伏兵現る!
この話のイラスト付き本サイトはこちら↓
http://ideanomi.jp/index.php?%E4%BC%8F%E5%85%B5%E7%8F%BE%E3%82%8B%EF%BC%81
陽動作戦は当初の計画以上の効果を発揮した。
「それじゃあ本丸目指して出発しましょうか!」
小平リーダー率いる一行は意気揚々とAIヤッホーバンクビルを目指し学校を後にしようとしていた。
その頃遥か上空、地球の軌道上ではレーザー衛星が、皆の居る公立ダイブン高校へレーザー砲の照準を合わせつつあった。
「落雷ニヨルロボット1万体ノ壊滅ハ、自然現象ヲ利用シタ戦術ノ可能性82%。ヨッテ攻撃対象ト判断。コレヨリ『レーザー砲』ニヨル壊滅ヲ実行スル。」
レーザー衛星は反射板の角度を調整し始める。
その時、別の『軍事行為』と判断される閾値を超える者が現れた。
霊山を越え、府内大橋を渡り、市中心部へと爆走する機関車のようなものを先ほどからレンズは捕捉していたが、今後の進路予測で目標地点が『AIヤッホーバンクビル』である可能性が高まったのだ。
レーザー砲は一度照射すると充電その他の付随作業で次の発射までに4時間ほど必要となる。
ここで公立ダイブン高校へ発射すると、暴走機関車を止めることは出来ない。
『NO,1』は、学校でロボットを破壊した11名の今後の攻撃力と暴走機関車が与えるであろう破壊力のどちらが大きな脅威かを再計算している。
その結果、反射板は機関車の方へ照準を合わせ直し始めるのだった。
その代わりに、各家庭に普及したAIロボットを強制始動し、残る11名の捕獲に当たらせる事にした。
もちろん機関車の方も、近くのロボットは乗組員を捕獲または攻撃するようプログラムを流している。
AIヤッホービルがレーザー砲の破壊圏内に入る前にロボットが暴走機関車を止められれば損害が少ない状態で鎮圧可能と判断したのである。
「あれ~?なんか色んなタイプのロボットがごちゃ混ぜなんですけどぉ?」
エーコは追って来るロボットを良く観察しながら奇妙なことに気が付いた。
「これって家庭用のAIロボットじゃないですかねぇ?はっ!・・・なんか私、大事なことを忘れている気がする・・・」
急にそわそわし始めるエーコを母ちゃんは不安そうに見守る。
「慌てんでいいけん、何を忘れたんか思い出しよ。」
腫れ物でも触るように優しく囁き掛ける母ちゃん。
「えっと、サンダーボルト作戦で大方のロボットを壊滅したはずなのに、なぜか家庭用ロボットが沢山追いかけて来る・・・それも、どこかから見てて、私達の居場所が分かっているような感じで・・・あっ~~~~つ!!」
突然の大声にお頭はハンドルを右に左に切ってしまう。
左右に揺れながらエーコは叫ぶ。
「一体化ボタンを押し忘れてたから衛星から丸見えだぁ~~!!」
運転中のお頭を押し退け、ハンドル右下の黄色いボタンをプチっと慌てて押すエーコ。
「あぶねぇ!何しやがる!!」
これにはお頭も切れそうになった。
「すみません!洗濯船と機関車の一体化を忘れてたから衛星から機関車が丸見えだったんですよぉ~!!」
運転席に急いで座りなおすお頭は謝るエーコを睨みつける。
「衛星って、あのドカーンって奴か?!」
険しい表情のお頭に申し訳なさそうにエーコが答える。
「はい、もう少しでドカーンってやられるところでした・・・」
一方、レーザー衛星のモニターから突然、暴走機関車の映像が消えた。
人間の肉眼に近い家庭用ロボットには目視で認識できるので相変わらず追跡は続くが、高感度過ぎるレーザー衛星のレンズからは完全に機関車の姿は見失われたのである。
『NO,1』は再計算する。
何らかの遮蔽技術でレーザー衛星からの追跡が不可能となった。
そのため、現場で追跡中のロボットから送られてくる位置情報で機関車の大体の位置を再計算しなおしているのだ。
しかしもうすぐ『自分』が居るAIヤッホービルが破壊圏内に入ろうとしている。
もはや猶予は無い。
ファジー理論で適当な予測進路に照準を合わせ、レーザーを発射するよう判断した。
その時、脇道から数台の車が現れ、追いかけて来るロボット達を蹴散らし始めた!
小平チームがエーコ達の機関車を発見し、援護に駆けつけたのだった。
「あ~!!みんなが来てくれたぁ~!!」
エーコが珍しく感情を露に喜ぶ。
「お~~!味方の加勢が来たんか!?」
母ちゃんも色めき立つ。
「お頭!俺達もそろそろ反撃してもいいですかい!?」
ひょっこり運転席を下っ端が覗き込みながらお頭の許可を請う。
「おう!特製銃だから人間には当たらん!思いっきりぶっ放せ!!」
やはり海賊である。
戦いとなると勇ましい。
「おう、やれやれ!!」
母ちゃんも血が滾ったようである。
ドカッ、ドカッと今となっては遠慮なく車でロボットを押し退ける小平チーム。
攻撃を食らったロボットは攻撃者への反撃に車を追いかける。
こうして雲散霧消するロボットたちから送られてくる機関車の位置情報は錯綜し始める。
ますます予測不能な進路のためにレーザー発射が出来ない『NO,1』
この状況を見てほくそ笑む者が2名いた。
一人はバズーカ砲のようなカメラを携え、近くのビルの最上階から撮影している首藤さん。
そしてもう一人。
凸凹になってゆく車体を見ながら男は小さく呟いた。
「毎度あり~~♪」
伊東社長その人であった。




