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5-21.母(アヤ)、到着

前回のあらすじ:妖精さん達に用意した地図を披露したけど、なぜか補助情報として書いた地図記号や、地形情報に注目が集まってしまい、アキが見せようとしていた情報まで辿り着きませんでした。もっとも妖精女王のシャーリスからも、一度に持ってこられても食べきれない、とペースダウンするよう諭されたり。それとシャーリスは地図よりも、アキのほうに焦点を絞って話を聞くことにしたようです。妖精さんはマイペースですね。

結局、妖精さん達は興味を向ける分野も、こちらにこれる時間帯も異なる為、翌日以降はバラバラに召喚される事になった。


召喚用の魔法陣は起動する回数分だけ魔力消費は増えるけど、召喚体を維持する魔力の方は、維持する人数分に比例するだけとの事。


よくできてるね。


元々、妖精さんを大勢、召喚した事の主目的は、僕の魔力回復量を上回る供給を行わせることで、魔力減少状態を経験させようというものだった。


そちらはと言えば、特に何か減ったような感覚もないし、不調も感じないので、成果なし。


ただ、賢者さんの話では召喚を成功させる事を優先して、安全率をかなり多目に計算してたそうだ。

今後は召喚された者が持続効果のある魔術を行使する事で、魔力減少を狙うとの事。

何をするのかと聞いたら、公開演技(エキシビション)関連だ、とだけ教えてくれた。演目は当日のお楽しみ、だって。


慌ただしかった妖精さん達の召喚騒ぎも落ち着いて、仮想敵部隊(アグレッサー)の小鬼人形さん達がロングヒルの兵隊さん達を鍛えている罵声も聴きなれた頃、街エルフの国から、母さんを含めた人形遣い達の一団が到着した。





「久しぶりね、アキ。ちょっと痩せたかしら」


その日は、朝起きて、リビングに入った途端、ぎゅーっと母さんに抱き締められて、あたふたしたところから始まった。


見た目が若いせいで、せいぜい年の近い姉妹同士の抱擁にしか見えないと思う。そもそも近い年の女性とハグするなんて事は、殆ど経験がない訳で、慌てるのは仕方ないと思う。


「母さん、近い、近いって」


「あー、もう、照れちゃって」


拘束の技術が上手なのか、良いように抱き締められ続けて、少しぐったりしたところで、やっと解放してくれた。


「久しぶりの渡航もたまにはいいわね。以前来た時とは結構変わっていて、眺めていても楽しかったわ」


などと観光地巡りでもしてたかのような軽さだ。


「母さん達は警戒しながら移動してたんじゃないの?」


「勿論、してたわよ? でも、流石に人形遣いが十人もいれば、四人を警戒に回しても、残り六人は自動警戒にしておく程度にのんびりできるわ。私も立場上、守られる側だから、どうしても暇なのよね」


などと簡単に言ってるけど、街エルフ一人で部隊扱いなら、十人もいれば、連隊か旅団規模って事で、かなりの戦力という事になる。そうなれば確かに全員が警戒する必要もないだろう。


「それよりアキ、あなた、こちらでお友達ができたのよね?」


「うん、姉弟子のエリーと、妖精のシャーリスさんだよ」


「私が会ってもいいかしら? 我が子の初めてのお友達だもの、会ってみたいのよ」


手を組んで、踊り出しそうな雰囲気で、母さんがそんな話を切り出した。僕が高校生ということもあって気を使ってくれてるのかな。それぐらいの年齢の男の子だと、親からそんな話を言われても、嫌がるものだからね。


「僕は構わないけど、二人ともあちらの都合でくるから、いつ会えるかはわからないけど、それでいい?」


「それなら、会えそうなら連絡をしてちょうだい。私はこの大使館領の何処かにいるから、すぐ合流できるわ」


「うん。そうするね。それで、母さんはこれから、総武演の日までは公開演技(エキシビション)の練習三昧?」


「そうね。せっかく来たから、文通してる人達と会ったり、演技の練習をしたり、後はそうね、食事を作ったり、お菓子を作ったり、衣服を選んだり、半分くらいは主婦業をするつもりよ」


「ありがとうございます」


ございます、までは要らないわよ、と額を指でちょんと突かれた。ちょっと他人行儀だったね。失敗、失敗。


「と言っても、アイリーンも随分と腕を上げたし、私がするのは、今はあまり決めてないけど、アキと息抜きをする感じね」


「息抜き?」


「こちらに来てから、無理のない範囲ではあるけど、ずっと休みなしに動き続けている感じがするわ。時には立ち止まって、振り返ってみたり、周り見回してみないと視界が狭くなるでしょう? だから、敢えて関係ない事をしたり、何もしなかったりしてみるの」


母さんの言うように、起きていられる時間が足りないから、どうしてもあれもこれもと、行動しがちだった。


「エリーにも、よく息が詰まらないね、と言われました」


「なら、私もこちらに暫くはいるから、その間に、程よく力を抜く事を覚えましょうね。総武演が終わるまで、少しずつ妖精達も魔力消費量を増やしていくと聞いているわ。私もアキ達の魔力が限りなしとは思っていない。だけど、外からは貴女達の魔力量は測れない。だから、何か違いを感じたらすぐ言う事。いいわね」


力を抜く事かぁ……そう言えば、日本あちらでも、まるで生き急いでいるかのようだ、とか、たまには頭に何もいれない事も大切だ、なんて言われたっけ。


「何はともあれ、先ずは情報交換といきましょう。あっちも貴女の師匠と妖精の賢者さんが暴れまわってるおかげで、てんてこ舞い。そこに更に妖精が四人も追加されて、目を回してるわ。伝文だけでは伝わりにくいことも多いし、何日かはお話しする時間を設けましょう。ケイティ、予定の調整は任せたわ。アキのお友達だけは優先してちょうだい」


「その様に致します、アヤ様」


「それとケイティもアキに合わせて休暇を取ってちょうだい。休み方を教えて貰えると助かるわ」


「休み方、ですか」


「私たちの世代だとどうしても、地に根を生やしたような本格的な休み方になっちゃうでしょう? アキに必要なのは、探索者が旅先で休むような時間を区切った休み方だと思うのよ」


「ジョージやウォルコットにも声を掛けても良ろしいでしょうか?」


「任せるわ。そうね、アキの場合、男性の休み方の方が性に合ってるかもしれない。必要なものがあれば、経費で落としていいわ。マサト君ほど散財しなければ、用途は聞かない。自由にしていいわ」


母さんの言葉にケイティさんも苦笑して返事を濁した。マサトさんの娯楽への投資は、あまり女性陣の賛同は得られていないらしい。


「……度を越さないよう手綱は握るようにします」


「枠を決めて、口出しはしないようになさい。殿方は自分だけで決める事が好きなのだから」


「はぁ」


「アキもそうじゃない? お小遣いを貰ったら、親に使い道をあれこれ聞かれるのは嫌でしょう?」


「そうですね。やっぱりそこは口出しはして欲しくないです」


僕の返事に、そういうものかとケイティさんも納得してくれた。


「探索者は互いに相手の領分には踏み込まず尊重する、そういう事ですね」


「そう。いくらリーダーでも管理する範囲を超えてはいけないわ」


「……すみません、私の苦手な分野かもしれません」


意外だ。ケイティさんにも苦手な分野があるなんて。家政婦長(ハウスキーパー)の地位にいるのだから、その辺りは得意なのかと思ってた。


「なら、他のメンバーに頼りなさい。ここは探索先ではないのだから、程々でいいのよ」


母さんに言われて、ケイティさんも善処します、と答えるのが精一杯って感じ。

いつもは頼れるお姉さんって感じのケイティさんだけど、こうして母さんと話していると、人生経験の差が見えてくるから面白い。


「じゃ、アイリーン、外でお話しするから用意してちょうだい。今日は日差しと音を少し減らせば、のんびりするのに良い天気だわ」


「承りまシタ、アヤ様」


アイリーンさんも一礼すると、早速、外でお茶会を開くために、テキパキと用意を始めた。日差しと風の流れを調整する魔導具も予め用意してあったみたい。


さて、暫く振りの義母さんとの語らい、か。互いに含むところなし、仲良くなりたいという思いでは一致しているのだから、変な遠慮はしてはいけない。だけど、どこまで踏み込んでいいか、手探り状態。


取り敢えず、変に取り繕うのは止めよう。どうせ人生経験の差があり過ぎて、意味がない。それよりは、僕の事を深く理解して貰った方がいい。


そうだ、どうせならミア姉の事も聞いてみよう。本人とは沢山話していたけど、家族の視点から見たミア姉というのは是非知っておきたい。


「いい表情ね、そうそう、受け身なだけじゃ駄目。踏み込まないと欲しいものに手は届かないわ」


クスクスと微笑む母さんに、心の内まで見透かされた感じだけど、問題ない。特にやましい事もないのだから。よし、ここは一つ、しっかり話を聞く事にしよう、うん、しっかりと。


そう考えたところで、また額を指先でコツンと叩かれた。


「はいはい、肩の力を抜きましょうね。……うちの娘達はなんでこう前のめりなのかしら。困ったものだわ」


母さんに、深く、それはもう深ーく溜息をつかれてしまった。どうもミア姉はもちろんの事、リア姉も似た傾向があるらしい。


なぜか、そんなどうでもいい共通点を見つけた事が嬉しくて自然と笑みが零れる。


母さんも、そんな僕を見て笑い、そっと背を押して、庭へと誘ってくれた。


穏やかな時間の流れが心地良かった。

ブックマークありがとうございます。執筆意欲がチャージされました。

今回はもちょい短いですがキリがいいところなのでここまでです。

総武演の日も徐々に迫ってきたこともあり、遂に街エルフの国から、アヤを含んだ人形遣い達が到着しました。僅か十人程度とはいえ、人族の部隊換算なら、数千人規模の精鋭部隊相当ですから、そのインパクトはかなりのものになります。鬼族達もそれがわかっていて、参加するというのだから、剛毅ですよね。

五章も次でラストになります。総武演は六章からになります。

次回の投稿は、四月三日(水)二十一時五分です。


<雑記1>

土曜日、なんと活動してたのは僅か三時間。後はずっと寝てました。まず起きたのが十五時という時点で色々損をした気分。食事をして、さぁ、撮り溜めていた番組でも観るかとTVを付けて、電動マッサージチェアに座ったら、あっという間にうとうとして、気が付けば寝落ちしていて、気が付けば二十二時。で、お風呂に入って少しのんびりして、流石にこれだけ寝たなら、すぐ寝れないだろうと思いながらも横になったら、やはりすぐうとうとしてきて寝てしまいました。……なんとも勿体ない休日の過ごし方でした。それだけ疲れていたということなんでしょうけど、その日の疲れはその日のうちに回復する生活パターンに早く戻したいところです。


<雑記2>

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前のほうのページに載っているおかげで、訪問者が増えてとても良い状態です。

6ページ目とかだったりすると、そもそも一日に訪問者(OUT)が数名増加といったとこですから。

息の長い応援よろしくお願いします。(二週間程度でポイントが初期化されるので……)

 ※2019年03月16日(土)ポイントが初期化されました。

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『彼女を助けようと異世界に来たのに、彼女がいないってどーいうこと!?』を読んでいただきありがとうございます。
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― 新着の感想 ―
[一言] 雑記に感想ってのもアレかもしれませんが 休日寝倒してもったいないって感覚がアキにも通じるなと思いました
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