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第13話 美術館にて。その3

 人生史上稀に見る青天の霹靂(へきれき)

 何と奴は……っ……男だった!

 これじゃあジャイアンさんではなく、まんま――ジャイアン!!


「何だよゆめり、お前水臭いな、今までずっと隠してたのかよ」


 俺は奴の方を見もせずに話を続ける。

 さっきからの強烈な殺気に圧され、恐怖に足が凍りついて動けない……と言うわけじゃなくもないぞ☆


「隠す? 何を……?」


 声はまだ低いままだ。

 全くこいつって奴は……!

 俺は目頭を押さえた。


「ゆめりいやゆめ男、それともゆめ太、或いはゆめしか? 俺にくらい打ち明けてくれても良かっただろ!」

「ゆめ男ゆめ太? だから、何をよ……?」


 俺は大きく深呼吸するとついに胸の内に湧き出でた確信を口にした。


「お前――男だったんだな!」


 はい、その後三分くらい私に記憶はございません。





 再び長椅子に横になっていた俺は薄らと目を開けた。

 ――布。


 え? 俺の顔に布が乗っかってるよ?


 あれれどうしてかな。俺はまだ生きてるんだけれども?

 それとは別に額がひんやりして気持ちいい。

 何かが乗せられている。

 えッドライアイスじゃないですよね? 腐敗防止用の。


 ――本能が告げている。まだ目覚めるな、と。


 目覚めを悟られるな、と。

 俺は鼻息で布を吹き飛ばさないよう慎重に呼吸をする。

 そういや俺はどうして気絶を?

 いや違うな。

 どうやって気絶を?

 覚えてないくらいに瞬殺だったようだな。

 ゆめり怖えー……。

 っつかさ、俺は今からどうなるんだ? 何されるの? 人体実験? アブダクト?

 実際問題状況が見えない。視覚的にもな。

 と、俺はふとある感触に気が付いた。

 同時に脳神経が半端ない電撃に見舞われパーンと破裂して……って今は大事な頭部を失っている暇はない。(混乱中)

 何故なら、何故ならあああっ――今、俺の後頭部の下には柔らかい「太腿」があああああーッる!!


 誰のだ? 誰の? 誰の?誰の誰のダレノだれのDARENO……!?


 喜怒哀楽古今東西日進月歩牛歩戦術百花繚乱もはや四字熟語並べただけですエロ……等々俺の中の複数の俺が声高に叫ぶ。

 とりわけエロの俺の声がでかい。

 この感触は少なくとも野郎のものではああぁ~……ない!!

 佐藤のなんか鍛えられてて固かったしな。

 ん? いつしてもらったかって?

 訊くな……。

 ハッまさかこれは久保田さんのなのか? 心配で戻って来てくれたのか? 首切り用の刀持って?(依然混乱中)

 それとも見ず知らずのお姉さん? 奴に虐げられた俺を不憫に思って? 感謝しますその愛同情でもいいッ!!

 感謝ッッしますッ! 神よ! 仏よ! 大宇宙よ!


 夢にまで見た女性の膝枕をお与え下さり!!!!!


 俺はたった今起きたふりをしてゆっくりと顔からご臨終?布を取った。

 何だよ可愛らしい黒猫さんのハンドタオルじゃねえか。

 道理で良く知る柔軟剤の香りがすると思った。

 きっと照明が眩しかろうと心優しき女人(にょにん)が被せてくれたんじゃろ。

 仰向けのままうっとりした心地で太腿の持ち主を見上げる、俺、花垣松三朗、十五歳、オス。

 美人のお姉さんでお願いしまっす!


「あらやっと起きた」


 ゆめりだった。

 紛れもなく、ゆめりだった。

 どうしようもなく、ゆめりでしかなかった。

 現実はそう甘くない。


「は……!? い、いつの間に美人なお姉さん(熱烈希望&歓迎)と入れ替わった!?」

「何意味不明な戯言を」


 奴は凛々しくも心底呆れたような半眼になると俺の首筋に冷えた缶ジュースを押し付けて来た。

 額にあったのはこれか。


「ひいぃえええええええぇぇ!」


 冷え。いみじくも感覚と感情が合致した悲鳴が出たぜ。


「ちょっやめてッやめて下さい後生ですから!」


 な、何故だ……ッ、何故奴はここにいる? てっきりその場に放置かと思った。いつものことだし。冷えた缶ジュースを額に当ててくれていたのも何故だ。気持ち良かったが真意はどこに? 俺の脳みそを休眠させどこかに移植でもするつもりだったのか? まあその場合俺が増えるだけだがなフハハ。

 接ぎ木で増える植物の化身みたいに俺は(わら)った。


「何にやにやしてるのよ気持ち悪い。鼻ふごふごさせてあたしの素肌を包む柔軟剤のフローラルな匂い嗅がないでよ! 吸いつくような地肌はせっけんの香りなんだから!」


 やはり現実なのか。

 このこっ恥ずかしい細かな物言いはリアルに奴だ。

 そんなん言われたら無意識に嗅ぎまくるだろ。

 呆然と目を見開く俺は、俺を不可解そうに見下ろしてくるキレイな瞳をひたすら見つめ返して、疑問を投げかける。


「な…んで……だ?」


 どうして太腿がこんなにやらかいんですか?


「ねえまだ具合悪いの?」


 女子からの膝枕だと思ったのに……!

 夢を断たれた俺は、しかしまだ信じたくなくて、ともすれば泣きそうな瞳で絶叫した。


「どうしてお前は男なんだよおおおーーーーッッ!!」


 もう一度、イシキトンダ……。


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