桜編〜取材先に〜
桜さんの事良く知らないのに付き合うなんて、自分の【好き】と言う概念からそれていた。
キッカケはどうであれ、好きになれれば付き合う、でなければ付き合わない。
と言うのが僕のその時の考えだった。
そんな事を思いながらも、桜さんは顔もいいし真剣に考えると言うより、付き合ってみて桜さんをよく知るって方法もあると思っていた。
そんな恋愛もなくはないと思った。
でも、そんな付け焼刃の気持ちなど、いつか崩れる。
そんな事自分が良く解っていた。
B型の僕は、自分がどちらでもいい事には無関心で、自分の譲れない考えにはガンとして動かない性格だった。
「よっ。結城。」
朝一番のあいさつで、こいつと出くわす。
そう、健二だ。
「おう。おはよう。」
昨日の桜さんの告白が頭の中を巡っている僕にとって厄介な相手だ。
健二は能天気キャラだがヤケに鋭い嗅覚をしているからだ。
「結城。今日の取材、高山さんとだよなー。あの人怖いから気を付けろよ。」
高山さんとは僕らの上司で、敏腕スパルタで知られる恐怖の教育係なのだ。
「おい。脅かすなよ。僕高山さんとは初めての取材なんだから。」
なんやかんやと話していたら、その高山さんからお呼びがかかる。
「結城。準備しろ。朝一取材行く時間だ。」
僕は元気よく「はい!」と返事をして準備にとりかかる。
「結城。死ぬなよ。」
いらんの健二の一言がムカつく。
「向う先は戦場か!」
一応突っ込んで、そそくさと健二から離れる。
急いで高山さんの待つ会社のロビーに行くと、見慣れた顔がもう一人。
・・・。
桜さんだ!
「今日は桜について行ってもらう、彼女の取材を見ながら手本としなさい。」
と言う事だ。
どうやら今日は高山さんと一緒では無く、なんと桜さんと一緒に行動することになった。
昨日の今日で気まずさは否めなかった。
「今日はよろしくお願いします。」
僕は他人行儀に桜さんにあいさつする。
「あっ。はい。お願いします。結城さん。」
当たり前だ。ちゃんと話したのは昨日の告白前のカラオケだけだったし、第一ここは会社だ。
「じゃーしっかりやって来い!」
・・・。
高山さんの指示で制作会社の本社のある青山から、電車で約30分の取材先に向かう。
ギクシャクしていた僕達は、駅に向かう途中ほぼ口をきく事無くただただ歩いた。
駅に着くと、桜さんが口を開く。
「今日は仕事だからお互いのプライベートな感情は抜きにして、私の取材方法とか盗めるところは、バンバン盗んでいくんだよ?わかった?」
桜さんは俺に気を使ってくれたのか、自分が気まずいから切り出したのかは分からないが、これで一応仕事のみに集中できる。
助かったが、桜さんがどんな気持で言ってくれたのかさえ分からない俺が、付き合ってもいいのか逆に、のちのち気になった。
取材先に着くなりムカつく事が一つ。
なんと健二が取材先にいるではないか・・・。
「よっ!」
健二は軽い感じで挨拶をしてくる。
「よっ!じゃねーよ!なんでお前がいるんだよ?」
俺は健二がなぜ取材先にいるのか分からなかった。
「いやー。だって俺達は一応研修期間中だろ?だから桜さんとお前が取材先に行くって聞いて、俺も勉強させて貰おうと思ってね。」
ニヤニヤしながら健二は俺を見て来た。
確信犯だ・・・。
健二は俺と桜さんが怪しいと、直感で気づいて来たのだ。
もちろん証拠がある訳でもなく、僕は「へーよく高山さんがOK出してくれたね。」と冷静に対処する。
健二とはこれから腐れ縁が続いて行くことになるとは、まだこの時思ってもみなかった。
そして、健二と桜さんによって、ひかりと出会うと言う事も当然知るはずも無かった・・・。