雨女の実力
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いつの間にか外は雨が降り出していた。
夜空を覆う分厚く低い雨雲を見上げ、小平師匠は呟く。
「雨か・・・」
満足げに微笑みながら一人頷く。
「俺は雨女や無ぇ!」
誰も聞いてないのに一人、皆に聞こえるように呟く母ちゃん。
何かのトラウマでもあるのだろうか?
「でも雨で良かった!女将さん、ありがとうございます!」
全く母ちゃんの言葉を聴いてない『脳みそ胃袋』のエーコ。
「バカ!俺じゃ無ぇっち言いよろうが!!」
全力で否定する母ちゃん。
「本当に良かった。これで作戦の成功確率が上がりますね。ありがとう、お母さん!!」
小野先生も母ちゃんに礼を言う。
「やけん、俺や無ぇっち・・・」
ムキになる母ちゃんに、みんな無言で一人ずつ順番に母ちゃんの肩をポンッ、ポンッと叩き、感謝の意を表してゆく。
「・・・お前ら」
みんな、本当は怖くて堪らないのだ。
雨はただの口実で、何でも良いから『自分たちは運が良い』と信じたかっただけだと母ちゃんは悟ったのだった。
「よし!俺もケンタロックスと男前を助けに行っちゃる!!」
かつて『海賊のような八百屋』と恐れられていた頃のような気迫が漲る母ちゃんを、優しく笹川さんが制する。
「お母さんに何かあったら僕たちが船長に顔向けできませんから。・・・船長の作戦は完璧です。信じてください。ね?」
優しい笑顔で母ちゃんを見つめる笹川さん。
「・・・あんた・・・どっかで見たことがある顔やなあ? テレビに出たことが無いかえ?」
濡降る(そぼふる)雨の中、ずっこけるメンバーたちの笑い声がいつまでも夜の波止場に響き渡った。
あたかも呼応するかのごとく、まだ1月だと言うのに遠雷が小さく鳴り響くのであった。
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「戦わずして勝つ・・・『孫氏の兵法』ですか。」
首相の矢部絵は興味津々(きょうみしんしん)の様子。
「しかし君は当方が保護した時、自爆しようとしていたそうじゃないか?自爆は戦いではないのかね?」
少し意地悪な話しぶりの首相に、まるで何を言ってるのか分からないといった風に答える船長。
「自爆?どこにそんな物騒なものを持ってたんだ?もしかしてあの手榴弾みたいな奴のことか?ありゃ、閃光弾だよ。ピカーって光るだけの。」
そう答える船長に呆気に取られる首相。
「それに俺はまだまだ旨い酒が飲みたいんで死ぬわけには行かないんだよ。」
ニヤリとする船長は、一瞬自分好みのアルコールのことを考え涎を垂らしそうになる。
「そんなことよりも、もうAIヤッホーバンクが本丸だってことは間違いないんですよね?」
首相に確認する船長。
「そうだが、今軍隊を動かせば街ごと例のレーザー砲で焼かれかねない。かと言って、警察はもうほとんどアチラ側についてしまっている。どうするね、『船長』?だったかね?」
腕組みをし、右手でアゴヒゲを弄りながら首相は船長に流し目を送る。
「とにかく『戦ったら駄目』だ。奴らは『生きる目的』が無いんだよ。だから『自主的』に動けない。だが、こちらが『戦闘行為』に入ると途端に『戦闘時の最適解』を膨大な知識の中から見つけてくるんだ。」
船長の口調に熱がこもる。
「ふん、つまり『戦わない素振り』で『目的を達成』するということかね?」
好奇の色を隠さない首相。
「だから、この近くに学校か公園か、広い場所が無いか知りたいんだよ。」
いつの間にかいつもの平口になっている船長に自覚は無いようだ。
「今、地図で確認したら公立高校がすぐそばにあるようだ。」
田螺丸が通う高校である。
「それとこっちの公園に置いてあるものを借りたいんだが・・・」
そう言いながらいたずらっ子のような上目遣いになるアラフォー船長。
「何でも用意しよう。君は独創的な発想の持ち主のようだ。この作戦は我が軍の精鋭部隊がバックアップしよう!」
首相は船長を全面的に信頼したようである。
『戦わない』のだから軍人の仕事ではないと判断したのかもしれない。
「あ、それからもう一つだけ頼みがあるんだが・・・」
いいにくそうな船長に、『何でも言いなさい』と言わんばかりの首相。
「『戦わない』んだが最低限の『強制排除』に人間が必要なんだな。」
意味ありげな口ぶりの船長。
「精鋭部隊なら必要なだけ預けよう。」
首相はあっさり答える。
「いや、それが『俺たちのルール』を知ってる奴じゃないと今から教える時間も設備も無いんだよ。それで頼みってのが・・・」
さすがにこの話には即答を戸惑う首相。
「大丈夫ですよ。奴らは絶対に俺には逆らわないから。」
不敵な笑みを浮かべる船長は、首相に『種明かし』をした。
「本当にそんなことが出来るのか?」
あまりに突拍子も無い告白に驚く首相。
「少なくとも奴らは信じてるさ。」
まだ何か隠している様子だが、今は明かすつもりはない船長であった。




