた良い、と高評価だった。
◇
雲取様が寝てから帰るほど、僕達との仲が親密だ、という話はあっという間に広がり、混乱している人々を更に混乱させたそうだ。
直接、それらの人達と接してないから、それがどれ位のインパクトを生んだのかはわからないけど、僕が公の場に出るのは当面禁止、と言われたことからして、かなりのものだったと言えるだろうね。
ただ、雲取様との会合もなく、のんびりできる予定だった日、その筈だったのに、その日は朝から起きた途端に、すぐ第二演習場へと向かうように言われて、とても慌ただしかった。
ベッドの隣にはお爺ちゃんとトラ吉さんまで待ち構えていて、用意できたらすぐ出掛けて、といった感じだ。
「おはようございます。えっと、何があったんですか?」
「来たんじゃよ。雲取様以外の竜が。それも七柱も。取り敢えず、女王陛下も含めて全員に来て貰い、彼らには第二演習場へと誘導をして貰っておるところじゃ」
「え? その竜達ってロングヒルの街の方に来たの? というか、七柱って、例の雲取様に言い寄ってる雌竜達?」
「その通りです。七柱で編隊飛行をしつつ、ロングヒルの上空を周回し、アキ様に会わせよ、と要求してきました」
ケイティさんが僕の服を抱えて入ってきたけど、いつものメイド服じゃなく、ジョージさんの着ているのと似たデザインの外套を着てかなり重装備だ。かなり真面目な戦闘用装備に見える。腰に付けてる魔導杖も、探索者の頃から愛用しているという品の筈。
「なんで、第二演習場の方に行かなかったんでしょうか。迷惑ですよね」
雲取様が紳士だったせいで、他の竜がここまで雑な訪問をしてくるとは思わなかった。
ケイティさんに促されて、急いで着替えて、馬車に乗り込んだ。お爺ちゃんとトラ吉さんも一緒だ。御者台でスタンバイしているウォルコットさん、ジョージさんも表情が硬い。
「迷惑というレベルでは済んでません。現在、ロングヒルの全軍及び、ロングヒル駐留の我らの魔導人形達も空間鞄内待機組も含めて全員が即応体制に入っています。最悪の場合、投槍の集中運用で、殲滅する用意までしていました」
していました、か。という事は最悪は免れたと考えて良さそうだ。
「……殲滅? 天空竜達、それも七柱も一度に?」
「編隊飛行している天空竜ならいい的です。全軍一斉投擲で何千発か放てば、油断してる七柱程度なら十分殲滅できます」
「油断してれば、纏めて飛んでいれば、ですね。その事態が避けられて良かったです」
どれだけ天空竜が頑丈と言っても兵科で言えば、戦闘ヘリ相当だ。地球の運動エネルギー弾レベルの投槍で濃密な弾幕を張れば、確かに撃墜できるだろう。
ただ、それは初めの一回だけ。手がバレてしまえば、誘導機能のない投槍で墜とすのは困難になるだろう。そして、怒れる天空竜の前では如何なる防御も役に立たず、逃走すら不可能だ。
「今は陛下達が、誘導しておるが、急いだ方が良いやもしれん」
お爺ちゃんもいつになく真剣な表情だ。
「雌竜達が言う事を聞かないとかで?」
「儂らは竜族のように早く飛ぶのは苦手じゃ。そこを揶揄れたりしたら、少しお灸を据えてやるとか言い出すやもしれぬ」
「いや、流石にそんな事でーー」
「我らにも空を飛ぶ者としての誇りがある。互いに尊重する心があるのであれば歓迎するが、嘲るようなら話は別じゃ」
お爺ちゃんは当然の権利って感じで、敢えて我慢するという発想は微塵もないようだ。
「ケイティさん、大丈夫でしょうか」
問いかけてみたけど、ケイティさんも目が座ってる。
「そこはシャーリス陛下を信じましょう。残るような痕は付けぬ、と言われていたので、きっと大丈夫です。……大丈夫でなければ、その時考えましょう」
魔導杖を握り締める手にも力が入ってる。
「ニャー」
トラ吉さんが気を引き締めろって感じに声をかけてきた。
まったく。
こんな遠距離なのに、僕でもわかる魔力反応が上空に七つ!
あれは抑えるのを止めるというより、見せびらかしてる、というか示威行為……とも違うかな。何というか、うーん、飛び方が雑?
「ねぇ、お爺ちゃん。もしかして、あの竜達、飛ぶの下手?」
「雲取様とは比べられんレベルじゃな。若竜基準なら並じゃろうが、あれはあまり飛び慣れておらんな。しかし、アキよ。よく気付いたものじゃ」
「とても綺麗に飛ぶ雲取様を先に見たからね。その後だと、かなり見劣りして見えるよ。風をうまく捕まえられてないのと、編隊飛行を綺麗に維持しようとして、軌道を無理に修正してる感じかな。総括すると、一緒に飛ぶ事に慣れてないってとこだと思う」
そもそも、歩調を合わせて歩くパレードだって訓練をしないと綺麗に揃わないくらいだからね。飛行編隊で美しく、となると付け焼き刃ではどうにもならないんだと思う。
「今のところ、争いにまではなっておらんようじゃが、あまり待たせん方が良いじゃろう」
「ケイティさん、僕が話をしないと収まらないのはわかるとして、何か気をつける事はありますか?」
「雲取様の所縁の品を用いた心話を、リア様が試みています。ですので、我々が到着する頃には、その結果が出ている筈です。その後は逐次、雲取様と裏で連絡を取り合いながら対応としましょう」
「彼女達が好意を寄せている雲取様の助力を願う……確かに必要と思いますけど、タイミングは気を付けないと火に油となりそうですね、例の所縁の品を用いない魔法陣、そちらで彼女達と心話を行なってもいいですか?」
「七柱全てとですか?」
「はい。纏めて話をするより、心話の方が素早く意思疎通が可能なのと、彼女達の間の連携を断つコトができますから。やる以上は各個撃破です」
手をパチンと叩いて見せると、ケイティさんが目を丸くした。ヤケになってる訳じゃないと理解していても、信じられない態度と思えたっぽい。
「……やる気満々なのは喜ばしい事ですが、力に訴える流れだけはお控えください。今後のあらゆる活動に制約を受ける事になりかねません」
「そこは、雲取様を狙いながらも、互いを蹴落とそうとはしない彼女達の高潔さと、相互不干渉を決めた先人達の教育の成果、そして、妖精さん達と力の応酬に至らず済んだ意志の強さを信じます」
「アキよ、随分やる気じゃが、勝算はあるのか? もっとも、何をもって勝利とするかにもよるか」
お爺ちゃんも、悲壮感のカケラもない僕の態度を見て、少し緊張を解いてくれた。そうそう。こちらから争いに天秤を傾けちゃダメだよ。
「まず、彼女達の非礼を自覚して貰い、今後くる竜族には、人が許容できる範囲での礼節を守る事。その態度こそが竜族への評価を高め、互いに心地よく交流して行く事に繋がると理解する事。後はーー」
「アキ様、そこまででなくとも、まず、彼女達と争いを起こさず、穏便に立ち去らせる辺りを目的とするべきではありませんか?」
「それだと最低ラインであり、今後の事を考えると下策です。まぁ、大丈夫ですよ。ここまで有利な状況をお膳立てされて、そんな下手を打つことになったら、ミア姉に笑われてしまいます。ーー大丈夫。彼女達の心が折れない程度に毟り取りますから」
ケイティさんが心配してくれるけど、大丈夫、状況分析できてない訳じゃないですから。
「アキ、悪どい表情をしとるが、そこまで有利なのか?」
僕は御者席にも聞こえるように、少し大きい声で説明することにした。皆が聞きたい内容だろうから。
「幸い、所縁の品を必要としない魔法陣が完成してますから。雲取様も何度も行なっている心話を彼女達は拒めません。そして、心話という方法だと、彼女達が天空竜である事の利点は何一つ役に立ちません。強靭な肉体も、空を飛べる事も、魔力が膨大な事も、魔術を瞬間発動できる事も、そして、頭数が多い事すら活かせません。まして、雲取様とやり取りしてみてわかりましたが、天空竜達は心の扱いで言えば、初心者で、全然経験が足りません。……どうです? カードゲームであちらだけカードを晒してプレイするようなモノです。あとは……どこまでできるのか見極めて、やり過ぎず、上手い落とし所を見つけること。注意すべきはそれだけです。老獪な成竜達の前に、ティーンエイジャーな若竜達がのこのこやってきたんです。このミスは最大限活かしましょう」
僕が一通り考えを伝えると、ケイティさんは深いため息をついて、目元を揉むと、ちょっと引き攣ってはいるけど、笑顔を向けてくれた。
「七柱の天空竜を前にそこまでリラックスして、落ち着いた思考を行える事は、お見事です。一柱毎に話を終えたら、情報交換を行いましょう。心話の間は当事者以外、やり取りがわかりませんので」
「わかりました。雲取様の登場のタイミングも重要ですからね。できるだけ効果的に現れて貰いましょう」
「うむ。儂らも今回は事が鎮まるまでは付き合う。アキ、全力で行け! 儂は其方ならできると信じておる」
「ニャ」
そうして、僕の事を信じて後押ししてくれることがどれだけ、心強い事か。
「お爺ちゃん、トラ吉さん、ありがとうね。それとケイティさん、ジョージさん、ウォルコットさんもありがとう。さっきはああ言ったけど、やっぱり天空竜が七柱、それも雲取様ほど紳士じゃない訳だから、不安も沢山あるよ。でも、皆がこうして支えてくれているから、だから、大丈夫」
いくら平気だ、温和だと知っていても、ライオン達の檻に入っていくのを恐れない人はいない。でも、行かない訳にもいかないし、ある意味、好機でもある。
なら、行くしかない!
僕達が第二演習場に到着したのに合わせて、七柱の天空竜達が編隊を緩やかに解消して、ゆっくりと羽を広げて降りてきた。
雲取様と同じで、金属のような光沢に包まれた鱗に覆われた姿は、生物でありながら、どこか機械的な印象も受ける。
そんな戦闘ヘリのような大きさの竜達が七柱!
丸腰の子供相手に過剰戦力この上なし。
しかも、魔力を少し過剰に放出しながらだから、魔力が混ざり合って何とも混沌としてきた。荒れた風はケイティさんが障壁を展開してくれたおかげで、僕達の周囲だけは収まったけど、これは酷い。
雲取様が草木を揺らすこともなく、そっと降り立ったのとは、正反対だ。迫力があるという人もいるだろうけど、僕には彼女達の飛び方の拙さを荒々しさで誤魔化しただけに見えたから、逆効果だよ。
紅、群青、中黄、若竹、白磁、本紫、そして金。
どの竜も鱗の色が違い、カラフルだね。
所縁の品を使う方の魔法陣にはリア姉が立っていて、僕の方に軽く手を振ってくれた。あの感じなら雲取様との繋ぎはできたってことだろう。いいね。
妖精さん達も全員降りてきて、僕の近くに来てくれた。
「朝から大変じゃのぉ。して、準備は万端かの?」
シャーリスさんが耳元まで来て話しかけてきた。緊張は感じられない。というか、何かする気じゃろう?と悪戯っ子な顔をしてる。
「やるべき事は見えました。後はあちらの出方次第ですね。彼女達は礼儀を弁えてました?」
「目くじらをたてるような事はなかった。若さに力を持て余している感じはしたがの。妾達も何かあれば全力で助けよう。安心してやり合うがいい」
「ありがとう。一柱ずつ、心話で相手をします。その間、残りの竜達が暇そうなら相手をしてあげてください」
「任せておくがよいぞ。妾達との話を終えるのが惜しくなるやもしれんが、その時はその時じゃ」
シャーリスさんが請け負ってくれた。よし。待ってて飽きたりすると、不測の事態が起きかねないからね。
さて。
こちらを囲むように扇状に展開した七柱の若竜達。体格は雲取様より一回り以上小さいけど、魔力を抑えておらず、しかも上から七柱とも、無遠慮にこちらを見下ろしてきてるのだから、圧迫感もハンパない。
<其方がアキか? 私達の事は、雲取様より聞き及んでおろう。此度は雲取様が足繁く通われている相手に挨拶にきたまで。街エルフのアキとリアの二人が雲取様の庇護下にある事は聞いておるから安心するがよい>
中央に降りた紅色の竜が、こちらを見極めてやろうという意思に満ちた思念波を送ってきた。
あぁ、いけないね。思念波に乗って、僅かな緊張感とか、抑えきれない好奇心とか、僕に対する僅かな嫉妬とか、心の内がダダ漏れだ。
その辺りも含めて、しっかり学んでもらおう。
街エルフの作法に従い、胸に手を当てて、相手に敬意を払い、話し始めた。
「皆様のお話は雲取様より色々と聞き及んでおります。突然の来訪故、さしてお構いできませんが、雲取様もされている心話を用いて、精一杯お相手させていただきます。まず、そちらの魔法陣を竜眼を持ってご覧ください。魔力属性が無色透明な僕と、心を触れ合わせるための支援術式になります。それ以外の余計な術式が含まれていない事をご確認頂けましたら、さっそく始めましょう。どなたか、魔法陣にお入りください」
<良かろう>
僕の言葉を受けて、彼女達はマジマジと眺めていたけど、しばらくみて余計なものがない事に納得したのか、そのうちの一柱、最初の紅色の竜が魔法陣へと降り立った。触れた魔力からも、興味津々といった感じだったから、拒まれる事はないと思ったけど、これで何とかスタートラインだ。
彼女がリーダー格って感じかな。纏め役なのか、牽引役なのか、さてさて。
では、天空竜のお嬢様方、全力でお相手しよう。
まずは一柱目からだ!
難産でしたが、七章もなんとか書き終えることができました。物語全体としては、起承転結の承あたりでしょうか。
起(第一章~三章)の部分はアキがこちらにきて生活に馴染んで立ち位置と次元門構築計画を打ち立てるまで。
今回までの承(第四章~七章)では、多くの種族と実際に交流し、次元門構築計画に必要なメンバーの確保にある程度目処が立ちました。
次は転。第八章~十一か、十二章あたりまでで、アキのこちらでの生活、奮闘を描いていくことになるでしょう。……そうすると、結は第十六章あたりでしょうか。あと二年くらいで書き終えられるといいですね。
次回以降の投稿予定は次の通りです。いつもと違い、設定メモ的ページの投稿で間を空けます。あと、勢力として、人類連合(人、森エルフ、ドワーフ等)、共和国(街エルフ)、鬼族連邦(鬼族)、小鬼帝国(小鬼族)、天空竜達(国という形態は採ってない)というように、関係する勢力が増えてきたので、その情報整理ページも設けることにしました。
もちろん、これらのページを読まなくても八章からの連載を読むのに不都合はありませんのでご安心ください。
九月二十五日二十一時五分の投稿予定は「七章の人物紹介」です。
九月二十九日二十一時五分の投稿予定は「七章の施設、道具、魔術」です。
十月二日二十一時五分の投稿予定は「七章の各勢力紹介」です。
十月六日二十一時五分の投稿予定から「八章の1パート」の連載を始めます。