7-10.足繁く通う雲取様
前話のあらすじ:雲取様と色々とお話をしました。モテる雄竜もなかなか大変なようです。
翌朝、身支度をしてキッチンに行くと、リア姉がいた。配膳される感じからして、僕に合わせて軽く食べようって感じみたいだね。ちなみに今朝の食事は、たっぷり野菜とキノコ、それに鮭が入ったスープパスタだ。散らして入れているイクラがオシャレさんだ。
蓮根や牛蒡といった根菜類もスープと一緒なら苦にならないし、旬の鮭がまた美味しい。キノコの歯応えも良いし、スープの絡んだパスタもあっさり頂けて嬉しい。
「小腹が空いていたから、ちょうど良かった。アイリーン、また腕を上げたね」
「お褒めにあずかり光栄デス」
リア姉も満足したようだ。美味しい朝食を戴いた後は、スッキリとした緑茶を飲んで、ちょっとまったり。それから少ししてリア姉が話を切り出した。
「まずはコイツを見て欲しい」
リア姉が出したのは、ケイティさんが書いてる僕の予定表だ。主立ったイベントだけ書いてくれててわかりやすい。
わかりやすいんだけど。
「リア姉、なんか、週二回ペースでずっと雲取様の来訪予定が入ってるんだけど」
それも延々と。
「お互い良く知る為には、定期的に会った方がいいのと、ミア姉の救出も急いだ方がいいから、その意味でも、アキや私たちの事を見極める作業を前倒しにしよう、と雲取様が提案してくれたんだ」
「それはとても嬉しいです。そこまで、魔導具の申し出が嬉しかったのかな……というよりは、家族を助けたいという話に、雲取様が気を使ってくれたんでしょうね」
「それだけでは無いけど、確かにアキの言う事が第一との事だ。配慮に心から感謝する旨を伝えておいたよ」
でも、父さんも母さんも、それにお爺ちゃんもいないって事は、それ以外も多そう。
「アキの推測した通り、父さんと母さんは、一回だけでも大変だったのに、週二回なんて来訪されたら、人々の生活が滞ると慌てているロングヒルの上層部や、人と竜が仲良く交流するなどと言う前代未聞な話に騒然としている街エルフの長老達の対応中さ。翁は、気が高ぶってるトラ吉と朝から、かなり本気の追いかけっこをしてる」
「まぁ、ロングヒルの方々は慌てるし、今後も毎回、城塞都市の全員押し込めるのは無茶でしょうし、揉めそうですよね。それで、街エルフの長老さん達の方、前代未聞って話ですけど、街エルフの長い歴史やそうでなくても人類連合の広い範囲からすれば、話も通じる相手なのだから、そこそこ交流した話なんてありそうじゃない?」
僕の反応にリア姉は苦笑いを浮かべた。
「天空竜の申し出だから断れないけど、人族にはだいぶストレスになるから、そこは覚えておくようにね。それで、交流した者の話だったっけ。まず、アキも対峙してみてわかったと思うけど、天空竜は居るだけで圧力が半端ない。アキはノンビリと何時間も話してたけど、護衛に参加していた面々ですら、事実と納得しきれてなかったくらいだ。魔導具の助けを借りても、よほど豪の者でも五分も持てばいい方なんだよ」
ロングヒルの方々が対応に苦慮してる事はわかるけど、そこは僕が悩んでも仕方がない部分だからね。でも、あまり割り切りし過ぎると、心象が悪くなるだろうから要注意と。なにもできなくても、せめてなにが起きているかくらいは把握するよう努めよう。
「それじゃ、昨日の会談は父さんと母さんは早々にリタイア?」
僕と同じように魔力が異様に高いリア姉は平気だと思うんだけど。
「妖精族の賢者に防御術式を何枚も展開して貰って、最後まで会談をやったのさ。それでも終わった時には疲労困憊、別邸に帰ったなり、倒れるように寝てしまうほどだったんだよ」
「うわー。そんな感じじゃ、ハードル高いね」
「そんなだから、交流に積極的な竜がいても、人と接する機会も多くは設けることができず、これまでの歴史で、天空竜と親密な交流を行える種族も、個人も存在しなかったんだ。だから前代未聞。まして、竜に心話を試みるような者も殆どいなかった」
「あれ? ミア姉は、接触が難しい高位存在相手にばんばん接触してたんだよね?」
「ミア姉が例外中の例外で、そんなミア姉でも竜との交流は短時間に留めていたようだ。だから、何時間も世間話レベルまで話すような真似をしたのはアキが始めてなのさ」
「じゃ、リア姉は二番目だね」
「まぁ、そうなるかな。でも私はアキと違って心話は得意じゃなくてね。雲取様の思念波を分析してみたけど、よくわからなかった。あぁ、そう言えば、アキにあんまり見通されたんで、少し心を隠すようにしてみた、とか雲取様が言ってたから、そのせいもあるか」
そんなにショックだったのか。なら注意しないといけないね。僕は無遠慮に心に踏み込むような無粋な真似はしない、と伝えておかないと。
「次回以降は城塞都市から離れた別の演習場に場所を移す事になると思う。あと、周辺地域は会合の日は立ち入らないようにする代わりに、生活費の補填をしたり、農作業の方は人手を派遣してあげる事になるんじゃないかな」
「強制的に休日を増やされるんだから、農家の人もそれくらい無いとキツイだろうね」
「まぁ、そちらは詳しく知りたければ、後でケイティから聞けばいい。それで、雲取様が来るのは、アキの魔術習得に助力できるかもしれない、というのもあるんだ」
「魔力感知できないと伝えたからかな?」
「まずはそれ。後は、私達を同時に見て、魔力の減る様を観察すれば、何か分かるかもしれないと話されていた」
「竜眼、便利だね」
「本人すら知らない奥底まで見通されるのは、あまり良い気分ではないけど、手詰まりだったから好意はとてもありがたかったのも確かさ」
「お医者様に診察して貰うようなものなんだから、気にしても仕方ないと思うけど。でも、確かにそれなら、何か新しい発見とかありそうで期待できそう」
何せ、真横で見ても、かなり本物っぽいシャーリスさんの鷹の幻影も、離れた距離から幻影と見破っていたからね。人の目にはわからずとも、竜眼なら何かわかるかも。
「そこまで竜を信用できるのは、なんとも羨ましいかな。私はどうしても恐怖が先に湧き出てしまう。こればかりは如何ともし難い気がするよ」
「慣れだと思うけど。それで、トラ吉さんの方はどうかしたの?」
「さてね。まぁ、やる気を見せているんだ。根掘り葉掘り聞かないで、温かく見守ってあげるのが良い女さ」
「んー……なら、詳しくは聞かない事にするね。それにしても、週二回かぁ」
「おや。アキなら沢山お話できて嬉しいとか言うと思ったのに意外だね」
「あ、雲取様とお話できる事も、魔術の方を、見て貰えて進展がありそうなのも、とっても嬉しいよ? ただ、ほら、セイケンともね、これから宜しくって言い合ったばかりなのに、お話しできてないな、と思って」
「鬼族が嫉妬するって?」
リア姉が、ニヤ~っと揶揄うような目線を向けてきた。もう、僕はそんな小説の愛され系ヒロインとかじゃないんだから、そこまで自意識過剰じゃないよ。リア姉もわかって、言ってる訳だけど。
「嫉妬はともかく、失望されないか気になるね。やっぱりせめて週一ペースで何か接点を持たないとバランスが悪いと思う」
「その辺りはエリーが足繁く通っているから、それ程でもないとは思うけど、アキがそうしたいなら、そうなるよう調整しようか。でも、参加種族が増える度に対応時間を増やしたら、アキの時間がなくなってしまうから、そこは工夫しよう」
「うん、そうだね。人類連合の出向組の皆さんと一回は勉強会を開くとしても、今後は計画参加メンバーに絞る形にしていきたいと思ってるよ」
「まぁ、その辺りはおいおい調整していこう。他に気になる事はあるかい?」
「今回は事前に連絡があったのと、雲取様が望んだから、妖精さん達も立ち会ったけど、今後、回数を増やすとなると、護衛役に毎回参加して貰うのは厳しいよね。その辺り、シャーリスさんは何か言ってた?」
「雲取様については、翁に任せると言ってたね。今後来るであろう他の天空竜達については、不味そうなら喚べば、緊急対応してくれるってさ」
「それは良かった。いくらこちらが頑張っても、天空竜相手じゃ厳しいからね。ただ、だいぶ尽力して貰っちゃうから、何か穴埋めしないと」
雲取様みたいに穏やかで、人族との交流にも慣れてる天空竜のほうがレアだろうからね。まぁ、粗暴で共存に合意しなかった天空竜達は、共存を選択した天空竜達によって絶滅させられているから、今いる天空竜達は、ある程度は話ができる筈だけど。それでも、少し力加減を間違われたら、人族なんて一瞬で挽肉に早変わりなんだから、最大限の警戒は外せない。
「美味いもので毎回穴埋めと言っても、そうそう続かないだろうから、そこは何か用意したいところだね。妖精の賢者、アキの師匠、それに街エルフの魔導師達で、新しい召喚方法を用意しているから、それで今回は勘弁して貰うことにしよう」
最近、師匠たちが何をやってるか話が聞こえてこないと思ったら、そんなことをしてたのか。
「新型の召喚?」
「通常の召喚と、心の隙間に魔術を貸与する技術、それに隙間の魔術を解凍、展開して、記録する魔導具を組み合わせて、世界間のデータ転送をやろうとしているんだ」
「それって、妖精界の本体と、こちらの召喚体を通信端末扱いして、心の隙間は通信パケット、召喚の繋がりを通信回線と見做す感じ?」
「話が早い。そう。あちらの通信網の概念を拝借して、こちら流にアレンジしてみたんだ。妖精の心の負担をどれだけ抑えて、通信速度を上げられるかが鍵だね」
「妖精さんが意識する事なく、無意識層で隙間の出し入れを行うのなら、負担は抑えられるかもしれないけど、そもそも隙間に魔術を入れる事自体がストレスにならない?」
「大きい程負担になるそうだから、負担にならない程度の術式サイズを調べて、後は妖精界側との同期率の変動幅や間隔も最適値を調べないと。やる事は多いけど、成功すれば、妖精の国と我々の交流ペースは何桁も速度向上できるだろう」
誰かに暗記して貰って伝言リレーするのと、文字や画像をそのまま直接送りつけられるのなら、情報量は比較にならないほど増やせるし、情報の誤りも起きにくくなると思う。
「それはいいね。頭数でも集中し続ける根気でもこちらが優位だから、護衛の謝礼としては十分だと思う。良かった。それで、栄えある妖精通信網の実験台にされるのは誰?」
「まだこちらに来たことがない順番待ちをしている若手の妖精を考えているそうだよ。流石にいつものメンバーだと、何かあった時に国政への影響があり過ぎるそうだ」
治験バイトみたいな扱いなんだろうけど、副作用を考慮しても、やりたいと言う妖精さんがボランティア精神に溢れているのか、こちらの世界への興味が積み上がり過ぎてリスクとリターンの判断が甘くなってるのか、それとも賢者さんへの信頼が半端ないのか。どれもありそうだけど、やっぱり妖精さんだし、興味を抑えられない、が一番だろう。
「まぁ、そこは安全策を選ぶよね。でも、今は妖精さんの召喚経路の一部を間借りするとしても、いずれは魔導具で完全代替したいね。長期の運用で、どんな影響がでるとも限らないから」
「まずは妖精界に対して、次元門を構築できれば、その辺りは解消するだろう。あちらと違って、妖精界は魔力は豊富だから、回廊の展開も難度は低い筈さ」
「うん。それで、今までの話からしたら、僕は人類連合の皆さんとの勉強会に向けて準備でいい感じ?」
「それでいい。しかし、勉強会に鬼族も参加するのかい?」
どうもリア姉は、鬼族も参加するということに心理的なハードルがあるっぽい。
「同じ手間を何度もかけたくありませんし、どうせ、交流するんですから、先送りにするより、今いるメンバーだけでも接点を増やした方がいいと思うんですよね」
「言いたい事はわかるけど」
「それに、天空竜との対峙では心身がキツイから無理でも、鬼族なら、ちょっと耐性を引き上げるなり、護符を持つなりすれば、対応できる範囲でしょう?」
「そうだね。それに勉強会に参加するメンバーなら、そのどちらの対応も可能だ」
リア姉は、呆れた表情を隠そうともせず、そりゃそうだけどって感じで同意してくれた。アキの「ちょっと」はハードル高いなぁ、などと突っ込んでくるオマケ付き。そりゃ、ケイティさんみたいな魔導師と同じくらいにとは行かないだろうし、エリーに貸与してるような僕が触れても壊れにくい護符なんてのは、レアかもしれないけど、少しグレードを落とせばどっちも可能なんじゃないかなー、と思うんだよね。
まぁ、そのあたりは別の機会にケイティさんに聞いてみよう。
「えっと、それなら、後は、なかなか踏ん切りがつかないだけですよね。だったら、僕が何でもないことのように接すれば、人類連合の皆さんも奮起するでしょう?」
「自分のか弱い外見を敢えて武器とする、か。逞しいね。姉としては複雑な気分だけどさ」
「この見た目で、男の子っぽく振る舞っても微妙だし、ミア姉みたいに隙のない綺麗さも無理だし、アキとしての振る舞いにしないと、ね。ミア姉やリア姉の妹として、恥ずかしくない立ち回りはしようと思ってるよ」
男に媚び売ったりするのは心理的にキツイけど、微笑むくらいなら安いもんだ。それに強過ぎる魔力のおかげで、僕に不用意に触れてくる輩もいないから、それも気が楽でいい。……まぁ、別れの時、父さんにぎゅっと抱き締められた時も嫌悪感とかはなかったし、相手との信頼関係とか、好意とかにもよるんだろうね。
「……アキが女の狡さまで身につけない事を祈るとしようか。戻った時に困るだろうから」
「それを言ったら、戻ったら、暫くオネエっぽい振る舞いになって、色々と恥ずかしい事になりそうとは思ってるよ。でも、まぁ、その頃なら、それも笑い話にできるからね。今は、だから、気にしないよ」
ミア姉がいない今に比べれば、その程度のことは、全然大した話じゃない。
「……そうだね。今はまず目の前の事から片付けよう」
リア姉も、この話題はそれ以上触れるのを避けてくれた。まだ、全然道筋が見えないからね……。
◇
「そう言えば、今度の勉強会に参加するメンバーの情報には目を通したかい?」
「勿論。結構若い方が多くて、ちょっと意外だったかな。伸び代がありそうな方々だから、次世代を担う意味でも、今後が楽しみだね」
顔写真付きの調査結果書類をケイティさんが用意してくれたから読んでみたけど、いやー、逸材しかいないって感じで、いるところにはいるんだなぁ、とちょっと遠い目になっちゃったよ。文武両道、容姿に優れ、社交能力にも長けている二十代くらいの男女。まぁ、国の代表としての役割も担っているから、盆暗でも困るけど。
「自分より幼い見た目のアキに、若くて伸び代がありそうと言われても、苦笑いするしかないだろうね。彼らの困る顔が眼に浮かぶよ」
「そう言われて反発しちゃうようなお年頃だったり?」
「それはないさ。そんな初心な奴に、国元から離れて、国元の耳目となり、手足となり、怪しい匂いを嗅ぎ分ける役割は務まらない。だから、柔らかい頭と、貪欲さ、それに外面を取り繕う器用さは身に着けてる事だろう」
ケイティさんほどじゃないにせよ、外交官としての能力も身に着けているってことだね。
「さて、自分を見せてくるか、隠してくるか。まぁ、どっちでも良いんだけど、面倒臭いのはパスかなぁ」
彼らや、その背後にいる国にそれだけの価値があるならまだしも、単に人類連合に所属している国、その国からの命を受けて動くエージェントってだけじゃ、あんまり魅力的って訳でもないし。そこで出し惜しみされても、扱いに困る。
「手厳しいね。それでも、アキの立ち位置なら、確かにどうでもいい輩と無理して付き合う必要も無いから、そこは敢えて正直に、アキの欲する人材を話した方が彼らも動きやすいだろうね」
「できれば、優秀で伸び代があって、計画に参加するような尖った人材への伝手がある方がいいんだけど」
「彼らがその人材である可能性は考えないのかい?」
「そこまで多芸で自制も効くような超人はそうそういないかな、と。それに、そんな逸材がロングヒルにいるなら、具体的に引き入れるなり、話をしてみるなり、動きがあったとも思うし。あ、でも、確かにマコト文書に触れて、未来の可能性を覗き見たら、化けるかもしれないね。その辺りは鬼族の皆さんの方が面白い反応が出るかも」
幕末の志士だって、海外情報に触れることで、国を閉ざしたままでは座して死を待つのみ、と思い至った訳だから。
「何とも意地の悪そうな笑顔をしてるね。まぁ、彼らからすれば、驚愕の事実が目白押しだ。衝撃を受けるのは間違いない。そこからどう化けるかはわからないけど」
「自滅思考に陥るとも思えないし、多少、衝撃を受けても、セイケンが上手くフォローしてくれるだろうから、そこは心配してないけど。それよりは、色々と考えた彼らと、国元の温度差で何が起きるか、ちょっと心配かな。僕が心配しても仕方ないところだけどね」
「きっと、上から下まで巻き込んで酷い混乱が起こるよ。特に武闘派の勢力が動かない訳がない。あまり酷ければ、本国に避難する事もあると思っておいて」
「鬼族同士の内戦なんて勿体ない事はして欲しくないんだけど。まぁ、そうなりそうで、何かいいアイデアが浮かべば介入するって事で、まだ暫く先だから、そこは保留と」
そりゃそうだ、とリア姉も同意してくれた。
「勉強会には、確か妖精族の宰相が、参加する予定だから、そのつもりでね」
「珍しいですね。シャーリスさんは?」
宰相さんは政治とか国全体に絡むような話でないと興味を持たないから、賢者さんとか、彫刻家さんと違って、こちらにくる頻度は低めなんだよね。
「本業が滞っているから、暫くはこちらには来れないってさ」
「よく来てるもんね」
「それでも宰相が参加するんだ。関心は高いと見ていいだろう。少し配慮してあげるといいと思うよ」
こちらの情報もある程度押さえたから、初心者向け勉強会ということで、参加してみる気になったってとこかな。
「そうだね。リア姉、この後、時間ある?」
「可愛い妹のためなら、お姉ちゃんはいつでも時間を空けているさ。それで、なんだい?」
ここぞとばかりの姉アピール。リア姉もやっとミア姉の妹、という立場から、僕の姉になって喜んでいるんだよね。もちろん、そう言って貰えてとっても嬉しい。
「今回は入門編って事で、簡単な切り口から、世界の広さを感じて貰おうと思ってるんだよね。ケイティさん、資料を持ってきて貰えます? リア姉には、よりシンプルでインパクトのある切り口がないか一緒に考えて欲しいんだ」
「さらにインパクトを、ね。それはなんとも重責だ。ちょっと頑張ってみようか――」
ケイティさんに資料を用意して貰って、リビングを占領しての検討会にそのまま雪崩れ込んだ。
何せ、僕と同じくらいマコト文書に詳しくて、こちらの常識も兼ね備えてる貴重な人材だ。せっかくこちらにきてくれたんだから、がっつり付き合って貰おう。
それに久しぶりの再会だからね。こうして姉妹で力を合わせて何かをするというのも、良い経験だと思うんだ。
雲取様との会合の影響はこうしてどんどん広がっていくことになりました。アキの十年間のミア姉との夢を通じた心話の日々も、ちゃんと役立ったようです。まぁ、雲取様にとっては色々とショックな出来事だったようですが、そのあたりも、アキとの交流を続けようと判断した理由の一つかもしれませんね。
次回の投稿は、八月十四日(水)二十一時五分です。