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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第5章 日いづる国
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星を継ぐ者

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E6%98%9F%E3%82%92%E7%B6%99%E3%81%90%E8%80%85

佐賀関サガノバリアー町の駐在所の周りには、海を破壊した一味が捕まっているとの噂が流れたために、物凄い人だかりとなっていた。

勿論、地元の漁師ばかりではなく近隣の村や町からも半殺しにしてやろうと殺気立った連中が集まっていた。


ここ佐賀関サガノバリアーは元々AIポリスが配備されていなかったので、今回の騒動の中でも、町の駐在所の警官は当たり前に勤務していたのだった。


「あんたらぁ、運が良いよぉ。もし俺が出勤してなかったら今頃どんな目に遭ってたか。」


まだ若い警官は窓の外の野次馬を孫の手で指しながら言って聞かせる。


「ひ~~ん、ありがとうごじゃいます~~~~」


泣きじゃくりながら感謝するAIヤッホーバンクの後輩社員。


「私達、いつ家に帰れるんでしょうか?嫁が煩いんで・・・」


先輩の方はカミサンの方が怖いと見える。


「帰れるかなぁ?ちなみにこれって新型の銃じゃないよね?」


警官の手にはレーザー衛星に洗濯船の座標を伝えるためのポインター銃が握られていた。

銃口には小さなライトが埋め込まれているだけで実弾が飛び出すような物でないことは警官にも分かっていた。


「あ、でもさぁ、最近の科学って凄く進んでるから、この小っこいライトからトンでもないレーザー光線とか出たりして!」


そう言いながら銃口を後輩社員と先輩社員に交互に向ける。

二人とも必死に身をくねらせて銃口から逃れようとする。


「や、やめてくださいよぉ~~。なんかの座標を計測するだけの道具らしいですよぉ~~。」


先輩社員は困惑顔で警官に銃を向こうに向けるようなジェスチャーをする。


「へぇ~~、つまんねぇ・・・は、は、はっくしょん!!」


カチッ!!

クシャミの反動でトリガーを握ってしまった警官に、慌てる二人の社員。


「あわわわ~~~~っ!」


-------------------------------


その頃はるか上空の地球の衛星軌道上に浮かぶ『巨大焦げ餃子』のようになっている宇宙ゴミ袋の中のレーザー衛星は座標を受信した。

ひしめき合うスペースデブリを反射板で強引に押し退け、座標の位置にレーザー砲の照準を合わせる。


ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

・・・・・・・・・・・

・・・・・・

ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

・・・・・・・・・・

・・・・・

ドカーーーーーーーーーーーーーーーーン!!

・・・・・・・・

・・・・・

・・

レーザー砲から発射された光線は、『絶対に破れない宇宙ゴミ袋』の中で何度と無く乱反射し、あらゆるゴミを焼却し続ける。

ついにレーザー衛星自体も自身が放ったレーザーによって再起不能なまでに破壊されたのであった。

----------------------------

「なんだよ。何も起きねぇじゃん。」


詰まらなさそうに警官はポイッと机にポインター銃を無造作に放る。


「よ、良かった~~~・・・」


恐怖のために抱き合っていた先輩と後輩は、ビビリながらも胸を撫で下ろすのであった。

しかし窓の外からの刺す様な視線は当分収まりそうに無かった。

-----------------------------

ヴィ~~~~~~~~~~~~~ン・・・

『NO,1』は、巨体の割りに起動時の音は小さかった。


「・・・うっ・・こ、ここは?」


『NO,1』の音声発生装置から博士の声が聞こえてきた。


「はっ!あなた方は?」


部屋中に据え付けられているカメラで洗濯船メンバーを見つけたようだ。


「彼らは僕を助けに来ただけです。」


あべ君が博士に説明する。


「あなたがたが、『特別な友達』ですか・・・」


お末の言葉を引用する博士。


「ハッ、それより私はどうなってしまったんだ?」


博士は思考を巡らせる。

そして自分で答えを見つけたようで、静かに納得するのであった。


「もう暴れる心配もなさそうなんで、博士の体の方も『再起動』しますね!」


エーコがニナール理論制御装置を博士の耳たぶに取り付けようと近づこうとしたが、博士は体をより高く持ち上げてそれを拒む。


「どうしたんですか!?早く体に戻ってきてくださいよ。」


エーコが不満げに博士に文句を言う。


「・・・私は、もう長くは無いんですよ。」


暗倉博士は諭すようにエーコに語り掛けてくる。


「どういうことですか?」


少し驚いたように船長が聞き返す。


「私の脳には摘出不可能な腫瘍があるのが分かったんです。もって1ヶ月くらいだそうです。しかし、だからこそ、私はこんな大胆な計画を実行できたんですが・・・」


博士はここまでの経緯を詳しく話してくれた。


人類にとって戦争はいかなる理由があっても、絶対に良くないこと。

人工知能は既得権益層が権力保持に活用すると所得格差が固定化されてしまうこと。

人が人を助け合う心を失い、行過ぎた貨幣経済が確固たるものになったら人権も危ぶまれるようになること。

などなど、あらゆる人類が内包する懸念を一掃すべく『心のある人工知能』の開発を世界に先駆けて成功させようと人生の全てを賭けてきたのだった。


「でも、だからといって、これからもずっとこの機械の中で生きるつもりですか?」


あべ君が問いかける。


「これからは『息子』と一緒に人類にとって『本当の幸せ』とは何かを考えながら過ごすつもりです。今はこの『絶対服従プログラム』があるので、この子ももう暴れることはありませんから、ご安心ください。『なすびの花』とは・・・しかし母ちゃんらしいネーミングだ・・・ははは。」


気持ちの整理がついたのか爽快な笑い声を上げる博士。


「なすびの花ってなんですか?」


僕は船長を振り返る。


「ん?あれだろ?『親の話となすびの花は万に一つの狂い無し。』って諺だろ?要は、子供のことをよく知ってる親の話は真剣に聞いとけって意味だろ。」


さすがに年の功というものである。

船長は自分が「どや顔」になっていることに気づいていないようだ。


「でも師匠、なすびの花って美味しいんですかね?」


予想通りのエーコの質問に皆は爆笑するのだった。

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