6-10.街エルフの公開演技(エキシビジョン)
前話までのあらすじ:お昼休み(後半)ということで、妖精族メンバーと意見交換を行いました。妖精達は自分達の判断で、鬼族とすぐ交流できる状態にしたい、と言い出したおかげで、総武演後、状況は更に大きく変化していくことになりそうです。
午後の公開演技、最初の演者は街エルフ、つまり母さんだ。敵役は勿論、小鬼人形達。
あちこちに茂みや樹々を配置して、森林地帯を再現した演習場の中央に、母さんと魔導人形達が陣取り、その周囲を小鬼人形達が囲んでいるという、予め聞いていた酷いシチュエーションだ。
母さんを少し離れた四方の位置で守るのは、長身な魔導人形だ。マントを付けていたり、兜に飾りがついていたりして騎士っぽい。
その間を埋めるように後方で詰めている四人は、僕の身辺警護でも活躍してくれている小柄な護衛人形達だ。他に狼タイプも四匹、空を飛ぶ鷹タイプも四羽が上空待機していて中々の大所帯だね。
魔導人形達はお揃いの青い色彩の軍衣を着ていて、とっても凛々しい。
鷹タイプと狼タイプも首に同じ色彩のスカーフを巻いていてお洒落さんだ。
しかし、それを囲み、亡き者にしようと襲い掛かる小鬼人形達の数は六十人。
樹々の上から弓を持ち機会を伺う射手も居るけど、十人一組で四方から襲撃しようとする感じだ。残りは補充要員や指揮官と。
で、魔導人形達は片手に片刃の剣、片手に盾を取り出して装備した。配置は僕を護衛する場合より広めの展開だ。四方を騎士人形が睨み、その間を内側の護衛人形が埋める陣形だね。
護衛人形達と母さんの間は、更に護衛が立てるくらい余裕がある。空き過ぎとまでは言わないけど、小鬼人形達の侵入を絶対通さないというような鉄壁の守りという感じじゃない。母さんは手に空間鞄を持っているし、今の陣形は通常形態といったところなんだろう。
幸い、市民席のほうでも、魔導人形達を見て騒ぎが起きるようなことにはなっていない。華やかな装いにしたおかげだろうか。良かった。
『では、午後の公開演技の一番手は街エルフのアヤさんです。状況は、何よりも迅速に移動する為、単身で移動していたアヤさん、しかしその動きは小鬼達に察知されており、街エルフの人形遣いを倒す絶好のチャンスと判断、急遽、特殊部隊六十名を派遣し、彼女を亡き者にしようと待ち構えていた、というものです。アヤさんの勝利条件は……敵戦力の殲滅です。これは本人の希望で、敵に追いかけられながら移動を続けるのは面倒なので殲滅してから進むと。なんとも剛毅なお言葉ですね』
アナウンスの人の声も少し呆れた感じに聞こえる。鷹の魔導人形達は攻撃に参加しないとして、狼タイプは体格からして戦力換算できるとした場合、街エルフ側の戦力は騎士人形四体、護衛人形四体、狼人形四体の合計十二。小鬼人形達は六十だから、戦力比は一対五。小鬼人形達は小柄だから同じ技量なら弱いとしても、街エルフ側はかなり不利に見える。
『演習開始時の配置はご覧の通り、中央にいるアヤさんと魔導人形達を、四方から小鬼人形達の部隊が取り囲み、射手も配置して襲撃体制を整えたところです。……では、襲撃開始!』
アナウンスの掛け声と共に、小鬼人形達が一斉に突撃を始めた。木々の上からも、小鬼人形の射手達が、母さん目掛けて矢を放ち始める。
狼人形達は素早く走り回りながら、小鬼人形達の包囲の薄い部分をすり抜けて裏側に回り込んでいく。
まるで上から俯瞰して一番脆いルートを逐一指示されているかのように、その動きは的確で、狼人形達はさほど苦労することなく包囲網を突破していった。
勿論、後詰めとして控えていた小鬼人形達が後背を好き勝手に荒らされないよう、狼人形達の動きを牽制し、仕留めようと動き出す。けれど狼人形達は疲れを知らないように全速力で走り続けて、小鬼人形達を翻弄し続けていた。
小鬼人形達の放った矢は、盾や、剣の背で払われて簡単に止められてしまい効果なし。
……なんだろ、この感じ。騎士人形や護衛人形達を見ていると、鬼人形と同じで、まるで不安が感じられない。
そして小鬼人形達の襲撃に対して、騎士人形達は薙ぎ払う様な線の攻撃で、一度に何人もの相手に攻撃を叩き込んでいく。しかもその剣が尋常でなく速い! 一度に三人、四人と襲い掛かる小鬼人形相手に、盾を併用することで手数で上回り、更に剣の間合いの長さを生かして、小鬼達の接近を許さない。恐ろしい技の冴えだ。
それでも四方を四人で牽制しつつ戦っていれば、騎士人形達の間をすり抜けてくる小鬼人形も出てくる。
でも、不安はない。内側に控えた護衛人形達が休みを知らない剣捌きを、小鬼人形並みの小回りの良さで振るうことで、小鬼人形達はそれ以上の侵入もできず、騎士人形を襲うこともできず足を止めてしまった。
騎士人形や護衛人形達も、敵を倒すのではなく、小鬼人形達を通さない、壁となり侵攻を阻む事を最優先に動いているようで、数的劣勢ではあるけど、使命を果たすことには成功していた。
乱戦の中、小鬼人形達の射撃も行われてはいるんだけど、近接戦闘をしながらも、飛んでくる矢を剣の背や盾で全てが防いでいた。魔導人形さん達の技量は高いとは聞いていたけど、そこ迄とは思ってなかった。
……やっぱりなんか変だ。
小鬼人形達の動きは悪くない。同時に攻撃してみたり、方向を変えて隙を突こうとしてみたりと、人数の多さを生かして、全方位から休みなく攻め立てている。
なのにまるで護りが崩れない。騎士人形達の隙があっても、そこを突く前に護衛人形がカバーに入っていて、攻めるつもりが逆にカウンターを食らっている始末だ。
それにあれだけ激しく動きながら、騎士人形も護衛人形も全く互いの動きを阻害しない。
まるで上空から戦場を俯瞰して、駒を動かしているかのような……って、だから鷹人形達がいるのか!
見れば、鷹人形達は二羽が母さん達の上空を旋回し、一羽は狼人形達の上に、そして最後の一羽は戦場全体を大きく俯瞰する様に高所を飛んでいた。
「上だ! 鳥を落とせ!」
後方から指揮している小鬼人形達がそんな声を上げて、後手に回りながらも小鬼人形の射手が空に向けて矢を放ち始めた。
けれど、飛ぶ鳥に矢がそうそう当たるはずもない。
それに空への射撃が始まると、鷹人形の姿がぶれて、周囲にいくつもの朧げな鷹の姿が重なるように現れた。幻影のようだ。あれでは本物がどれか見極める事は難しそうだ。
小鬼人形達の射撃対象から外れた事で、余裕が生まれたのか、母さんの周囲に召喚陣が展開されて、クロスボウガンを持った魔導人形が四体現れた。
クロスボウガンを構えた魔導人形達は、前衛の動きを先読みするかのように、彼らに当たらない隙間に矢を通して、小鬼人形達を射倒していく。
しかも上空に意識を向けた小鬼人形の射手は、周辺警戒が疎かになっていることも伝わるようで、魔導人形の射手達が放つ太矢が冗談みたいな精度で命中していった。
街エルフ側が射撃の支援を得て小鬼人形達を押し返して、陣形を広げると、新たに片手に一本ずつ剣を持った魔導人形が四体召喚された。
そして、その頃には狩られる側と、狩る側が完全に逆転していた。
前衛の人形達の間をすり抜けて最前列に躍り出て、二刀流の魔導人形達が猛烈な勢いで剣を振り始めると、小鬼人形達は攻撃を受けてももう一刀で切り倒される有様で、斬り込んでいく二刀流人形の隙を見つけても、そこには必ず別の他の人形達のフォローがあるため、小鬼人形達はまるで攻略の糸口が掴めない。
魔導人形達はまるで背後にまで目があるように、全ての人形達が阿吽の呼吸で心を通わせているかのように、しかも疲れ知らずに動き続けることで、集団戦の訓練を積んだ部隊でも児戯と思える程の見事な連携攻撃を繰り出し、一人と戦うつもりで、常に三対一、四対一を強いられるような苛烈さを、小鬼人形達に与え続けていた。
母さんは更に追い討ちのように、陣形を広げると、今度は両手剣を持った魔導人形達を召喚した。彼らは小鬼人形達の包囲を切り崩して、反転包囲し、他の魔導人形達と息の合った連携攻撃を休みなく続けて、小鬼人形達を駆逐していく。
……結局、三分と持たずに包囲していた小鬼人形達の部隊は壊滅、というかすり潰された。数がある程度減ってからは、狼人形達、二刀流人形達、両手剣人形達が外側から逃亡を防ぎつつ、内側へと押しやり、逆に内側の騎士人形達、護衛人形達は外側へと圧力を掛けながら押し込んで行く事で、小鬼人形達は、逃げる事も、母さんへの特攻すらも許されず、内と外から倒されていったのだ。
しかも、何とか立て直そうと指示を出す小鬼人形には、クロスボウガンを持つ魔導人形が、味方の動きに合わせて、常に死角から隙間を縫う様に太矢を叩き込む周到さだ。
一旦、均衡が崩れると、その後の殲滅ペースは驚異的な速度になっていた。
小鬼人形達の技量が足りなかったのではない。それに連携攻撃の練度もそれなりのレベルだったと思う。
ただ、相手が悪かった。将棋で例えるなら、街エルフの魔導人形達は自分の手番に一回ではなく、三回、四回と手が打てるようなものだ。しかも、小鬼人形側は盤面の一部しか見えておらず、情報も掛け声などで僅かに共有される程度。それに比べて母さん、人形遣いの方は常に盤面全体を把握して、各人が自分の周囲の情報まで把握している感じだ。
これは酷い。
小鬼人形さん達の動きは悪くないのに、まるで示し合わせた演武のように、死角から放たれる刃が、太矢が襲いかかって、彼らを刈り尽くしていく。
そう、これは戦いではない。一方的な狩りだ。……母さんが信じろと言ったのも、今ならわかる。この差は酷い。
それこそ、鬼族のような突き抜けた個の能力で、罠ごと踏み潰していくような理不尽さがない限り、話にならないだろう。
「人形遣いって……凄いですね」
結局、手に持ったふわふわタオルを使う様な機会が訪れることはなかった。それは魔導人形達の戦い方を見てて心配する様な状況が全く生じる事がなかったのと、使われている武器が練習用に刃を潰してあるようで、小鬼人形達の鎧も凹みこそしても切断される事はなかったからだ。あと、斬るにしても突くにしても、防がせる時は姿勢を崩すために強く叩きつけるけど、防がれない時は、はい当てた、といった感じに、振り切らない手加減をしているのが見えたから。
それに太矢もわざわざ鎧の厚い部分に当てていて、先端が丸くしてあるのか突き刺さる事もなかった。その代わり、命中すると強い衝撃を受けて、大きく突き飛ばされたり、木々から落とされる事にはなっていたけど。
「……私もこれ程とは思っていませんでした。魔導人形の数の多さから、一軍として認識されると思ってましたが、これは別格ですね」
ケイティさんも、目の前で繰り広げられた、あまりに理不尽な光景に衝撃を隠せない様子だ。
ジョージさんの意見も聞いてみようと、視線を向けてみたら、呆れた表情を隠そうともせず、それでも、話してくれた。
「魔導人形は疲労することがない訳ではないが、人とは比較にならないほど、長時間動き続ける事ができると聞いた事がある。それだけで酷いんだが、人形遣いに統率された人形達はかなり高度なレベルで情報共有を行えているようだ。人がどれだけ訓練してもあの域に到達する事は出来ないだろう。その二つが揃うと、ここまで圧倒的になるとは、この目で見ても、まだ信じ難い。……もし、戦えと言われたら、俺なら戦術級魔術で範囲ごと吹き飛ばすか、個人技では防ぎようのない固定砲台からの火力で押すか、或いは損害を度外視して膨大な戦力を投入し続けてすり潰す以外に思いつかんね」
ジョージさんも話しながら、その内容の酷さに苦笑を浮かべるしかないといった感じだ。
全ての小鬼人形を倒したのを見て、アナウンスが公開演技の終了を告げた。
整列した母さんや魔導人形達は目立った被害を受けておらず、騎士人形達の肩にとまった鷹人形達も誇らしげに母さんの方に小さく鳴いてアピールして、母さんもそんな彼らに労いの言葉をかけている。直接的な攻撃をしないから戦力として数えない、なんて演技の始まる前に思っていたけどとんでもない。空から戦場を見渡す彼らの視点が無ければ、これ程一方的なワンサイドゲームにはならなかったことだろう。それに整列時には、参加する事のなかった人、鷹、狼の魔導人形達まで新たに召喚して、挨拶のために並ばせる配慮も見せていた。
実際に刃を交える事は無くとも、後詰めがいるからこそ前線要員も安心して戦えるという事なんだろうね。
……魔導人形達の総数は倍近くまで膨れ上がっていて、実はかなりの余力を残していた事がわかった。正に一部隊と呼ぶにふさわしい大所帯だった。
小鬼人形達も午前の演習の時よりも被害はかなり少ないようで、集まって整列する足取りも軽かった。それに地面に転がされて土まみれになってはいたけど、彼らからは、与えられた役割をやりきったという達成感のようなものまで見てとれた。
『小鬼達の襲撃を退け、逆に殲滅する事が出来ました。見事な手際ですね。事前に示し合わせていたとしてもここまで綺麗に決まる事はないでしょう。街エルフの人形達はまるで一つの生き物のように振る舞う、と言いますが、正にその通り。伝承は決して誇張などしていなかった事がお分かり頂けたでしょう。小鬼人形の皆さんもお疲れ様でした。皆さん、街エルフのアヤさんとその人形達に惜しみない拍手をお送りください』
市民席から拍手が巻き起こり、鬼族やロングヒルのお偉方も含めて、皆が彼らの技に惜しみない賞賛を贈った。
◇
公開演技を終えて、母さんが戻ってきたけど、軽く汗をかいた程度といった感じで、六十人の小鬼人形相手に戦ったとは思えない落ち着きっぷりだ。
「おかえりなさい、母さん」
「ただいま。どうだったかしら? 街エルフらしく、それなりに戦えていたと思うけれど」
ケイティさんが渡した麦茶を軽く飲むと、母さんは、そんな事を言い出した。なんでもない事と言葉は語るけど、表情が、立ち振る舞いが、褒めろ、褒めろとアピールしてきてる。
「人形同士の連携が見事で、安心して見ていられました。あとは小鬼人形達への攻撃もかなり気を使ってくれていたのが良かったですね」
僕の返事を聞いて、良し良しと満足そうに頷きながらも、母さんが告げた次の言葉には、僕だけでなく、ケイティさんやジョージさんまで驚いてしまった。
「人形遣いの戦い方としては、初級編といったところだけど、そう感じて貰えたなら良かったわ。実戦だと、あれに魔導人形の体に描かれた呪紋からの魔術発動、トラップ、偽装潜伏からの不意打ちとかも加わるから、もうちょっと、見た目が華やかになるのよね」
「あれで地味……?」
僕が唖然として呟いたのも仕方ないと思う。
「相手の視界を潰す指向性の閃光術式とか、姿に揺らぎを与える幻惑術式とか、相手の悪手を誘発する幻影の剣撃術式辺りが混ざると、かなり面白い感じになるわ」
わざわざ身振り手振りを加えて説明してくれたけど、指向性の閃光術式は相手と目があった瞬間に、相手の目元だけに強烈な閃光を浴びせるという近接戦闘の補助術式なんだそうで、瞬きのタイミングまで考慮して浴びせるという工夫までしているとのこと。
幻惑術式は発動すると、十センチくらいズレた位置にいくつも幻の姿が重なる事で、本当の位置がかなり読み難くなるそうで、間合いがそれだけズレると、かなり戦い辛くなると思う。
そして、幻惑の剣撃術式とは、実際に剣を突いたり、振ったりする肩から腕、剣までの幻影を出すというもので、これとズラして攻撃したり、敢えて重ねて攻撃したりする事で、相手を惑わせるということだけど、幻覚かどうか判断を強いるだけでも相手は苦しいだろうし、幻覚に重ねて攻撃されたら、幻覚に見えても無害とはならず、斬られてしまう。手数が倍に増えるようなものであり、手練れにそんな真似をされたら洒落にならない事だろう。
「なんかもうお腹いっぱいなので、その辺りまでで勘弁してください。……成人の儀って、人形遣いになるのは必須なんでしたっけ?」
「街エルフが人形遣いになるのは、森エルフがレンジャーの技を身につけたり、ドワーフが金属を操る技を身につけるのと同じ事なの。誰でも必ず最後には人形遣いの技は身につけられるから安心なさい」
母さんはそんなことを言うけど、それは途中のギブアップを許さず、身につくまでやらされるからだと思う。エリーは僕に同情的な視線を向けてくれた。
「街エルフも大変ね。頑張りなさい。応援してるわ。応援しかできないけれど」
などと、エリーに畳み掛けられてしまった。日頃、王族さん大変だね、頑張って、などと言って揶揄っていた事への意趣返しといったところだろう。
僕は果てしなく面倒臭そうな話に、乾いた笑いを返すことしかできなかった。
◇
そう言えば、気になった事がある。今回の公開演技を観ても、彼らが味方であれば、心強いとは感じても、恐怖を感じたり、逃げたくなったりはしないと思うんだよね。
それを母さんに聞いてみると、私も直接参加した訳ではないけれど、と前置きして教えてくれた。
「魔導人形が始めて戦場に大規模投入された時は、まだ街エルフしか耐弾障壁を実用化していなくて、被害を抑える為に戦術級魔術で濃霧を展開したのと、汚れない様に白い外套を着せていたのと、人形達は意思疎通に会話は不要だから、言葉を発する事は無かったのよね。それで、銃撃しても効果がなく、着ている外套は返り血で真っ赤に染まり、そんな人形達は一言も話さない。ちょっと不気味だったかも。あとはそうねぇ、耐弾障壁のおかげで余裕があるから、掃き清めるような丁寧さで倒れた敵を確実に絶命させる追撃をしていたせいかもしれない。情報をできるだけ隠蔽するために、敵を包囲して殲滅したのも関係してたりするかしら」
想像してみた。濃霧の中、返り血で真っ赤に染まった外套を着た兵士達が、銃撃を受けても立ち止まる事もなく近付いてきて、一言も言葉を発する事もなく黙々と敵を斬り倒し続ける。相手が何を言おうとも、どう動こうとも変わる事なく、最後の一人に至るまで淡々と確実に息の根を止める丁寧さで。
それを人ではなし得ない効率の良さで、手際良く。
聞こえるのは敵のあげる怒号と断末魔の悲鳴と効果のない銃撃音、そして斬り捨てる音だけ。
……怖い、それは怖過ぎる。
「何というか、それは……怖がられても仕方ないと思う」
僕は、そんな感想をやっとの事で話す事ができた。エリーもまた、式典用の華やかな服装に切り替えて正解だったわ、と力無く呟いた。
魔導人形の事を、他の種族が殺戮人形の忌み名で話すのも無理はない。今後、魔導人形達に同行して貰うと時は、好印象になるよう装いについて、シャンタールさんとよーく相談しよう……そう思った。
ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。
それと誤字の報告ありがとうございました。自分でも何度も読み返してはいるんですが、話が頭の中に入っている状態で読むせいか、どうしても気付かないところがあったりするので大変助かります。
午後の公開演技の一番手、街エルフのアヤによる人形遣いの戦闘方法の披露が行われました。実は今回の演習内容は、街エルフ側が信じられないような悪手をいくつも打った挙句、接敵されてしまったという想定で、これまでの歴史上、ここまで下手を打ったことはなかったりします。
会場にいた人々も、人形遣いの凄さをある程度理解できたことでしょう。
今回はキリが悪いので次パート冒頭で説明を記載しますが、小鬼人形達はあくまでも魔導人形ではあるけれど、小鬼達を模した動きをするよう多くの制限を加えられています。それに比べてアヤの指揮していた魔導人形達は、魔導人形としての性能を十全に発揮できる……例えば、人と違って休むことなく全力で攻撃し続けられるとか、多少斬られても運動性能が低下しないとか、そもそも体に触れる寸前に防御障壁を命中箇所付近だけに展開して、ダメージを無効化するなんて真似もするので、人相手に戦っていると考えると、痛い目に遭うこと間違いなしだったりします。
姿形は似ていても、人と魔導人形は違う存在なのです。
今回は連続稼働部分だけ、魔導人形っぽく振舞うという「手抜き」をしているので、そういう意味でも、今回の演習内容は、基礎編なんだよなぁ、という話をアキが理解するのは、きっと当分先のことでしょう(笑)
次回の投稿は、五月十五日(水)二十一時五分です。
<補足>
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