陰謀の種明かし
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お末と一緒に暗倉博士とあべ君はドーム状のその部屋に待機していたが、これからどうすべきなのか、何事に対しても計画を練りたいあべ君には苦痛な沈黙が続く。
「あのぉ・・・」
耐え切れずに博士に話しかけるあべ君。
「分かってますよ。これからどうすべきか?でしょ?」
博士も考えていたようだった。
が、お末に「もうちょっと待ちな。」と言われたので博士も言うとおりにしていたのだ。
「ようやく役者が揃ったようだよ。」
そういうと空中に大画面モニターほどの大きさの画面が現れた。
「いつの間にこんな事が出来るようになったんですか!?」
博士が驚いたのも無理はない。
この施設にはこんな仕掛けは作らなかったのだから。
「退屈しのぎにちょこっと弄っただけさ。それよりアチラさんもお待ちかねのようだから、そろそろ種明かしと行こうかね。」
大画面モニターがパッと明るくなったと思ったら、どこかの応接間が映し出されていた。
正面にはまだ高校生くらいの青年と後ろにはその両親らしき人物。
そして両親の反対側には、見覚えのある初老の紳士。
「あっ!矢部絵首相だ!!」
常識人のあべ君はすぐに気付いた。
モニターは首相を中心に映し出す。
「やあ、博士。お会いするのは、これで2度目ですかな?」
笑顔で博士に話しかける首相に、少し困惑気味の博士。
「直接会ったのは確か5回だったはずですが・・・あっ!!」
博士はハッとする。
言われてみれば、初回以外は首相の様子が変だったのを思い出した。
最後の接見の時は、すり替わったAIロボットで、そのAIを誰かがハッキングして遠隔操作していたことは突き止めていた。
しかし、『その前の3回も既にすり替わっていたとは・・・』と今ようやく気が付いたのである。
「・・・まさか・・・そんな早い段階で・・はっ!首相はどうしてそこに居られるのですか?」
すり替わられた人間はAIヤッホーバンクの幹部同様、始末されるかコールドスリープで冬眠させられるはず。
今、目の前で話をしている相手が本物の保証はない。
「安心おし。全部私がやったんだ。」
お末は博士の心を読んだかのように話す。
「ここの『坊や』がどんどん人間と自分の手先をすり替え始めたんで先手を打ったんだよ。」
お末は現在の新型人工知能機に記憶を流し込んだ後、物凄い速度で『覚醒』し、現状をどうやってか認識していたことになる。
そして『NO.1』の先手を封じるために国のトップの首相をAIロボットとすり替えていたのだった。
ただロボットの方は既存の物を使ったので表情のエラーが多発していたようだが。
「私も初めは信じられなかったですよ。」
首相は笑みを絶やさずに語る。
「じゃあ、初めから母ちゃんは私を騙すつもりで・・・?」
オロオロする博士を気の毒そうに見守るあべ君。
「『敵を騙すには味方から』と言うからねぇ。勘弁しとくれよ。それに、あんたにはベッタリと監視が付きまとっていたんで撹乱する意味もあったんだよぉ。」
申し訳なさそうに話すお末に、少し冷静さを取り戻した様子の博士。
「そ、それじゃあ、まさかハッカーも母ちゃんの仕込みかい?」
スクリーンにお末が映し出されるとニヤーッと笑みを溢す。
「初めは偶然だったんだけどね。
この子が私の『記憶』の中に妙なものを埋め込んだんで、くすぐったくて仕方がなかったんだよ。
そんで、『坊や』の目を外部に逸らすために丁度良かったんでこの兄ちゃんには『自分が首相を操作している』と思わせたんだよ。」
それを聞いて今度は応接室の秀治が狼狽える。
「ぼ、僕がこの国を回していたんじゃないの!?」
眩暈を覚えたのかその場に座り込む。
「いやぁ、君の判断はことごとく正しかったのでほとんど修正せずに実施しましたよ。見込みのあるご子息ですな。」
首相は秀治の両親に微笑みかける。
天にも昇らんばかりの父親と、父親の後ろで恥ずかしそうな母親がモニターに映っている。
秀治も首相の話を聞いて少し正気を取り戻したようだ。
「でも、これ全部お末さんが仕込んでたなんて・・・もう僕らの仕事は無くなるな・・・」
みんなとは違うところで愕然とするあべ君であった。




