たたかう1
「ヒドイ!!」
街は大変なことになっていた。
ソフトクリームの家は、やねがふっとんでコーンだけになっていた。
ケーキのビルは、まん中からへし折れていた。
アイスキャンディーの木は台風の後のようになぎたおされていて、ビスケットの道はあなだらけだった。
街の人たちはにげられたみたい。
けど、おいしそうなおかしの街はムチャクチャになっていた。
あたしは、悲しくなった。
はらがたった。
交番があった場所では、白い大きな巨人があばれている。
こしから下は地面にうまっているのに、とても大きい。
おかしの家より大きい。
飛行機を100機集めたくらい大きい。
ビルくらい、宇宙船くらい大きい。
大きな巨人はマッチョでムキムキだ。
まっ赤な目をカッと見開いて、口はほっぺがさけそうなくらい大きくて、まるで公園にあったモンテスマ人形みたいだ。
おさとうの巨人は天に向かってほえる。
そして、近くにあった家のやねをむしりとって、口にほおりこむ。
ボリ! ボリ!
地面を見ると、カカオ族の子どもが泣いていた。家を食べられたからだ。
子どもに気づいた巨人は、子どもに向かって食べかけのやねをなげつけた。
あぶない!
タタタタタッ!
子どもにぶつかりそうになったやねを、てっぽうでうちおとす。
バラバラになったやねのかけらを、体当たりでふっとばす。
なんとか子どもに当たらずにすんだ。
家のかけらのかげから、そばかすの女の子が飛びだしてきた。
あたしにペコリとおじぎをする。
そして子どもをかかえて、安全なところまでにげていく。
こんなの、ヒドイ!
ぜったいに巨人を止めなきゃ!
『【なんでも屋】のマギーさんですね! お話は聞いています!』
おまわりさんからテレビ電話がかかってきた。
真面目そうなプリン族のお姉さんだ。ちょっとだけアリサににているかも。
『もうすぐ、ヘルメスけいぶとテスけいぶがヒミツ兵器を持ってきます。わたしたちの仕事は、ヘルメスけいぶたちが来るまで、巨人が街をこわすのを食い止めることです。でも気をつけてください! 相手はとても強いです!』
見やると、巨人のまわりを、白と黒でスカンクみたいなディルバーンたちが飛びまわっている。
キュイーン! キュイーン!
ディルバーンたちは、目からビームをうって巨人をこうげきする。
タタタッ! タタタタタッ!
小さなアームでささえられた、てっぽうでうつ。
でも、ビルより大きな巨人はビクともしない。
それどころか、大きなうでをひとふりした。
あまりに大きなうでなので、ビュウッと空気がふるえる音がした。
ディルバーンたちはあわててよける。
でも、1機がたたかれて、ふっとばされた。
さっき電話をくれたおまわりさんだ!
「おまわりさん!」
あたしは、思わずさけぶ。
飛行機がふっとんでいった方向を見て、巨人はわらう。
ヒドイ! なんで、こんなヒドイことばかりするの!?
そんな巨人の足に、光るものがいくつも当たった。
火の玉やビームやレーザーだ。
がれきのかげから、クリーム族の魔法使いたちが魔法をぶつけている。
カフェにいた人たちだ。
みんな、家をこわされて、ものすごくおこっている。
でも、巨人が地面をドンッとたたくと、魔法使いたちはふっとばされた。
「風さん、空気に宿る魔力さん、みんなを守って!」
あたしは魔法で空気のクッションを作って、魔法使いたちを受けとめる。
「あぶないから、みんなはにげて! ここは、あたしたちがなんとかするわ!」
「たのみましたわ!」
魔法使いたちは飛んでいった。
あたしは運転席のボタンをおしてフタを開く。
中に入っていたボタンをおす。
スクワールⅡがアームでささえたクルミが開いて、のびて、2つにわれて、大きな2本のてっぽうになる。クラウ・ソラスだ。
「伝説の魔法使いイルダーナさま、あたしに力をかしてください!」
あたしは呪文をとなえて、引き金を引く。
バチバチかがやくプラズマが、巨人の体めがけてつきすすむ。
大きな巨人はよけられない。
にえたぎるプラズマは、頭をかばった巨人のうでに当たる。
さとうがジュッととけて、家くらい大きなうでが、ふっとぶ!
でも、ふっとばされたうでのつけねが、白くにごったさとう水におおわれた。
さとう水はヌルヌルうごめいて、うでの形になる。
そして、巨人のうでが元にもどってしまった。
「そんなー!! うっても元にもどるんじゃ、なにをしたってムダじゃない!」
どうしたらいいのかわからない。
おまわりさんたちも、巨人のまわりをぐるぐる飛び回るしかできない。
巨人のこしから下は地面にうまっているから、追いかけてきたりはしない。
でも、このままでは街がどんどんこわされていく。
あたしはなにもできなくて、あせる。そのとき、
『またせたな!』
『間に合ったようじゃな!』
『みなさん、マギーちゃん、ごぶじですか~?』
4機のディルバーンと、ククルのヘッジホッグが飛んできた。
「どうしよう! ビームも魔法もきかないの! たいほうでうっても、すぐに元にもどっちゃうの!」
あたしはさけんだ。でもククルは、
『だいじょうぶ~』
そう言って、ニッコリ笑った。
『わたしたちは、巨人をやっつけるためのヒミツ兵器を用意してたのよ~』
「ヒミツ兵器って、そのちゅうしゃ器が?」
ディルバーンたちの小さなアームは、大きなちゅうしゃ器をかかえている。
とても大きい、飛行機と同じくらい大きなちゅうしゃ器だ。
『そうよ~』
ククルが答えた。
おかしみたいなヘッジホッグは、ディルバーンたちの間を飛びまわりながら、ちゅうしゃ器の最終チェックをしている。
『あの巨人さんの体は、おさとうの魔法で作られてるの~。だから、こわれてもすぐに元にもどっちゃうの~。でも、このちゅうしゃ器があればだいじょうぶ~。これには【魔法のインスリン】っていうお薬がつまってるの~。それを巨人さんにおちゅうしゃすると、さとうがとけて消えちゃうの~』
「でも、あの巨人は魔法でもてっぽうでもビクともしなかったんだよ?」
『それもだいじょうぶ~。このちゅうしゃ器は、グルグル回って、1秒間に100発のハリをさすの~。しかも、ハリの根元をばくはつさせて、ものすごい力でつきさすのよ~。てっぽうのたまを飛ばすのと同じ仕組みね~。ううん、こんなに大きいから、たいほうをうちこむのと同じくらいかしら~』
ククルは自信たっぷりの笑顔で言った。ちゅうしゃ器のハリがギラリと光る。
大きなちゅうしゃ器の先には、するどくとがったハリがついている。
ちゅうしゃ器の本体にまけないくらい、太くて大きい。
こんなのを1秒間に100発もさしたら、さすがの巨人もひとたまりもない。
『あたしとチャック、マヤウェル、ウィツィロポチトリの4機で、ヤツに魔法のインスリンをちゅうしゃする! 配置はさっき説明したとおりだ!』
テスはほかのおまわりさんたちに向かって、元気に言った。
『ほかのみんなはヤツをこうげきして、気をそらしてくれ!』
すると、おまわりさんも『ラジャー!!』と元気よく答える。
ひょっとして、テスとおじいちゃんって、いつもはちょっとこまったおまわりさんだけど、いざという時にはみんなにたよりにされてるのかな?
「ひとつ聞いていい?」
あたしは、モニターの中のテスにたずねる。
「テスとおじいちゃんは、カカオ族とクリーム族なのに、なんで仲がいいの?」
『仲いいか?』
テスは後の席のおじいちゃんに向かって首をかしげる。
そして、あたしに言った。
『そりゃま、協力しないとやってられないからな。悪いヤツは、こっちがケンカしてるからって待ってなんかくれないんだ。だからあたしは悪いヤツ以外とはだれとでも協力する。頭でっかちのクリーム族でもな』
そう言って、ニヤリと笑った。
『はりきりすぎのカカオ族でもな!』
テスの後で、おじいちゃんも笑った。
そのタイミングがまんざいみたいにピッタリあっていたから、あたしはクスッと笑ってしまった。そんなあたしに、
『おまえとアリサだって同じだろ?』
テスはあたしを見て、ニッコリ笑う。
「仲……いいのかな?」
あたしは首をかしげる。
アリサはいっつもブツブツ小言を言うし、あたしもアリサのこと……わからなくなっちゃうことだって何度もあるのに。
でも、おじいちゃんもニコニコ笑いながら言った。
『最高のコンビに見えるがね。2人ともいい子じゃし、なにより、おたがいが、おたがいのことを大事にしておる』
おじいちゃんがそう言ってくれたので、そうなのかなと思った。
アリサは、あたしのことを大事に思ってくれてるのかな。
そうだといいな。
あたしはエヘヘと笑った。
『ちゅうしゃ器のチェックが終わったわ~。4本とも、バッチリうてるわよ~』
ククルの声がした。いよいよ作戦開始だ。
『アリサくんが間に合わなかったのは残念じゃが、しかたない。ククルは下がっててくれ! それと昨日、ワシらはヤツに見えない魔法でこうげきされた。みんなも気をつけるんじゃ! マギーくんもじゃ!』
「うん! だいじょうぶ!」
あたしは大きな声で答える。
そして、昨日、スーリーを追いかけていたディルバーンがエンジンを切りさかれたことを思いだしていた。
たぶん【おさとう】の魔法なんだと思う。
けど、どういう魔法なのかはわからない。
こんなとき、アリサがいてくれたらなって思う。
でも、だいじょうぶ。
たくさんのおまわりさんがいっしょなんだもん!
アリサがどうしていないのかは、わからない。
けど、おくれて来るまでに巨人をやっつけて、ビックリさせちゃおうっと!
ディルバーンたちが巨人のまわりを飛び回る。
もちろん、なぐられないように遠くから。
キュイーン! キュイーン!
ディルバーンたちがビームをうつ。
ビームは巨人にきかないけど、巨人はいたくてさけび声をあげる。
あたしもスロットルを引きしぼる。
スクワールⅡはエンジンをフルスロットルにして巨人につっこむ。
タタタタタッ!
引き金を引いて、てっぽうをうつ。
おこった巨人が、スクワールⅡをつかまえようとする。
あたしはスティックをかたむける。スクワールⅡはすばやくかわす。
そのスキに、ちゅうしゃ器をかかえたディルバーンたちが巨人につっこむ。
1機は頭、1機はおなか、そして左右のうでに1機づつ。
そのとき、巨人が天に向かってほえた。
グオオオォォォォォォォ!!
『なに!?』
テスがひめいをあげた。
ちゅうしゃ器をかかえたディルバーンたちが、地面に向かって落ちていく。
4機ともエンジンを切りさかれていた。昨日と同じだ。
『うわ!?』
『きゃあ!!』
おまわりさんたちのディルバーンも、けむりをふきながら次々に落ちていく。
みんなエンジンやコンピューターを切りさかれていた。
巨人は、あの、わけのわからない魔法を使ったのだ。
「あの魔法はなんなの……!? コワイよアリサ!」
あたしはガラスの風よけごしに巨人を見やる。
巨人と目があった。
オニみたいにつり上がったまっ赤な目であたしをにらんで、ほえる。
スクワールⅡにも魔法を使うつもりだ。
やられちゃう!
あたしはギュッと目をつむる。そのとき、
『マギー!! 上に飛んで!』
声がした。
とっさにスティックを引きしぼる。
スクワールは足のエンジンを下向きにふかして、上に向かって飛ぶ。
ガンッ!
音がして、スクワールⅡがゆれる。
やられた!?
でも切りさかれたのはクラウ・ソラスだけだった。本体はなんともない。
アームを動かして、こわれたてっぽうを切りはなす。
『間にあって良かったわ』
見やると、後から、丸いぐんじょう色の飛行機が飛んできた。
ヘッジホッグだ。
「アリサ!?」
あたしはほっとした。
わけのわからない魔法でみんなやられてしまった。
だけど、アリサが来てくれたから、だいじょうぶだって思った。でも、
「あぶない!! アリサ!」
巨人が息をすいこむ。
アリサのヘッジホッグに魔法を使うつもりだ!
でも、モニターにうつったアリサはニヤリと笑う。
グオオオォォォォォォォ!!
ヘッジホッグはちょっとだけ横に動く。
反重力でふわふわうかぶヘッジホッグは、速くは飛べないけど器用に動ける。
後にあったケーキのビルがまっぷたつになった。
ヘッジホッグは……なんともない!
「よけた……? アリサには、あれが見えるの!?」
ヘッジホッグはせなかからバスケットを取りだす。
シュボボボボボボボボッ!
バスケットから100こくらいのエクレアが、白いクリームのけむりをふいて飛んでいく。たくさんミサイルの【ゲイボルグ】だ。
ミサイルたちは巨人の顔にぶつかって、バババババーンとはじける。
『巨人がビックリしているうちに、いったんはなれて!』
アリサが言った。
あたしはスクワールⅡをクルンと一回転させて、巨人からはなれた。




