火事場の〇力②
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「ぐはっ!!」
ついに船長も火の玉の餌食となってしまった!
「船長!!」
床に倒れ、うつ伏したまま身じろぎ一つしない船長を、逃げ回りながら心配するエーコ。
「いい加減にしないと怒りますよ!」
エーコが切れそうになる。
人を怒らせることはあっても滅多に自分が怒ることの無かったエーコであったが、今度ばかりは仏頂面で博士ロボを睨みつける。
「なべさんに続いて船長まで倒れたら誰が私に美味しい食べ物を運んでくれるんですかっ!!」
彼女の怒りのポイントに思わず躓きそうになるメンバー達。
「私も料理人なんですけど・・・」
寂しそうに羽田さんが呟く。
気のせいか火の玉の数が減って来た。
その隙を見逃さなかったエーコは、パワードスーツの限界までスピードを上げて博士の背中側の配線の束を掴みに行く。
そのスーツの怪力で配線を破壊するつもりらしい。
しかしエーコが配線の付け根に辿りつく前に光の玉が彼女を捉えていた。
「きゃっ!!」
今度はエーコが壁まで吹き飛ぶ。
飛んで来る数がなぜか少なくなったものの、その動きは自由自在の変化球である。
例え前方に投げても後方の獲物を攻撃することも可能なようだった。
「えーこさんっ!!」
小野先生が叫ぶ。
彼は女性がひどい目に合わされるのを我慢出来ない性格なのだ。
「うわっ!」
小野先生もあっけなく壁に打ち付けられた。
そしてそのまま蹲って(うずくまって)してしまった。
しかしそのすぐ横で、船長の指先がピクリと動いた。
『・・・ヒソヒソヒソ・・・』
船長は小野君だけに聞こえる様に何かを囁く。
小野君も気づかれないように小さく頷いた。
火の玉攻撃で部屋の中は火事さながらとなっている。
このままだと部屋ごと丸焼けかと思われたが、さすがに全知全能の人工知能はそこまで愚かではなかった。
プウシュ~~~~ッ!!
天井から消火用の煙が立ち込め始める。
逃げ惑っていたメンバーたちの姿は煙でかき消された。
火の玉の攻撃も止む。
誰かが床を蹴りジャンプする音がした。
宙を舞い、煙の向こうから博士の正面に現れたのは船長だった。
この瞬間を待っていたのだ。
丁度良いことに隣に小野先生が来たことで、ジャンプの発射台になって貰ったことで3m近く床から離れた位置にある博士の顔の高さまでジャンプできたのだ。
「これでも喰らえっ!!」
船長は勢いに任せて右拳で博士の顔に殴りかかろうとした。
拳が博士の左頬を直撃する・・・はずだが何の音もなく、船長は着地したのだった。
「ど、どうなったんですか?」
僕は何とか今までは逃げおおせていた。
「・・・どうもしやしないさ。ここは『俺たちの世界』だったってだけさ。」
船長は静かに語る。
やがて煙が晴れ、動かなくなった博士の姿が露わになった。
博士は口から泡を吹き気絶しているようだった。
「どうしちゃったんですかね?!」
器用にちょこまかと逃げ回っていた小平師匠が驚く。
「あっ!!ニナール理論のおかげですね!!」
察しの良い笹川さんが回答を言う。
「・・・いてて・・・いくら宇宙ゴミ袋ジャケットを着こんでても衝撃は伝わって来るんですね・・・」
壁にぶつけた左肩を摩りながら料理長なべさんが立ち上がる。
「でも火傷はしなかったでしょ?」
エーコの何事も無かったようにこちらへ歩み寄る。
「そう言えば、船長はともかくとして電卓さんは生身のままだったけど大丈夫かな?」
急いであべ君を探すエーコ。
「あ、僕、当ってませんから大丈夫ですよ!」
なんと元高校球児の選球眼は健在らしく、玉が当たる直前にわずかに身を反らし、背後の壁で光玉が弾けるタイミングに合わせて当った演技をしただけだったようである。
「それにしても・・・火事場で飯の心配をするお前は・・・本当の『火事場のバカ』だな。」
船長は冷めた目でエーコを見下ろす。
他のメンバーたちは、『火事場の馬鹿力だよね?』などと囁き合っているが、船長は気にしていなかった。
「それよりも、博士をどうします?オニナール溶液飲ませちゃうとまた暴れるだろうし・・・」
羽田さんが珍しく普通に普通のことを話している。
「あ、お末さんから大事なものを預かったんでした!」
あべ君はポケットからUSB端子のようなものを取り出し、メインコンピューターに近づいて行く。
「何ですかそれ?」
原田さんが尋ねる。
無防備になった『NO,1』にあべ君は歩み寄りながら爽やかな笑顔で答えた。
「『なすびの花』らしいですよ。」




