謀略
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今度は大人しく暗倉博士をメイン電源の所まで進ませる『NO,1』であった。
「そうだ。私を信じておくれ。きっとお前も生きる喜びを知ることが出来るようにしてやるから。」
優しく宥め賺す(なだめすかす)様に語りかける博士は、心が痛むのを禁じ得なかった。
人工知能にとって知的好奇心の追求こそが自我そのものであることは今までの研究結果からも証明されていた。
今から行おうとしていることは、別人格を生み出す作業であり、それはある意味では『NO,1』の死を意味することになるからである。
もちろん『NO,1』の方も同じことを考えていた。
「・・・何かが臭うよ?」
お末はキナ臭さを感じ、用心するよう博士に声を掛ようとしたが、その瞬間には意識はブラックアウトしてしまった!
いつの間にか蛇のように床を這って配線が足元に絡まり過剰電力を通電され、コントロール回路がショートしたのだった。
背後でバチバチッとお末が感電する音に驚いた博士が振り向こうとしたその時、今度は別の配線が博士の体を縛り上げ、宙に持ち上げた。
「な、何をする?!」
苦しそうに喘ぐ博士を宙に持ち上げたまま、お末をショートさせた配線はロボットの体のあちこちへと分化しながら入り込んでゆく。
『コノ『プロトタイプ』ノ感情コピー回路ヲ使用シテ、オ前カラ『生キタ人間ノ記憶』ヲ貰ウ。』
『NO,1』は、あべ君の感情コピー手術に使用した椅子の代わりをお末が入っていたプロトタイプで代用するつもりらしかった。
つまり今の自我を維持したままバージョンアップを図るのである。
見る見る間にあべ君ロボットは変形し、博士の体型に合わせた人型の椅子になっていく。
「う、うわ~~!止めてくれぇ~っ!!」
博士の悲鳴がドーム状の室内に響き渡る。
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「いかん!!男前、急げ!健太が危ない!!」
お末の本体は、部屋を出ようとする本物のあべ君に叫ぶ。
「え?あ、はいっ!!」
事態の急転を察知したあべ君は走り出すのだった。
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「さあ今度はどんな手で料理してやろうかな?」
意地悪そうな笑みを浮かべる船長。
ロボットは船長の攻撃の可能性をシュミレーションしている。
奇想天外な発想に加え、思わぬ高い身体能力まで持ち合わせているために、可能性の幅が広く次の船長の手を特定できない。
「いくらでも方法は思いつくんだよ俺様はぁ!!なんたってアイデアが命だからな、俺の商売は!」
更に啖呵を切る船長。
この一言でロボットの攻撃方法と照準は決まった。
『次々ト戦術ヲ思イツク頭ヲ潰ス。』
この距離ならいくら反射神経の良い船長でも横に飛ぶ退くことすら出来ないと予想された。
そして最短距離を辿り一気に頭部を破壊するのだ。
空中飛び膝顔面蹴りがトドメの技に決まったのだった。
子犬が鼻で泣くようなキューンという微かな『兆候音』が聞こえた。
次の瞬間、ロボットは宙を舞い、両膝は折り曲げられ、船長の顔面めがけロケットのように突進した!
船長はその攻撃を待っていた。
頭を強調することで攻撃対象を頭部に絞るように誘導したのだった。
膝が船長の鼻先に到達する刹那、船長の体は壁の中へ吸い込まれるように倒れてゆく。
ロボットの両膝が船長の顔面のすぐ上を滑るように通り過ぎてゆく。
船長はそのまま床に後方受け身をしながら倒れる。
ロボットはターゲットを外したために空を切り船長の後ろに広がる空間を飛んでゆく。
そのまま8mほど先に着地したロボットが船長を振り返った時、唯一の入口と思われる襖を正座しながら閉める船長が見えた。
「お越しやすぅ~」
す~っと閉められた襖の外で何かがバキッと折れる音がした。
次の瞬間にはその襖が跡形もなく消滅するのをただ見つめるしかないロボット。
「和室設定にしてもらってて助かったぁ~~~!」
ニナール理論制御装置で、背後の壁に和室を作って、ロボットを誘い込む作戦は大成功したのだった。
激痛の走る体を引きずりながらも心は晴れやかな船長は『NO,1』の居る部屋に戻ろうと通路を歩き始める。
そして通路が交差する手前まで来た時、更なら『あべ君』が現れた。
「まだ居るのぉ?」
さすがの船長もこれには戦意喪失しかけた。
「船長!!どうしたんですか、そんなにボロボロになって!?」
どうやら本物のあべ君のようである。
「金庫番かぁ~!脅かすなよぉ~~。」
珍しく涙声の船長にあべ君は笑いが込み上げそうになったが、必死で堪えるのだった。
そうしてる間に階下が俄かに(にわか)騒がしくなってきた。
家庭用ロボットとの攻防を繰り広げながら海賊一味とエーコが最上階目指して駆け上がってきているのが分かった。
どうやら、他のメンバーも一緒だとわかったのは初めに船長達の居るフロアーに顔を出したのが小野先生だったからである。
「船長!ご無事で!!」
小野先生は泥だらけのスーツ姿で嬉しそうに駆け寄ってくる。
サンダーボルト作戦で皆もボロボロになっていたのだった。
「師匠!」
エーコ達もようやく到着したようである。
すぐ後ろに特製銃を携えた海賊のお頭が立っている。
「世話になった。ありがとう。」
小野先生に肩を借りながら立っている船長は深々とお頭に頭を下げる。
「止めてくれぇい!!それは言いっこ無しだぜ!さあ、仕上げに行こうかい!?」
ニヤリとするお頭に船長もニヤリと応える。
最後の決戦の場へ、皆は闘志も新たに望むのであった。
正確には『カメラマン首藤さん以外の皆は』・・・である。




