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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第4章 本物のお宝
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『母ちゃんの遺言』

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E3%80%8E%E6%AF%8D%E3%81%A1%E3%82%83%E3%82%93%E3%81%AE%E9%81%BA%E8%A8%80%E3%80%8F

「こんちわ~!納車に来ましたぁ~~!!」

住友自動車の伊東社長の愛想の良い元気な声が船外から聞こえてきた。


「あ、こんにちは伊東さん!わあ、ジムニーですね!!」

大型の2階建てキャリーカーには色とりどりのジムニーが5台載せられていた。

アウトドア好きな僕は、船から飛び出すと5台の車を一台一台見て回った。

どれも背中が軽トラックの荷台のように加工されている。


「全部2人乗りなんですね?」

作戦上どうしても荷台が必要なことは分かっていたが、敢て聞いてみたかった。

ひょっとすると4人乗りでもフレームによっては荷台も付けられるのではないかと思ったからだった。


「時間とお金を考えるとこれが精一杯だったんですよ~。」

申し訳なさそうに笑顔で答える伊東さんを見てると心が和むのを感じる僕。

お互いに車好きなので、馬が合うのかもしれないと思った。


「お、ついに初陣の時が来た訳ですな!」

小平師匠もいつの間にか船から降りて波止場に到着したジムニーを眺めていた。


「でも二人乗りで5台ってことは10人しか乗れませんよね?こっちは全部で12人必要じゃなかったですかね?」

笹川さんも現れていた。


「その為の荷台じゃないですか。」

ニコニコしながら伊東社長が答える。


「あ、そっか!あははは!」

笹川さんはいつものごとく屈託の無い笑い声を上げる。


その頃エーコは洗濯船船首部分に埋まりこんだ餃子形宇宙船で何やらゴソゴソと改造作業をしている。


「エーコちゃん、それハンドルやねぇーんかい?」

それを背後から見守る母ちゃん。


「はい、間に合わせですけど古澤さんから車のハンドル貰ってきたんです。」

顔には油汚れが付着しているが気にも留める様子は無い。


「あんた車の運転とかも出来るんかい?」

心配性の母ちゃんがエーコに尋ねる。


「はい!地球上の全ての乗り物を操縦できるんです、私。」

楽しそうに作業しながら答えるエーコは宇宙人というよりは工学オタクといった感さえ漂う。


「いいのぅ。俺が33歳の時、医者から『近い将来ご亭主は病気で車を運転出来なくなります。』っち言われて免許を取りに行こうとしたことがあったのぅ。」

遠い昔を懐かしむように語る母ちゃん。


「ん?取りに行かなかったんですか?」

作業の手を止めることなく、振り向くことも無く、それでも母ちゃんの話は興味深いらしくエーコも良く聞いているようだ。


「それがの、俺の母ちゃんが誰からかその話を聞きつけて、タクシーに乗って店まで怒鳴り込んできたんじゃ。」

淡々と話す母ちゃんは、実母のことを思い出しているようである。


「何て言ってきたんですか?だって商売してたんだし車が必要なのに運転手が居なくなったんでは困りますよね?」

エーコは不思議そうに、母ちゃんを振り返る。


「母ちゃんは『男に出来ることを一つでも残しておけ!!』っち、物凄い剣幕やったんや。確かにあの頃の俺は自分の店も凄く儲かりよったけん、車の免許まで取ったら親父ていしゅが煩わしいばっかりになってたかもしれんなあ。」

懐かしそうに語る母ちゃんを見つめながらエーコは自分の経験に置き換えようと想像を巡らせる。


「あ、分かった!例えば、自分でも買いに行けるパンツを敢て友澤さんに買いに行かせることと似てますよね!?」

久しぶりに的確な表現が出来たと自信に目を輝かせるエーコ。


「だ、大分違うと思うけど・・・くっくっく・・・ひっひっひぃ~~~。」

必死に笑いを堪えていたがついに我慢の堤防が決壊した母ちゃんであった。

一頻り笑った後、母ちゃんは静かに続ける。


「と、とにかく、そのすぐ後に母ちゃんが死んだけん、結局それが『母ちゃんの遺言』になったんやな。」

『それで良かったんやろうなあ』としみじみと『遺言』を噛み締める母ちゃんは、幸せそうに見えるのであった。


「みなさ~ん、お食事の用意が出来ましたよ~!!」

料理長なべさんの声が艦内に響く。


「おっ!『腹が減っては悪戯いたずら出来ぬ』です、女将さん!ご飯に行きましょう!!」

さっさと作業を終えて外に出ようとするエーコの発言が、またもやツボにはまったらしく、母ちゃんは必死に笑いを堪えながら後に続くのであった。


食堂に会した一同は、豪華な料理がずらりと並ぶテーブルを見て圧倒されている。


「こっちが料理長なべさんの和食と佐伯寿司のオンパレードで、そっちは中華の羽田さんの『満漢全席』、それにたった今届いたばかりの熱々のハリウッドパーティーのピザとお好み焼き・・・食べきれるかなあ?」

オペラトマト農家のタク君が解説する。


「凄い量とクオリティーの高さ・・・これ本当に食べて良いんですかね?」

小野先生もテレビの生放送を終えて帰船していた。


「僕も長いこと高級ホテルばかり回って来ましたけど、今日ほど豪華な料理を見たことは無いですね・・・」

さしもの『笹川支配人』をしても圧巻だったようである。


「これが最後の晩餐かもしれませんね!冷めないうちに早く食べましょう!!」

元気一杯、みんなの食欲を削る発言をするエーコを皆は白い目で睨んだが、まるで意に介さ無い彼女には無駄であった。

こうしていよいよ『初陣』の時は迫ってきたのだった。

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