さよなら船長!?
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パタパタパタパタ~~~~!!
ドタドタドタ~~~~~~~!!
廊下をあっちへ行ったかと思えばこっちへ戻り、朝から大忙しのあべ君(弟)である。
新年開けたら、なぜか皆から雑用を頼まれることが急増したあべ君(弟)。
エーコによって仕事能力設定が80%・運動能力設定も90%まで引き上げられているために何でも熟せるのだ。
しかし一番驚いているのはあべ君(弟)本人のようである。
「僕って、ひょっとして天才?」
などと少し自惚れも出始めていたりするのだった。
「あ~~、あべ君(弟)、そっちが済んだらこっちをお願い~!!」
今度は小平師匠に呼び止められた。
「はいはいはい!すぐに行きますんで少々お待ちを~!!」
ここの所、小平師匠のサロンは大盛況らしく、猫の手も借りたいくらいなのだ。
「いやぁ~、やっぱAIは凄いねぇ。一発で仕事覚えちゃうんだもん。」
『ゴールドフィンガー』との呼び声高い小平師匠でも自分自身を揉み解すことは不可能で、それが唯一の悩みでもあったのだが、あべ君(弟)に教えた所、一発でコツを理解してしまったのだ。
おかげで今ではあべ君(弟)はリラクゼーションサロン『ここち』だけでなく、小平師匠にとっても掛け替えのないマスターとなっていた。
「いやね、君のおかげで自分の施術がお客様にどんな感じを与えるのか良く分かって助かるよぉ!・・・ふんぎゃっ!」
あべ君(弟)の揉み解しを受けながら礼を言う小平師匠。
「いやあ、僕の方こそ秘伝中の秘伝の技を伝授して頂いてありがとうございます!僕って疲れることが無いみたいでお客さんの気持ちが分からないんで助かります!」
いつも笑顔を絶やさない爽やかさは本人の性格をそのまま受け継いでいる。
「そう言えば船長を見なかった?今朝どっかに出かけるのは見たんだけど。そろそろ揉み解しに来るタイミングなんだけどねぇ。・・・ぐふっ!!」
背骨をボキボキと鳴らされる小平師匠。
「こんにちはぁ。あれ、今日はあべ君(弟)がやってるの?」
僕はサロンで施術するあべ君(弟)を初めてみたので少し驚いた。
「はい!今日は僕が『修理』致しますよ!!」
いつにも増して嫌みの無い笑顔だなぁと感心する僕。
しかし僕らが平和な午後を過ごしている間に事態が急変していたとは気づきさえしなかった。
『緊急放送です!館内のお客様は一度ご自宅へご帰還下さいませ。緊急放送です!館内のお客様は・・・』
何度か同じことを言って放送は切れたが、声の主はどうやらエーコらしかった。
「何なんですかね?突然・・・」
僕は揉み解しが始まったばかりなのに、お客様の誘導に駆り出されるのが嫌で文句を言う。
「あ、ここに居たんですね?!ゆっくりしている場合じゃないですよ!お客様を送り出したら食堂で緊急会議らしいですよ!」
笹川さんがサロン『ここち』に僕らを探してやって来た。
「何の会議なんですかね?もう作戦会議も終了したし、後は船長の合図を待つだけのはずでしょ?」
そう言えば船長を午後からは見ていないことに気が付いた。
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食堂は陰鬱な空気に包まれていた。
テーブルには船長がいつも頭に巻いてる日本手ぬぐいが、ボロボロに破れ、ベットリと血のりが付いた状態で置いてあった。
「・・・これって、どういうこと何すか?」
なべさんがワナワナと声を震わせ質問する。
誰も答える者は無い。
「・・・とにかく、船長の伝言を・・」
エーコがそう言いかけた時、あべ君(弟)が入って来た。
「一応頼まれた仕事は全部片付けましたけど、・・・ん?何の会議ですか?」
異様な雰囲気に気が付くあべ君(弟)の背後に、音もなく近づくエーコ。
プヒュ~~ン・・・
何かが抜けたような音がした途端、あべ君(弟)は電源が落ちてそのままそこに立ち尽くした。
「あべ君(弟)には面倒なんでちょっと休んでてもらいますね。それでは船長から預かっていた封筒を読みます。」
皆は暗い気持ちのまま聞き耳を立てた。
不安と動揺が食堂内に充満しているようだった。
「うほん!では読みます!」
エーコが改まって封筒に入った伝言を読み始める。
『皆へ! もし、何らかの事情で俺が居なくなった場合、この伝言の通りに動いて欲しい。
必ずみんなでこの文章を読んで欲しい。
まずエーコ!
右手を上げて見ろ。』
皆はエーコを注目する。
するとキョトンした顔で左手を上げる。
そのまま続きを読むエーコ。
『恐らく左手を上げているはずだ。』
皆はハッとする。
そんなことにすら気づいていなかったのだが、実際、言われてみればエーコは左手を上げている!
エーコもハッとする。これはいつもの事である。
『こんな奴独りに伝言を頼むと間違いだらけになるので皆でしっかり読んでくれ。』
どこまでもメンバーの特徴を的確に捉えている船長であった。
伝言には事細かに船長不在時の対応が指示されていた。
『最後に、言っておく。
未来は自分で選べるということを忘れるな。
そして戦おうとするな、自分たちのルールで冷静に動くことに意識を集中しろ!
きっと皆なら上手く行くさ!以上!』
そこまで読み上げた時、決意も新たに引き締まった表情になる皆がそこに居た。
「やる時はやるぞ!エイエイオーッ!!」
小平師匠が音頭を取った。
『エイエイオーッ!!』
皆の声が重なり、食堂に気力が満ち溢れたのだった。




