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第19話 してるの!?事変4

 イケメンも普通に恋愛で苦労するんだな。俺は岡田を感慨深い眼差しで眺めた。

 てゆーかさー、首輪してとかってー、俺えー……岡田のカノジョにジャイアンさんと同じ臭いを感じるんだがー……?

 さすがにまだ首輪強要された経験はないが、されたら俺は人間の尊厳を護れるのだろうか。果たして……。

 当てが外れた岡田は「でもそっかじゃあどうしよ~誰に訊いたらいいかなあ?」とか一人で考え込んでしまっている。酷く思い詰めたような面持ちで。

 こんな深刻な岡田は初めて見るな。

 しかも何となくヒヤリとしたものを感じる。危うさっつうのかな? まさか苦悩の末に……なんて悲劇はないよな? カノジョとちょっとトラブッただけだしな? ……な?


「ごめんね、松っちゃん、(げん)ちゃん」


 岡田はしんみりとお別れの言葉?を言ってゆっくりと席から立ち上がった。


「え? おい岡田!? まさかマジに!?」

「ん? どうかしたのかルカ?」

「僕、リサーチしてくるね――」


 とても儚げな顔をして薄く笑うクラスメイト、岡田ルカ。

 何だリサーチか、全く~驚かすなよ~。


「――女の子たちに」

「「!?」」


 はい驚かされましたよー?

 俺と佐藤が衝撃に動けなくなっている間にも、岡田はたった一人荒野をさまよう令嬢のようにふらふらとクラスの女子グループへと近付いて行く。


「なっ……」


 そこまでカノジョ優先なのかお前は!?

 社会的にアウトになってまで? そこまで愛しているというのか!?

 一歩、また一歩と、初めて歩いたクララ嬢のように岡田はたどたどしく前に進む。

 前途には破滅しかないにもかかわらず。

 んな深い愛、知らねえよ俺は……ッ。

 猛烈に感動した俺が岡田の決意を尊重すべく止めもせず見守っていると、意外にも佐藤が動いた。

 (しょう)お前そんな薄情な奴だったのかよ!?みたいな責める目で俺を見てきたけどねー。いやさ、お前も俺に対し似たようなもんだろ。


「待てよルカ!」


 佐藤は岡田の肩を掴んで止めると、揺れる眼差しで見上げる岡田へ力強く頷いてみせた。


「――俺が、行く!」

「源ちゃん……!」


 ハッとしたような岡田に、佐藤は安心させるような太い笑みを浮かべる。

 バックにバラが咲いてるぞおおーい。

 そのBLちっくな光景にまたもや女子の一部(今度はさっきとは違う一団)が物欲しそうな目をした。全く女ってやつは……。


「ああ! だから佐藤、自分を大事にしろ! …………松も、元気でなっ」


 そうして佐藤は一人孤独な戦場へと身を投じ……。



「――――だあああああああもう何じゃこの三文芝居はああああああーッ!!」



 こいつら本気(マジ)にやってるが茶番にしか見えんわ!!

 ちゃぶ台を引っくり返す昭和のオヤジの気持ちがよ~っくわかる。

 だが一番の問題は、このままじゃまるで俺が二人に指示したように見えるって点だ。悠然と席に座ったままドラマを繰り広げる二人を見やる俺……絶対黒幕位置だろこれ!! しかも当初黒幕と思われていたものの、いち早く捕まるか殺されるやつな。

 ガタッと、激しく椅子を蹴立てて俺は立ち上がった。


「しょ…う……?」

「松っちゃ…ん……?」


 二人が大きく目を見開いて俯き加減の俺を見つめている。


「――わかったよ。俺がゆめりに探り入れとくから……」

「松……! お前を信じてた……!」

「松っちゃん……! 君って何て人なんだ……ッ、僕と友達になってよ……!」


 わしゃあ今までおんどれの友達じゃなかったんかいッ!? 傷つくぞ地味に!

 まあクラスの女子を敵に回すよりはマシだ。奴一人にぶちのめされる方がな。

 かくして俺は、友を救うため緑川ゆめりという世界を牛耳る覇王に挑む、荒野の放浪者となった。

 そういうわけでした、はい。


「――ブふッ……」


 その時、隣の藤宮が噴き出してたっけな。

 皆冷静に席に戻り、再開した俺たちの昼食はいつものように他愛なく過ぎて行く。


「本当にありがとう松っちゃん。よろしくう~っ」

「訊いてはみるが、答えが得られるかはわかんねえぞ? 別に俺と奴はお前んとこみたく恋人同士ってカテゴリーにはないんだし。期待はするな」

「んじゃあこの機会に付き合っちゃえば~?」

「有・り・得・ね・え!」


 はい、リピートアフタミー?


「え~? 付き合ったらきっと楽しいのに」

「それは誰視点での楽しいだ?」

「ルカ、松は頑固だから」


 佐藤がもう言うなと首を振る。


「いやあの頑固とかそういう話じゃねえんだがな」

「けどさあ、人の噂してる時に限って本人いたりするよな」


 佐藤が続けて言った。

 爽やかにあっさりと。

 びっくりして飛び上がる猫のように席を立った俺は、クラス前の廊下を急いで確認した。

 教室から首を出し、何度も狂った牛のように左右に振って念入りに確かめる。


「……そりゃいるわけねえか」


 そんな漫画みたいな偶然、俺に起きるわけがない。


 ――だが、失念していた。


 この学校の教室の出入り口は廊下側だけではない事を。

 ベランダを通って人が行き来できると言う事を。





「――有り得ない、ですって? 何よそれ……」


 カーテンでちょうど隠れていた窓の向こうで、その、風通しのために僅かに開けられた隙間の向こうで、長い黒髪が揺れていた。





 ――と、いう昼間の経緯があって俺は現在ゆめりのために懸命にチャリを漕いで帰宅途中なわけだが、岡田へ良い報告はできないなこりゃ。

 俺は沈められた路上で奴に洗いざらい吐いた。

 熱い友情を知った奴は一応は俺の発言の意図を理解したようだが、それでもね? やっぱね? お赦しは下さらないようですね?

 再び帰路を走り始めた自転車上、俺はいつものように後ろに座る奴の手により、何と何と何とがっちりホールドされていた。

 さっきの俺みたいに今度は向こうがずっと無言。正直怖いって。

 今俺は一体何の試練と拷問を同時に受けているんだろうか……と思わずにはいられない。


 だって何を考えてんのこの緑川さんって人!?


 後ろから俺の腰に手え回してぎゅ~ってやってしっかり掴まって来やがるんだよッ。えええ何これッ、今までろくに掴まってこなかったのにどういう風の吹き回し? 初めてなんですけどこんなの。ちょ~お背中がヤバいんですけど! 過敏に反応しすぎて背中に新しい神経回路百本できるとか、妖怪百目よろしく目がいっぱい開眼しちゃったらどうしてくれんの? 人間やめますかって暗に言って来てんのなあ!?

 今俺は背中に羽でも生えてんのかと思うほど天にも昇る心地だがな!

 だってもしも~し。


 ――当たってますよー、当たってますってば!


 ポケモンでもドラえもんでもねえ、やたらとやらかいもんが!!

 いいんですかあ~っ!?


「……っ」


 すれ違う者たちよ、乗せてるの細い()なのにそんなにチャリ漕ぐのが大変なの?しかも下りなのに非力~って嘲笑ってくれどうか。その分きっと俺は冷静になれる。唯一の幸いは奴から俺の顔は見えないっつーことか。俺は今きっと最高潮に真っ赤な顔をしてるだろうから。

 それに、きっとすげえ速さで心臓が鳴ってる。

 慄き不可解動揺羞恥その他諸々、色んな意味で。


 だからゆめり、頼むから背中に耳だけは押し付けてくれるなよ?


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