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あま~い星のキケンなおさとう  作者: 立川ありす
第2章 チョコレート祭りは大さわぎ!
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新しいお仕事

「アリサ、なに食べよう?」

「そうね……」

 そう言って、アリサはテーブルの上に広げたメニューをながめる。

 パンケーキのテーブルには、ハチミツのテーブルクロスがかかっている。

 カップケーキのクッションは大きめで、あたしは足がつかずにブラブラする。


 あたしとアリサは、宇宙港の近くにあるカフェに朝ごはんを食べに来ていた。

 カフェのカベはカステラとクリームが何だんも重なったケーキでできていて、まどはイチゴやオレンジの形をしている。

 まどの外はたくさんの人たちが行き交っている。


「マギー。今夜はチョコレート祭りなんだから、あんまり食べすぎちゃダメよ」

「わかってるよ。でも、お祭りが始まる前に、ちょっとだけ仕事するんでしょ?」

「ちょうどよく見つかればね」

 どんな星でもカフェにはいろいろな人が集まる。

 だから、なんでも屋の仕事をさがすにはちょうどいい。

 だから、あたしたちは、ごはんのついでにお仕事をさがしてるの。


 にぎやかな店内では、宇宙港に用事があるテオトル人や、ほかの星から来た魔法使いたちが、パンケーキのテーブルについて思い思いにくつろいでいる。


 カカオ族が、大もりのチョコパフェをガツガツ食べている。


 別のテーブルでは、クリーム族が上品にミルクティーをのんでいる。

 いっしょにバームクーヘンを食べている女の子は、青い目と金髪のアリア人だ。


 その横のテーブルでは、ワニやライオンの顔をしたアーク人たちがジンジャーマンクッキーを食べている。

 アーク人はネコをつれている。アーク人はネコがが大好きだからだ。

 ネコはご主人様にだっこされながら、魚の形のネコ用クッキーをかじっている。


 ダイヤモンドみたいにキラキラ光るアートマンは、コンペイトウをパクリ。

 体が石でできたアートマンは人間のごはんを食べられない。

 でも、おさとうでできたコンペイトウだけは別なの。

 おさとうにはおいしい魔法がかかってるからなんだって。ステキ!


 そして耳の長いエルフィン人は……いないみたいだ。ちょっと残念。

 あたしたちエルフィン人はふるさとの星【アヴァロン】をめったに出ないから、ほかの星ではほとんど見かけないんだ。

 そうやって店のみんなをながめていると、


「ご注文はお決まりでしょうか?」

 プリンの服を着たウェイトレスさんが声をかけてきた。

 白いホイップクリームのぼうしと、キャラメル色ののリボンがとてもかわいい。


「それじゃ、木いちごクリームのカップケーキと、イチゴチョコのドーナツをいただくわ。それとウーロン茶」

 アリサはすらすら注文を言った。

 あたしもあわててメニューをにらむ。

 でもみんな美味しそうで、すぐには選べそうにもない。


「そちらのお客様はなにになさいますか?」

 あたしはこまってしまって、ふとアリサの方を見た。……そうだ!


「じゃあね、あたしは、まっ茶クリームのカップケーキと、まっ茶チョコのもちもちリングドーナツにしようかな。あと、つめたいミルクティー!」

「かしこまりました。少々お待ちください」

 ウェイトレスさんはメニューを持っていった。


 あたしはアリサを見てエヘヘと笑う。

 アリサがすわっていたクッションがまっ茶クリームのカップケーキだったから、同じものを注文したんだ。そんなアリサは、


「いい仕事はあるかしら」

 ケータイを見ていた。

 カフェにあるアクセスポイントにつないで、なんでも屋の仕事をさがすためだ。

 あたしも身を乗りだして、アリサのケータイをのぞきこむ。


「あたしはアルパカの毛をかる仕事がしたいな。カカオ族の街の近くにアルパカ牧場があったんだよ。昨日、見てきたけど、すっごくかわいかった!」

「そうね、マギーは魔法で動物とお話しできるから楽かもしれないわね」

 アリサはケータイに『あるぱか』と入力する。

「『その仕事はひとつもありません』だって……」

 あたしの耳がしゅんとたれる。そうこうしているうちに、


「おまたせしました」

 さっきのウェイトレスさんがやって来た。

 テーブルに、ドーナツの皿とドリンクをならべてくれる。けど、


「あれ? アップルパイやクレープなんてたのんでないよ?」

「それはワシらのじゃ」

 後から声をかけられた。

 そこには2人組がいた。

 ヤギみたいな白ヒゲのおじいちゃんと、ドレッドヘアの女の子だ。


「あ! あなたたちは!?」

 2人は昨日あたしを追いかけ回した悪者……じゃなくて、おまわりさんだ。

「じゃまするよ」

 そう言って、2人は空いているクッションにすわってしまった。


 おまわりさんはカンちがいしてただけだから、もう追いかけられることはない。 でも、ちょっとコワイ。

 だから、アリサのとなりまで木いちごクリームのクッションをずらした。


「あらためまして。ワシは、ヘルメスたかし。おまわりさんをしておる」

「あたしは、テスカトリポリカはなこ。テスってよんでくれ」

 2人が名乗ったので、あたしとアリサもあらためて名前を名乗る。


「この店のアップルパイはさいこうじゃ。なつかしい母親の味がするわい」

 ヘルメスおじいちゃんは、かってにたのんでいたアップルパイを食べる。

「チョコバナナクレープもさいこうだ」

 テスも大きな口をあけてクレープを食べる。


 そんな2人を、アリサがイヤそうに見ていた。

 2人はかってにおかしを注文したりして、ちょっとずうずうしかったからだ。


 しかたがないので、あたしも、まっ茶のドーナツをひと口かじる。

 まっ茶チョコは、しっとりあまくて、生地はもちもちで、とてもおいしい。


「ここのチョコレートは、親せきの子どもたちがとったカカオで作ってるんだ」

「あ。ちっちゃい子たちがカカオ豆をとってるところ、見たことあるよ」

 テスにあたしが答えると、アリサは口をとがらせて、


「……地球にもそういう子がいて、無理やりに働かされてるわ」

「この星じゃ、そんなことはしないよ。学校が終わってからお手伝いをするんだ」

「そうですか。それで、なんの用事ですか?」

 アリサはムッとした口調で言った。

 言い返されて面白くなかったからだ。

 それに、テスの言葉づかいがらんぼうなのが気にいらないんだろう。

 いつもお姉さんぶってるアリサだけど、ときどき子どもみたいなことを言うのでかわいい。でも、


「アリサくんとマギーくんは【なんでも屋】じゃろ? 仕事をたのみたいんじゃ」

 おじいちゃんは平気な顔で言った。

「仕事?」

 あたしとアリサは顔を見合わせた。


「今夜、チョコレート祭りがあるじゃろ? そのガードマンじゃよ」

「チョコレート祭りのガードマン、ねえ……」

「どうする?」

 あたしとアリサは、もう一度、顔を見合わせる。


 たしかに、お仕事はさがしていた。

 けどそれは、お祭りが始まるまでの時間でできるちょっとした仕事だ。

 お祭りの間じゅう会場の入口に立っていたいわけじゃない。


 あたしは「ことわろうか?」とアリサを見やる。

 でも、おじいちゃんはアリサにケータイの画面を見せた。するとアリサは、


「このお仕事、受けましょう」

 ニコニコしながら言った。


 あたしはケータイをのぞきこむ。

 画面には、仕事のお礼にたくさんのお金をくれるって書いてあった。

 アリサの目は、お金みたいにキラキラかがやいている。

 アリサたち地球人は、お金もうけが大好きなのだ。


「もー、アリサったら」

 口をとがらせるあたしに、テスが手配書を見せた。


「あー!! この人たち!」

 テスがさしだした手配書には、オニみたいな3人の男がうつっている。

 指名手配中のおたずね者だ。

 そして、昨日、あたしにからっぽのスーツケースをおしつけていった人たちだ!


「こいつらは、持ってちゃいけない【キケンなさとう】をこっそり売ってるんだ」

 あたしは手配書を「イーッ!!」とにらむ。

 この人たちにだまされて、おまわりさんと追いかけっこするはめになったのだ。

「でもって、今夜のチョコレート祭りで【さとう】の取引をするらしい」

 テスはニヤリと笑った。


「あんたも、こいつらに会って話がしたいだろ?」


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