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あらぬ疑いがかかってるようです。

「おい! そろそろ起きたらどうなんだ!?」

「起こすなって、言ってんだろうが……あと三年だ! 三年寝かせてくれ~」

「は? 何寝ぼけたこと言ってるんだよ!」


 ゴツン!


 頭に拳が下る、鈍い音が聞こえる。


 あれ、ギリストってこんなに強引な奴だったっけ?

 起こす時はどんな事があろうと、耳元で大声を出すくらいの事しかしなかった気がするんだけど。


 同じようなもんか。


 しかし最高位の神に向かってげんこつを出すくらい俺怒らせたっけ?

 確か天界で余りに暇を持て余してたもんで、地球じゃない他の世界に降りてきたんだったよな。


 エクスカリバーを勝手に持ちだした事か? それとも杖を爆発させたこと?

 あの杖はギリストのだし、怒ってもまあ仕方ないか。

 

 そう考えれば、悪いことしちまったな。起きたら謝って、あいつに頼むのは少し癪だけどメフィストにでも頼んで壊れる前に戻してもらうことにするか。


 ……いや、待て。

 何で地上にアイツがいるんだよ。


「何だよ、もしかして付いてきちまったの? ……って、おたく誰?」


 目の前には見覚えのない赤髪の男が座っていた。

 

 周りを見渡すと、どうやら魔力の壁に囲まれているようでして、外からは見えるけど内からは誰が見てるかわからないようになってるみたいだ。


 おまけに魔法無効化の加護までしてあるし、まるで捕らえられてる気分なんだけど。


「私は、ハーレ・マズベール。この国の第一位貴族なんだが、まさか知らない者がいるとはな」


 あ、もしかしなくても現地の方か。


「で、そのお偉いさんっぽい人が俺に何の用ですか?」

「私はこの国の警護団の団長もしてるんだが。これでも分からないかね?」

「あ、因みに俺はゼウ……ゼーレ・シリウスっす」


 一瞬ゼウスって言いかけたけど、さすがに本名名乗ったら変人扱いされそうだから適当な偽名を使っておくことにする。


「今は聞いてないのだが、まあいいだろう。

 ならばシリウス。貴様はローリール本人か、それともその手下か……何者だ?」

「ローリール? 誰だよそいつ」

「内側まで他の種族にすり替える、変身魔法の達人で魔王の右腕。知らないはずがないだろう。しらを切り通すつもりか」


 いやいや、知らん知らん。


 誰だよそいつ。そんないつでも回ってそうな名前の奴しらねえぞ。


 つーか、今この世界に魔王っているのかよ。


「何で俺がそいつだと思ったんすか?」

「この街は、人間と交友関係にある種族しか通れない結界で守られる事は知ってるな?」


 知らないんだけど。

 まず、今いるこの場所がどの街に当たるかとかすら知らないし。


 ここに来る以前の記憶は、炎龍を倒した所で途切れてるし辻褄を合わせるしかないのか?


「そりゃ知ってるさ」

「貴様を鑑定魔法で診断してみたんだが、人間でも魔族でも妖精族でもないと出た。

 でもお前はここにいる。これが何よりの証拠だろう」


 そりゃ神だしな、とは言えないよな。


 大方、その結界とやらは魔力と肉体から種族を判別して通してるんだろうが、鑑定魔法ってのは魂に固定された種族という概念自体を見ることが出来ちまうからな。


 『神』なんて出ねえだろうけど、多分『???』とか出たんだろ。


「俺は人種っすけど」

「まあいい。貴様に光魔法を浴びさせれば済む話だからな」


 待てよ、そもそも入った記憶がないんだけど。


「総員、戦闘配備に着け。コイツは黒だ。燃やして構わない」

「ちょっと待て、燃やすって何の話だ?」

『コール・ミディオット・リ・アンデット』


 魔力の壁は解かれて、周りを取り囲むようにして並ぶ数十人の魔法陣が一斉に展開する。

 同時に周りの風景も目に入ってきたのだが、どうやらここは豪華絢爛な建物の内部らしく、大理石で出来た大層な柱や、地面に敷かれたレッドカーペットがそれを示している。


 モーニングコールにしては過激過ぎやしませんかねぇ? これ。


 いや、まあ『リ・アンデット』なんていう古典魔法が神の俺に効くはずがねえからそれで証明になるだろう。

 一応無抵抗の証として、両手あげておくか。


「射出準備!」


 無抵抗の市民に対アンデット魔法を撃っちゃうんですか。そうですか。

 無抵抗なのに加えて、対アンデット魔法が効かない神種の市民なんだけど、それでも。


「合図があったら撃てよ? 3……2……1……」

「やめて!」


 合図が降りるより少し手前、幼い女の子の声がマズベールの動きを止めた。


「マウレ? どうしてここにいるんだい?」

「お兄ちゃん、なんでまたひとをたおそうとしてるの?」

「それはだね、ローリールの手先の可能性が非常に高くて……」

「ろーりーるのてさきがマー達の街に入ってきたことなんてないじゃん!」


 その子はまだ舌が成長し切ってないらしく、少しカタコトだ。


 赤毛の髪を腰辺りまで伸ばしてるが、見た目で判断するなら大体五歳くらいってとこだろう。

 髪の色も同じだし、兄妹みたいだ。


「確かに無いけど、疑う事も重要なんだよ。マウレ」

「ならたおしにいけばいいのに!」

「それは俺達が弱いから、出来ない」


 ああ、そうか。

 マウレちゃんのお陰で俺の疑いは晴れて、こいつらも得しかしない良い案を思いついた。


「あ、兄妹で仲良くしてるところいいっすか?」

「仲良くしてるように見えるのか!?」

「まあそこらへんはどうでもいいんだけど、これって俺がそのローリールってやつを倒せば万事解決ですよね?」

『ッ!?』


 未だ俺に対して警戒を緩めない杖を持った周りの連中も、目の前のマズベールもまるで変人を見るような目でこちらを見てきた。


 事件が起こった時は、その大元を断つってのが基本だと思うんだけどなぁ。


「んで、俺がローリールを倒したら俺は人間って事で」

「そんな事出来るはずがないだろう?」

「このひとならだいじょうぶ」

「え」


 何故かマウレが俺の擁護をしてくれた。

 当然一文字で驚嘆の声を表現したのは、俺だ。


「わたし、この人がもりの方からとんできたから、もりのほうを見に行ってみたの」


 俺って、森から飛んできたのか? 


「マウレ、お前はまた危険なことを! 俺がなんで森に行くことを禁止してるかわからないのか!?」

「いっぱい、まものがいるからでしょ?」

「そうだ! あの森には熊型の魔物も虎形の魔物も、ドラゴンだっているんだぞ?」


 あ、そういえばそうだった。

 杖を爆発させた反動で発生した衝撃波に巻き込まれて、そのままこの世界の王都であるグレイン・サードウェル街の中心にまで飛ばされたんだ。


 落ちた時に頭を打った衝撃で、そこらへんの記憶が飛んでいたみたいだ。


「ううん、いなかったの」

「それはたまたま遭わなかったというだけで、もしかしたら今頃お前はドラゴンの胃袋の中に……」


 マズベールさん、それは世間一般で兄馬鹿と呼ばれているやつですよ。


 周りの人達の空気も、引き締まったものからだんだん緩んでいく。


 それはきっと、今のマズベールが威厳という言葉を持ち合わせない、ただ妹が心配であたふたする兄にしか見えないからだと思う。

 

「もりのほとんどが大きなクレーターにかわってたの」

「は? 何言ってるんだよ」

「ドラゴンも、くまのまものもとらのまものも、ぜんぶこの人がやっつけたんだよ!」


 よくある兄妹喧嘩に向けられていた視線は、再び俺のもとへと集まった。


 それって俺がやったってバレたらヤバイ気がするんだけど。


 しかし、今は俺が口を出していい雰囲気では無かった。


「そんなはずが無いだろう!? ドラゴンは疎か、熊型の魔物でさえ討伐班を編成しないと討伐は困難を極めるんだぞ? まして一人で討伐など、出来るはずがない!」


 まるで言外に「本当なのか?」と聞いてきてるような視線の強さだ。

 睨まれている訳では無いんだが、ありえないと強く主張されている気がする。

 炎龍だってそんなに強くなかったし、あり得ないって程ではないと思うんだけどな。


「確かに俺が森の魔物を狩り尽くしました。でもそれは襲ってきたからであって、つまり森の中に大きなクレーターを作ったのは不可抗力です」


 後半の言い訳――もとい自らの弁護は流されてしまったようだが、前半の言葉に皆は耳を疑った。


「マズベール団長! 至急お知らせしたい事がございまして……」


 驚愕と疑惑の空気で凝り固められた空間に、少し太った男が何やら真っ青な顔をして走ってきた。

 右手には小さなダンゴムシのような物を持っているが、あれは多分映像魔法を込めた結晶であろう。


「……何だ?」

「森に! 森に大きなクレーターが出来て、出来てるんです!」


 小太りの男が震え気味に放ったその言葉で、ある意味その場の空気は塗り替わった。


 疑惑の混じった驚愕の色から、確かな驚愕の色へと。


 そんなに驚かれると、すごい怖いんだけど。やめろよその目。見開くな見開くな。


「森の中に生息していたはずのドラゴンの大きな鳴き声が聞こえた後に、爆発音がした。と近くに住んでいる夫婦が申しておりまして……熊型の魔物も虎型の魔物も死体が発見されています。

 も、もしかしたらこの王都にとんでもない脅威が迫っているかも……」


 その男の言葉を聞き終わると、より一層俺に対する視線は強くささる。


近くに夫婦住んでたのか。本当にすみません。


「え? まさかこの人がやったんですか?」

「貴様、本当にやったのか?」


マズベールの右手に渡された結晶は大きなクレーターと、魔物達の死骸を映している。


「まあそうなんですけど。つーことは信じてくれたって事でいいですか?」

「信じたとは言ってない……ただ――」


 マズベールが周囲の人間と一人ずつ目を合わせている。


 これってそんなにヤバイことなのかな?

 この世界の強さの基準が分からないから、なんとも言えないんだけど……。


「――ローリールが討伐出来たら信じてやろう」


 別に信じてくれなくてもいいんだけどさ。

 まあ信じてくれるって事は帰してくれるってことだろうし、この世界に降り立って早々拘束されたままってわけにもいかないからな。


「あ、討伐したら帰して下さいよ?」

「討伐できれば……な」

 


 

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