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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第5章 日いづる国
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サンダーボルト大作戦

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%88%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%88%A6

男性陣は額に船長と同じ日本手ぬぐいを締め、出陣の準備に入る。


「では組み分けをもう一度確認しておきますよ。」

船長不在時のリーダーとして、昔やんちゃだった小平師匠は適任だった。

集団での喧嘩に慣れているようで、必要不可欠な指示のみに徹し、現状認識に長けていた。


「まず友澤君は笹川さんと。伊東さんは古澤さんと。タク君はなべさんと。原田さんとお弟子さんは私と一緒に・・・」

順次、事前の打ち合わせ通りだが確認してゆく。

雨はいよいよ本降りになっていた。

男性陣が各車に乗り、出発の準備が整ったのを船上から見守る母ちゃんとエーコ。


「いいか、絶対に怪我するなよ!!」

母ちゃんが皆に喝を入れる。


「そうですよ!車を壊したらお買い上げなんですからね!!」

エーコが余計なことを言う。


「あ、毎度あり~!!」

伊東さんが和ませようと合の手を入れる。

最後の最後までズレまくっているエーコだが、マックスに達する緊張でガチガチになっていた男どもはクスリと失笑し、肩から余計な力みが抜けるのであった。


「それでは『獅子身中のあべ君 サンダーボルト作戦』出発します!!」

小平さんの掛け声でエンジンを吹かし一斉に車はAIヤッホーバンクのあるゴールデンスプリング街へ向かうのであった。


---------------------------------------

『NO,1(ナンバーワン)』は次の手を数千パターン以上シミュレーションしていた。

『強力な軍隊』を保有すると思われる『洗濯船』をレーザー砲で攻撃しようとしたが日中の停泊場所には居なかったために失敗に終わったので、作戦の立て直しをする必要があったのだ。


今のところ軍事行動と思われるものは確認されていない。

ただ、洗濯船のリーダーと名乗る男性の捕獲に出た部隊が落雷か何かの影響で突然シャットダウンしたことを除いては。


「人類ニヨル攻撃ノ可能性・・・50%」

もし攻撃であれば同様の手口で既にここへも進撃して来ているはずだが、今のところまだそのような動きも確認できていない。


「ナゼ、彼ラハ『プロトタイプ』ニコダワルノカ?」

何度計算しても答えが出ない。しかも人知を超える知能を乗せたAIロボットたちが何の情報も得られないまま失踪。

既存のデーターをどう組み合わせても答えが出ないのだ。


「ナゼ、計算出来ナイ・・・」

『NO,1』にとって『解決すべき問題』は現段階では


①なぜ、彼らがプロトタイプにこだわるのか?


②どうやって対抗したのか?


③次はどう出るのか?


であることは明確だったが、人の心を理解できない『彼』にとっては具体的な次の動きがあるまでは何も計算できないのだ。

常に、目の前の問題に最適解を出すことを求められるのがAIの定めだからである。


その時、室内に緊急を知らせるアラームが鳴り響く。

モニターは5台の軽車両が本社ビル前に集結している映像を映し出す。

スピーカーの付いた一台から大音量で音楽が流れ始める。

オペラ音楽である。


「宣戦布告ナノカ?」


モニターが各車の搭乗者をクローズアップで捉えてゆく。

その時、各車の荷台から紐で括られた何かが落とされた。


「プロトタイプ!」


あべ君(弟)以外の5体のAIロボットは電源を切られた状態で紐に縛られ車から引きずられている。


「本当にこれで追いかけてくるんですかね?」


僕はハンドルを握りしめ、笹川さんに話しかける。


「そりゃあ、こいつらを調べたら洗濯船の秘密が分かるかもしれないんだから、喉から手が出るほど欲しいでしょ。」


窮屈な助手席で上半身を捩らせて後方を見張る笹川さん。


「本当に彼らって感情がないんですかね?」


なべさんは最大ボリュームでオペラ音楽をかける助手席のタク君に大声で話しかける。


「え?何ですかぁ?」


全く聞こえていないようで、話しかけるのを諦めるなべさんであった。


「おっ!!お出ましですぞ!」


荷台に原田さんと弟子のイケメン君を乗せた小平師匠がいち早くビルの中の異変に気が付いた。

要塞のような頑丈な作りのビルの正面扉が開き、中から足並みをキッチリと揃えてAIロボット軍団がぞろぞろと出て来た。

その顔はどういう訳か全て『あべ君』であった。


「それではサンダーボルト作戦開始!!」


各車に取り付けた無線機を通じ、全員に号令が掛けられた。


激しくエンジンを吹かせ、アイドリングをしながらAI軍団を挑発するメンバーたち。

ピタッと整列したAIロボットは「NO,1」からの指示を待っているようだ。


車と先頭のロボットまでの距離は20mもあろうか?


ブルルル~~ンッ、ブルッ、ブルッ、ブッスン・・・


あまり吹かしすぎてクラッチが上手く繋がらずエンストしてしまったのは僕だった!


「な、何してるんですか!?急いでエンジン掛けて!!」

笹川さんが慌てる。

もちろん僕も慌てている。

こんな時に限って、なかなかエンジンが掛からない。

突然、ロボットの『あべ君たち』が動き出す。

一斉に各車に繋がれている『仲間』の確保に動き出したのだ!


「うわわぁ~~!来た~~!!」


更に慌てる僕。


「落ち着いて!落ち着いて!」


慌てながらも僕を落ち着かせようと声をかけてくる笹川さん。

こちらに通勤ラッシュさながらの『あべ君の波』が襲ってくる!


ブイ~~ンッ!!


一台のジムニーが僕たちとロボットの間を横切る。

荷台に乗った原田さんと弟子のイケメン君が黒いブヨブヨした物をピザのように回しながら広げ、器用にもロボットの顔に投げつけてゆく。


顔に張り付いた『黒いブヨブヨ』は簡単には剥げないようで、視界を失ったロボットたちはそこら中で立ち往生を始めた。

ようやくエンジンが掛かった僕たちは間一髪のところでロボットの追っ手を振り切って逃げだした。


「それじゃあ本番行きましょう!!」


久しぶりに引き締まった表情の笹川さんが僕には頼もしく見えた。

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