正義の雷!?
この話のイラスト付き本サイトはこちら↓
http://ideanomi.jp/index.php?%E6%AD%A3%E7%BE%A9%E3%81%AE%E9%9B%B7%EF%BC%81%EF%BC%9F
洗濯船メンバーが校舎の屋上の扉を開ける頃、校庭にはAIロボット達が集結し始めていた。
中央に置かれた5体を取り囲み、次の目標である『洗濯船メンバー』を探しているようだ。
雨に打たれながらも合羽着のまま屋上に腹ばいになり、グラウンドの様子をこっそり見守るメンバー達は、そのあまりの数に改めて驚愕するのだった。
「まさかこんなに沢山居たなんて・・・」
思わず僕は言葉にしていた。
市内でもマンモス校と言われるほどの高校のグラウンドは銀色に鈍く光る「顔だけあべ君」のAIロボットで埋め尽くされていた。
おそらくほぼ全量のロボットが投入されたものと思われた。
「本当にこんな漫画みたいな方法で奴らを倒せるんですかね?」
なべさんも疑心暗鬼のようだ。
「フランクリンの雷実験は300年前も前に成功してるんですよ。僕たちがビビッてどうするんですか?」
小平師匠はピンチに強いらしく、今までどちらかと言えば周囲には『軽い』感じに受け止められていたのだが、ここに来て頼もしいリーダーとしての才覚を発現していた。
「それでは囮さん達は我々とは反対側でロボットの注目を集めてください。」
予め用意していたビニール製の三角形の凧を持ち、囮グループと反対側に向かって走り始める小平師匠。
「捕まったら抵抗せずに奴らに連行されれば良いんですよね?」
念のために確認する僕は囮チームである。
「怪我しない程度には暴れて時間を稼いで下さいね!」
小平師匠率いる「凧あげチーム」の小野先生が右手で軽く敬礼の真似をする。
そのまま小平さんたち3名は屋上の東端まで行ってしまった。
残された囮チームは屋上中央付近からAIロボットを見下ろし、意を決する。
右手には一人一台ずつ支給された拡声器を握りしめている。
「ではいきますよ!セーノッ!!」
『AIのボケカス、アホンダラー、お前の母ちゃん出べそ!・・・』
各人はめいめいに好き勝手な罵詈雑言をメガホンを使って叫び始めた。そして、そのまま凧あげチームとは逆の端に向かって歩きだした。
しかし思いの外、悪態を付き続けるのは難しいことに気付いたメンバー達。
一人を除いては・・・
「おらおら、ウスラトンカチ、何とか言ってみろ!スットコドッコイてのはお前らには勿体無ぇ~んだよバ~カ!!・・・」
水を得た魚のようにイキイキするケセラン羽田さん。
彼の過去には一体何があったのだろうと深読みする僕たちであった。
「よし、作戦開始だ!」
囮チームがAIロボットたちの気を引き付けている間にこっそりと凧を上げる手筈である。
凧は小平さんが握る凧紐とは別に細い銅線とも繋がっており、銅線の方は更に屋上から垂れ下がり、グラウンドを這い、5体のロボットにつなげられていた。
凧が高く上がれば上がるほど、避雷針として雷を正確な位置へ誘導出来るのだ。
しかし雨は激しさを増してきたが肝心の風が今一つ静かなままである。
「仕方がない。僕が走るから、君たちは凧を出来るだけ高く掲げて付いて来て!」
さすが、お正月に凧あげをして育った世代の小平師匠である。
囮チームを追いかけるような恰好にはなるが、少しくらいの助走はこの場合仕方がない。
「よし来い!」
凧紐の束から紐を送り出しながら後ろ向きで走る。
凧は何度か風に乗り、舞い上がりかけたが雨の重さで思うように浮上しない。
屋上の反対端まで悪態をつきながら歩いていたメンバーがメガホンで何かを知らせて来た。
「やばいです!壁を登ってくる~~!!早くぅ~~!!」
微かに聞こえる伝令を頼りに、こっそり下を覗き込んだ小平さんはギョッとした。
校舎の壁を無数のAIロボットたちが這いあがって来ていた。
「ヤバい!!急げ~~~!!」
小平師匠は全速力で走り始める。
原田さんは銅線が縺れないように、手で解しながら筒状に巻かれた銅線を送り出す。
長身な小野先生もジャンプを繰り返しながら小走りで小平師匠を追いかける。
フワッ・・・
微かな風が吹いたと思った瞬間、凧は小野先生の手を離れ舞い上がっていった!
「やったー!!どんどん上がって雷落ちろ~~~!!正義の雷よ天誅を~~!!」
無邪気な少年のように、両手を上げて歓声を上げる小野先生。
そうしている間にもロボットたちは校舎の壁に群がり、下のロボットを踏み台にしながら徐々に屋上へ近づいてくる。
「早く雷落ちてくれ~~!!」
祈るような皆の気持ちを乗せて凧はドンドン上がって行く。
が、突然、糸が切れたようなヘナヘナとした手応えの無い動きを始めた。
小平さんの手元にもそれは伝わって来た。
凧紐と銅線が何かの原因で一緒に切れたのだった!
「え~~~~~~~~~~っ!!」
『一巻の終わり』という言葉が皆の脳裏をかすめるのだった。




