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あま~い星のキケンなおさとう  作者: 立川ありす
第3章 パーフェクト・パフェは、最高にあまくておいしい!
14/16

たたかう2

『おまわりさんにたのまれて調べてたんだけど、あいつらは【キケンなさとう】で手にいれたニセモノの魔法で、カラメルのワイヤーを作っていたの』

 テレビ電話のモニターの中で、アリサが教えてくれた。


 あたしたちは、巨人からはなれた場所を飛びながら、アリサの話を聞いている。


 おまわりさんたちはみんなやられてしまった。

 だから、飛んでいるのは、あたしのスクワールⅡとアリサのヘッジホッグ、後ろに下がっていたククルのヘッジホッグだけだ。


『ワイヤーは見えないくらい細くて、固いから、なんでも切りさいてしまうわ。それをカタナみたいにふりまわして切ったり、アミみたいにして身を守ってたの』

 アリサが言った。


「それじゃ、おまわりさんのディルバーンがやられたのは……」

 あたしはさっきのこと、昨日のことを思いだす。

『そう。見えないカラメルのワイヤーで切られてたのね』

 巨人にやられたおまわりさんの飛行機も、スーリーにやられたテスとおじいちゃんの飛行機も、いつの間にかエンジンやコンピューターを切りさかれていた。


『そして、マギーくん、キミもじゃ』

 1機のディルバーンが飛んできた。

 ひとつだけになったエンジンで、よろよろ飛んでいる。


『ほかの3機は落とされた。……乗ってたおまわりさんがにげるのでせいいっぱいだった。あたしのディルバーンも、これ以上は飛べそうにない』

『じゃが、ワシらのちゅうしゃ器だけは、なんとか無事じゃ』

 おまわりさんたちは無事だったんだ。

 ほっとしたあたしは、おじいちゃんにたずねた。


「あたしもワイヤーで切られてたって、どういうこと……?」

『昨日、マギーくんは公園で男の子をつかまえようとしたじゃろ?』

「え? 昨日って……?」

 あたしは思いだす。にげる男の子をつかまえようと手をのばした。

 でも、アリサに足をつかまれた。


『そのとき、ヤツらはカラメルのアミで身を守っていたんじゃ。カラメルがキラッと光るのが、アリサくんの左目にうつっておった』

「それじゃ、あの時アリサは……!?」

『おじさんに話を聞いて、おいかけてるわしらがしんぱいになったんじゃろうな』

 だから、走ってきてくれたんだ。


 スピードアップする魔法なんて使えないのに。


 近道を見つけて、息が切れてしゃべれなくなるくらい走ってくれた。

 足を引っぱって止めてくれた。


 あのとき、あたしはキケンなカラメルのアミに、頭からつっこんでいくところだった。そんなあたしを、アリサはたすけてくれた。


 アリサが3人組のスーリーをボコボコのボロボロにしたのも、バカにされたからだけじゃなくて、あたしが大ケガをするところだったからなんだ。


 それなのに、あたしはアリサにバカって言ってしまった。

 あたしの耳がしゅんんとたれる。


「あのね、アリサ……」

 ……ごめんね。

 そう言おうとしたそのとき、テレビ電話にアリサがうつった。


『カラメルが見えるようになるプログラムを送ったわ。巨人を見てみて』

 言われて、ガラスの風よけごしに巨人を見やる。


「巨人のまわりに、赤い糸が見えるよ?」

『そう。それがプログラムで見えるようになったカラメルのワイヤーよ。このプログラムを作るのに時間がかかったから、来るのがおくれたの。もう少し早く来られたら、おまわりさんたちも使えたんだけど……』

 アリサはしょんぼりした。

 おまわりさんたちはみんなやられちゃって、のこっているのはあたしとアリサとククルだけだ。


『反省は後でもできる。アリサくんたち3人と、ちゅうしゃ器がのこっておるんじゃ。まだ、負けたわけではない!』

 テレビ電話におじいちゃんがうつって、はげましてくれる。


『じゃが、問題がひとつある』

「問題って?」

『ちゅうしゃ器が1本だけじゃと、弱点にちゅうしゃしないときかんじゃろう』

「そんな! 弱点って、どこなの……?」

『巨人のどこかに3人組がうまっとるはずじゃ。そいつらが弱点なんじゃが……』

『それなら、だいじょうぶです。あいつらのひとりに発信機をつけてあります。近くまで行けばわかると思います』

『おお! さすがはアリサくんじゃ!』

「アリサってば、発信機なんて、いつつけたの?」

『ほら、お祭りであいつらと話した時よ』

 首をかしげるあたしに、アリサは答えた。


『おかげで服にヘンなにおいがついて、クリーニングに出さなきゃならなくなったわ。あたしもマギーみたいに、おかしの服をもう1着、買おうかしら?』

 あたしはアリサのしたかったことが、わかった。

 わかったから、思わず笑った。


 お祭り会場で、アリサは長髪の人にだきついた。

 すごくショックだった。


 でも、あれは、発信機をつけるためだったのだ。

 3人組となかよくしたいからじゃなくて、お仕事をがんばっていたのだ。


 ワンピースも、クリーニングに出していたから着れなかっただけだ。

 おかしの服がイヤなわけじゃなかった。


『ならば、ちゅうしゃ器はアリサくんにまかせよう』

 ヘッジホッグは長いアームを使って、ちゅうしゃ器を受けとる。

 かわりに、持っていたバスケットをスクワールⅡのアームにつけてくれる。


『ねえ、マギー。知ってる?』

「なあに? アリサ」

『このちゅうしゃ器も、ガトリング先生が考えたものなのよ』

 グミ人形にもなった、えらい地球人の先生だ。

『ガトリング先生はとても発明好きだったそうよ。地球にいたときから、おいしゃさんが使う道具をたくさん発明していたんですって』

 アリサが、自分と同じ地球人のことを楽しそうに話す。


 でも、今はそのことがイヤじゃない。

 あたしの知らないアリサのこと、アリサの星の人のことを聞くのが楽しい。


 アリサがあたしのことを考えていてくれるって、すごくわかった。

 だから、あたしもアリサのことをもっと知りたい。

 アリサをもっと信じられるように。だから、


「ねえ、アリサ」

 モニターの中のアリサにむかって、問いかける。


「もしラクチンにだれでも使える魔法があったら、アリサは使いたいって思う?」

『そうね……』

 モニターの中のアリサは少し考える。そして、


『べつに、使えなくてもいいわ。今のままで』

 そう答えた。3人組みたいによくばりじゃないからかな。

 それとも、機械いじりが得意だから、魔法はどうでもいいのかな?

 もし、そうなら、ちょっとさみしい。でも、


『だって、魔法のことならマギーにたのめばいいじゃない?』

 アリサはそう言って笑った。

 あたしも笑う。


『まって。やっぱり、ひとつだけ使いたい魔法があるわ』

「え、どんな魔法? あたしじゃ使えない魔法……?」

『そうよ。わたしが使いたいのは【マギーがちゃんと勉強する魔法】だもの』

「もう! アリサったら! そんな魔法なんかなくても、たくさん勉強して、りっぱな魔法使いになってやるんだから!」

『ふふ、楽しみにしてるわ』

 アリサとあたしは、テレビ電話のモニターごしに笑いあう。


 あ、そうだ。


「ねえ、アリサ」

『こんどはなによ?』

「【ロッテ戦法】って、知ってる?」

 それは、あたしを追いかけたテスとおじいちゃんが使った戦法だ。

 先頭の人がこうげきして、相手がビックリしたら次の人がこうげきするの。

 2人のタイミングがピッタリあうと、相手はとてもじゃないけどよけられない。


 そんなこうげきをするのは初めてだ。

 でもアリサは、あたしのことを大事に思って、いつも見ていてくれる。

 だから、できると思った。


『もちろんよ。マギーこそ、そんなの知ってるなんてめずらしいわね』

「アリサったら、すぐそういうこと言う!」

 あたしはぷぅと口をとがらせて、でも思わず笑う。

 いつもと同じように言い合いをして安心しちゃったからだ。

 するとアリサも笑顔になった。


『じゃ、先頭はマギーね。ムチャはだめよ』

「もー、わかってるってば!」

『こんどは、わたしも手伝うわね~』

 ククルのヘッジホッグがやってきた。


 たたんであった固焼きプレッツェルのたいほうをのばして、かまえる。

 昨日、アリサが使ったミスティルテインだ。

 これならワイヤーがとどかないくらい遠くからこうげきすることができる。


『ククル、わたしたちに当てないでね。それじゃ、マギー、行くわよ!』

「うんっ!!」

 あたしはスロットルを引きしぼる。

 スクワールⅡが、大きなエンジンから光の粉をふいてスピードをあげる。

 あたしの体が、加速Gに引っぱられてシートにおしつけられる。

 でも、まだまだ。


「風さん、空気に宿る魔力さん、力をかして!」

 スクワールⅡはすごいスピードで巨人につっこむ。

 白いおさとうの巨人が、ぐんぐん大きくなる。


 巨人のむねに向かってつっこむ。

 弱点がここにある『かくりつ』がいちばん高いって、アリサとおじいちゃんが言ったからだ。


 グオオオォォォォォォォ!!


 巨人がさけぶ。

 巨人のまわりに赤い糸があらわれて、あたしに向かって飛んでくる。


 巨人はわめくように何度もさけぶ。

 赤い糸が次々にはなたれる。


 でも、見えてさえいれば、よけるのはカンタンだ!

 あたしはスティックをかたむける。

 スクワールⅡはヒラリ、ヒラリと糸をよける。


 ヘッジホッグも、あたしの後にピッタリついてくる。

 さすがアリサ!


 今度は近づいたあたしたちにパンチしようと、巨人がこぶしをふりあげる。

 でも、その手は何発ものたいほうにうたれて、バラバラになってふっとんだ。

 ククルのねらいうちだ。


 あたしはゲイボルグはっしゃのボタンをおす。

 ミサイルが飛んでいくたくさんの【◎】が、巨人の体じゅうにあらわれる。


 シュボボボボボボッ!


 バスケットのフタがパカッて開く。

 エクレアたちが、クリームのけむりをあげながら飛んでいく。

 エクレアは巨人の顔ではじけて、ビックリさせる。


「アリサ! 弱点の場所はわかった?」

『おしりよ!』

「カゼをひいたときに。ちゅうしゃをうってもらうところだね」

 もうっ、『かくりつ』なんて、ぜんぜんあてにならない!


『でも、だいぶ下におりないといけないわね』

「それなら、あたしが巨人の気をそらすね!」

 あたしは引き金をひく。


 タタタタタッ!


 てっぽうをうって、巨人をまたまたビックリさせる。


 そのスキに、ヘッジホッグはあたしの後ろから飛びだす。

 そして巨人のおしりに向かって飛んでいく。


 あたしはスティックをかたむける。

 スクワールⅡは巨人の頭のまわりを飛びまわって気をそらす。


 巨人は両うでを元どおりにして、スクワールⅡをたたこうとする。

 けど、あたしはスティックをあやつって、スクワールⅡは足のエンジンをすばやくふかしてよける。


 ワイヤーの魔法を使ってこないのが気になる。

 まさかアリサがねらわれてる?

 頭のカメラを動かして、ヘッジホッグが飛んでいった下のほうを見る。


「あっ、アリサ!」

 巨人のおなかのあたりにあらわれた赤い糸が、ヘッジホッグを追いかけていた。

 反重力でふわふわうかぶヘッジホッグは、速く飛ぶことができない。


 でも、ヘッジホッグののまわりで風がふいた。

 アリサをのせたヘッジホッグはスピードを上げて、赤い糸を引きはなす。


「風さん、ありがとう!」

 あたしがさっきかけた風の魔法は、自分じゃなくてヘッジホッグにかけたんだ。

 ヘッジホッグは速く飛べないけど、風に手伝ってもらうのなら話は別だ。

 前にある空気はどいてくれて、後ろの空気はヘッジホッグの丸い大きなせなかをおしてくれる。

 だから、今のヘッジホッグは速く飛ぶことができる。

 あたしは安心した。そのとき、


「きゃっ!?」

 スクワールⅡがはげしくゆれた。


 前に進まない。

 エンジンをフルスロットルでふかしても動かない。

 あたしがアリサを見ているスキに、巨人につかまっちゃったみたい。


 タタタタタッ!


 巨人の手をうとうと頭のコンピューターを動かすけれど、ぜんぜんあたらない。

 ククルのたいほうが巨人の頭やおなかにあたる。

 でも、巨人の手にはあたらない。

 ククルはアリサほどたいほうをうつのが上手じゃないから、巨人の手をうとうとするとあたしに当たっちゃうからだ。


『マギー!?』

 ヘッジホッグのカメラが、あたしのほうを向く。

 あたしが巨人につかまったのはアリサからも見えているらしい。


 でも、ヘッジホッグはそのまま進む。

 スクワールⅡがミシミシ音をたてる。巨人がにぎりつぶそうとしてるからだ。


 ヘッジホッグにかけた魔法をといて別の魔法を使えば、巨人の手をふりほどくことができる。

 でも、あたしは魔法をとかない。


 アリサを信じてるから。


 いつだって、アリサはあたしを守ってくれるから。


 巨人のおしりにおちゅうしゃをするのが、あたしをたすけるいちばんの方法だって知ってるから、アリサはぜったいにやってくれる。


 グオオオォォォォォォォ!!


 巨人のおしりに回りこんだヘッジホッグに、赤い糸がおそいかかる。

 ヘッジホッグは器用に動いて糸をよける。

 でも、機体の下側にある反重力エンジンが切られてしまった。


「アリサ!?」

 それでも、ヘッジホッグは飛ぶ。

 あたしの魔法を使って、巨人のおしりに飛びこむ。

 スクワールⅡがミシミシ音をたてる。


「風さん! おねがい、アリサを守って!!」

『この、くされ巨人! マギーをはなしなさい!!』

 あたしとアリサのさけびとともに、ヘッジホッグはつっこむ。

 巨人のおしりの前に止まって、ちゅうしゃ器をつきつける。


 キイィィィィィィィン!


 ズダダダダダダダダダッ!!


 ちゅうしゃ器はモーターの音をたてて、ものすごいスピードで回る。

 回りながら、するどくとがった大きなハリを、てっぽうみたいにうちまくる。

 1秒間に100発だ!


 ズダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!


 巨人のおしりに、たくさんのハリがつきささる。

 ささったハリは、おさとうの巨人に魔法のインスリンを流しこむ。


 やがて、白い巨人はあばれるのをやめた。そして、


「やった! 巨人がとけていくよ!」

 頭からゆっくりとさとうにもどって、風にふかれて消えていった。

 あっという間だった。


『ふう、なんとか終わったわね』

 モニターの中で、アリサが笑う。そのとき、


「な、なに!?」

 機体が下向きに引っぱられた。


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