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早速、魔王の幹部を倒しに行きます。

「おお……今まで俺がこの中に! すっごいなあこの大きさは」


 幾兆年も生きている俺の語彙力がこれか、と自分でも思うんだけどそれくらい凄い建物だ。

 

 結局俺の疑念を晴らす為に魔王の配下であるローリールを倒すって事になったわけだけど、少し怪訝な顔をされながら建物の外に出てみると、豪華も豪華。城だった。


 グレイン・サードウェル街はこの世界最大の王国の中枢、巨大な王都である。


 少し城を出て見た街の景色は圧巻で、周辺の建物より高くまで水飛沫を飛ばしている噴水であったり、それよりも高い時計塔であったり。


 上から見ると屋根はほとんどレンガ造りの赤色。

 地球じゃ見れない。ここ重要だぞ。


 てな訳で早速ローリール討伐の為に動きたい訳なんだけど、場所を聞くのを忘れていた。


 戻ってもいいんだけど、近くに監視用の追尾精霊がいる為、迂闊な行動は信用を落とす事に繋がるかも知れない。

 

 最初に場所を教えてくれなかった辺り、もしかしたら探せるかを試していのかもしれないし……いや、大方利用できるならしてやろうという考えだと思うんだけどね。


 忘れてた森の虫の事を思い出して右腕を見ると、すっかり腫れは引いて変わりに包帯が巻いてある。


「あ、何だよこの服装!」


 自分の姿を見て、思わず心の声が漏れた。


 ボロッボロのズボンに黒ずんだ白い服を着たその姿は、どこからどう見ても囚人だ。


 怪しいものだからってこうまでする必要はないだろ。


 地球ではダメージパンツなるものが流行ってたけど、俺は絶対に履きたくない。あれは一種のいじめだと思ってる。


 このままでいるのは俺の心が持たないので、適当なローブ……と言ってもこれも天界のやつだから怒られるかもしれないんだけど……を創造魔法で出して着とく。

 このローブの名前は何だったか忘れたけど、確か全く破れることのない服とかだった気がする。


 杖も爆発させてしまって残っていないので、今度はこの間ポセイドンが使ってた大層な杖を創造魔法で出して右手に装備する。


 あいつの嫌なところは、こういう杖の先にも自分の象徴である海を創造させる青を使ったりする、自己主張の強さだ。

 特に他はないけど、そこだけは凄い嫌い。


 ということで全身の模様替えも終わったことだし、ローリールの魔力を探し出す事にしよう。

 

 出てきた所申し訳ないが、杖はそこら辺に放って両手を合わせて合掌して、下を向いて目を瞑る。 

 すると、俺の足元を中心にこの街全体……いや、この大陸全体に広がる魔法陣が広がっていく。


 これは索敵魔法。


 魔法陣を手広く展開して、その上に存在する者の位置と情報を探し出す超便利な魔法なんだけど、人間はどうやら部屋一帯に張れる程の魔力しかないらしくて全然使ってない。


 因みにこの魔法を作ったのも俺なんだけど、神には魔力の底が存在しないから、こうやって大陸や世界中に広げて特定の人物を探すことが出来る。


 すんごい楽だけど、後で疲れるから俺でさえあんまり使わない。 


 当然ローリールの位置も特定できたんだけど、他にももう一個分かった事がある。


 索敵魔法っていうのは基本的に、相手に秘められた魔力量や潜在能力を確認するために使われることが多くて魔力の強さが感じ取れるのだが、どうやら近くの森に生息する魔物たちはこの大陸では弱い方の部類に入るらしい。


 ローリールがいるであろう場所の周りにも強大な魔力を感じるんだけど、これは多分護衛用であったり、所謂番犬がわりの魔物だと思う。


 問題は海の中だったり、沼地だったり、火山の周りであったりから感じ取れる魔力の量と強さもローリールの周りから感じ取れる魔力と同じ大きさかもしくはそれ以上であることだ。


 これは血湧き肉躍る楽しい生活が過ごせそうな予感だ。


 当然常に空を飛ぶドラゴンの魔力は感じ取ることが出来ないが、森のなかにいたドラゴンは普通に最強クラスだと思う。


 と、索敵魔法を使うだけで手に入れた情報はこんなとこだ。


 神といえど全世界の事情は知らないわけで、この世界の事情ってやつをちょくちょく吸収しときたい。


 ……なんか周りの人達が、まるでドラゴンを目の当たりにしたかのような目で俺を見てる。

 あんなでっかい魔法陣出しちゃったら当然といえば当然か。


 でもあれしか方法は無かったしな。


 幸い周辺にいる住民は少ないし、この際幻として処理して貰うとして、さっさとローリールのもとに向かうか。


 とは言えこの空気の中でそれを無視して歩くなんて出来ないし、その上案の定街を取り囲む様に少し高い壁が聳え立っている。


 魔物が蔓延る世界では街の周りを取り囲む壁を作るっていうのが定石なのかな? 他の世界でもちょくちょく目にしてる。


 そこら辺に放っておいた杖を構えて地面に突き刺すと、杖の先端部に手をあてて魔力を流し込む。


 すると体を取り囲み回る魔法陣が展開されて、みるみる内に背中に魔力で出来た翼を形成して行く。


 本物の翼のような質感もなめらかさもないものの、それなりの強度と性能を持ちあわせている。

 翼を出すためにかなりの魔力と儀式形態を要することがたまにキズだが、それを除けば完全無欠の飛行魔法だと自負している。


 因みにこれは天界で俺が暇つぶしに作ったオリジナル魔法なんだけど、あまりに出来が良かったからギリストにも内緒にしている。


 俺は自慢はせずに、一人で悦に浸るタイプなんだ。


 魔法陣が地面に刺さった杖に収束すると、杖を引き抜いて背中に背負うと、少ししゃがんで地面を蹴りつつも高く飛び上がった。


 その勢いで完全に活動を開始した翼は、勝手に羽ばたいて俺の体を浮かせ続ける。


「確か西は太陽が沈む方向っと……」


 そう呟いて太陽の位置を確認して、太陽が今にも沈みそうな方向に向かって体を傾けると、翼は体の側面にピタリとくっついて風を切るように前に進む。


 街のものを引き合いに出すとしたら時計塔がある方角。


 上から街を見下ろしていると、何となく天界からの景色を思い出すんだけど……。

 とても嫌な気分になりそうなので、頭を振って忘れることにする。


「にしても貧富の差がはっきり別れてる街だな」


 上から見ればどこに貴族が住んでるかなんて一目瞭然だ。

 赤い屋根の民家が沢山ある地帯に、これ見よがしに輝く豪華な建物が大体貴族が住んでるところだろ。


 貴族は貴族で同じ所に住ませればいいのに。


 普通の家庭に住む人間が劣等感を覚えるようにしてんのか、貴族同士で中が悪いのか知らないけど、こんなんじゃこの国将来立ちゆかなくなるだろうに。


 いや大丈夫か。


 なんか子供たちが魔法使って楽しく遊んでるし、対人でトレーニングしてるっぽい親子もいるし、普通の家庭の子達は思うほど気にしてないみたい。


 あ、お父さんの炎魔法が貴族の家に直撃しちゃったよ。


 子供は気にしてないだけでやっぱり大人は気にしてるのか、それとも偶然か知らないけど、俺だったら偶然を装ってぶち当てるだろうな。隕石魔法を。


「てか、こんなのんびり飛んでたら帰ってくんの一週間後とかだぞ! もっと急げよ、俺!」


 背中から杖をもう一度取り出して、前方に向かって杖を構えて魔力を送り込む。


 それによって出現した魔法陣をくぐる事で体は加速する。


 ブオォォォォン!


 耳元で風を切る大きな音がしている。


 音速で移動すれば体こそ千切れたりはしないものの、普通に目は痛いだろうし何より着地した後に体が怠くなる事は目に見えている。


 多分音速は超えると踏んで防御魔法をかけたのが功を奏したか。


 音速を超えた体は、街の壁などとうに越して森の上を飛んだ。


 索敵魔法から分かったローリールの位置は、多分魔障が大量に噴出している毒素地帯である沼地のその奥。洞窟の中だ。


 魔障って言うのは、死んだ人間とか動物とか、あとは大地とか。

 とにかく魔力を持ってる何かから漏れでた魔力の事で、触れたり吸い込んだりすれば自分の体に存在する魔力が異常な反応を見せて破裂するとかなんとか。

 魔物と動物の分類分けってのも、体の中に魔障を取り込んでしまってるかってのできまる。


 まあ細かいところに俺は弱いからどうでもいいとして、そういう場所には人間は近づかないし、魔物は強力になるし、魔王軍とやらにとっては好都合な場所って事だ。


 まあ俺は何も仕掛けなければ魔王は何もしてこないと思うんだがな。

 それには色々理由があるけど、今は置いとかせて欲しい。


 下に目をやると、人間と魔物が戦闘している場面を目にする。


 多分討伐隊なんだろうな。


 そんな景色も一秒も経たぬ内に移り変わって、あっという間に毒素地帯である沼地に辿り着いた。


 上から見ると多分魔障がなくても人は立ち入らないんじゃないか?って言うくらい毒々しい色の地面と木々がある。


 端から端まで見渡しながらゆっくり飛んでいると、洞窟の入口っぽい所を発見した。


「地上から行けば危険地帯だけど、空から行っちまえばただの沼地ってね」


 洞窟の入り口は見たところ魔障が一番濃いからそんなに安全じゃないんだけど、あそこから入らない事には始まらない。

 

 翼を仕舞って、洞窟の入口前に降り立った。


 洞窟の入口前には、索敵魔法で確認した通り巨大な魔力を持つ魔物が二体立っていた。

 正確に言うと、ジャイアントオーガ二体。


 一体で街一つ滅ぼす事もあるジャイアントオーガが二体も、特に暴れる様子も見せずに入り口を守っているのは何となく奇妙だけど、先ず相手をするべきなのはこいつらだ。


 杖を取り出して戦闘態勢に入った。


 

 



 

 

 

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