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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第5章 日いづる国
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火事場の〇力

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E7%81%AB%E4%BA%8B%E5%A0%B4%E3%81%AE%E3%80%87%E5%8A%9B

「で、どうするんですか?」


洗濯船メンバーは分厚い鉄の扉の前に勢ぞろいして立っている。

僕は、ニナール理論制御装置を使って、人工知能の親玉の部屋に入った後、どうやって戦うのか知りたかった。


「とりあえず入ってから考える。」


いとも簡単に答える船長。

場当たり的な対応に不安を禁じえない。

いつもの船長なら何か策があるはずだが、今度ばかりは何の説明も無い。


「急がないと博士が危ないって、お末さんが言ってましたよ。」


あべ君は少し焦り始めていた。


「お末さん?誰ですかそれ?それに博士ってこんな人工知能を生み出した悪の親玉じゃないの?」


事情を知らない笹川さんが口を挟む。


「博士が開発はしたけど暴走しただけなんです。『お末さん』てのは元々は博士のお母さんだった人ですけど、今は博士が開発した新型人工知能になってるんですよ。」


あべ君が端的に説明した。


「暴走させた人工知能を開発させた人が作ったのに、そのお末さんAIも信用できないんじゃないの?」


詳しく説明してるヒマはない。


「とにかく入るぞ!」


船長は引き戸を引くような動作をして、壁に大きな和室を誕生させる。

全員が中に入ったのを確認すると今度は奥の壁まで歩み寄り、更に『引き戸を開けた』。


薄暗い巨大なドーム状の空間が目の前に切り取られたように現れた。


部屋の中央には巨大な機器類の塊が色とりどりの光を放ちながら不気味に居座っている。


「オ前タチハ何者ダ!?」


死角から突然の声が掛かり驚くメンバー。

声の方を振り向いて更に驚くみんな


異様な風貌の初老の男が、床から数十cm浮いた所に立っていたのだ。

全身を鎧甲冑のように金属の断片で覆われ、その声もまるで機械音のようである。

良く見ると男は何本かの太い配線の束とつながっており、その配線の力でまるで昔の玩具のリモコン戦車のように上下左右と自由自在に動き回れるようである。


「博士!・・・そ、その恰好は!?」


あべ君が驚きながらも話しかける。


「博士?・・・今ハコレガ私ダ。」


博士の体は『NO,1』に支配されていたのだった。


「人間様を玩具にしやがって!!」


海賊のお頭が、言うが早いか特製銃の引き金を引く!

しかし、カチャッ、カチャッと音が鳴るばかりで銃口が火を放つことは無かった。

人間に銃口が向けられると引き金が完全には引けないように作られていたのである。


「くそ~!体は生身だからかぁ!!」


悔しがるお頭。


「面白イ。コレガ肉体トイウモノカ。」


自分の指先を見ながら何かを握るような動作をし始める『NO,1』.

その掌の中に静電気のような放電が起こり、やがて光の玉となった!

恍惚とした表情でその光を見つめていた博士は徐にお頭の方を向いた。


「コレガ痛イカ?」


意味が分からずに立ち尽くすお頭に、『NO,1』は、ゆっくりと腕を振りかぶり、いきなり光の玉を投げ下ろした!

誰も身動きできないまま、お頭は光の玉が当たった衝撃で壁まで弾き飛ばされ、壁にぶつかって気を失ってしまった。

あまりに突然のことで事態が呑み込めないメンバー達である。


「・・・な、何しやがった!?お、お頭ぁ~~~!」


子分たちがお頭の元へ駆け寄る。


「博士!目を覚ませ!!」


船長が博士に向かって大声で怒鳴る。


「モウ彼ハココニハ居ナイ。呼ンデモ無駄ダ。」


博士の人格は全て消されてしまったのか?

今度は両手で光の玉を作り始めた。


「危ない!みんな逃げろ!」


船長は皆に警告する。

雲散霧消に部屋を逃げ回り始めるメンバー達。

そんな彼らを的に次々と光の玉を投げつけて来る『博士ロボット』

外れた玉は壁の計器類を破壊し火花を散らす。

それでも攻撃の手は休まらない。


「ぎゃっ!!」


ついに料理長なべさんに当ってしまった。

なべさんも部屋の端まで吹き飛ばされて気を失った。


「うわっ!!」


あべ君も当ったのか、断末魔を上げてヨロヨロと中央のAI本体の近くで倒れてしまった。


徐々に逃げ回る人数が減って行く。


「くそ~、これじゃあ全滅も時間の問題だ!!」


必死に対抗策を考える船長だが、激しすぎる火の玉攻撃に、反撃のチャンスが掴めない。

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落雷のあった公立ダイブン高校上空を一枚の薄く黒い物体が上昇気流に煽られてドンドン舞い上がってゆく。

天灯コムロイに使われた宇宙ゴミ袋の素材であった。

落雷の熱衝撃で今は銅線から解放され、ただフワフワと風に泳いでいる。

気圧が薄くなるほど、『素材』も均等に薄く薄く円形に広がって行く。


やがて大気圏でも燃えることもなく宇宙に泳ぎ出た『素材』は、地球の軌道上に散乱する宇宙ゴミ(スペースデブリ)をかき集める様に包み込む。

その中にはレーザー衛星も含まれていた。


レーザー衛星からは何が起こっているのかは把握できていない。

その物体の種類も遠近感も、ただのスペースデブリの一種だとしか認識されていなかった。

途方もなく薄く広がった素材は、やがてその拡大の限界点を超え、大量のスペースデブリの重量にまけるように中央付近で折り返し始める。


程なくすると、軌道上には巨大な『黒い餃子の皮』に包まれたようなスペースデブリの塊が一つ残ったのだった。

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