プロローグ
「ねえ、また会えるよね?」
ひかりは潤んだ瞳で、今まさに出発しようとしている電車の閉まるドアに割り込んで、そう言った。
「・・・または無いって言っただろ。」
僕は複雑そうな顔をした後、これ以上ない満面の笑みでそう言い残す。
「そうだよね。そう決めたんだもんね。そうだよね・・・。」
その時ひかりを抱きしめていればキットやり直せたのだろう。
でも・・・。
ガシャンガシャン
閉まるドアは彼女が塞いでいるせいで、開いたり閉まったりを繰り返していた。
「お客さん何やってるんですか?危ないですから下がってください。」
駅員はドアから彼女を引き離し車掌にオーライの合図をする。
「やめて下さい。私は・・私は・・・。」
引きずられるひかりをただ見ている事しか僕は出来なかった。
「ひかり・・・バイバイ・・・。」
僕は笑顔のはずだったのになぜか目からは出るはずのない涙がこぼれいた。
ひかりは駅員に飛び出さないように腕を握られ、うつむいたまましゃがみ込んで最後まで僕を見ようとはしなかった。
電車が動き出すとひかりの肩は小刻みに揺れ服で顔を覆っていた。
「バカッ。それはお前の1番のお気に入りの服だろうが。」
僕はもう届く事の無い声でそっと呟いた。
「バカは僕か・・・。」