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第2話 闇に集う

【おいたわしや主人さま】

【主人さま、何故でござります】

【主人さま】

【主人さまお戻りくだされ】

【わたくし共の主人さま】


部屋の隅、壁の隙間…ありとあらゆる闇に潜み、我を凝視するソレは、失った半身を求め蠢き、常に我を見ている。


闇は嫌いではない。むしろ我の属する世界と分かるだけに心地良い。


そこは確かに我の在るべき場所であり、かつて我もそこにあった…ような気がする。


戻りたいのか? 如何であろう、我にも分からぬ。未だに記憶は曖昧だ。あれから如何程の時を経たのか、近頃では我が我で在ると自覚出来る時間も増えてきた。


焦りは禁物。それは日々を繰り返す内に学んだ事だ。


日々はゆっくりと過ぎて行く。今日も、よたよたと短い四肢を蠢かせ、一歩一歩目的地に邁進している。後ろから母親の存在を感じるが、何か言ってくる様子はない。…寂しい、とは…こんな感情なのか? …分からぬ。


らぬ? 何だか言い回しが変な気が…。


待て…感情が高ぶれば、また意識が混濁する。我は常に冷静であらねばならぬのだ。今はただ目的の地へ到達し、そののち成すべき事だけを考え、邁進するのみ。


意を決し、彼の地より出立してより如何程の時間が経ったのか。そもかつての我には、時間という概念が無かった様に思う。


我が我で在ると自覚したのは、何処であったか。少なくとも其処此処で蠢く我の半身共と在るときは、この様な想いに至る事は無かった。


この様に懸命に何かを成す為に『頑張る』などという行動をとる事も無かった様に思う。


かつての我は、彼の地を目指す今の様に、何かの使命を帯びただそれだけを想い、それだけを目指していた…ような気がする。それは…あの母親に関する事だった筈だ。


時折意識が混濁し、我が我であった時の事を忘れてしまう時もあるが、以前より、かつて闇に在った時の事を思い出せている。


現在分かるのは『我は闇に属する者である』事。


『何某かの使命を帯びていた、それは母親に関する何か』である事。


『かつての我は時間と言う概念も、我が我で在るという自覚も無かった』事。


そして…そして?


何かに思いが至る直前、唐突に我の中で何かが起こった。それが何なのかは分からぬが、時間がない事だけは分かる、我は彼の地へ急がねばならぬ。


あと少しでその地へ辿り着く、その地へ辿り着くことが出来れば、我慢し続けた全てを解放し捨て去る事が出来るのだ。




…長い、長い旅であった。我は限られた時間の内にその地へ登頂し、その場へ座す事に成功したのだ。


『ジョボジョボじょしょジョ』


我の中から何かが廃棄される音が、狭い室内に響いた。成し遂げた達成感にワレは緊張を解いた。


「ちゃんとシー出来たねぇ! コウはやれば出来る子ね」


ワレを見守っていたハハが、かけ寄ってくる。その顔は、ワレのセイコウをヨロコび、満面のえみをワレにむけている。

ムネのオクでなにかがウゴメク。うれしい、コレは嬉シイという、カンジョウ?


ワレをほうようスル腕に、イシキがこんだく、こんだ? こんっ?


【おいたわしや】

【主人さまおいたわしや】


こえが、きこえ…テモ、ソレ、ハどうテもい、コ…。

お読みいただきありがとうございます。


次話からは、少し間が空くと思います。申し訳ありません、長い目で見てやって下さい。

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