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7-12.マコト文書勉強会(後編)

前話のあらすじ:マコト文書について、人類連合所属国のエージェントさん達も含めて初の勉強会を開くことになりました。元々は鬼族相手にプレゼンしようと準備していたもののパワーアップ版といったところですけど、やはりインパクトがあったようです。

「では、ちょっと、横道に逸れますが、大型外洋帆船、通称、外洋船についてお話ししましょう」


今度は街エルフの外洋船を映した幻影に変更して貰った。縮尺比がわかるように、人と鬼のシルエットを隣に書いてあったりする。


「何せあれだけの大海原を一年近く航行し続ける船です。大時化ともなれば、城壁のような高さの荒波が襲ってくることもあり、そんな時には船は地震の時のように激しく揺られ、叩きつけられて翻弄されることになります。ですから多少壊れても自力で修理できなくては帰ってこれません。自衛戦力もいるし、操船要員もいる、そんな彼らの水や食料も積み、修理用の部品や材料も積まなくてはなりません。だから、船はどうしてもある程度の大きさが必要です。そして、海竜に少し襲われた程度なら沈まない頑丈さもないと話にならないので、外洋船の船体は頑丈な金属でできてます」


デフォルメした絵で、大きな器に、話したものをどんどん入れていくと、山盛りになる感じを表してみた。念の為に用意しておいた説明図が役立った。


海竜とぶつかっても耐える頑丈さ、壊れても自力修理して戻る生存率の高さでは、鬼族から唸り声が聞こえた。彼らの船ではその辺りは別の対策を施しているのかもしれない。あるいは文官の人だと、高官レベルであろうと、あまりこのあたりは詳しくないのかもしれないし、軍事機密ということで情報が開示されていないのかもしれない。


調理場、寝室、工作室に娯楽室、天体観測設備とか、漁のための設備も欲しいし、雨水頼りとはいかないから海水から真水を取り出す魔導具も欲しいところ、あと遠いところで敵を迎撃する大きな武器もないと、なんて話をしてたら、ヨーゲルさんが面白い感想を話した。


「聞いていると、まるで砦や城のようじゃ。それも海の上を望んだところへ移動できて、外からの補給がほとんどなくとも一年は耐える、か。並の城より余程、凝った作りではないか」


さすが、ドワーフ。外洋船の凄さを理解してくれたようだね。


「そうですね。船体全てが軽くて丈夫な鋼鉄とかで作られた外洋船を指して、(くろがね)の城と称することもあるようですから、その理解で概ね間違いではありません。城と違うのは、多くの機能をできるだけ小さく纏め上げて、しかも水に浮くように軽く、しかも丈夫で、多少壊れても沈まない強靭さも兼ね備えなくてはならないところでしょうか。まさに動く芸術、技術の集大成、船全体が魔導具と言っても過言ではないでしょう」


「アキ様、外洋船の話はそれくらいに」


ケイティさんが、懐中時計を示して、先に進むよう割り込んできた。いけない、いけない。外洋船は本筋じゃないんだから、確かに切り上げないと。


ざっと、皆の反応をみてみると、言ってる事は分かる、そんな感じだ。でも、それを可能とする国力があまりに大き過ぎて、それがどれだけ大変な事かは理解が及んでいないように見える。


まぁ、良く聞くファンタジー風世界だと魔剣とかがレアで、一般兵士の装備に魔術付与はされてなかったりするのに対して、こちらは、一般兵士が普通に耐弾障壁の護符を持ち、貫通術式を付与された矢を撃ちだす加速術式付きクロスボウガンや、中和術式を付与された剣を振り回しているというのは中世と現代の差くらいある訳で、十分頑張っているとは思うんだけど。


それでも、現代兵士で考えると、ボディアーマーを装備し、通信機器やGPS、夜間暗視装置なんてハイテク装備で身を固めていて、一人分の装備だけでも米軍の場合、三百万円を超えるけど、それじゃ、一万トンくらいのイージス艦と比較してどうかと言われれば、一隻千五百億円とかで、撃ち出す艦対空ミサイルとかだと一発一億円を超えちゃう。垂直発射装置(VLS)はそんなミサイルを九十発も搭載できて、弾薬庫兼発射機ミサイルセルの一つに一発とは限らず、細身の発展型シースパロー(ESSM)とかだと四発搭載とかできちゃったりもするので、全武装フル装填とかすると、それだけでも結構な額になるのも当然だ。そんな高額な艦艇を配備してる国は十に満たないのだから、どれだけ金食い虫かわかろうというものだ。


「この船を一隻作るだけでも、膨大な国力を必要とするのは容易に想像できる事でしょう。外洋船を建造して運用するには、弧状列島全体を一つの勢力と見做して、語るのが妥当という代物です。そして、外洋船をまともに運用するなら、最低でも三隻は必要です。一隻が出港している間、もう一隻は訓練と次の出港に向けた準備を行い、最後の一隻はドック入りして長期航海で傷んだ船体の修理をするからです」


三隻の役割について、示した略図を出すと、あちこちから溜息が溢れた。賭場に行って大金と思っていた懐の金をチップに変えたら、僅か数枚のチップになり、賭場ではそんなチップが何百枚、何千枚と動く様を見てしまった、そんな感じだろうか。


ここまで聞いて、エージェント組のキャリアウーマン風の女性が手を上げた。


「テイルペーストのナタリーさん、どうぞ」


「つまり、アキ殿の言いたい事は、世界を相手にするのであれば、外洋船三隻を一単位として運用できる国力、体制がないと話にならない、そして、それには弧状列島の統一が不可欠だが、我々はそれを為していない、つまり出遅れているということかしら?」


さすが、頭の回転が早い。いいね。


「お見事です。あと、三隻というのは最低限です。実際に海外に向かわせる時は普通は二隻で船団を組みます。船体が被害を受けて航行不能になった時に、助け合う仲間の船がいれば、持ち直して帰還できる確率が高まるからです。皆さんもイメージしてみてください。どの方向を見ても陸地が見えない、そんな大海原にあって、船体が大きく損傷し、マストが折れ、帆が破れて航行不能になってしまった状況を。そんな時、自分の船しかいなかったら、絶望感は半端ないでしょうけど、もし、隣に仲間の船がいたらどうですか? 心強いですよね」


身振り手振りを加えて、できるだけイメージしやすいように工夫して話すと、皆がそれがどれだけ追い詰められた状況であり、そして仲間の船がいることが助けになるか、しっかりと想像できたようだ。ナタリーさんは頬をひくつかせながらも、笑顔をキープ。偉い、偉い。


「つまり、最低三隻体制ではあるけど、安定した航海を行うのであれば、二隻一組で運用する、つまり合計六隻体制が望ましいということね」


「はい♪ それと、もし、目的地の方面が違う場合、船団を二つ、三つと動かしたくもなるでしょう。そうなれば、船団二つで十二隻体制、三つで十八隻体制ということになります」


僕の追い打ちに、場が静かになってしまった。なにせ海は自由に航行できるのだ。だから、あちこち行きたくなってくるし、色々なところから相手がやってくることも想定しなくちゃいけない。その規模の大きさ、困難さに思い至ったんだろう。


ちょい、不味いかな。話題を変えよう。


「つまり、前提に戻ると、国内はともかく、海外とやり合うのなら、外洋船を一単位として、数的劣勢に陥らないよう運用できる必要があります。皆さん、想像してみてください。こちらに外洋船がなく、相手は五隻、十隻と船団を組んで攻めてくるとします。勝負になると思いますか?」


おっと、今度は鬼族から手が上がった。


「えっと、レイハさんでしたね。どうぞ」


「外洋船が大きいと言っても、上陸部隊は一隻あたり数十人といった所だろう。ならば、我らに地の利もある。撃退は容易と思うがどうだろうか」


ん、いい質問だね。しかも話してるレイハさんはそれでは駄目と理解してる感じだ。いいね、いいね。


「良い問いですね。その通りと思われる方はちょっと挙手してみてください。えっと、大体、三分の一くらいでしょうか。ん、近衛さん、ご意見どうぞ」


妖精の近衛さんが、フワリと皆の前に出た。小さいから確かにそれくらいの工夫は必要かな。


「今の話だが、こうして空を飛ぶ妖精だからこそ、アキ殿の指摘しようとしていることも予想できた。外洋船には外洋船の戦い方があり、わざわざ不得手な上陸戦闘などする必要がない、そう言いたいのではないか?」


おー、パーフェクト!


「はい。お見事です。地形に縛られず自在に空を飛ぶ妖精さんからすれば、想像しやすいお話だったようですね。そう、外洋船の利点は地形を気にせず、海沿いであれば、いくらでも昼夜問わず移動して、好きな所を襲えることにあります。この特徴を活かさない手はありません」


ここまで話すと、全員が陸軍と海軍の在り方の違いを理解してくれたようだ。


「外洋船は好きな場所を好きなタイミングで襲えます。例えば、陸軍側が城塞を築いて、守りを固めたとしましょう。なら、そんな面倒な場所はスルーして、手薄な所を襲えばいいんです。ボクシングと同じですね。手数を増やして、相手の防御を崩して、弱い所を攻めるんです。弱らせる相手は国全体。船団側は我々が耐えられなくなるまで、沿岸地域を襲い続けます。危なくなったら帰ってもいい。どうせ、追撃はないんですから気楽なものです」


たいぶ、イメージできたみたいで、皆の顔色が少し悪い。妖精の皆さんは、妖精界で散々、機動力を活かして荒らしている側だからか、そこまでショックはないようだけど、やられる側の嫌さ加減は理解してくれたようだ。


一応、海戦特有の考え方もフォローしておこう。


「それと、先程、外洋船を最低単位と話した通り、陸の戦と違い、少数の側は地形を利用して広く薄く軍を配置して、包囲殲滅するなんてことが、海戦ではできません。荒波が渦巻く外洋では、小型船など嵐に翻弄される葉っぱのようなもので話になりません。海戦では、戦力は船の数で表すものなのです」


別の図を示して、陸では可能な戦力の分割が、海ではできないこと、そして、数的劣勢が陸戦以上に強く働く様を示した。うん、海戦は貧乏人にはキツイんだよね。というか、理解が進むほど、皆の表情が硬くなってくのは、わかっていても辛いものがあるなぁ……


「さて、今まで話した内容は、ある意味、前提知識です。世界の広さ、やり合う時の手駒の単位、それに必要な国力。手駒を持たない側の勝機のなさ。これらに、外洋船の船体が全金属製という事が拍車をかけること、それこそが皆さんにお伝えしたい事です。これが木製なら、まだ良かったんですけど」


そこで、幾人かは気がついたようだけど、ここで敢えて意見交換の場を設けることにした。


「何人かは気がつかれたようですけど、ちょっと意見交換の場を設けましょう。気がついた人は、多くの意見が出るよう、ちょっと議論を誘導してみてください。では、時間は十五分取りましょう。始めてください」


海戦という、経験のない戦争の在り方について、それでもこれまでの説明からイメージは掴めてきたようで、漏れ聞こえる話からすると、かなり建設的な話し合いになってるようだ。よし、よし。やっぱり勉強会はこうでないとね。





アイリーンさんが配った飲み物と、甘いお菓子の支援もあり、皆の集中力も回復して、話も随分盛り上がった。いいね。


話し合いがある程度集束したところで、打ち切って、発言を求めてみると、森エルフのイズレンディアさんが手を挙げた。


「森の広さには限りがあり、木が育つのにも何十年と時間がかかる。つまり、船の建造に回せる木材には上限があり、国同士が外洋船で戦う際に、船の建造ペースという縛りが付くと言いたいのだろう。そしてその縛りは木造船だからこそ」


「そして、金属船の場合、鉱山で掘ればいい。精錬に必要な石炭や石油も掘ればいい。国力の続く限り、資源を掘り尽くすその時まで、好きなだけ外洋船を建造できる。そういう事か。もっともあれだけ大きな金属船を建造できるというだけでも、技術的なハードルはかなり高いとは思うが」


僕が言いたい事を、隣のヨーゲルさんが補足してくれた。さすがドワーフ。


「もう殆ど言って貰えましたね。金属船の建造には、良質の鋼材を安定して大量に作る技術力、組織力、まぁ、国力がないといけないので、その時点で、参加できる国の数は限られるでしょう。ただ、そのハードルを超えてしまえば、量的拡大は容易です。あと、僕から付け足すとしたら、世界は先ほど見たように、とても広く、手付かずの地域も多いようです。つまり、新たな鉱山なり、炭鉱なり、油田なりを探しさえすれば、いくらでも戦い続けられます。それこそ百年、二百年といった単位で」


皆さん、たいぶ未来のイメージができたようだ。顔色が悪い人が多いけど、それだけリアルな話と捉えてくれたからだろう。


おや、エリーが発言したいようだ。


「今の話、アキはマコト文書、つまり、あちらの話を元に語ってるのよね?」


「うん。そうだね」


「それで、あちらはその争いをどこまでやったの?」


あぁ、やっぱりそこは気になるよね。そして、表情からして、顛末の想像はできてるようだ。


地球あちらには竜族という止め役もいないから、もう戦えないと相手が全面降伏するまで、互いの船団を潰しあい、国土を灰燼と化してまで、とことんやりあったよ。世界の海全てを盤面に、あらゆる地域の鉱山、炭鉱、油田を開発し、奪い合い、どの海域にも外洋船の残骸が沈むほどに、ね」


「世界中で?」


「国内の戦いでもそうですけど、誰かが断トツ一位の超大国になると困るから、バランスを取ろうと周辺国が動くでしょう? それを外洋船を運用できる大国同士が世界規模で行うんですよ。だから、国同士の戦いというより、複数の国が組んだ陣営同士が、世界中で衝突し合う状況に陥るんです」


「国土が灰燼と化すまでと言っていたが、そこまでやってしまうものなのか!?」


「船団が壊滅したとしても、国土が無傷。なら、なんとか挽回しようと足掻きますからね。そして、相手もそれがわかっているから、敵が降伏するまで、造船設備を壊し、港湾設備を使用不能にし、生産設備を焼いて回り、人々の生活基盤自体を潰していったんです」


「そこまでしないと戦争を止めないのか……」


「いえ。外洋船の攻撃範囲は沿岸に限定されるので、内地に引っ込んで反撃の準備をするなんて感じに、相手が大国だと、海沿いが壊滅しても戦争は終わりません。特に大陸国だとそんな傾向がありました」


弧状列島内でやり合ってるような規模の小さな戦いではなく、大国同士の戦いとなれば、その様相は一変する。それが伝わったようで、場が静まり返ってしまった。……まぁ、そうなるよね。


「何せ、安全に通れる、或いはより楽に早く通れる海路は限られるので。どうしても取り合いになり、争いが起こり、ぶつかり合っちゃう。弧状列島の中でも争ってるのに、海の彼方の国と仲良くできるか、と言えば、なかなか難しいところでしょう」


おや、エージェントの別の男の人が手を上げた。なんだろ?


「アキ殿、辛そうな表情をされているが、どこか具合でも悪いのか?」


あ……そっちか。


深呼吸してから、気持ちを切り替えて、説明を始めた。


「皆さん、想像されたように、マコト文書の公開されている範囲はかなり限定されていて、非公開部分には今、話しているような軍事は勿論、経済、文化、技術、そして歴史の内容が含まれてます。何せ、地球あちらの世界の全ての土地をどこかしらの国が保有していて、百億の民が五千年も生きてきたんです。良いところもたくさんあるんです。でも、今話した触り部分だけでも、皆さんの印象が悪くなっちゃったでしょう? 危機意識を持って貰う為で仕方ない事だけど、やっぱり好きな世界の印象が悪くなるのは……ちょっと胸が痛くなります」


僕の言いたい事を理解してくれたようで、なんと声をかけていいか迷ってるようだ。


「アキ、それなら、遠い国同士が繋がる、その良さを話しなさいよ。結構な時間話してるし、締めは、楽しい話題がいいわ」


エリーがフォローしてくれた。


うん。そうだね。


……良し。ならどこの話をしようか。んー、やっぱり高温多湿な弧状列島とは違う気候の国がいいかな。


「世界は広く、こことはまったく違う国が多くあります。例えば、見渡す限り砂の海が広がり、人々は河の畔に街を作って生活してる、そんな国があります。彼らにとって砂の海は物を運ぶ道であり、過酷な土地だからこそ、そこを行き来する彼らは重宝され、彼らだけが運ぶ商品は高値で売れます。昼は強過ぎる陽光が肌を焼き、水気の全くない乾ききった灼熱が支配し、夜は水も凍るほどの寒さに包まれる、そんな地域です。でも、夜には透き通って雲一つない空を満点の星が埋め尽くし、風の音だけが響く、そんな場所だからこそ、独特の音楽が生まれ、服装が洗練され、貴重な水や燃料をとことん活かす、そういった技術も研ぎ澄まされます。また、砂の海と言っても、岩の多い地域もあったり、多少は緑があったりと、動植物も実は結構多様なんですよね。だから、家にしても、料理にしても、話す言葉自体が、独特のものになって――えっと、皆さん、どうしました?」


なんか、こう、こちらに向けられた視線が温かいというか、微笑ましいものを見た、とでもいったような感じだけど。


「世界はとても広くて、自然も多種多様で、そこに暮らす人々の生き方も何百とあり、そして、彼らにも積み重ねてきた歴史がある。いい話ね」


「そう、そうなんだよね! 今のは砂漠の国の話だけど、極地方に近い寒い地域では――」


「はいはい、アキが話していると終わらないから、今回はここまでとしましょう。さっき聞いた話だけでも、自分の中で理解する時間が欲しいわ。それに、世界と繋がる事は悪い事ばかりじゃない。それで十分よ」


エリーがそう言って、皆に同意を求めた。それに対して、誰も反対はせず、終わることになった。まぁ、結構濃い時間ではあったし、確かにキリもいいところだろう。


「皆さん、得るものがあったようで幸いでした。是非、仲間内でも、今日参加した人達同士でも、色々と考えをぶつけ合ってみてください。きっと話も弾む事でしょう。では、本日の勉強会はこれで終了とします。お疲れ様でした」


僕が挨拶し、一礼すると、皆さんが立ち上がって拍手をしてくれた。誰もが疲れた顔をしているけど、目の輝きは怖いくらいだ。


「そうそう、皆さんにお土産を用意しました。途中の説明でお見せした海域図、それを世界儀に記したものになります。世界の広さを、まだ手が届かない未探査地域の広さを、そして、広いと言っても限りのある世界であることのイメージを助けてくれることでしょう」


アイリーンさん達が、机の上に参加人数分だけ、地球という呼称はないので、世界儀だけど、それをズラリと並べて、皆に持ち帰るよう促した。記された情報の重みに相応しく、職人さんが丁寧に作り上げたそれは、高級感溢れる外観に仕上がっていて、執務室に飾ったりしても鑑賞に堪える出来だったりする。


「アキ! これ、頼んだら、もっと貰える?」


お、エリーが思いのほか食いついてきた。そんなに気に入ったのかな?


「えっと、ケイティさん、どうでしょう?」


「受注生産になりますが、皆様からご要望頂いた数だけお譲りします。本日分はお土産という事で、無料ですが、注文生産分が有料となる点はご了承ください」


ケイティさんが、受注から出荷までの期間や価格の書かれたパンフレットも世界儀と合わせて渡していく。


皆はそれを魔導具のように大切に受け取ると、興奮気味に会場を後にした。


良かった。勉強会は大成功だ。

誤字・脱字の指摘ありがとうございました。自分では気付かないので助かります。

地球儀を初めてみた信長公とかは、世界の広さを感じて何を思ったんでしょうか。今回の勉強会では、皆さん、そんな世界の広さと、そして世界を相手にする場合の1枚のチップの重さを認識することになりました。勉強会自体は大成功といったところですが、この影響が予想以上に広がっていくことになります。やはり単に話を聞いただけより、一目でわかる世界儀があれば、理解も一気に進むというものです。

次回の投稿は、八月二十一日(水)二十一時五分です。

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