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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第5章 日いづる国
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あるがままに

この話のイラストつき本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%8C%E3%81%BE%E3%81%BE%E3%81%AB

「うわ!早いですよぉ~っ!!」

タク君は想像以上の速さで迫るロボット達に驚く。

意外にも運転をしている料理長なべさんは平気な顔をしている。


「ど、どうしますぅ?追いつかれたら?」

少し焦り始めたタク君はなべさんの考えを知りたいらしく探りを入れるように話す。


「そろそろ奥の手使っちゃいますか?」

運転席の何かのスイッチを入れる。

すると荷台がダンプカーのように競りあがり始める。


「今日で3日目ですから良く滑りますよ~。」

荷台には洗濯船で出されたデザートのバナナの皮が大量に積み込まれていた。

フルスピードで街を疾走する特別仕様のジムニーの荷台からは、程よくバラけた大量のバナナの皮が道路に撒かれて行く。

すぐそばまで迫っていたロボットの一体が皮を踏みつけ、ツルリッと滑りコケた。

その一体にぶつかって他のロボットたちも次々と転倒してゆく。


「食材をあるがままに使いこなしてこそ料理人ですよ~!」

嬉しそうに微笑むなべさんであった。


----------------------------

ドカッ・・・ドカッ・・バキッ・・ボコッ・・バウ~~ンッ!!

けたたましい音を立てながらエーコたちを乗せたラート形機関車はダイブンシティー随一の高さである霊山リョウゼンの樹海を走っている。

音源は機関車に次々となぎ倒されてゆく木々であった。


「おいおいおい!エーコちゃん、どこ走りよんの?」

母ちゃんは必死に手すりに掴まりながらエーコに進路を確認する。


「おかしいなあ。地図では住居も何も描いてないし、海からだと街まで真っ直ぐなんですけど、木が多すぎて邪魔ですよね?」

手には等高線の入った地図を持ち、不思議そうに首をかしげるエーコ。


「あんた、それ等高線っち言って山の標高がわかるようになっちょるんよ?ここが地図で見ても一発で『山』っち分かるように!」

歯を食いしばり振り落とされまいとする母ちゃんは歯の間から声を洩らすように話す。


「なあんだ!山だから木が多かったんですね!?はぁ~スッキリ!!」

問題の本質に気づいていないのか、自分の失敗を認めたくないのかリアクションがおかしいエーコである。


「やっぱりあるがままのエーコちゃんには常識が通用せんかったか・・・」

諦めた母ちゃんは、汽車から振り落とされない事だけに意識を集中することにしたのだった。


-------------------------------

「ふぅ・・・ふぅ・・・ふぅ~~・・・着いたぞぉ~~~」

湯気を全身から立ち上らせて息をつく船長は、ようやく30階の非常階段の踊り場に立つ。


「ここからは慎重にいかんとな!」

そ~っと非常扉を開け、隙間から通路の様子を伺う。


「思ったとおり監視カメラが結構あるな。」

呼吸を整え、背広の乱れも調えた船長は、もう一度深く、しっかりと「あべ君」を被るのだった。

ゆっくりと扉を開け、何事も無かったようにスルリと通路へ躍り出る。

カメラの位置を意識しながら、一定の速度で歩く船長。

広い通路の両側にはいくつもの部屋がある。

そのどれにも表札が貼ってあり、目的の部屋を見つけるの案外容易に思われてきた。

フロアーの中央付近まで来た時、大きな通路と交差した。

船長はどちらへ行くべきか迷ったが、とりあえず左へ曲がってみる。


その選択が間違いだったことは数歩も歩かないうちに分かった。

通路の向こうから「あべ君」が歩いてきたのだ。


『くそ~っ!全員出払ったんじゃなかったのか!?』

船長は向こうから歩いてくる「あべ君」の歩き方を出来るだけ真似しながら通り過ぎようとした。

2m・・・1m・・・

いつ襲い掛かってくるか分からない相手。

気づかれまいとすればするほど無防備に振舞わなければならない。


マスクの下では元来の通気性の悪さと極度の緊張から汗が噴出している。

その汗は船長の顔を伝い、ワイシャツの襟元を濡らす。

ロボットあべ君は何事も無いように通り過ぎて行った。

内心ホッとする船長。

だが、背後で遠ざかってゆくはずの足音が消えた。


立ち止まっているのか?


こちらを見ているのか?


次の瞬間、先ほどより速いペースでこちらへ近づいてくる足音が聞こえ始めた。

船長も追いつかれまいと飛び込む部屋を探しつつ、少しずつ早歩きになりながら逃げる。


「くそっ!バレタカ!?」

通路の角を再び曲がった途端、船長は猛スピードで走り出す。

足音に気づいた追っ手も走り出したようだ。


「どこか適当な部屋は無いか!?」

その時、右手に扉の無い空間を見つけ、飛び込んだ!

そこは給湯室だった。


「・・・最悪・・・」

小さな袋小路で待つ船長には駆け寄ってくるロボットの足音が恨めしく聞こえるのだった。

残された手はあるがままに戦うのみに思われた。

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