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■エピローグ■遠い日の約束

 

 十年前の夜。


「大好きよ、ダック。だから、ずっとネリィのそばにいて」

「僕も大好きだよ、ネリィ、だが」

「じゃあ、帰らないでネリィと一緒にいて。遠くに行ってしまわないでっ」

「ネリィ」

「ずっとここにいればいいじゃない!」

「……ごめん。ここは僕の家じゃないんだ。だから、家に戻らなくては」

「じゃあ、お爺様に頼んで、私の家に一緒に住めばいいわ」

「そうはいかない。ごめん」

「どうして帰ってしまうの? もう会えなくなるのに。どうして一緒にいてくれないの? 一緒に……一緒に……」

「今は連れてはいけないが、大人になったらネリィを僕の住むところへ招待できる。そうすればまた会えるよ」

「……お爺様を置いてはいけないわ。お爺様、耳が悪いからネリィがいないと……」

「そうだろう? だから、ネリィが大人になったら招待するよ。いずれネリィのお爺様はケルン領を国に返還するようだから、ネリィと二人でここを離れることになるだろう。その時には僕の元へ呼ぼう」

「本当? 大人になったら、本当にダックと一緒にいられる?」

「大人になればね。それまで待てるかい?」

「待てるわ」

「じゃあ、約束しよう。僕はネリィが大きくなったら必ず僕のところへ招待する。その時はネリィが望むだけ一緒にいよう」

「結婚の約束ね!」

「えっ? 結婚!?」

「そうよ。大人になったらずっと一緒にって、結婚するってことなんでしょ?」

「……え? あ、いや……そう、か?」

「そうでしょ。私、大人になったら、ダックを迎えに行くわ」

「えっ?」

「だって、ダック、方向音痴なんだもの。ダックがネリィを探している間にどこかで迷子になったら困るでしょ? 森にはダックの苦手な虫や蛇がたくさんいるから、そんなところに迷い込んだらダックが出てこられなくなっちゃうもの」

「……森では一度迷っただけで、そこまで酷くはないと思うよ」

「だから私がダックを迎えに行くわ。それで、結婚してくださいってプロポーズをするの」

「プロポーズは、僕の役目じゃないのかい?」

「ダックはね、私を抱き上げて『待ってたよ、僕の姫君』って言ってキスするの!」

「それはこの前読んだ幽閉王子の話だな。だが、他の本だとプロポーズするのは男だろ? それが普通なんだ。だから役を逆にしよう」

「ダックが、結婚してくださいって言って、ネリィが、お待ちしていました私の王子様って言うの? 嫌よ、そんなの。つまらないわ」

「お待ちしていましたって言うネリィは、きっと可愛いと思うな」

「駄目。ダックの方が綺麗だから、ダックが待つ役!」

「ネリィの方が可愛いよ。綺麗なドレスを来て僕を待っているんだ。とても可愛いだろうね」

「駄目ったら駄目っ! 私が迎えに行くの! ネリィがプロポーズするのよっ」

「じゃあいいよ。僕はプロポーズしないし、迎えにも行かない。でも、プロポーズしないと結婚はできないんだよ? ネリィが大人になって、プロポーズするのが嫌だと思っても知らないよ?」

「嫌だなんて思うはずないわ。だって、プロポーズしたらダックとずうっと一緒に居られるのよ? そうしたら、私は一人ぼっちじゃなくなるんだもの、きっとみんなに聞こえるように大声で言うわ。ダックの耳がお爺様の耳みたいになっていても聞こえるように」

「できれば耳が遠くなるまでに迎えに来ておくれ」

「わかってるわ。早く大人になるから。だから忘れないで。絶対に忘れないでね。求婚しに行くから待っていてね。約束よ」

「約束する。……ずっと、ずっと、待っているよ、僕の姫君」



~The End~


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